113スレ/私は悪魔だから

Last-modified: 2014-12-25 (木) 07:26:08
926 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/11/05(水) 11:16:00.70 ID:+R1WHYRZ0
気付くと、私は彼女の身長を追い越していた
私だって成長期なんだから当然あり得ない話ではない。薄い赤みがかった健康診断の用紙を見せてもらった時に知ったのだが、
私の身長は彼女と比べ僅かながら1.2cmの差がついていた
まるで小学生のようだ、とからかわれる事が頻繁にあった私はスタイルが良い彼女の身長に到達する事を密かに目標にしていたのだ。
その目標が達成された時はただ嬉しくて、何もおかしいなんて思わなかった

はっきりとした違和感を覚えたのは大学生活も二年を過ぎて、紅葉の赤色が街全体に彩りを加え始めた頃だった
中学時代、転校して来たばかりで右も左もわからない私に何かと親切にしてくれた不思議な少女、暁美ほむらちゃん
彼女はミステリアスな雰囲気や言動がある為に勘違いされやすいのだが、決して悪い子では無いというのは接していくうちに少しずつ理解できていた
今にして思うとあの頃の彼女は思春期ならではの気むずかしい時期だったのだろう。急に私を抱きしめたり、敵になるだのと意地悪を言ったり、
かと思えば可愛らしいリボンをプレゼントしてくれたり…(彼女に貰ったリボンは今でも私の宝物だ)
あの時は何がしたいのかよくわからなかったのだが、今では単に私と仲良くなりたいから…友達になりたかったからしていた事だったのだろうと解釈している
転校初日以降、彼女の方から話しかけてくる事は無くなってしまったが、私から話しかけると無視もせずちゃんと話してくれたという事もそう思う理由の一つだ
不器用で、なかなか友達を作れなかった…と話す子も大学の友達に何人か居るし、ほむらちゃんのような子はきっと多いのだろう
今ではそんな彼女を怖がる生徒に対して「本当は悪い子じゃないんだよ」「だって、それはね…」と、様々な実体験をあげて擁護できるくらいには彼女の事を理解しているつもりだ
その生徒に対し、中学生時代の思い出を語っていくうちに段々とあの頃が懐かしくなり、家に帰ったあと久しぶりに卒業アルバムを取り出したのだがその時『ある事』に気が付いた
ほむらちゃんは、彼女は中学生の頃から姿形が全く変わっていない、変わらなすぎるのだ。
それこそ成長していないのではないかと疑いたくなるほど、彼女の外見は私が転校してきたあの日から少しも変化していなかった

私は高校入学時の頃からまた身長が伸び、今では彼女より10cm近くも背が高くなっている
恥ずかしがるほむらちゃんを抱擁すると、私の腕の中にすっぽりとおさめる事が出来るほどに身長差が広がっていたのに、全然気が付かなかった…
毎日一緒に居るから変化に対して鈍くなっていたのだろうか、彼女の中学生らしからぬ妖しい雰囲気も理由の一つかもしれない

『ほむらちゃん、貴女はどうしてそんなに変わらないの?』
『ふふふ、気になる?それは私が悪魔だからよ、まどか』
…………………
あぁ、容易に想像できる。いつもほむらちゃんは自分は悪魔だからと語り、聞かれた話題をはぐらかす。
きっとそれ以上聞かれたくない事だろうからそうして誤魔化しているんだろう、だから私もそれ以上は追求しない
…私がこれから歳をとって40歳、50歳になっていっても、きっとほむらちゃんは私の側に居てくれるような気がする。
勿論それから先も、ずっと。それは特に理由があるからそう思う訳ではないけれど…なぜかそう確信できる
でも、もしかして、ほむらちゃんはこのままずっと…中学生の時の姿のまま…ずっと変わらないんだろうか
『私は悪魔だから』
彼女の口癖を不意に思い出す。一人だけどんどん歳をとってしまう人間の私と、取り残される悪魔の彼女を想像してしまい胸がどうしようもなく切なくなる
いや、いや…ありえない、ほむらちゃんは間違いなく普通の人間だ、悪魔だなんてありえない…だからそんな心配する必要なんて全く無いはずだ
(…私、疲れてるのかな…変な事ばっかり考えちゃう、ほむらちゃんが自分の事を悪魔だ悪魔だなんて言うから私まで影響されてる気がするよ…
それに、そんな風に自分の事を言っちゃ駄目だっていつも言ってるのに…)
(次にまた悪魔だなんて言ったらもっとちゃんと注意してあげないと…)
中学卒業記念に撮った私とほむらちゃんとのツーショット写真を眺めながら、私は夕飯の支度を始めた

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