19スレ/私は貴女 貴女は私

Last-modified: 2014-04-15 (火) 18:49:44

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前編(追加大幅修正版)に後編を統合したものです
【私は貴女 貴女は私】
…まただ。彼女をまた救えなかった……本当にごめんなさい、こんな…こんな無力な私で…
私は何度目なのかも分からなくなった、過去へと遡る道を重い足取りの中歩く
変わらぬ自分の無力さに打ち拉がれながらもなんとか自分を律して前へと進む
立ち止まってはならない。ここで立ち止まっしまっては彼女を諦めたことになってしまう
絶対に諦めるものか。貴女だけは私が必ず救ってみせる…絶対に…
思考を戻し、過去に遡る道の先を見やる……なんだ…?今回は…異様だ
見た目は変わらないはずなのに、妙な違和感を感じる
私の盾は正常に動作したはずだ…なんだろうか。酷く胸騒ぎがする
そう思ったのも束の間、次の瞬間私の目の前に広い空間の行き止まりが待っていた
……とんだイレギュラーだわ……これは一体どういうこと?
私はいつもの癖――髪の毛先を摘みながら――
目の前に広がる大きな壁の行き止まりを睨みつける
こんな所で立ち往生している暇は無いというのに…!
ひとまず、その広い空間を見渡す。大きな壁の近くにぽつりと一人、人影が見える
こんな所に…人?今までこの道を使っていた時には出会ったこともない…人間がいるですって?
一体誰だというの…?…別の時間軸の自分自身?…可能性は多いにある、がどうだろう
私と同じ能力を持った人間…なんているわけないでしょうね…可能性は無いわけではないが
考えるのはともかく、とにかく向こうに見える人間らしきものに接触してみるに越した事はない
…相手がこちらに危害を加える気なのであれば…いつも通りに排除すればいいだけのこと
カツンカツンと足音を鳴り響く空間を一歩一歩前へと、その人影に近付いていく
私が愛用するククリ刀も咄嗟に取り出せるように忍ばせてはある
近づくに連れて相手の輪郭がはっきりとしてきた
凝視して相手の特徴を捉えようとする
…髪は…黒…そして腰よりも長いそれ
…どういうことだろうここまでで妙な既視感を覚える…
その人物の服装は……私と同一のものですって…?
しかし所々彩色が違う。相手は紫色のそれを纏っている。
知っている。私は知っている。この色合は彼女だけしかいないはずだ。だけどどうして…
…相手もこちらに気が付いていたようで、こちらに身を翻す
その時の相手の動きがまるでコマ送りのようにゆっくりに見えた
それは私が一番見知った顔。私の…
―――ほむら…
――そんなバカな…自分以外の誰かが……ここにいる…ですって…
行き止まりを前に思い悩む私の背後に感じた謎の気配
その視線は大分遠くから感じていたけれど、私は振り返るのを躊躇ってしまう
恐怖とも違う何か圧迫されるようなもの
それは説明のしがたい随分と妙な感覚だった
気配の主が音を響かせながら背後に迫るのを感じ
私は意を決して振り返る
相手がその気ならこちらは殲滅するまで…
忍ばせてあるサバイバルナイフを強く握り締める
だが…振り返ったその先にいたのは
私と全く同一の姿をした―――まどか……だと思われる人物だった
「ま…どか……?」
「ほむ……ら……?」
お互いに呆然とする
イレギュラーな事態に更ならイレギュラーが重なる…流石の私でも理解が遅れて思わずたじろいだ
相手も私と同じ反応をしているあたり、向こう側も私と同じ状況に遭遇しているのだろう
…今さっき、この人物は私の名前をはっきりと口にした だとすれば…?
「……鹿目…まどか……貴女、まどか…なの?」
「…貴女は…まさか暁美ほむら…なの…?」
こちらの質問に相手は質問で返してくる
「……………」
「……………」
互いに沈黙が始まる
大分気まずい
…とりあえず今は思考の整理が必要だ
冷静になれ、冷静になれ、暁美ほむら
―――私の推測からして…間違いない、ほむら。彼女はれっきとしたほむらだわ
だけど私の記憶に残っているほむらの像のどれとも全く一致しないのだ
いつもの可愛らしいあのサイドテールはどうしたというの?フリルのドレスの魔法少女の衣装は?
私に見せてくれる…私の大好きな貴女の素敵な笑顔は…?
…今目の前にいるほむらはまるで写し鏡……私、鹿目まどかと全く同一の存在…のような印象を受けた
―――このまどかはきっと…まどかであって私自身なんだ
確証はないが不思議なことに私の中でスムーズなほどにそう結論づいたのだ
今、私の目の前のまどかの眼差しはとても鋭利的だ
恐らく、私も全く同じ眼差しをしているのだろう
あの時…もう誰にも頼らないと誓ってからの、誰も寄せ付けない意思を持った瞳
それでも、その相手の前ではそれを平静に保つ事が難しいとても脆いもの
沢山の複雑な感情を孕んだ、私と同じその瞳
このまどかも…彼女が守るべきである「私」の前では揺らいでしまう
私がそうなのだからきっとそうだろう
そんな私自身のようなまどかを見つめていると彼女の口が先に開いた
「ふふ…私の格好も様になっているじゃない、ほむら」
―先程までの人形のような能面さはそこにはなく、私の知るあの可愛らしい微笑みを浮かべて私を賞賛するまどかの姿があった
「…あら、ありがとう…でも、貴女もとてもよく似合っているわまどか」
―仮面が外れたかのように、私が知っているあの可愛らしい微笑みを目の前のほむらは私に向けながらそう返した
「………。」
「………。」
再び始まる沈黙
だが先程より空気はずっと和やかなものになっていた
「「……クスクスクス…」」
「くすくす…悪いわね…どうにもおかしくて」
「いえ、こちらこそ…ふふふ…」
「あなたは…ほむらなのに、まるで鏡相手に話しをしているようだわ」
「それは私も同じ。私のようなまどかだなんて…斬新すぎるぐらいよ」
「……どうやらお互いに敵意は無い…ってことかしら」
「えぇ…だって、貴女はまどか。私の大事な人ですもの…敵意を向ける必要が無いわ」
「そうだったわね、愚問だったわほむら…私の大事な人」
――この閉鎖された空間の中でほむらと私はここまでの経緯を話し合った
行き止まりの壁に寄りかかり、自然と私達は体を寄り添わせていた…
似た者同士からか、それとも既に互いを信頼しあっているのか その理由はわからない
だが不思議と彼女の隣は…気が休まり、あたたかいものを感じる
彼女もまた、私と同じで何度も何度も「私」を救おうと運命に抗っていたようだった
だがその話を聞いても、「私」ではない私には…どこかがズレを感じ、寂しさを覚える…
…そう、彼女が救おうとしているのは彼女のような私ではなく、私の守ろうとしているほむらのような「私」だ
隣のほむらも…私と同じ気持ちなのだろうか…おそらく私が言う「ほむら」と自分とのギャップを強く感じていると思う
ふと思う…今隣にいるほむらが私と同一の思考を持っているのだとしたら…もしかしたら彼女は…彼女は…
――そう、きっと彼女は「私」に対して強い恋慕の情を抱いていることだろう
それが分かってしまう 嫌でも分かってしまうのだ
だって…このまどかは…彼女は私自身なのだから…鏡を見ているように、手に取るように分かってしまう
そう認識した瞬間、私の心の臓の鼓動が早まりだす
今目の前にいるのは…姿形、性格に違いはあれど…まちがいなくまどかそのものだ 私の大事な…大事な…
――高まってくる…この鼓動の高まりを抑える術は…私にはない
ほむらが紅潮させて私を見つめてきている 真っ直ぐと 熱を帯びた目で
私だって同じだ ほむらへ視線が釘付けになってしまっている…私も彼女と同じ顔をしているんだろうな…
気が付けば、私達は熱を孕み始めた互いの手を取り合っていた
はっと、互いに我を取り戻して取り合った手を見やる
そのまま跳ねるように手が離れるかと思ったが…私達の手は縫われたかのように繋がれたままだ
寧ろ、私達の意識とは別に指が深く深く絡まっていく
離れたくない、離れたくないとでも私達の本能がそう言っているのだろうか
まるで体が一つになっていくような…錯覚
心の底から沸き立つ感情に翻弄されていく 自分が分からなくなっていく
そんな中、先に口を開いたのはほむら
「あ…貴女が私と考えが同じでも…それでも…貴女は私の大事なまどかなんだもの…この気持ちを止められるわけが…ない………ぐ…ぅ…」
「…私だって…私だって今まで出会ったどんなほむらでも私はその度に好きになってた…皆、大事なほむら…貴女だって例外じゃないのよ……くぅっ……」
「辛いよ 辛いよまどかぁ…こんなにも、こんなにも好きなのに…私は…貴女を…置いて行って…う…ぐっ……ふっ…ぅぅ………」
「泣かないでほむら…私も辛いよ……思いだけがいつも置いてきぼりになっちゃうのは…私だって…ぅ…ぅぅううう……」
「ごめん…ごめんなさいまどかぁ…!」
「ごめんね……ごめんねほむらぁ……!」
私達は互いを掻き抱く そして互いを慰め合うかのようにひたすらに泣いた
時間を遡り、全てを置いてきぼりにしてしまう無力な自分を分かってくれる存在、そんな願ってもない存在にここで出会ってしまった
しかもその存在は自分の想い人そのままの姿だ
中身は自分自身と変わりない それでも それでも目の前にいるのは愛おしいと思うあの人の姿
想い人へと、そして自分自身を同時に縋りつくような形で私達は嗚咽した
「うっぐっ……まどかぁ…まどかまどか……好きぃ……まどかぁぁあ…貴女が愛しいのぉ……まどか…!」
「ほ……ほむら…ぃっく……ほむらぁ……私だって…貴女が…貴女が…!こんなに愛しくて……!」
高まるに高まった感情によってお互いに限界を迎えている
更に強く互いを抱き締め、引き寄せられるように 私達は唇を重ねた…
そこから先は…ただ、ひたすらにお互いを求め合ったということだけは覚えている…
…私達はやや水気を含んだ、着崩れた衣装を戻していく
記憶が曖昧になっているがお互いにとんでもないことをしたのだろう…また顔が真っ赤になりそうだ
「…ごめんなさいねまどか…あんな弱気な所、貴女に見せてしまって……」
「いいえほむら…お互い様よ……でもこれで少しはすっきりしたわ……そうでしょう…?」
「…そうね ふふ…奇妙な感覚だわ…私はまどかと自分自身、両方に惹かれてしまったみたい」
「私も同じよ…だってこんなにも貴女がとても近しくて愛おしく感じるんだもの…ふふ…」
再び隣り合って、私達は隣の想い人と手を繋ぐ
とってもあたたかい
「…なんだかとても清々しい気分」
「えぇ、幸せだわ…」
「……まどか、本当なら貴女とずっと一緒にいたい…だけど、私達には成さなければならないことがあるわ」
「えぇ、救い出さないとね…私達が守るべき大事な人を、必ず」
「…それだけじゃないわ…私、改めて決めたの。諦めていた…私達を幾度となく助けてくれた三人の事も…これからは…」
「…確かに…とても怖いけれど……そうね、少しずつだけど…私も彼女達にまた歩み寄ってみるわ…」
「私、ずっと忘れていたわ…まどかだけじゃなく、巴さんやさやか、杏子なくしてここに立っている事は無かったということを」
「私…皆を助けたい…出来る…わよね?」
「えぇ、きっと出来る やってみせなきゃ」
「私…ここで貴女と出会えてよかった。ありがとう、まどか」
「私こそ…貴女に救われたのよ。ありがとう、ほむら」
「………そろそろお別れの時間のようね」
「えぇ、そうみたい… 正直に言うと私、寂しいの」
「ほむら…私だってそうよ…折角出会えた貴女と離れるのは嫌だもの…」
―― 一瞬の閃光が走る
私達の目の前には見慣れた、過去への出口がそこに現れていた
「…また会える…その日までどうか、生きて、まどか」
「ほむら………また…の機会は……あるわね。きっとあるわ」
「えぇ、信じましょう」
「そうね…私達が守るべきものを守れたその後にでもまたこうして出会える事を信じて…」
私達は現れた出口へと歩み出す 繋がれた手はそのままに
「それじゃあね」
「えぇ、またね」
「「愛しているわ」」
握りしめあっていた手がゆっくりと解けて離れていく…
『まどか』『ほむら』
そうして…私達の体は光に飲み込まれた
―――今回の目覚めはとても穏やかなものだった…
私の左手に残るまどかのぬくもりが、確かに残っていたから…
―――体にも彼女と触れ合ったぬくもりがまだ残っている
私はほむらが握ってくれていた右手を愛おしそうに撫で、
自分を掻き抱いた
「「そうだ 私はひとりじゃない」」
――…それは偶然だったのか必然だったのかは分からないが
『『全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で』』
「鹿目…さん…?貴女は…」「暁美…さん…?貴女は…」
『『神様でも何でもいい』』
「まどか…あんたって子は…!」「ほむら…あんたって子は…!」
『『今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい』』
「はは、まったく…あんたにはつくづく驚かされるね…まどか」「はは、まったく…あんたにはつくづく驚かされるね…ほむら」
『『それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる』』
時を同じくして、大きな因果律を背負った二人の少女は――
『『これが私の祈り、私の願い』』
宇宙の法則を覆す程の強大な願いを叶え――
『『さぁ!叶えてよ インキュベーター!』』
「まどかぁああーーーー……!」「ほむらぁああーーーー……!」
――同時に起こった莫大な願いによって…二つの宇宙はぶつかり合い…統合された――
―――それから
「ほむら、そのリボン…よく似合ってるわ」
「ふふ、まどかだって…とっても可愛らしいわよ」
「二人とも和やかに話している所悪いけど、遠方で魔獣の反応を感知したよ!急行してもらいたい!」
「さて、行くわよほむら 夜は長いわ」
「えぇ、油断せずに行きましょうまどか」
「…まだ二人の所に行くには早いものね」
「私達に課せられた運命を全うするまでは、ね」
『まどかちゃん…』
『うん、ほむらちゃん…』
『『っせーの…』』
『『がんばって!』』
宇宙(ソラ)で戦い続ける似た者の女神が二人
地球(ホシ)で戦い続ける似た者の魔法少女が二人
――4つの運命は今日も円環り続けている――ー
【 CONECT END 】
・おまけ
クーまど「ねぇ…ほむら」
クーほむ「何かしらまどか」
クーまど「私は概念となったほむらと貴女の二人を大事にしているわけだけど…」
クーほむ「えぇ、私も概念になったまどかと貴女が大事だわ」
クーまど「これって…浮気扱いに……ならないわよね?」
クーほむ「………………う、うーん……どう…かしら…」
クーまど「……そ…それは追々考えるとしましょうか…」
クーほむ「…二人に再会するのが段々怖くなってきたわね…」
・ちょっとした設定みたいなもの
この作品のクールまどかさんはほむらちゃんの特徴や立ち位置がほぼそのままのまどかさんという設定です。当然百合ッ気もですが。だけど身長は低い。
つまり、メガほむと同じで心臓病を直したばかりで、元々眼鏡を掛けてて、リボンも自分で用意したもの。とっても気弱です
三つ編みはギリギリ出来ないから、ツインテ以外の別の髪型をしていました
クールまどかさんが守るほむらちゃんの父母と弟は詢子さんと知久さん、たっくんになっています。
ついでに言うとそのほむらちゃんのルックスはツインテほむらちゃん。ただしはリボンは紫。魔法少女のフリル服もソウルジェムも紫色です
作品中の二人の一番の違いはクーほむの癖が「髪を掻き上げる」ですが、クーまどさんは「毛先を摘んで弄る」のが癖です
弱ほむとキスしようとする時は背伸びするクールまどかさんとっても可愛い
・クールほむらちゃんとクールまどかさんの装備の違い
考え方は同じな二人でしたが、使用する武器や好みは大分違います
クーほむの接近戦ではサバイバルナイフを用い、クーまどの接近戦ははククリナイフを用いてます
クーほむのお気に入りの武器はコインショットガン(映画バイオ4で主人公が使ってたアレ)とスティンガーミサイルで、
クーまどはアンチマテリアルライフルと乗っ取ったPQ-1プレデターから撃ちだすヘルファイアミサイルがお気に入りなようです。どっちもとても物騒
二人ともそんなものをどこから手に入れたのかって?
二人の大事な人を思う気持ちがあればどうとでもなるんじゃないかなぁ
途中で脳味噌が停止して訳が分からないまま完成させた 時間が競っていたんだ 許して!