23スレ/見えなかった月蝕

Last-modified: 2014-04-17 (木) 15:27:50
244 名前:見えなかった月蝕[sage] 投稿日:2012/06/04(月) 22:21:52.28 ID:fyyiZr4o0
明かりを消した部屋から身を乗り出して、ベランダで空を眺めるまどかに声をかける。
「どう?まどか」
「…ダメ。 やっぱり雲は晴れないや……」
「そう、残念ね…せっかく月蝕が見れるからって準備してたのに」
「うん…一緒に見たかったな…」
普段なら聞こえるか聞こえないか、それくらい小さな声だった。
しかし、静寂に満たされた空間にその声ははっきりと重く響いて。
「…ねぇ、まどか。 次の月蝕は来年の4月にあるらしいわ」
「…そっか、来年かぁ……」
「だっだから、その…」
「…? なに、ほむらちゃん」
「ら、来年まで…一緒にいれば、きっと次は二人で月蝕も見られるわ。だから…」
これまた小さな、聞こえるか聞こえないかくらいの声。
口篭ってしまって最後まではちゃんと聞き取れなかったけれど。
それは確かに、優しさと、愛おしさを秘めた声で。
「…えへへっ、そうだねほむらちゃん。 …ありがとう」
――だけど、そんな風に言われちゃったら。
来年の月蝕も、曇って見えなければいいのに。
そしたらまた次の月蝕まで二人でいられて、それから先もずっと…
なんて、考えてしまうのでした。

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