37スレ/無邪気なほむらさん

Last-modified: 2014-04-27 (日) 10:51:49
270 名前:無邪気なほむらさん1/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:04:17.74 ID:p+wdWGQn0
>>30-38の続きです
ほむほむが
ハグをして
まどっちメロメロ
まどホーム
「ただいまー! パパー、お友達、連れてきちゃった」
帰宅したまどかを、父、知久が出迎える。
「おかえり、まどかと…。おや?」
知久が少し驚いた様子を見せる。てっきり友達とはさやかのことかと思ったからだ。
「はじめまして、暁美ほむらと申します。お邪魔します」
玄関先で礼儀正しくおじぎをするほむら。
「やあ、君がほむらちゃんか。まどかからよく話は聞いてるよ。ゆっくりしていってね」
落ち着いた、穏やかで優しげな男性。他人を安心させる、まどかの雰囲気とよく似ていた。


271 名前:無邪気なほむらさん2/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:05:18.92 ID:p+wdWGQn0
「ここが私の部屋だよっ」
まどかの自室に招かれる。女の子らしい、かわいらしくもすっきりと整った部屋だ。
それにしても、ほむらを招待すると決まった日のまどかのはしゃぎようときたら…
傍で見ているほむらもつられて嬉しくなってしまうほどだった。
「うぇひひ、ほむらちゃんが来てくれて嬉しいな!」
そこへ、階下から声がする。
「まどか、悪いんだけど、買い物に行ってくるから、ちょっとタツヤを見ててくれないかい?」
そんなわけで…。
「ほむあちゃー、ほむあちゃー」
「こーら、たっくん。『ほむらお姉ちゃん』でしょ」
まどかの部屋で、まどかの弟…タツヤの面倒を見ることになった。
3歳くらいだろうか、まだまだ言葉がたどたどしくて、可愛いさかりだ。
「ごめんね、ほむらちゃん。せっかく遊びに来てくれたのに」
申し訳なさそうなまどかに、ほむらは微笑んで言う。
「いいのよ、まどか。…さ、たっくん、お姉さんたちと一緒にお留守番しましょうね」
「あいー!」


272 名前:無邪気なほむらさん3/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:06:21.81 ID:p+wdWGQn0
すっかり打ち解けているようだ。まどかも相好を崩した。
「あっ、私、飲み物いれてくるね。ちょっと待ってて」
そういって、キッチンへ降りていくまどか。
その後姿を見送っていると、ちょんちょん、と袖を引っ張られる。
振り向くと、タツヤが一冊の絵本を持ち出してきていた。
「ほむあちゃ、これ、よんでー」
「ええ、いいわよ。たっくんはこのご本が好きなの?」
「うん、すきー!」
幼児らしい無邪気さで、絵本を読んでくれとせがむタツヤ。
絵本を見てみる。表紙は鉛筆と色鉛筆で丁寧に彩色してあり、
ハードカバーできれいに綴じられているが、出版社や値段が書いていない。
どうやら手作りのようだ。作者名も、書かれていない。
表紙のイラストは…黒い長髪のきりりとした美形騎士が、恐ろしげな竜に剣を向けている。
竜の後ろには、牢に入れられた桃色の髪のお姫様が助けを待っている…そんな様子が描かれている。
(これは…まどかがたっくんに描いてあげたものかしら? すごく上手ね)


273 名前:無邪気なほむらさん4/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:07:47.33 ID:p+wdWGQn0
ほむらが感心していると、
「ほむあちゃ、ほむあちゃー!」
タツヤは黒髪の騎士を指して、ほむらだと言う。
「私? ふふ、そうだね、長い髪が似ているね。それじゃ、読みましょうね」
タツヤがほむらのひざに座る。いつも誰かに本を読んでもらうときは、こうするのだろう。
ページをめくる。
中世風のお城の中で、黒髪の騎士と桃色の髪のお姫様が、手に手を取って見つめ合っているシーン。
ふたりは恋仲であることが示されていた。背景は咲き誇る花が丁寧に書き込まれている。
ほむらが最初のページを音読しようとすると…。
「わ、わぁぁぁーっ! 見ちゃだめーっ!!」
今しがた戻ってきたのであろう、まどかが見事なヘッドスライディングで絵本を奪い去っていった。
あっけにとられるほむらとタツヤ。
「…それ、やっぱりまどかがたっくんに描いてあげたものなのよね?」
「うん!」


274 名前:無邪気なほむらさん5/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:08:53.08 ID:p+wdWGQn0
ほむらの問いに、まどかではなくタツヤが元気よく答えてくれた。
ほむらは、絵本を抱えてうずくまるまどかに優しく声をかける。
「勝手に見てしまってごめんなさい。でも、恥ずかしがることないわ。とても上手で、私、驚いてしまったもの」
ほむらは本当に感心していた。
まどかは、自分自身を何のとりえもない子だと言っていたが、こんな見事な絵本が作れるではないか。
ところが、まどかの心配は、まったく別次元のところにあるのだった。
(これだけは見られちゃダメ…! だって、最後のページは…!)
そう、この絵本のクライマックス。悪い竜を退治した騎士は、とらわれのお姫様を救い出し…
最後のページでは、教会で婚礼の口付けを交わす騎士とお姫様のシーンで締めくくられているのだ。
3歳児になんというものを読み聞かせているのだ、という突っ込みは野暮というもの。
最も見られてはいけない禁忌。この絵本の著者であるまどかが、登場人物のモチーフにした人物とは…
目の前にいる、最愛の恋人と…自分自身なのだから。そんなものを恋人当人に読まれる羞恥といったら!
……とはいえ、当のほむらだけが全然気付いていないのだから、始末に悪い。


275 名前:無邪気なほむらさん6/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:10:10.82 ID:p+wdWGQn0
「こっち! こっちならいいよ!」
すばやく絵本を隠し、出してきたのは一冊のノートブック。
それは、まどかが夜な夜な書き溜めていた、様々な衣装のデザインスケッチだった。
二人で座卓に並んで座り、ノートを読む。
「すごい、素敵ね…」
これにもまたほむらは驚嘆の声を漏らす。
「てぃひひ…。ほむらちゃんには、こういうのがとっても似合うんじゃないかなって」
照れ笑いをしながらも、自分のアイデアを褒められて、まどかはご満悦だった。
(女の子っぽい服もいいけど、もしほむらちゃんが男装したら、どんなに素敵なんだろう……)
横目でちらちらと見ながら、頭の中で、ほむらを様々にコーディネートする。
華やかだがほむららしい端正さを生かし、完璧に正装したほむら。それにエスコートされる、着飾った自分。
まどかは陶然と悦に入っている。すっかり妄想の世界に旅立ってしまったようだ。


276 名前:無邪気なほむらさん7/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:11:26.84 ID:p+wdWGQn0
そこへ…。
「ねーちゃとほむあちゃ、ちゅーしないの?」
幼児の幼児ゆえの無邪気かつ無慈悲な質問でもって、まどかは現実に引き戻された。
「えっ、ちゅー…って?」
さすがのほむらも目を丸くしている。
「たたたたっくん!? なななな…」
「なかよしはねー、ちゅーするんだよ!」
悪気のない、純真な笑顔。姉の狼狽を、まったく意にかけていない。
無理もない。鹿目家では、家庭内での愛情表現としてのキスはきわめて日常的なものであり、
3歳のタツヤにとって、「仲が良い=キスをする」という図式は、不動の真理なのである。
思春期の女子にとって、恋人とするそれが、どんな意味を持つのか…。そんなもの、知る由もないのだ。


277 名前:無邪気なほむらさん8/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:12:40.86 ID:p+wdWGQn0
「ちちちちがうの! ほむらちゃん!」
ひとり大慌てのまどか。両手のひらを振りながら早口でまくしたてる。
「たっくんはその…ち、小さいから、仲良く遊ぶことを『ちゅー』って言ってるだけで…」
もはや支離滅裂であるが、そんなことを気にしている余裕はない様子。
「まあ、そうだったの…。じゃ、私はいつもまどかと『ちゅー』してることになるのね」
「ッッッ!!」
カァァ、と音が聞こえるくらい、顔が紅潮するのがわかる。
もちろん、ほむらにも悪気はない…。だからこそ厄介なのだが…。
とはいえ、他ならぬほむらの口から、『まどかとちゅーしている』などと言われた日には、
オーバーヒート寸前のまどかの頭に、更なる追い討ちをかけるだけであった。


278 名前:無邪気なほむらさん9/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:13:54.17 ID:p+wdWGQn0
それでも、どうにか『ちゅー』の意味をごまかせたかな……と、
胸をなでおろそうとした、その瞬間…。まどかの目に映ったものは…
「あーん、ほむあちゃ、ほむあちゃ! すきすき、ちゅー!」
ほむらの名を呼びながらぬいぐるみを抱きしめ、口付けのマネをする弟、タツヤの姿。
まどかのリンゴのように真っ赤な顔面が、一瞬にして蒼白に変わる。
もしまどかにソウルジェムがあれば、このあたりで間違いなくグリーフシードに変化していたであろう。
何を隠そう、この奇行は……夜な夜な自室で繰り返されていた、姉、まどかの真似なのである。
切なく火照る肢体をもてあました、眠れぬ夜。…ぬいぐるみを抱きしめ、ベッドに寝転がり…
愛しい人の名を何度も呼びながら、恋人に見立てたぬいぐるみにキスを繰り返す。
この行為を、一体誰が責められようか?
こうでもしなければ、満たされぬ、行き場のない、乙女の猛る想いを、どこにぶつけたらよいというのか?


279 名前:無邪気なほむらさん10/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 19:15:14.73 ID:p+wdWGQn0
タツヤにも罪はない。
とかく、このくらいの年齢の子どもは、身近な大人のマネをしたがるものだ。
絶対にマネをして欲しくない時と場合もある、なんていうのは、大人の身勝手な都合でしかない。
まどかは、ギギギギ、と音がするほど硬直した顔面を、どうにかほむらに向け、様子をうかがう。
「ふふふ、可愛いわよね、このくらいの子って…」
ほむらは、まどかの煩悶など何も知らぬ様子で、タツヤの様子を見て楽しそうに笑っていた。
瞬間、スッと毒気が抜かれていく。
(そうだよね……私、ひとりで慌てて、ばかみたい)
苦笑して、軽く息をつく。
今度こそ本気で安心したまどかであった。


289 名前:無邪気なほむらさん11/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 20:03:26.34 ID:p+wdWGQn0
……はずなのだが、彼女の受難はまだ、終わっていなかった。
「それじゃ、まどか…。私たちも、ちゅー…しましょうか」
今まで一度たりとも、そんなことを言われたことがないのに…どうしてこのタイミングで!?
「え? …………ええええっ!?」
「わーい、ちゅーだ、ちゅーだ!」
大喜びのタツヤ。ほむらがずいっと身を乗り出してくる。
「どうしてそんなに驚くの? 私にちゅーされるのは…イヤ?」
「い、いやなわけ……で、でもっ…」
動揺のあまり目が泳いでいるまどか。思考がまったくまとまらない。
(そ、そんなっ……たっくんの見てる前で……ファーストキス、されちゃうの…?)


290 名前:無邪気なほむらさん12/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 20:04:52.99 ID:p+wdWGQn0
うろたえるまどか。しかし、そっと抱き寄せられ、耳元に捧げられる、魔性のささやき。
「じゃ…ちゅー…するわね…」
(ああっ……そんな……)
耳朶に走る、ぞくりとする快感。もはや抵抗の力は根こそぎ奪われてしまった。
きゅっと胸がしめつけられたかと思うと、心臓が早鐘をうちだす。喉がからからに渇いてくる。
どんなにこの瞬間を夢想していたとはいえ、それがいざ現実のものになろうとすると、
緊張で身体が震えるのをおさえられない。
ゆっくりと、ゆっくりと、近づいてくる、ほむらの唇。
(ああ……もう、何も考えられないよぉ……!)
切なさが胸を満たし……もはや無意識に、瞳を閉じ、唇を差し出す体勢をとってしまう。
そうして待ちに待った、愛しい恋人の唇の、あたたかくしっとりとした感触――


291 名前:無邪気なほむらさん13/13[sage] 投稿日:2012/11/16(金) 20:05:56.94 ID:p+wdWGQn0
ちゅっ
「……え?」
――待ち焦がれたそれは、まどかの頬に、着地していた。
「わーい、ほむあちゃ、ねーちゃにちゅーした!」
「うふふ、そうだね。お姉ちゃんにちゅーしちゃったね」
仲良く無邪気に笑いあうふたり。
「………」
ひとり、ぽかんと呆けているまどか。
やがて、安堵なのやら怒りなのやら歓喜なのやら、ぐちゃぐちゃに入り乱れた感情の奔流が巻き起こり、
まどかがぷるぷると身体を震わせていると…
「どうしたの、まどか、私にはちゅーしてくれないの?」
なんて言われて頬を突き出されるものだから、
(もう、もう、ほむらちゃんの……ばかーーーっ!)
全身全霊をこめて、ほっぺにちゅーをお返ししましたとさ。
おわり

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