37スレ/続・不器用ほむらさん

Last-modified: 2014-04-27 (日) 10:48:58
30 名前:不器用ほむらさん1/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:02:05.72 ID:eL6rPj+w0
流れを読まずに投稿です。
前スレ947-951の続きです
さやかの真似をして
まどかに冗談で告白したら
みんなに本気にされた
ほむらが下駄箱を開けると、今日も大量のラブレターが詰め込まれていた。
(まったく、噂というのも困ったものね…)
ほむらは軽く嘆息する。
例の一件以来、ほむらは校内での知名度と人気をさらに高めてしまった。
もともと、容姿端麗で学年問わず隠れファンの多かったほむらだったが、
『女の子が好き』という、本人にとっては甚だ不本意な噂が流れて以来、
とりわけ下級生女子からの人気上昇はすさまじいものがあり、
毎日のように投函されるかわいらしいラブレターが、それを雄弁に物語っていた。


31 名前:不器用ほむらさん2/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:04:20.86 ID:eL6rPj+w0
だが、理由はどうあれ、自分のまいた種である。嘆いても仕方がない。
そんなことよりも、ほむらの心に暗い影を落とす事柄があった。
そう、あの一件以来、どうもまどかとギクシャクしているのである。
仲が悪くなったわけではない。
相変わらずまどかはニコニコしていて優しいし、おしゃべりも普通にできる。
ただ、ときおり…。ふと、じっと見つめられている、そんな視線を感じるのである。
視線に気付き、どうかしたかと尋ねても、
「ごめんね、なんでもないの」
あわてて視線をそらされ、言葉を濁される。
かつてのまどからしからぬ、ほむらの心情をうかがうような視線…。
そしてなにより、まどかによるスキンシップがほとんどなくなってしまったのだ。
ほむらは、どうしようもない不安と寂しさを感じていた。
(まどかに嫌われるようなことをしてしまったんだろうか…?)


32 名前:不器用ほむらさん3/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:06:36.81 ID:eL6rPj+w0
まどかの無二の親友ともいえるさやかにも、こんなことで悩んだ時期があったのだろうか。
そう考えたほむらは、これまた不本意ながら、さやかに相談することにした。
喫茶店。
「珍しいよね、ほむらがあたしに相談なんて」
「そうね…」
正直に言えば、ほむらはさやかが少し苦手だった。
男女問わず友人の多いさやか。明るく親切で正義感が強く、コミュニケーションが得意。
ただ、それは裏を返せば、時におせっかいで押し付けがましくなりかねず…
ほむらのように、友人との距離を測るのが難しい人間にとっては、ストレスも大きい。
なにより、その苦手意識は――ほむらは自覚していないが――まどかの一番の親友という位置に対する、
嫉妬に近い感情だったのだ。
「単刀直入に言うわ。私はもっとまどかと親密になりたい。その方法を教えてほしいの」
表情を変えず、淡々と用件だけを述べる。


33 名前:不器用ほむらさん4/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:08:48.03 ID:eL6rPj+w0
ところが、相手のことが少し苦手なのは、ほむらだけではなかった。
(し、親密って…! それって、恋人的なアレコレってこと!?)
(こいつ、前から何考えてるかわかんないとこあったけど…まどかを弄ぶなら、許せない!)
さやかは、例の一件がほむらの渾身のジョークだったなどとは夢にも思っておらず…
ほむらもまた、誤解を与えたままだったなどと、夢にも思っていなかったのであった。
「あんたねえ! それ、マジで言ってるの!?」
「……? 当たり前でしょう」
何を怒っているのかしら。とでも言わんばかり。
しばし、無言でにらみ合うふたり。
「本気……なんだね」
「何度も言わせないで」
(決意を宿した眼……こいつ、やっぱり本気でまどかのこと…)


34 名前:不器用ほむらさん5/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:10:50.49 ID:eL6rPj+w0
もちろん、ほむらにあるのは「まどかと友達として仲良くしたい」という他愛ない決意なのだが…
凛としたほむらの佇まいから、そのかわいらしい決意をうかがい知るのは困難というもの。
ややあって、さやかがふっと肩の力を抜く。
「あんたが本気だって、よくわかったよ…。でもごめん、そういうの、あたしじゃ力になれない」
そう言って、複雑な表情のまま席を立つ。
「これだけは言っとく。まどかを悲しませたら、許さないから」
きびすを返し、去っていくさやか。
(??? わけがわからないわ)
後には困惑顔のほむらだけが残された。
「二名様でお会計1150円でございまーす」
(し、しまった! くっ、美樹さやか…)
やっぱりさやかが苦手なほむほむであった。


35 名前:不器用ほむらさん6/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:13:09.25 ID:eL6rPj+w0
ほむホーム。
ほむらは黙考する。
(そうよ、さやかの真似をしたのがそもそもの間違いよね)
そうだ、まどかがいつもしてくれていたことを、そのまま返してあげればいいのだ。
まどかがしてくれたこと…。
無邪気な、かわいらしい笑顔。軽いボディタッチや、感激を全身で表現するハグ。
それらがどんなにほむらの心を暖め、孤独を癒し、活力を与えてくれたことだろう。
その喜び、嬉しさ、感謝の気持ちを、まどかに伝えたい。
まどかにも同じ気持ちになってほしい。
(そうと決まれば特訓よ)
思い込んだら一途なほむら。
その日から、鏡の前で笑顔の練習に…まどか抱き枕でハグの練習に…それぞれ励むのだった…。


36 名前:不器用ほむらさん7/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:15:17.12 ID:eL6rPj+w0
ある日の下校中。
その日は意図せず、まどかとふたりで下校することになった。
夕日に染まる街並み。長く伸びたふたりの影。
なんてことのない日常について、楽しくおしゃべりをしながら下校する。
優しくて、明るくて、積極的だけれど、人一倍他人の気持ちの機微に敏感なまどか。
大切な友人。そんなまどかと一緒にいると、自然と笑みが浮かんでくる。
穏やかな気持ち。ほむらは自分の変化に驚いていた。
ふと、沈黙が訪れる。まどかから、あの視線を感じる。
「まどか、どうかした?」
「う、ううん。なんでもないの…」
いつもの問い。いつもの答え。
俯いたまどかの目が少し潤み、頬が赤く見えるのは、夕日のせいだろうか。


37 名前:不器用ほむらさん8/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:18:21.96 ID:eL6rPj+w0
再び訪れる沈黙。
(練習の成果を見せるのは、ここしかないわね)
ほむらは密かに決意を新たにする。
やおら、振り返り……少し後ろを歩くまどかを、優しく抱きしめた。
「!」
長く伸びたふたりの影が重なる。
久しぶりのハグ。いつもと違うのは、それがほむらから行う初めてのハグであったこと。
(ああ、やっぱりまどかとのハグは幸せ…。気持ちが落ち着くわ)
ところが、まどかが息を飲み、少し身を固くしたのがわかる。戸惑っているのだ。
(おかしいわね…何か失敗したかしら)
ほむらはまったく気付いていない。
例の一件以来、まどかがどれほどほむらを意識していたのかを。
普段どおりに振舞うほむらに合わせ、まどかも必死に普段どおり振舞おうとしていたのを。
そして今、どれほどまどかの心臓が高鳴っているのかを。
(ほむらちゃん、やっぱりあれって、本気だったんだね…)


38 名前:不器用ほむらさん9/9[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:20:28.01 ID:eL6rPj+w0
どこまでも鈍感なほむら。まどかが不穏な原因が自分にあるとは露知らず。
それならばと、両肩に手を置いたまま少し身を離し、練習に練習を重ねた最高の笑顔を向ける。
(笑顔を向けられれば、まどかも落ち着いてくれるわよね)
ところが、それはまさにソウルジェムが輝くような美貌。男女を問わず虜にする、魔性の魅力。
至近距離で、その直撃を受けたまどか。耐えられるはずもない。
心臓をわしづかみにされたような感覚。次いで襲ってくる、甘く切ない陶酔感。
(恋人を抱きしめた後、肩に手を置いて…その後することくらい、私でも知ってるもん…)
まどかは一瞬、ほむらの胸に顔をうずめ…意を決したように、ほむらを見上げる。
「初めてだけど…。ほむらちゃんなら、いいよ…」
潤んだ瞳。つぶやくような声。上気した頬。かすかに震えるからだ。
あごを上げ、唇を差し出したまま、ゆっくりと瞳を閉じるまどか。
(……あれ? ……えっ? どういうこと? 私、どうすればいいの!?)
どこまでも裏目に出るほむらさん、大パニックに陥るのでした。
おわり

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