610 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/02/06(水) 04:54:28.79 ID:D3C/nORq0
今年はどんなバレンタインmdhmに出会えるか楽しみです。
http://ux.getuploader.com/homumado/download/198/St.+Valentine%27s+mdhm.txt
チョコより甘いmdhmください。
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1359700802/610-611
※訂正版があげられています。こちら
以下の本文も訂正版です。
2月13日。
これからやるつもりのことを考えると、まどかの家のキッチンを借りるのは色々と気まずいので、
手狭ではあるが私の部屋のキッチンで作業を行うことにした。
それにしてもエプロン姿のまどかが可愛い。
意外に慣れた手つきでチョコを刻んでいくまどかにチラチラと視線をやりながら、生クリームを計量カップを使って3つに分ける。
まどかが刻んだチョコも、3分割する。それぞれ違うリキュールを加えて、フレーバーに変化を持たせるためだ。
楽しみだねえ、とふんわり笑うまどかの表情につられて口角が上がるけれど、この後のことを思うと内心穏やかでも居られない。
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「はぁ? まだ告白してないの?」
美樹さやかは呆れた様子でそうのたもうた。一番言われたくない人間に言われると実に腹が立つ。
「しかも、一緒にチョコ作りに誘ったって…せっかくの一大イベントなんだからさ、
そこは自分一人で用意してまどか呼び出して告白するチャンスじゃん。
一緒に作ってハイ交換、じゃ友チョコ以外の何物にもならないでしょ」
実に腹が立つ。的確な意見なのでますます腹が立つ。
「まあまあ美樹さん。そういうことは人それぞれペースってものがあるのよ」
巴マミはおっとりと微笑みながら手早くペースト状のチョコを型に流しこんでいく。
そう、バレンタインチョコ作りにまどかを誘ったはいいものの、経験もプランも無いまま臨むのは
心許なく、巴マミに相談を持ちかけてお手本を見せてもらうことにしたのだ。何故か美樹さやかも付いて来た。
「…と、あとは冷やすだけよ。鹿目さんは結構お父様と料理の練習してるみたいだから、
チョコを刻むのは任せても大丈夫。あなたはあなたで器用だし、分量を計る役でそれぞれ分担すればきっとうまくいくわよ」
爆弾作れるくらいだもんね、と美樹さやかは笑った。その爆弾で魔女化した貴女を吹っ飛ばしたのよとは言えるわけがなかった。
ああ、思い出しただけで嫌な汗が。
「ちょっと、そんな顔しないでよ。言い過ぎたよ。アンタがまどかのこと本気で好きだってのはわかってるからさ。
…見てるとやきもきしちゃうんだよね。多分、まどかも満更でもなさそうだしさ。頑張れ」
ああー。なんで今のタイミングでそういうことを。ごめんなさいごめんなさい美樹さんごめんなさい。
「ふふ、じゃあ気を取り直してレシピのおさらいね。生クリームとチョコは1:2くらいでもいいけど、成形しやすいように
チョコを多めにするのもいいわね。加えるお酒は銘柄でちょっとだけ差が出るから、こだわると結構面白いわよ。
入れ過ぎには注意だけど。オススメは――」
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「わ、凄い。本格的だね」
リキュールの瓶に視線をやりながら、まどかはやっぱり結構慣れた手つきで刻んだチョコを湯煎にかけている。
「巴マミに相談して決めたの。こっちが定番のマイヤーズラムと、オレンジリキュールのコアントロー」
「へえ…じゃ、こっちは?」
「ピーターヒーリング。私の――本命用」
まどかの手元から鈍い音が上がった。
「あっ、あう、良かった、チョコにお湯が入っちゃうかと思った…。そ、そっか。ほむらちゃん、本命作るんだね」
「…ええ」
言ってしまった。もう後には、引けない。
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「…そうでもしないとさ、アンタまたずーっと告白できないでしょ」
さやかちゃんは心配なのだよ、とチョコを口に放り込みながら眉を寄せた。
「あんまり急ぎすぎるのもどうかって思うけど…でも、暁美さんと鹿目さんを見てると確かに奥手すぎる気もするわね」
「ですよねー? でもってまどかも鈍いところあるしさ。はっきりきっぱり好きだって言わないと分からなさそうだし。
かと言ってほむらを見てると全然はっきり言えそうにないし。折衷案としちゃ良いところだと思うけどなー。
作りながらコレが本命!って宣言して完成したらそのまままどかに渡すっての」
腕を組んでうんうんと頷く美樹さやか。自分を棚に上げて、随分と好き勝手言ってくれる。
でも、的を射たアドバイスだと私も思う。このままではどうやったって、まどかとは友達のまま。
もう、この想いをずっと抱えたままでいるのは、辛い。
だから。
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さっきまで鼻歌交じりに楽しそうに作業していたまどかが、押し黙ってしまった。
正直私もいっぱいいっぱいで、とにかく作業を早く終わらせてしまいたい一心で、黙々と手を動かす。
3種類のペースト状のチョコをシートを敷いた型に流しこんで、少し冷まして冷蔵庫へ。
一息ついた所で、ようやくまどかが口を開いた。
「…ほむらちゃん、本命のチョコって、誰――ううん、その…ラッピングの準備とかは?」
「ああ…必要ないわ」
「え、ええ!? せっかく一所懸命作ったのに!」
「いえ、いいのよ」
美樹さやかの言う通り、改めてまどかに渡すなんてこと、とてもじゃないけどできそうにないから。
ああ、さっきから本当に、動悸が収まらない。
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固まるまでの間、まどかはやっぱり押し黙ったままで、私も緊張して何を話せばいいのかわからないまま、
時間になった。
切り分けて、ココアパウダーを振って。巴マミの言う通り、チョコを多めにしておいて正解だった。
これ以上柔らかかったら、切り分けるのも難しそうだ。
「味見してみましょうか」
「……うん」
マイヤーズラムのは正統派の味という感じで、私はこちらの方が好みだった。
まどかはコアントローのかすかなオレンジの風味が気に入ったらしく、口に含んで顔をほころばせていた。
それから、
「まどか。食べて、もらえる?」
「…ダメだよ。それ、本命なんでしょ? 私は――」
「だから、あなたに」
ああ、心臓がうるさい。
「え?」
「受け取ってもらえる…? 綺麗なラッピングもなくて申し訳ないのだけど。私の、気持ち」
「え…えぇ!? だ、だって…あ、ええっと…は、はい…私で、良ければ…」
顔を真っ赤にして、切り分けたチョコを一欠け、口に含むまどか。
「…さくらんぼ…?」
「ええ。ピーターヒーリングはチェリーのブランデーなの。可愛らしくて、まどかにぴったりかなって…きゃっ」
まどかが胸に飛び込んでくる。
「ほむらちゃん、だって、…ぐすっ、本命作るって言うから、てっきり好きな人が居るんだって、うぅ、ほむらちゃんのばかぁ…」
「ごめんなさい。こうでもしないと、ずっと言えそうになかったから…ごめんなさい」
「うぅ…。ばか、ばかぁ…。…すき、だいすき、ほむらちゃんのこと、好きなの…」
「私も、まどかのことが、好きよ…」
頬を赤く染めて、見上げるまどかがたまらなく愛おしい。これ以上の幸せなんて、きっと無い。
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「上手く行ってるかなー」
「きっと大丈夫よ。2人ともお互い好き合ってるようにしか見えないじゃない。むしろ私としては…」
「なんですか?」
「お酒を入れすぎて酔っ払ってないかが心配だわ」
「あははは。まぁちょっとくらいお酒入ったほうがいいかもしれませんよ」
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息が、苦しい。
「ん、んん…ぷはっ! まどか! お、落ち着いてちょうだい!」
「ほむらちゃんが悪いんだよぉ…私のことこんなにしたのはほむらちゃんなんだからぁ…」
さっきから顔が赤いと思ったら、明らかにこれは。
「落ち着いて。水でも飲みましょう。ね?」
「世界が回るよぉ…」
「ああ、もう…スプーン2杯くらいしか入れなかったのに…とりあえず、横になってて…」
肩を貸して、寝室に連れて行く。…お酒臭い。
「うぁー。ベッドー。ほむらちゃんとベッドインだー」
「何言ってるの…大人しくしててね。今、水を持って…きゃあ!?」
恐ろしい力でベッドに引きずり込まれる。
「ほむらちゃあん。わたし、ずーっと、ほむらちゃんのこと、すきだったんだよぉ?」
「そ、そう。嬉しいわ。私も好きよ。だからちょっと放し」
「それなのにほむらちゃんってばずーっとじらしてくれちゃってー」
「ごめんなさい。…なんだか今回謝ってばかりだわ」
「晴れて恋人同士になれたし、ここはひとつ…より深く愛を確かめあって…」
「まどか、眼が、眼が怖いわ。付き合い始めて15分でそんなこと…ああ! 服を脱がさないで! 脱ぐのもダメ!」
チョコと仄かなさくらんぼの甘い香りとまどかの温もりが私の理性を少しずつ削ぎ落としていくのを感じながら、
せっかく作ったチョコレート、キッチンに出しっぱなしだから味が落ちちゃうな、と静かに現実逃避を始めるのだった。