6スレ/555-564

Last-modified: 2014-04-03 (木) 02:34:30
555 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:34:43.18
「暁美さん、あなたのそのリボンについてなんだけど」
ある日の夕暮、いつものように街中で魔獣たちとの戦いを済ませた後、巴マミはほむらのリボンを指差しながらこう尋ねた。
その言葉は、カチューシャのようにリボンをつけているほむらの姿に対してのことだった。
魔法少女とはいえ、彼女らはまだ中学生であり、お洒落だってする
しかし、ほむらはそのようなことにあまり興味を示しておらず、とりあえずあるものを着れればよいというスタンスであるらしい。
マミの言葉は、そんなほむらに対して少しでもお洒落に興味を持たせるためのものだったのかもしれない。
「着け方を変えてみようとは思わない?」
満面の笑みで巴マミはそう言った。
街中から移動して、マミの家。
マミ特性のケーキをほおばりながら佐倉杏子はほむらに言う。
「そういや、もともとリボンを二つ持ってんのにどーして片方しか使わないんだ?」
ほむらは頭につけているリボンのほかにもう一つリボンを常備している。
それは決して使用することはないが、それでもいつも肌身離さず持っているものであり、
普段はお守りのようなものとして本人は扱っている。
「別に必要ないし、そもそもリボンを二つ使用する髪形なんて似合わないからよ」
ほむらはそっけなく答える。
紅茶を飲みながら自分からは話を切り出さないその姿は「早く終わりにしてくれないかしら」と無言で訴えているかのようにも見える。
しかし、マミはその言葉に納得しなかった。
「その似合わないっていうのがわからないわね。あくまで自分だけが見ただけなのに」
違う髪形を他人に披露していないからには似合うにあわないは本人にしか見ておらず、他人には理解されない。
それは当然のことであった。
しかしほむらはあまり気が進まなかった。
リボンを二つ使用する髪型ということは過去のおさげの姿も含まれるだろう
過去の自分の姿を思い出すのもあまり気が進まなかったし、なにより今の髪形をしているのには理由があるからであった。
誰に理解されなくてもいい、彼女にとっての大事な理由が。


556 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:35:55.66
「とにかく、私たちに見せてみる価値はあるんじゃないかしら」
ここまでくるとそう易々と引き下がることができないのはマミの性格ゆえか、
それとも後輩に対する先輩の意地か。
彼女にとっては後輩の新たなる可能性を導きたいという立派な考えがあるのだが、相手がほむらであるかぎりその考えは理解されない。
ただ、彼女にできることはほむらに絶対に引き下がらないというしつこさを感じ取ってもらうことだけである。
そうすれば自然と音を上げ、思い通りにさせてくれるだろうというほむらの性格を考えての行動であった。
そして、その行動は報われたのである。
「わかったわよ。今ここで変えるだけならいいわ。」
ほむらは諦めたような声でマミに言う。
どうせ似合わないのは分ってはいるし、二人だけに見せるのなら別にいいやと言う諦観もあってのことだろう。
こうしてマミの目論見通り、ほむらのイメージチェンジ作戦は決行されたのである。


557 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:38:08.94
1、ツーサイドアップ
ほむらの手元にあるリボンは二つ。
そこから導き出されるのはその二つを使用しての髪型。
なおかつメジャーな髪型でリボンを二つ使うものと言えばやはりこれだろう。
「いつもと違って幼く見えるわねー」
普段はクールな気配を発しているほむらの威厳がなくなるかのようなその幼い姿に、マミは変な感情がわいてくるような感じがした。
杏子はと言うと、いつもの威厳がないほむらの姿をみて必死に笑いをこらえている。
「そもそもこんな幼く見える格好が合うわけないじゃない」
彼女は中学生なので幼く見えるのは普通のことなのだが、普段のほむらを知っているものであればその違和感は間違いなく感じ取れるであろう。
幼く見える、または可愛らしく見えすぎるので、めでたく却下となった。
2、おさげ
「なんかメガネが合いそうな姿ねー」
ほむらは過去におさげをデフォルトの髪型として過ごしていた時期があったが、そのことは二人には話してはいなかった。
今となってはよくあんな地味なことを、と思う。
大体髪を結ぶのさえ面倒くさいし、歩くたびに揺れる後ろ髪は自分にとっても周囲の人間にとっても邪魔なものであっただろうといまさらながら思う。
(当時の私じゃ考えられないことね)
すっかり変わってしまった自分の感性に対し、半ば自嘲気味に心の中でふっと笑う。
「おさげのまま気取られてもぜんぜん威厳ねーぞ!」
自嘲していたのが顔に出ていたのか、そのほむらの顔を見てもう隠すことすら面倒くさくなった杏子の笑い声が部屋内に響き渡っていた。


558 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:39:45.77
3、二つ結び(ツインでも無くおさげでもないハノカゲ没案)
「これは中々いいんじゃないかしら」
いつものほむらの面影を残しつつ、可愛らしさが増えたような姿である。
近寄りがたい雰囲気も無くなり、ある意味「普通の人」な感じが増えたその姿は普段とは違った印象を二人に与えた。
「でも、これってリボンじゃなくてもいいわけだし、ゴムのほうがいいんじゃねーか」
そう、あくまでもリボンが映えるような姿でないと意味が無い。
そういった意味ではやはりおさげもだめだったのであろう。
しかし、普段の姿もカチューシャをあてればいいだけなのでは、という疑問をマミは抱くのであった。
4、ポニーテール
リボンを二つ私用するのにこだわっていたからいけないのである。
視点を変えてあえてリボン一つでできる髪型もいいのでは、ということで考え付いたのがこれである。
「・・・あまり似合わないわね」
そもそもポニーテール自体は隣にいる杏子のような活発な、機敏な動きをするからこそ映えるのであり、
お世辞にも活発とはいえないほむらには似合わないのも無理は無かった。
「もう満足したでしょう?そろそろ諦めたらどうかしら」
結果はわかりきってたことなのに、と言うほむらに対してマミは引き下がらなかった。
「ま、まだよ。まだ可能性は残されているわ」


559 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:42:34.37
5、マミヘアー
「黒髪で長髪でこれはさすがに似合わねーだろ・・・」
長髪を丁寧に整え、自分と同じような髪型にするのはさすがに一苦労だったらしく、なぜか達成感のある表情をマミはしていた。
杏子はそんなマミを置いておき、ほむらを一瞥する。
明らかに不機嫌そうな顔で両サイドのねじれた髪を揺らしている。
見れば見るほどこれは無い、という思いしか浮かばない。
「うん、さすがにこりゃ無いわ。ってかマミ、もう諦めろよ」
幾多の可能性を確かめてみたが、結果は意味なし。
こうしてマミのほむらイメージチェンジ作戦は失敗したのであった。
6、いつものリボンカチューシャ
いつもの赤いリボンでカチューシャを作り、左で結び止めたその姿はまさにいつもどおりのほむらであった。
「まあ別にその髪形でも悪くないけどな」
特にほむらの髪型に興味の無い杏子に対し、いまいち納得していない様子なのはマミであった。
そもそもリボンでつくるカチューシャと言うのは普通にカチューシャをつけるよりも安定しないうえ、色々と不都合がある。
なのに、普通のカチューシャをつけないでわざわざ赤いリボンをするということは何か意味があるということである。
「そのリボンに何かこだわりがあるのかしら?それとも髪型?」
疑問を投げかけるマミに即座にほむらは答えた。
「両方よ」


561 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:45:59.89
「私だと即座に認識できる髪形といえばこの髪型でしょう?」
普段から長髪をそのまま垂れ流しているので、違う髪型をすると一目見ただけでは自分だと認識されない恐れがある。
一理ある。だがリボンはどうだろう。
自分だと認識してもらうのに髪形だけ普段どおりであればいいのではないか、いちいちリボンをつける意味はあるのか。
そういった疑問を投げかけるマミに対してほむらは少しだけ微笑みながら答える。
「このリボンは私にとって大切なものだから、それ以外に何も無いわ」
外はいつのまにか夜になり、暗くなっていた。
「じゃあ私はここで」
杏子と別れた後、少し時間を置いてからほむらも家路に着くことにした。
しかし、マミに背を向け帰路に着こうとした矢先に背後からのちょっとまって、という声にその足を止められた。
「さっきのリボンのことだけど、もしかしてあなたが前に言っていた・・・」
マミのその言葉にほむらはふと考える。
「あの子」のことを喋る必要もないし、喋ったところでそれが存在するという証明をすることは出来ない。
だったら自分の中でのみ、そのことを持っておくのが無難である。
「さあ?なんのことやら」
そういってほむらはマミに対する返事を濁した。


562 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:49:15.87
夜だというのに空が明るい。
雲ひとつ無い夜空である所為か、星がいつもよりきれいに見える。
そんな夜空をゆっくり眺めながら帰路に着く。
脳裏に浮かぶのは、あの宇宙での「あの子」との会話。
(私の過去も未来も知っているとはいっていたけど、それでも変な格好のまま会うのは、ね)
頭のリボンに触れながら彼女のことを想う。
彼女が渡してくれた、私と彼女の最後のつながり。
(それに、あのとき過ごした時間とは違う格好をしていたら、もしかしたら私を見つけられない事だってあるかもしれない)
概念に人を認識できるできないがあるかどうかはわからない。
でも、それでもいつまでも変わらない姿をしていれば、彼女は自分が暁美ほむらだとすぐに認識することが出来るだろう。
(いつまでも私は変わらない。ずっとあのときの姿のままでいる。)
そういって夜空を見上げる。
「だから心配しないで、いつでも会いに来てね。まどか」
(ほむらちゃん、見ーつけた)
                                        おしまい


564 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/09/10(土) 21:54:57.07
蛇足
「googleで「ほむらちゃん リボン」で検索すると候補に「似合わない」って出るとか許さないよ!」
「でもいつもと違った格好のほむらちゃんもかわいかったなあ」
「ツーサイドアップの可愛らしいほむらちゃんもいいし」
「ポニーテールの活発系美少女のほむらちゃんも良し!」
「マミさんヘアーは・・・困った顔がかわいかった~!」
「でもやっぱり普段の姿が一番だよ、ほむらちゃん!」
「早く宇宙の法則捻じ曲げてでもお互い触れ合えるようになりたいな~なんてね」

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