63スレ/帰る場所-mdhmください

Last-modified: 2014-05-21 (水) 19:15:35
339 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/07/31(水) 00:29:32.46 ID:OaYdaMdx0
mdhmください。


 うだるような暑さを演出していた太陽は沈みかけてなお、執念深く赤い光で世界を照らしていた。

「うーさーぎーおーいしー♪」

 隣を歩いていたまどかが、小声で、緩やかなペースで歌い出す。遠くから響いてくるひぐらしの声。夏の一日の終わりの感傷に、まどかの密やかな歌声が余計に郷愁を誘う。

「わーすーれーがーたきー ふーるーさーとー♪ …ほむらちゃんは、東京に帰りたいって思う?」

 一番を歌い終えたまどかは、急に私に質問をぶつけてきた。

「思わないわ。随分昔の――私にとって、だけど――昔のことになってしまったもの」

 まどかは、そっか、と呟いてから、少しホッとしたように、そしてどこか申し訳なさそうにして、夕暮れの空を見上げた。

「もし私が一人ぼっちで遠い街で暮らすことになっちゃったら、毎日帰ることばっかり考えちゃうんじゃないかなって思うよ」

 私が手をそっと握ると、まどかはどこか陰のある笑顔を私に向けた。

「ふるさとって、何処なのかしら。産まれた土地のことかしら? 両親が暮らしている街かしら?」

 両親という言葉を聞いて、微かにまどかが震える。分かりやすい。でも今は気付かないふりをして、続ける。

「…そんな難しく考えなくても、帰りたいところがふるさとでいいでしょう? 雨につけて、風につけて思い出しちゃうところで、いいじゃない」

 強くまどかの手を引く。抵抗なく私の腕に収まったまどかは、無言で私の胸に顔を埋めた。

「まどかは分り易すぎるわ。もし、私が東京に帰ることになったら、なんて心配でもしたんでしょう。
 それで、本当は行って欲しくないけど、両親と離れて暮らしてる私がかわいそうだから、引き止めたりしちゃいけないって思ったでしょう」

 う゛ー、とくぐもった唸り声を上げるまどか。

「バカね――今、東京に帰ったら…毎日、貴女の夢を見てしまいそう。貴女がつつがなく過ごしているか心配になって。雨が降っても風が吹いても、貴女を思い出して」

 まどかが背に腕を回して、抱き締めてくる。

「きっと、すぐに見滝原に帰ってきてしまうわ。…ふふ。そして、優しい貴女は私を追い返しちゃうかしら。お父さんとお母さんのところに帰ったほうがいいよって。
 そんなことになったら、どうしようかしら。貴女にも味方になってもらえなくて、途方に暮れるわね」

 まどかはぺしぺしと背中を叩いて抗議している。変なこと言い出すからよ。

「私が帰りたいのは、貴女の傍だけよ。…だから、お願いがあります」

 まどかはおずおずと顔を上げる。目は潤んで、鼻の頭を真っ赤にして今にも泣き出しそうな顔。

「私の、かえる場所になって下さい」

 顔をくしゃくしゃにして、まどかはまた顔を伏せてしまった。それでも、私の腕の中で何度も頷いてから、言った。

「ほむらちゃんも…ほむらちゃんも、私の帰る場所になって欲しい…」
「あら。まどかの家族を差し置いて、いいのかしら」

 自分で言ったことが恥ずかしくて、ついついからかうような口調になってしまう。またまどかがうーうーと背中を叩きだす。

「冗談よ、ごめんなさい。何があっても…例え、世界中の何処にも貴女の帰る場所がなくても、私だけはずっと――貴女の帰る場所で居るから」

 夕闇に覆われていく空の下、私は帰りたい場所に居た。


もっとmdhm書きますから、もっとmdhmください。お願いします。なんでもいいです。ちょっとした妄想でもなんでもいいのでください。

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