498 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/09/19(木) 22:44:54.45 ID:IrKrDw4S0
mdhmください。
満月を見る度、思い出す。
その時私は外の満月なんて見る余裕は無く、ワルプルギスの夜に向けて手持ちの材料で自己鍛造弾を作り出せないかとテロリストまがいの作業に集中していた。
警察に踏み込まれれば言い訳の効かないそんな物騒な部屋に、不意にチャイムの音が響いた。
22時を回った時刻に部屋を訪ねてくる相手に心当たりはなく、気のせいか部屋を間違えているのだろうと無視を決め込もうとしたけれど、執拗に続くチャイムに根負けした私は、少々不機嫌気味にドアへ向けて誰何した。
「ごめんねこんな時間に、まど」
「鹿目さん!? どうしたのこんな時間に!?」
「ドア開けるの速いね、ほむらちゃん…」
名乗りを上げている途中で勢い良く開いた扉に、まどかは苦笑いしていた。だって、貴女の声だってすぐに分かったもの。
「お月見しようよ、ほむらちゃん」
仄暗いマンションの廊下で、まどかはそう言って微笑んだ。
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「…ごめんね、別にこんな高いところじゃなくても良かったよね」
「う、ううん。ちょっと、大変だったけど」
誘われるままにまどかに付いて行った先は、近くで一番高いビルの屋上だった。
屋上からビルの中へ通じるドアの前には簡易な柵が置いてあり、ここが立入禁止なのだと語っていたが、私達は人気の無い裏手から建物の壁を蹴るようにして登った。
魔法の無駄遣い。その時はまだ、魔力を無駄に使い尽くした魔法少女の行き着く先なんて、知りもしなかった。
「ああ、きれいだね」
屋上には月のあかりだけで私達の影が出来ていた。白く透明な光を見つめながら、私達は他愛もない話をした。
ウサギの撞いたお餅の味についてとか。
ふたりとも月見団子を食べた経験がないとか。
来月はマミさんも誘って、月見団子をみんなで作ろうとか。
果たして月見団子は、秋じゃなくても食べていいのかとか。
「じゃあ、秋までおあずけだね」
月に照らされてクスクスと笑うまどかは本当に綺麗で。私は思わず地面に目を向けて、きれいだと呟いた。
「うん、ホントに綺麗だね」
まどかは月の話だと捉えたようだった。少しだけホッとしつつも、まどかと面を向かって言えない自分が情けないようなもどかしいような、そんな気持ちになった。
「私、こっそりウチを抜け出して来ちゃったから、あんまり遅くなると危ないかも。そろそろ帰ろっか」
まどかは残念そうにそう言った。
「来月も、一緒にお月見しようね」
「うん」
「秋には、お団子もね」
「うん」
私達はその時、できる限り未来の話題を口にしていた。まどかの月見の誘いは、ワルプルギスの夜への不安から来たものだったのだろう。
そしてその時私もまた、目の前に居る彼女を守り抜いて、その先にある未来を信じたかった。
だから私はその時、来月こそは、彼女の目を見つめながら綺麗だと言ってみせようと決意をした。
もう少し続ける予定だったけどここで終わったほうが綺麗な気もします。mdhmください。
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