7スレ/ほむら「・・・39,9℃か」

Last-modified: 2014-04-06 (日) 04:17:44
649 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:33:33.55
妄想投下します
以下連投お許しくださいませ
―――
「・・・39,9℃か」
ぼんやりとした頭でほむらは体温計を見る。
身体はサウナに入っているときのように火照り、視界もなんだか捻じ曲がっている。
立ち続けるのにも困難なそれは明らかに体調不良だとわかるものであった。
こんな調子では日常生活を送ることもままならない。
そのため、本日の学校は欠席ということになりそうだ。
やることといえばクラスの担任に電話を入れるくらいだろうか。
おぼつかない足取りでほむらは電話の置いてあるところへと歩いていった。
「・・・さて、電話もしたし安静にしてないと」
ふらふらする頭をしっかりとさせながらも、やるべきことはやった。
普段ならお腹が悲鳴を上げてもおかしくない時間帯なのだが、体調不良の為食欲もわかない。
睡眠をとって安静にするしか、ほかにやることは無かった。
だが、朝起きた後にまた寝るというのは中々困難である。
しかも眠気などすっかり飛んでしまった後ならなおさらだ。
睡眠不足の人であればすぐ寝ることが出来るのだろうが、あいにくほむらは睡眠管理を徹底しているため、
普段から日中に眠気というものを感じていない。
何もしないでただ横になっているだけというのは限りなく、むなしい。
そして、風邪をひいているときは酷く心細い気持ちになっていくものである。
まさに今、ほむらはその心細さに苛まれていた。
(こうやって何もしないで横になるのは久しぶりね・・・)
ほむらは何もしないで横になるという体験を心臓病のときに腐るほど経験していた。
しかし、逆に言えばそのとき以来こうしたことは無かったのである。


650 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:34:22.04
当時は雑誌を読むことも出来たし、看護婦や医師もいた。
呼べばだれかが真っ先に駆けつけてきて、その気になれば話し相手にもなってくれる。
今回は誰一人ほむらの状況を知るものがいない。
気を紛らわすことも、うまく動かない身体とぼんやりする頭のせいでできず、
何もすることが出来ない無力な自分を励ましてくれる人も、心配してくれる人も、いない。
それが心細さの原因だろうか。
(普段ならなんとも無いのに、どうかしてる)
自分でも理解できない感情にほむらはうっすらと涙が浮かべた。
この涙はおそらく風邪による感情の乱れのせいだと言い聞かせ、なんとか涙を抑えようとしたが、不可能だった。
そんな中、ほむらの頭に浮かぶのは、彼女だけがその存在を覚えている、桃色の髪の子。
今はもう触れることもできないし、通じ合うこともできていない。
孤独を味わう今しがた、脳裏に浮かぶのは鹿目まどかの姿だった。
「まどか・・・」
涙がいつのまにか零れ落ちていたが、気にする余裕などほむらには無かった。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
あまりにも酷い気だるさのせいか、今起きているのか眠っているのかさえわからない。
ぼんやりとした頭がかたくなに身体を動かすことを拒否していた。
そんな夢心地のときであった。


651 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:35:29.06
「ほむらちゃん、無理しちゃって・・・大丈夫かな」
ほむらを呼ぶその声に目を見開く。
聞こえたのは忘れもしない、まどかの声であった。
今はもう概念となってしまった、彼女の声。
それは昔と変わらずほむらを癒してくれるそれであった。
しかし、声が聞こえることは理論的にはありえない。なぜなら彼女はもう存在するものではないから。
おそらく風邪を引いたことによって脳が誤作動を起こしていることによる幻聴か何かであろう。
ほむらは戸惑いながらも、変に期待をしている頭を落ち着かせようとしていた。
「ほむらちゃん、最近無理しすぎたんだね。そういえば昨日から気分悪そうだったなあ」
有り得ないことが続くと人は混乱してどうしようもなくなる。
ほむらは再度聞こえたその声に無理やり身体を起こし、辺りを見回す。
その目に映るのは、相変わらずこじんまりとした4畳半の部屋。まどかの姿は無い。
しかし、動かされた心はもう止まらなかった。


652 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:36:00.68
「まどか?どこにいるの?いるんでしょう?」
何かを探るような様子であたりをふらつく。
確かに聞こえた、まどかの声。
この身体がある限りはもう聞くことが出来ないと思っていた、彼女の声。
そうしてまどかを捜し求めているときにも、ほむらの耳に声は届く。
え?え?と戸惑っている様子が伺えるその声はこちらに聞こえていること事体が想定外だと感じられる。
「こ、声が届いたの・・・?ほむらちゃん、この声聞こえる?」
間違いなくまどかはそこにいる。
姿は見えなくても、自分を認識して喋ってくれている。
「まどか、あなたの声、聞こえるよ」
涙声になりながらもまどかと通じ合えていることを確かめる。
何故聞こえることが出来るのかはほむらにはわからない。
今の身体は風邪のせいで正常な判断が出来ないでいるかもしれない。
だから、もしかしたら都合のよい幻聴なのかもしれないけれど。
たが、どうかこれが夢ではなく、現実のものであってほしいということ願うばかりであった。
「と、とりあえずは布団に戻ろう?そんなふらふらしたままじゃ危ないし。それに私はここにいるから、ね?」
まどかのその声に促されて、とりあえずほむらは布団に戻ることにした。


654 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:39:27.87
本当は永遠にこのままでいたい。
もし、次に目を覚ましたらまたまどかの声が聞こえなくなる。
そんなの嫌だ。
ほむらがそう考えたときだった。
「大丈夫。もしまた通じ合えなくなったとしても、いつも私はこうしてほむらちゃんのそばにいるから。いつでも一緒だよ。」
まどかには考えが読まれている。
ほむらはかなわないな、と思いつつ、まどかの言うとおりに眠りにつく体勢を整えた。
しかし、いつ意識が飛んでもおかしくない状態の中、たった一つだけまどかに願うことがほむらにはあった。
「ねえ、まどか・・・私が寝るまで、声をかけ続けてくれないかしら・・・?」
既に目を閉じたままいかにももう寝るぞという様子を発しているのだが、その声は懇願めいたものだった。
その姿は、普段のほむらの雰囲気からは伺うことが出来ない歳相応の子供めいたものであった。
まどかは、そんなほむらの姿がたまらなくて、とても愛しかった。
「うん、いいよ。お休み、ほむらちゃん」
まどかは喋り続ける。円環の理に導いた魔法少女のこと、概念と化してからの自分の変化、
かつての仲間だった杏子やマミの最近の様子なども、
「鹿目まどか」がいかにも其処にいるかのように、ほむらのそばで語りかける。
自然とまどかの手は、子供を落ち着かせようとする母親の動きのものとなっていた。
ゆっくりと、ゆっくりと背中を撫でるような動き。
触れることは出来ないのだが、それでもその動きを止めることは無かった。
まどかの声は、喋っているだけで子守歌のようになる。
ほむらはまどかのその優しい声に包まれながら眠りについた。
その寝顔は、幸せに満ち溢れているものであった。
まどかはほむらが眠りについたことを確認すると顔をなでながら微笑み、言葉を発した。
「お疲れ様、ほむらちゃん」


655 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:41:47.07
ほむらが目が覚めると、夜となっていた。
身体のだるさも消え、どうやら熱が下がったと実感できるのであった。
まどか、と声をかけても返事が返ってくることない。
沈みそうになる気分をまどかの言っていた言葉で落ち着かせる。
(いつも、私はこうしてほむらちゃんのそばにいるから)
もう、孤独は感じない。
だっていつもまどかがそばにいてくれるのだから。
常にまどかの優しさに包まれている。それがほむらにとってどんなに救われていることか。
それが堪らなく、うれしかった。
そして、早朝のような情けない姿をしてたら、きっとまどかは悲しむだろう。
「私、頑張るからね、まどか」
頭にリボンを結びつけながらそう決意したのであった。
その顔は、もうくじけることの無いいつもの顔である。
そして、ほむらは行動を開始した。
まどかが「其処にいた」という証拠を確かめるために―
(頑張ってね!ほむらちゃん!)


656 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/10/10(月) 20:46:13.75
以上です。ありがとうございました
BD6巻購入して以下の文章を見たことで突発的に妄想したものでした
彼女の物語が終わりを告げても、この世界は続いてゆく。
ここが悲しみの途絶えない世界だとしても。
託された想いを胸に、歩きつづけよう。
思いっきりまどかとほむらの関係を表していて転げまわってしまった
切ないけどだがそれがいい

http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1316610084/649-656 (リンク切れ)