77スレ/ここに

Last-modified: 2014-06-03 (火) 02:02:06
555 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/11/13(水) 18:53:45.28 ID:70Hdhz7O0
時々、私は夢を見た。
まどかがいなくなる夢を。
何処を探したってまどかはいなくって、誰もがまどかの存在を知らなくて。

まどかが、私の中ですら消えてしまう、そんな恐ろしい夢を。

そんな夢を見て目覚めた朝、私はいつも泣いた。
けれどいつしか泣くことにすら疲れて、ただまどかのことをぼんやりと思い描いた。
私の中のあなたはいつもとても強くて優しい。優しくて時々つらかった。

まどかは、いつも優しく、「ほむらちゃん」と呼ぶ。
――あなたのことを忘れてしまう私に。なにも変わらずに。

「……ほむらちゃん?」

世界は暗闇だった。けれどまどかの声が聞こえた途端、私の世界に突然光が差し込まれた。
隣で眠っていたまどかが、どこか驚いたような顔をして私を見ていた。

「どうしたの?大丈夫?すごくうなされてたよ」

私は安堵する。
まどかがいる。ここにいる。

「大丈夫よ。心配させてごめんなさい」

ううん、とまどかは首を振った。そうして、私の頬へと手を伸ばす。涙を、拭ってゆく。


559 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/11/13(水) 18:56:55.27 ID:70Hdhz7O0
「どんな夢を見てたの?」
「……忘れてしまったわ」

訊ねてくるまどかに、私はそう返した。
あなたがいない世界は終わった。これからはずっと、私はあなたと共に過ごすのだ。ずっとずっと、それが続いていくのだ。そうに決まっている。

「……うそ」
「嘘なんかじゃないわ」
「だって、ほむらちゃん、また泣いてるよ」

今度はそっと、目許から涙を掬われた。
私は耐えられなくなって、まどかから目を逸らして。そうしたら、まどかに引き寄せられ抱き締められる。

「まどか……ねえ、まどか。もう何処にも行かないでくれる?」

え、とまどかが困惑したような声になったのがわかる。
それでも私は止められなかった。

「お願い。もう、手の届かない場所になんて行かないでね、まどか」

何処にも行かないで――
もうあんなに身が裂けるような苦しい思いは、嫌なの。もう二度と、あなたを失いたくなんてない。
あなたを守り通すためなら、他になにを失っても構わないから。


560 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/11/13(水) 18:59:06.96 ID:70Hdhz7O0
「……ほむらちゃん、見て。今日は雪みたいだよ」

まどかの胸に抱かれて泣いていた私は、まどかのそんな言葉で視線を窓の外へと向けた。
雪がしんしんと、降り積もっていた。

「……えぇ、そうね」
「大丈夫だよ、ほむらちゃん。この雪が全部止んでとけて春になったって、わたしはちゃんとここにいるよ」

何処にも行ったりなんか、しないよ。

降り積もる雪よりも静かに、まどかはそう言った。
鎮みかけていた気持ちがまた、大きく揺さぶられた。

銀色の世界はやさしい。「寒いね」と言ってまどかがもっともっと優しく抱き締めてくれるから。
私はそんなまどかに甘えるみたいに、まどかを抱き締め返した。
まどかがここにいる。もう、何処にも行かないで――ここにいる。

http://hello.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1384169584/555
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1384169584/559-560