89スレ/叛逆後mdhm妄想

Last-modified: 2014-07-07 (月) 17:47:27
16 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/01/17(金) 01:35:47.51 ID:x+4AnDpL0
むしゃくしゃしてやった。特に反省はしていない。

ttp://ux.getuploader.com/homumado/download/530/%E5%8F%9B%E9%80%86%E5%BE%8Cmdhm%E5%A6%84%E6%83%B3.txt

http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1389888850/16

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目が覚めて最初に見えたものは見慣れた天井だった。
かつて繰り返された地獄のような一ヶ月。
その始まりは必ずこの病院のベッドだった。

「ここから、始めるのね」

あの悪夢の終着は、最愛の友の、世界からの消失だった。
私以外の誰の記憶からも消え、世界に触れられるのは今まさに最後を迎える瞬間の魔法少女にだけ。
それ以外は例え家族であろうとも記憶も認識もできない絶対の孤独。
私は彼女のそんな運命を、そして彼女をそう追い込んだ私自身を許せず、その祈りを踏みにじった。

彼女に、人としての幸せを。

人としての生を全うした後どうなるか、それは私にも判らなかった。
輪廻の輪に飲まれて彼女としては消滅するのか、魂が円環に呼び戻されるのか。
前者であって欲しかったが、後者であっても彼女の幸せを守れたならばまだ納得がいく。
最も、今となってはどちらであるか最早確かめようが無い。

私は、私自身の幸せなど求めていなかった。
より正確にいえば、私にとっての一番幸せな形を、私自身が許すことが出来なかった。
彼女が幸せに生きるその側に、私が共に寄り添って生きる。
彼女の祈りを己の自己満足のために踏みにじった私が、そんな幸せを享受して良い筈がない。
私が自分に許せる幸せは、彼女の幸せを、無関係なところで、ただ見守るだけ。
それで十分私は幸せだったし、一番の幸せに手を伸ばせない苦しみは、私が負うべき償いであり、その苦しみもまた私の幸せだった。

だというのに。

彼女はそんな私の『幸せ』を許さなかった。
私の予言のとおり、彼女は私の『敵』となった。
「欲望よりも秩序が大切だ」などと言っておきながら、彼女は私を放っておくことをしなかった。
真実の記憶など持たないままに、私がいくら逃げ回ろうと、どれだけ冷たく突き放そうと、彼女は私に関わろうとし続けた。
『神』とも違う、かつての姿を取り戻そうとするように。

「ほむらちゃんが泣いてるのに、私が幸せになれるはずがない」

あれだけ彼女を踏みにじった私を、消滅させられることを覚悟していた私を。
記憶が無くとも救おうとするその姿は、私にとって何よりも恐ろしい『敵』だった。
そして真実を取り戻してなお差し伸べられた手に、私が敵うはずが無かった。


「二人が納得できる道を、一緒に探そう」


彼女の優しさに抱かれて、私はみっともなく、泣いた。



結論から言うと、結末はあまりにも二人に都合よくついた。
一度私が引き剥がした事が幸いし、彼女は『化身』の情報を手に入れることができた。
私もまた円環の力を一部取り込んだことで概念の感覚を掴み、彼女の領域に独立して存在し、支えることが出来るようになった。
結果として私達は『二人で宇宙を支える』事で負担を分散することで、人間としての自分を下ろすことが出来るようになった。
『円環の理による救済の完全なる復活』と『彼女の人としての幸せ』。
両立し得ないと思っていた私達の祈りは、あまりにもあっけなく『いいとこ取り』出来たのだ。
魔法少女と魔獣のあり方にも多少の手を加え、宇宙の再編は、ほんの少しだけ優しく、安定した形で成された。
そして私は目覚める。
この宇宙での『暁美ほむら』として。
最愛の友『鹿目まどか』と再び出会うために。






「おはよう、ほむらちゃん」

私の目覚めを知ると同時に呼びかけてくる声があった。
その声を聞くだけで私の心に暖かさが籠もる、愛しい声。
そう、最愛の友、『鹿目まど……

「ってまどか!?」

「そうだよ、ほむらちゃん」

起き抜けにまどか。私にとっては間違いなくご褒美ではあるが、私の知る限りこの時点で私とまどかの接点は無いはずだ。
説明とか色々面倒なので正式に接点を持つまで少しの間接触を控える予定だったはずだけど……。

「お、ほむらちゃん起きたかい」

「あ、ママ。うん、さっき起きたとこだよ」

あの人は、確かまどかの……え?何故あの人がここに?

「あー、お、おはよう、ございます?」

とりあえず挨拶をしなければ、などと考えて見たが、混乱に引きずられてそれすら上手くいかない。
一体何が起きているというのか。

「おはよう。と言ってももうお昼だけどね。外出の許可は貰ってるから、午後の検査が終わったら出かけるよ」

……はい?
ちょっと待って。私が詢子さんと出かける?何故そんな話が?
と言うか『女神』の記憶があるまどかですらいる予定が無かったはずなのに何故この時の詢子さんが私を知っているんだろう。

「あれ?言ってなかったっけ?退院を機にまどかの婚約者を下宿させるってんだから、日用品とか色々選んでもらって買っとこうって思ってたんだけど」

「こっ!?」

予想外の言葉にあっという間に顔が赤くなるのがわかった。
と言うか話が色々おかしい。日本は同性婚を認めていない。
一番初めの宇宙からまどかによる改変、私による再改変、その全ての宇宙で日本は同性婚を認めていない。
大事なことなので二回言った。
なのに何故私がまどかの婚約者なのだ。
嬉しいけど。嬉しいけど。とっても嬉しいけど。
大事なことなので三回(ry。

「おーおー真っ赤になっちゃってまぁ可愛いねぇ。旦那がいなかったら私が嫁にしたいぐらいだよ」

「もうママ!ほむらちゃんは私のお嫁さんだよ!」

ほむらちゃんは私のお嫁さんだよ!
なんという甘美な響き。だけどおかしい。なんでこうなっている。

「はいはい解ってるって。まどかは本当にほむらちゃんが好きだねぇ」

ドッキリか?ドッキリなのか?私はもしかして担がれているのか?
そこまで考えて私は一つの可能性に思い当たった。
宇宙の三度の改変の際、私に隠れて何かゴソゴソやっている子に心当たりがあったのだ。
あの時は深く追求しなかったが、もしや……。

《……まどか?》

テレパシーと共に半目でじっと見つめると、あの子はすいっと目線を逸らして

《……ウェヒヒ》

決まりだ。この子の仕業だ。私に黙ってこんな物を仕込んでいたのだこの女神様は。

《まったく、しょうがない子ね貴方は》

《ほむらちゃんをびっくりさせたくって、つい内緒にしちゃったの。ごめんね?》

あぁ、やっぱり私はこの子には敵わない。
惚れたら負けと言う言葉の意味を強く噛み締めた。
幸せにしよう。二人で幸せになろう。
この子が本心からそれを望むのなら、私はそれを叶えよう。
いつか行うであろう二人の結婚式の様子を夢想して、その幸せを噛み締めながら、私はそう強く誓った。
そうして私とまどかの物語は、婚約者同士という思いもよらない形で、再び始まったのだ。