メイン/童貞男子高生part1

Last-modified: 2013-06-29 (土) 20:37:09

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000

休み時間、教室の片隅で、いつものメンバーで集まってバカ話。

 

男1「お前達は何者だ!」
男他「童貞男子高生です!」
男1「声が小さい! お前達は何者だ!」
男他「ドーテー! ダンシコーセー! です!」
男1「お前達がしたいことは何だ!」
男他「ファック! ファック! ファック!」
男1「つづりを言ってみろ!」
男他「エフ、ユー、シー、ケー! エフ、ユー、シー、ケー!」

 

大昔…80年以上前…の戦争映画の真似だ。視点変更もできない、3D対応でもない、ただの平面スクリーンという時代の映画。残酷な表現があるため、電子教科書で再生することはできない。
誰かの家に3人で集まると、BGMがわりにこの映画を壁に表示しておく奴がいる。だから、いつの間にかセリフをほとんど覚えてしまった。

 

反対側では、女子たちが話している。犬の糞でも見るように。

 

女1「なにあれ。きもい。」
女2「気にしたら負けだよ。いつものことだから。」

 

男1 は芝居がかった態度で歩きながら言う。

 

男1「クズども、よく聞け! 会話は言葉のキャッチボールなどではない! 言葉のサンドバッグだ! おいおまえ、理解できるか!」
男2「サー、ノー、サー!」
男1「女はおまえらナメクジどもと「会話」しようなどと思っていない! 女はおまえらに一方的に言葉を投げつける! 男はその言葉に答えるのではなく、次の言葉を促さねばならない! つまり! 男は、適度な弾力の殴りやすいサンドバッグのように、女が次々に言葉を繰り出せるよう、相槌をうち、軽い質問を挟む! 議論や問題解決は求められていない! サンドバッグは反撃しない! わかったか!」
男2「サー、イエッサー!」

 

001

男1「お前達は何者だ!」
男他「童貞男子高生です!」
男1「お前達がしたいことは何だ!」
男他「ファック! ファック! ファック!」

 

休み時間。電子教科書の時代だというのに、当番が黒板を消している。金持ちの私立では黒板も電子化されてるところがあるというが。
騒がしい教室。なかでも騒がしく痛々しいのが、この連中。

 

男1「好きな女と話すチャンスを得たら、貴様なら何を話す? 言ってみろ!」
男2「イエッサー! 自分の得意なスポーツについてであります!」
男1「お前は両生類のクソ以下だ! 次! お前なら何を話す?」
男3「サー! 自分の好きな音楽についてであります!」
男1「ふざけるな! ナメクジのファックのほうが気合入ってるぞ!」

 

男1「女はお前らウジ虫のことなど聞きたくない! ウジ虫がどんなクソを食ったという自慢話など聞きたくない! 女は自分自身のことを話したいのだ! 会話はサンドバッグだ! 忘れたか! お前の頭蓋骨にはクソが詰まってるのか!」
男2「サー、ノー、サー!」
男1「女の持ち物を褒めろ! 女の持ち物について聞け! 女の特技を褒めろ! 女の特技を聞け! 女を褒めろ、同意しろ、質問しろ! お前のことなど話すな! わかったか!」
男他「サー、イエッサー!」

 

002

男1「お前達は何者だ!」
男他「童貞男子高生です!」
男1「お前達がしたいことは何だ!」
男他「ファック! ファック! ファック!」

 

生物の授業のあと。
授業では「イン・シリコ」ってやつを習った。各自の電子教科書のなかで、バーチャルな大腸菌をいろいろな条件で飼育し、遺伝子の変化を見る、という実験だった。
大学では、もっと計算機リソースを使ったり、もっとモデルを簡略化して、性生殖する生物のシミュレーションもできるらしい。
そんな授業のあとだから。

 

男1「頭蓋骨の中のクソに刻んでおけ! 選択権は常に女が持っている! お前たちクズどもがどんなに頑張って腐った臭いを放っても、雌犬の鼻がイエスと言わないかぎり、お前にはクソほどの価値もない! 男にできることは、女にしゃべらせ、女を気づかい、女を手伝い、やがて自分が選ばれるのを待つだけだ! わかったか!」
男他「サーイエッサー!」
男1「さらに憶えておけ! お前がクソの塔として最大限に、女の話を聞き、女の長所を見つけ、女が困っているときに助けたとしても…結局…女がお前を…選ぶとは…限らない…」
男2「おいおい、素に戻るなよ、つーか泣くなよ」
男1「泣いてねーよ! く、口でクソたれる前にサーと言え!」
男3「サー…イエッサー!」

 

女1「あ、静かになった。」
女2「あいつらがおとなしくしてるとキモイネー。」
女3 (ごめんね、男1君…あのとき、あなたが私のこと好きだってこと、気づいてたけど…私が好きな人は、やっぱり、あなたじゃなくて、あの人なの…!)

 

003

男2「サーイエッサー!」
男3「サーイエッサー!

 

コール・アンド・レスポンスが、休み時間の教室にこだまする。
県立高校に通う男たちが、今日も獣のような飢えた瞳で、錆びついた門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身 (泣) を包むのは、着崩した制服。
女子のスカートは覗かないように、白い襟元から胸を覗き込まないように、
ゆっくりと性欲を持て余すのがここでのたしなみ。
もちろん、影でコソコソ彼女を作るなどといった、はしたない隊員など存在していようはずもない。」

 

男1「ふざけるな! なんだこのクソみたいなイントロは! タマ落としたか!」
男3「えー、反応薄い…」
男2「ムリだって、こいつは平成文学なんて読まねーよ」

 

男1「黙れクソども! この集計を見てみろ! 女が求めているものは、男の友人だ! 女友達でもなく、彼氏でもなく! そして、女にとって理想的な、男の「友達」とは何か、わかるか!」
男2「サー、ネガティブ、サー!」
男1「それは、その女に対して性欲を表さず、筋力や背の高さを使って女をさりげなく手伝い、さらに、性欲のカケラもみせずに会話できる男だ! お前にそれができるか!」
男3「サー、ネガティブ、サー!」
男1「つまり! 性欲を完全に隠し! 女に奉仕し! 女が自分を選んでくれるのを待つ! 男と女の2人きりでホテルに泊まったとしても、指一本すら触れずにいられるような男だ! その上、女があちこちの男を味見したとしても、「友達」であるから奉仕を続けなければならない! これが、このコメントから読み取れる、女にとって理想的な「男の友達」だ! わかったかクズども!」
男他「サーイエッサー!」

 

女3 (いやいやいや、私そこまでヒドいことはしてないよ?!)

 

004

男1「お前達は何者だ!」
男他「童貞男子高生です!」
男1「お前達がしたいことは何だ!」
男他「ファック! ファック! ファック!」

 

数学 で statistics をやったあとの休み時間。
数学と理科の授業は英語で行われる。数学の先生は、ひどいカタカナ発音だった。だが、そのおかげで、同じくカタカナの国の生徒は助かる。
そして、いつもの男子グループ。

 

男1「顔の良さ、背の高さ、服のセンス、そういった人それぞれの特性が、すべて ノーマル・ディストリビューション であると仮定する! ある特性について、ミーン・マイナス・ワンシグマ 以上である奴は、全体の何パーセントだ!」
男2「サー、68…じゃなくて…84%であります、サー!」
男1「よし! もうひとつ仮定する! それぞれの特性は独立だとする! つまり、顔が良い奴は背も高い、のような相関関係はない、と仮定する! わかるか!」
男3「サー、イエッサー!」
男1「このとき、2つの特性がミーン・マイナス・ワンシグマ以上である確率はいくつだ? 3つの特性が、4つの特性が、そして n個の特性がミーン・マイナス・ワンシグマ以上である確率は! 答えろ!」
男2「えーと、サー、0.84 の n乗であります!」
男1「その通り! 俺の家に来てAR妹をファックしていいぞ!」

 

男1が電子教科書を開き、画面を数回操作し、何かのアンケート結果らしき画面を出す。

 

男1「見ろ! これは、女が、彼氏にするなら最低限、これらの項目が平均以上でないとダメ、と思っているものを、複数回答で集計したものだ。項目は例えば…顔の良さ・身長・服のセンス・優しさ・誠実さ・教養・収入・家事・手先の器用さ・趣味が合う…などだ。ここで問題なのは、女が、平均して「いくつの」項目にチェックを入れたか、だ! このアンケートでは、平均的な女は 約 8項目にチェックを入れている! 0.84 の 8乗は…0.25! つまり、平均的な女は、彼氏は「ふつうでいい」と言いつつ、実際には 4人にひとりレベルの良い男を求めているのだ!」
男2「サー! 質問があります!」
男1「許可する!」
男2「この計算では、マイナス・ワンシグマ以上、つまり「中の下」なら OKと仮定しました。現実にはもっと厳しいと思われます!」
男1「なんだと? スキンのまま生まれたクソバカか? お前の考えを言ってみろ!」
男2「オレは、平均以上、というのは、まさにミーンバリュー以上を意味すると考えます。つまり、ある特性について平均以上である確率は 50% であります! ここから計算すると、平均的な女が求める「ふつうの」彼氏というのは、二分の一の8乗…256人にひとりの男! いわば貴公子! そこまで到達してようやく、「ふつうの」彼氏であると!」

 

男1「…そうだよな…マイナス・ワン・シグマなんて、まだ甘いよな…」
男3「4人に一人どころか、256人に一人、か…」
男2「絶望した…」

 

女1「えー? 彼氏は普通の人でいいよ。普通の顔で、普通の身長で、普通の服を着て、普通に性格が良くて、普通に頭が良くて、あと絶対に浮気しなければ、まあ合格点じゃない? ほら、私って庶民派だから、そんなに高望みしないよ。」
女2「そうだよねー、なんでうちの学校の男子って、こんな簡単な条件を全部クリアできないんだろ。これじゃ学校で彼氏なんて見つからないわー。」

 

005

男1「お前達は何者だ!」
男他「ドーテー! ダンシコーセー! です!」

 

男1が電子教科書で何かの記事を表示させる。
電子教科書でもネットの記事はだいたい読める。しかし、性・虐殺・犯罪に関する記事は、ほとんどブロックされる。例えば、犯罪の「件数」は読めるが、犯罪の「詳しい内容」は読めない、といったぐあい。
もっとも、そういう記事を見たければ、教科書じゃなくて市販の電子書籍を使い、ちょっとカスタマイズすればいいだけで。
「こどもを有害情報から守れ!」という人たちに対しては、「ちゃんとフィルタしてますよ」と答える。
「全人類にあらゆる情報への自由なアクセスを!」という人たちに対しては、抜け穴を黙認する。
これが日本の伝統芸能、二枚舌 (ダブル・スピーク)。

 

男1が探してきた記事は…

 

男1「このデータを見ろ! 「タイプではない男と付き合ったことがありますか」というアンケートの結果だ! YESと答えたのは25%! 四分の一だ! 次に、YESと答えた人に「タイプではない男と付き合って、うまくいきましたか」という設問だ…これにYESと答えたのは約三分の一だ! この2つが独立であると仮定する! つまり、好みのタイプ以外の男と付き合ってみるという性格特性と、その付き合いをうまくいかせる性格特性に、相関関係はないと仮定する! すると、女から見て、好みのタイプではない男から告られて、付き合って、うまくいく確率はいくつだ! 答えろ!」
男2「サー、12分の1であります!」
男1「そう、まるで、そびえ立つクソだ! もしお前が、クソの詰まった頭蓋骨から勇気を振り絞って、女に告ったとする! すると女は、お前はタイプじゃない、と断る! それでも諦めないのは、12分の1の賭けを続けて全財産をスるようなものだ! お前! 告って断られたら、どうする!」
男3「サー、諦めます!」
男1「クビ切り落としてクソ流し込むぞ! 確かに、女なんて、他にもたくさんいる…男よりは 4%ほど少ないがな! 諦めて他の女を探したほうがいい…12分の11だ…それはわかってるんだ…」
男2「そう…だな…」
男3「簡単にはいかない、か…」

 

女1&女2「めそめそしてキモイネー」

 

006

男1「お前達は何者だ!」
男他「ドーテー! ダンシコーセー! です!」

 

男1「復習だ! 会話は○○だ! ○○を埋めてみろ!」
男2「サー! 会話は言葉のデッドボールだ、であります!」
男1「ぷっ…くくく…(笑)」
男3「あ、ツボに入ったらしい」

 

さっきの授業は体育だった。今日は雨だったので体育館。
男子はこっちで卓球。
女子はあっちで護身術。人間型のサンドバッグの股間を 思いっきり 蹴り上げる、ということをやってるのが見えた。

 

男1「会話はサンドバッグだ! お前、この意味を説明してみろ!」
男3「サー! 男は、女の言葉を受け止めるサンドバッグになれ、ということであります! つまり男が発するのは相槌と質問だけで、おもに話をするのは女のほうであるべきだ、という意味であります!」
男1「気に入った! 俺の家に来てAR妹をファックしていいぞ! しかし、ここにもブービートラップが仕掛けられている!」

 

無言で、男2と男3が目を合わせる。わからない、という表情をする。
数秒の沈黙のあと、男1が続ける。

 

男1「女をしゃべらせるために、男が質問する…それはいい! しかし! 尋問になってはダメだ、ということだ! 忘れるな! 男が質問を挟むのは、女から情報を引き出すためではない! 女が気持ちよくおしゃべりするためだ! よって、男は、女の口調や表情から、女が何について話したいかを察知し、女が話したいことについて質問する必要がある! 女が髪型についてしゃべりたそうにしていれば、髪型について質問しろ! 女が髪型について話したくなさそうなら、髪型について質問するな! わかったか!」
男2「サー、イエッサー!」

 

007

男1「お前達は何者だ!」
男他「童貞男子高生です!」
男1「お前達がしたいことは何だ!」
男他「F U C K ! F U C K ! F U C K !」

 

男1「こんな調査がある…雑談や日記をネットから収集する! その文字列をもとに、著者の性別を推測する! 収集テキストを解析し、著者が、ある異性を認識してから その異性に好意的な興味を持つまでの時間を算出する! その時間を性別ごとに集計する! お前、意味がわかるか!」
男2「サー、イエッサー! 例えば、ある男が、ある女と知り合ってから、その女が「気になり」始めるまでの時間を集計した、ということであります! フリーウェアと、ちょっとしたスクリプトでできそうだ。」
男1「その通り!」

 

電子教科書に TeRA (テラ) のロゴが出る。TeRA は記事の信憑性が低いときに警告を出すためのソフトだが、他にもいろいろな機能がある。例えば、記事の文章をもとに、その著者が男か女かを判定する機能。

 

男1「結果は…このグラフのとおりだ! 男は平均3週間! これに対し、女は平均6ヶ月! つまり、男と女のあいだには、好意の「加速度」に圧倒的な差がある! ということだ!」
男3「なるほどねー、たしかにそんな気がする。で、「そんな気がする」をデータで実証したわけだ。」
男1「だな。おっと、口でクソたれる前に以下略!」
男2「でもこれは単に…サー! 相関関係を示しただけであります! 因果関係ではありません!」
男1「その通り! しかし! 男にエストロゲンを投与して、恋愛の加速度が遅くなるかどうか、実験するわけにもいかない!」
男2「サー! では、女にアンドロゲンを投与すれば、なかなか親展しないカップルを加速できるのでは!」
男1「おフェラ豚か? ヒゲが生えた女のチソポを吸いたければ、その方法もいいだろう!」

 

教室の反対側で、女子グループが小声で話している。

 

女1「あのね…朝の電車でよく見かける人がいてね、たぶん大学生だと思うんだけど、ちょっと素敵だなって思ってるの。」
女2「うんうん、それで、いつ頃から気になってるわけ?」
女1「えとね、入学して間もなくだから、まだ二年たってない。」
女2「あ、大事なことを聞き忘れてた。その人って男? 女?」
女1「男だよ! …だと思う…たぶん…」

 

008

男1「お前達は何者だ!」
男2「そんなことより聞いてくれよ!」

 

男2「あのさ、毎朝、俺と同じ駅で、同じ電車に乗る女の子がいるんだ。」
男1「魔法使いのババアか!」
男2「本当だよ、婆さんじゃなくて、若い女の子だよ! 毎朝女の子と一緒の電車なんて、それだけで十分奇跡だろ?」

 

本当にそうだ。総人口の半分が高齢者。電車のなかに一人でも29歳以下の女性がいればラッキーな日だ。毎朝一緒となると、本当に奇跡だ。

 

男2「本当だよ、婆さんじゃなくて、若い女の子だよ! 毎朝女の子と一緒の電車なんて、それだけで十分、気になるだろ? 彼女になってくれ、なんて贅沢は言わない。ただ学校までの話し相手になってくれればいい、って思ってた。この2ヶ月ずっと、ちらちら見るだけで我慢してたさ。で、3日前、目が合ったとき、無言で会釈してみたんだ。彼女も小さく頷いてくれた。」
男1「勇気あるな、ジョーカー 二等兵? 感心だ。」

 

男2「…それ以来、彼女の姿を見ていない。どうやら、乗る電車を変えたらしい。避けられてるみたいなんだ。」
男1「戦争の顔をしろ! 殺すときの顔だ! Aaaaaaagh! これが殺しの顔だ、やってみろ!」
男2「Aaaaaaagh!」
男1「ふざけるな、それで殺せるか! 気合を入れろ!」
男2「Aaaaaaaaaaagh!」

 

ひとしきり騒ぎ立てた後、男子生徒たちは静かになった。
教室の反対側で、女子グループが話している。

 

女1「あのねー、私こわいの、ストーカーにつきまとわれてるの。」
女2「きゃーこわい、いつ? どこで?」
女1「朝、うちから駅まで歩くときなんだけどね、ほとんど毎朝、私が駅に向かう時間を狙って、道の向こうから、犬の散歩をしてくるの! で、通りかかると必ず「おはようございます」って声をかけてくるの!」
女2「うわ、やだー!」
女1「それで、もっと怖いことがあるの! どうもね、私の服装を細かくチェックしてるみたいなのよ! 冬に手袋とマフラーとタイツで行くと、「今日は寒いですね」って言うし、傘を持っていれば「よく降りますね」って言うし、夏服に変えると「暑くなりましたね」って言うの!」
女2「やだやだ、気持ち悪い! いったいどんなストーカーなの?」
女1「かなり年いってて、ひーじーちゃんって言ってもいいくらい! 脚に歩行補助機つけて、モーターうならせて歩いてくるの!」
女2「うわー、ますます怖い! それ本当にロリコンだよ!」

 

009

男2「おれはもう…ひでえ…クソだぜ!」
男1「思考回路がショートしたかボケ!」
男2「うるせーよ、糞ッ!」

 

ガッ、と音がした。男2が机を蹴飛ばした。
その勢いで、机から電子教科書が落ちた。電池が切れそうなので、日光に当てていたのだ。教科書の表紙は太陽電池になっている。

 

男2「…なぁ、教えてくれ、俺は、見たら嫌になるほど、現代美術の醜さなのか? 俺はこの2ヶ月、身体を清潔にして、汗のにおいを消して、制服にも汚れがないようにしてた…それでも、笑顔で、無言で、会釈しただけで、女が逃げ出すほどひどいのか? そんなに俺は気色悪いのか?」
男1「いや…べつに顔は平均的だろ。それに、デブでもないし、病的に痩せ細ってるわけでもない。」
男2「それでも! 俺は! 会釈しただけで女に避けられたんだ! こんだけ頑張って良い男になろうとして、何ヶ月も我慢して、そうしたのに、ちょっと首をかしげただけで、女は逃げる!」
男1「逃げるやつは女だ! 逃げないやつは調教された女だ!」
男2「KILL! KILL! KILL! クソっ、女なんて、せいうちのケツにド頭突っ込んでおっ死ね!」
男1「ホント、失恋は地獄だぜ、HAHAHA!」