周波数とレジスタの関係

周波数レジスタを知ることの意義

• ディチューン(Dコマンド)・ピッチエンベロープ(@EP定義)・ソフトウェアLFO(@MP定義)等の値は「周波数の相対値を指定する」と書いてありますが、実際には周波数ではありません。
  周波数レジスタ値に対する相対値として処理しているのです。（音声周波数と周波数レジスタ値は同じ値ではない）
  そのため周波数レジスタ値の計算式が判れば勘に頼らず記述でるメリットがあります。
   

周波数レジスタ加算前の＋－反転

• ディチューン(Dコマンド)・ピッチエンベロープ(@EP定義)に設定する値は、そのまま周波数レジスタに加算される訳ではありません。
  ＋－反転されたうえで、周波数レジスタに加算されるのです。
  これは音声周波数は大きいほど高音になりますが、矩形波・三角波・鋸波等の周波数レジスタ値は大きいほど低音となり反比例します、ディチューン(Dコマンド)・ピッチエンベロープ(@EP定義)では、プラス値で高音と成る様に＋－反転しているものと考えられます。

• 但し例外があります、それは#PITCH-CORRECTION を宣言している場合、FDS・N106・VRC7 では＋－反転されません。
  これは FDS・N106・VRC7 では、音声周波数と周波数レジスタ値が比例するため、元々プラス値で高音となるのですが、全音源で一様に＋－反転しているため、FDS・N106・VRC7 ではプラス値を指定すると逆に低音となってしまいます、これを回避するための措置として #PITCH-CORRECTION が作られたと考えられます。
  #PITCH-CORRECTION を宣言すれば、全音源で一様にプラス値で高音となります。
   

ファミコンの周波数について

ファミコンの各種音源では、次の周波数を元に音声周波数を作り出しています。

※以降文章では、少数第５位以下切り落とした値で記述しています。

2A03・MMC5・VRC6・SUNSOFT 5B・FDS

音声周波数から周波数レジスタ値を求める計算

※ここに挙げている計算式はppmckでの式です、他のサウンドドライバやファミコンソフトによっては計算式は少々違う場合があります。

矩形波

周波数レジスタ値計算式

周波数レジスタ値 8以下は発声しない。

三角波

周波数レジスタ値計算式

• １オクターブ低い音声周波数で鳴るため、o4a が 220Hz となります。

VRC6鋸波

周波数レジスタ値計算式

SUNSOFT 5B(FME-7)

周波数レジスタ値計算式

FDS

周波数レジスタ値計算式

音声周波数と周波数レジスタ値の関係表

• 周波数レジスタ値が小さいほど誤差が多くなり音痴になります、この誤差を認識し易いように小数点以下まで表示していますが、周波数レジスタで使用する値は少数第一位を８捨９入した値（※ppmck09aにて確認、他のサウンドドライバでは計算方法が少々違うかも知れません。）です。
• 文字色：赤はbit数の有効範囲です。
• VRC6矩形波の場合、文字色：赤と文字色：緑がbit数の有効範囲です。
• o:オクターブ
• MIDI NoteNoから音声周波数を求める計算式

  音声周波数 ＝ 440 × 2^(( NoteNo － 69) ÷ 12)

  「＾」は累乗数

参考例

各音源でディチューンを使いo4a(440Hz)相当を鳴らす

Test2A03_MMC5_VRC6_SUNSOFT5B.nsf

#TITLE Test2A03_MMC5_VRC6_SUNSOFT5B
#PITCH-CORRECTION
#EX-VRC6
#EX-FME7
#EX-MMC5
AaNXCO q7
A @2v8 L             D-28 o4b D255 o4a rrrrrrrrrrrr // 2a03矩形波
a @2v8 L rr          D-28 o4b D255 o4a   rrrrrrrrrr // MMC5
N @7v8 L rrrr        D-28 o4b D255 o4a     rrrrrrrr // VRC6矩形波
X @1v11L rrrrrr      D-14 o4b D255 o4a       rrrrrr // SANSOFT 5B
C      L rrrrrrrr    D-14 o5b D255 o5a         rrrr // 2a03三角波
O   v11L rrrrrrrrrr  D-32 o4b D255 o4a           rr // VRC6鋸波

この例では各音源にて、o4b(493.88Hz)の音符をディチューン(Dコマンド)を使用することにより、o4a(440Hz)相当を鳴らすものです。
一致していることの確認のため、直後にo4aも鳴らしています。

ここでディチューン(Dコマンド)に使用している値の求め方を説明します。
o4bとo4aの周波数レジスタ値の差を設定します。
表に周波数レジスタ値が載っているので確認して下さい、
矩形波の場合、o4bの周波数レジスタ値は226.49、o4aの周波数レジスタ値は254.23です。
小数点以下を切り落とし、差を計算すると226-254=-28となります、
この値をディチューン(Dコマンド)に使用するのです、またこの値はピッチエンベロープ(@EP定義)にも使用できます。
他の音源でも計算方法は同じです。
※三角波は１オクターブ低い事に注意して下さい、440Hzはo5aです。

N106

音声周波数から周波数レジスタ値を求める計算

周波数レジスタ値計算式

有効チャンネル数は、#EX-NAMCO106 <num>の値
サンプル数は、使用する音色の波形データのサンプル数
$40000は16進数で、10進数では 262144

• 8サンプルのときo4aが440Hzとなるように調整されている様です。
• サンプル数が倍になると、音声周波数は半分となり1オクターブ下がります。
• サンプル数は2のｎ乗の数にしておいた方が無難の様です、半端な数だと微妙な周波数ズレがありますし、音階表現がズレているので使いにくい。
• 有効チャンネル数を減らすと音声周波数が上がります、例えば8チャンネルから4チャンネルに減らした場合、音声周波数は倍になり、1オクターブ上がります。
• 有効チャンネル数は使用しないチャンネルが有っても、8チャンネルにしておいた方が無難です、他の音源に影響する不具合が確認されております。
• N106では周波数レジスタ値の変化量が大きいため、ディチューンやピッチエンベロープの数値範囲(-127～127)では十分な変化が望めません、その対策としてppmckではSA<num>コマンドが用意されています。
  SA<num>コマンドではbitシフト量を指定できます、例えば SA5 と指定するとそれ以降、ディチューンやピッチエンベロープの値を5bit左シフト（2の5乗）した値が周波数レジスタ値に加算されます。

音声周波数と周波数レジスタ値の関係表

N106では有効チャンネル数(#EX-NAMCO106 <num>の値)とサンプル数により、音声周波数が同じであっても周波数レジスタ値・オクターブ・音符は変わってきます。

下表では有効チャンネル数(#EX-NAMCO106 <num>の値)を 8 として計算しております。

サンプル数4・8・12・16

• 文字色：赤はbit数の有効範囲です。
• o:オクターブ

サンプル数20・24・28・32

• 文字色：赤はbit数の有効範囲です。
• o:オクターブ
• MIDI NoteNoから音声周波数を求める計算式

  音声周波数 ＝ 440 × 2^(( NoteNo － 69) ÷ 12)

  「＾」は累乗数
   

参考例

各サンプル数でディチューンを使いo4a(440Hz)相当を鳴らす

Test_N106_440Hz.nsf

#TITLE Test_N106_440Hz
#PITCH-CORRECTION
#EX-NAMCO106 8
@N0 = { 0 15,15,00,00 } // 4
@N1 = { 0 15,15,15,15,00,00,00,00 } // 8
@N2 = { 0 15,15,15,15,15,15,00,00,00,00,00,00 } // 12
@N3 = { 0 15,15,15,15,15,15,15,15,00,00,00,00,00,00,00,00 } // 16
@N4 = { 0 15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,00,00,00,00,00,00,
          00,00,00,00 } // 20
@N5 = { 0 15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,00,00,00,00,
          00,00,00,00,00,00,00,00 } // 24
@N6 = { 0 15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,00,00,
          00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00 } // 28
@N7 = { 0 15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,15,
          00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00,00 } // 32
P t160 v8 q7  L
P @@0 SA3 D-118 o3b  D255 o3a  // 4
P @@1 SA4 D-118 o4b  D255 o4a  // 8
P @@2 SA5 D-88  o5f+ D255 o5e  // 12
P @@3 SA5 D-118 o5b  D255 o5a  // 16
P @@4 SA6 D-74  o6d+ D255 o6c+ // 20
P @@5 SA6 D-88  o6f+ D255 o6e  // 24
P @@6 SA6 D-103 o6a  D255 o6g  // 28
P @@7 SA6 D-118 o6b  D255 o6a  // 32
P r2

この例ではN106の各サンプル数にて、493.88Hz相当の音符（o4b※）にディチューン(Dコマンド)をかけることにより、440Hzを鳴らすものです。
一致していることの確認のため、直後に440Hz相当の音符（o4a※）も鳴らしています。
※有効チャンネル数8、8サンプルの場合

ここで8サンプルのディチューン(Dコマンド)に使用している値の求め方を説明します。
o4bとo4aの周波数レジスタ値の差を設定します。
表に周波数レジスタ値が載っているので確認して下さい、
矩形波の場合、o4bの周波数レジスタ値は17361、o4aの周波数レジスタ値は15467です。
差を計算すると17361-15467=1894となります、#PITCH-CORRECTIONを宣言しており音程を下げるのですからマイナス値 -1894となります。
この値をディチューン(Dコマンド)に使用するのですが、ディチューン(Dコマンド)の設定可能な値の範囲は-127～126であるため、-1894は設定できません。
そこでSAコマンドを使用することにより解決できます。
　-1894を4回2で割ると-118.375となり範囲内になるので、この値の整数値にした値-118をディチューン(Dコマンド)に設定します。
（この値はピッチエンベロープ(@EP定義)でも同様です。）
そしてディチューン(Dコマンド)の事前にSAコマンドを使用し、値は先ほどの4回2で割った、その4回の値、SA4を設定します。
これにより、およそ440Hzが鳴ります（正確には誤差があります。）
SAコマンドの値が大きい程、誤差が大きくなるので注意が必要です。
SAコマンドはppmckにてN106音源のみ使用可能です。
他のサンプル数でも計算方法は同じです。
この例のnsfを聴くと判ると思いますが、サンプル数が2のn乗でない場合(12,20,24,28サンプル)、音程がわずかにズレることが確認できると思います、使用するサンプル数は2のn乗(4,8,16,32サンプル)にしておく事をお勧めします。

VRC7

音声周波数から周波数レジスタ値を求める計算

周波数レジスタ値計算式

「＾」は累乗数

• VRC7では周波数レジスタとオクターブレジスタにより音程を制御する。
  周波数レジスタには 0(ゼロ)オクターブでの音符cc+dd+eff+gg+aa+bに対応する周波数レジスタ値を設定し(この計算式では考慮してある)、オクターブレジスタには o<num> コマンドの値が直接入る。
  この様な関係にあるため、周波数レジスタ値を半分にし、1オクターブ高い値を設定しても、同じ音声周波数が鳴る。
• ディチューン(Dコマンド)やピッチエンベロープ(@EP定義)では、周波数レジスタのみの制御であり、オクターブレジスタの制御はされないため、周波数の変化できる範囲は狭い(周波数レジスタ値 0～511まで)、特に高音域への変化は苦手で、オーバーフローし易い。
• 音色設定のCarrierのMULTIの倍率が 1 の場合を想定していますが、例えばこの値が 2 の場合、音声周波数は 2倍となり、1オクターブ高い音で鳴る。(プリセット音色では 1倍の様です。)
   

音声周波数と周波数レジスタ値の関係表

※音声周波数は音色設定のCarrierのMULTIの倍率が 1 の場合を想定

• 周波数レジスタ値が小さいほど誤差が多くなり音痴になります、この誤差を認識し易いように小数点以下まで表示していますが、周波数レジスタで使用する値は少数第一位を８捨９入した値（※ppmck09aにて確認、他のサウンドドライバでは計算方法が少々違うかも知れません。）です。
• 文字色：赤はbit数の有効範囲です。
• 文字色：水色は音符から周波数レジスタ値に変換される値で、どのオクターブでも同じ値です。
• o:オクターブ
• MIDI NoteNoから音声周波数を求める計算式

  音声周波数 ＝ 440 × 2^(( NoteNo － 69) ÷ 12)

  「＾」は累乗数
   

この文章はファミコン音源詳細の各種資料を元に計算式を求め、表にまとめたものです。