戦隊ゼロファイブ

Last-modified: 2006-10-30 (月) 22:30:29

『トリステイン戦隊ゼロファイブ』

 

「ヨーイ! スタート!」
才人は椅子に座ったまま周囲に声を掛けた。
スタッフに緊張が走り、役者が一斉に演技を始める。

 

「これ以上の悪事は許しませんよ!」
アンリエッタが悪役に向かい抵抗の声を上げる。
「ふふふ…お前ごとき小娘一人に何が出来るというのだ?!はっはっは!」
部下を従えた悪役のワルドが高らかに笑う。

 

「よ~しいいぞ、ここまではOK!」
スタッフの間には更に緊張が走る。
「効果!準備出来てるな?」
「はい!バッチリです」

 

才人がタイミングを計り指示を飛ばす。役者のセリフが続く。

 

「私を見くびって貰っては困ります!」
「ふん、小娘の悪あがきか?!面白い」
「さぁ!今です皆さん!!!」

 

効果担当がスイッチを入れると俳優の背後に五色の爆煙が上がる。

 

「な、何ぃ?」
「ここに誘い込まれたのは…実はアナタの方!覚悟しなさい!」

 

「ハイ!オッケー!」
スタッフと役者から緊張が解ける。
「一応カメラチェックね~」
才人とスタッフがモニターを覗き込み入念にチェックをする。
「あの…私…上手に出来たでしょうか?」
気が付けばアンリエッタが背後から心配そうに覗き込んでいた。
「うんバッチリ!大丈夫!上手く出来てたよ♪」
「よかったぁ~♪」
才人はスタッフと一言二言打ち合わせをした後…周囲に向かい叫んだ。
「それじゃ続きのシーン、このままいきま~す!」
その声を聞いたスタッフと役者は、緊張しながら配置に付いた。

 

役者達は入念にスタッフと打ち合わせをしていた。
「いいですか?絶対にこの印の後ろには行かないで下さい」
「はい」
「大きな爆煙ですが印より前には飛ばない様になってます」
「わかりました」
「で、決めのポーズの立ち位置は…アソコでお願いします」
「あの線ですね?」
「そうです!では合図でお願いします」
「はい、わかりました」
悪役のワルドも同様に打ち合わせをしていた。アンリエッタは化粧直し…
とは言っても逆に「汚し」を入れる化粧直しではあったが。

 

指示が行き渡った事を確認すると、才人は再び椅子に腰を下ろした。
周囲のスタッフが位置に付いている事を確認すると…
「ヨーイ! スタート!」

 

ワルドのセリフからである。
「いったい何事だぁ!?」

 

カメラが、配置に付いた各役者をUPで映し出す。

 

「魅惑の香水!ゼロイエロー!」
背後で黄色い爆煙が上がる。スタッフから「よし!」と声が漏れる。

 

「大地の使い!ゼログリーン!」
背後で緑の爆煙が上がる。スタッフからは「OK!」と声が漏れる。

 

「沈黙の雪風!ゼロブルー!」
背後で青い爆煙が上がる。スタッフからは「順調だ!」と声が漏れる。

 

「微熱の女神!ゼロレッド!」
背後で赤い爆煙が上がる。スタッフからは「決まった!」と声が漏れる。

 

「きょみゅにょ…」
背後でピンクの煙がぽふっと!小さく上がる…不発。
スタッフからは「噛んだな?!」「あぁ噛んだな」と声が漏れた。

 

「カット!カァーット!」
才人が撮影中断の声を上げた。
「しばらく休憩取りま~す!特効さんは再チェックよろしく!」
才人は台本のセリフと流れを再確認し、ルイズを見て溜息をついた…。

 

落ち込むルイズにマネージャーのアニエスが近付く!
「どうしちゃったの?ルイズちゃん?調子悪い?」
赤いセルフレームの眼鏡の端をクイっと片手で上げ、手帳を見ながら聞いた。
「セリフが難しいのよ!虚無の…ってトコが、どうしても…」
やれやれ…と言った風に軽く溜息をつくとアニエスは真顔でルイズに告げる。
「ルイズちゃん?このお仕事って結構大切なの!事務所的にもね」
「そ、そんな事わかってるわよ!」
「あのね?いつまでも深夜のオタ相手だけじゃ売れないの!わかる?」
「イメージチェンジだって言うんでしょ?」
「そう!露出が増えれば他の仕事に繋がるでしょ?」
「これだってオタ向けの戦隊モノじゃない?!」
アニエスは呆れた顔をしながら人差し指をメトロノームの様に動かしながら、
「ちっ!ちっ!ちっ!甘いわね!今や戦隊モノは幅広い客層に大ウケよ♪」
「そ、そうなの?」
「今回は美少女路線&多様なキャラを用意して幅広い男性を鷲づかみ!」
「しかも敵キャラはイケメン男性で女性の客層も抜かりなくゲットよ!」
台本をチェックしつつ休憩する出演者達を見渡しながらアニエスは力説する!
「例えば…あのフーケちゃんだけど…事務所が無理やりねじ込んだらしいわ」
「そういえば年齢的にも、ちょっと浮いてるわね?!」
「以前組んでたアイドルユニットの子がソロデビューしちゃったから…」
「え?そうなの?」
「取り残された感じで…必死の起死回生の番組なのよ!」
「な、なんだか…妙に生々しい話ね…」
「一応、端役だけどドラマのオファーも来てるらしいわ」
「嘘?!が、頑張ってるのね」
「ちなみにモンモンちゃんには化粧品会社からCM出演の依頼が…」
「え~ホントに?」
「新発売の香水のキャンペーンガールらしいわ」
「う…あう…」
「だぁかぁらぁ♪ルイズちゃんにも頑張って欲しいわけよ♪」
「わ、分かってるわよ!ちょっと間違っただけじゃない!」
「いつまでも『ルイズかわいいっルイズかわいいっハァハァ』ではダメなの♪」
「はい!はい!」
「気合、入れてね♪」

 

ルイズに気合を入れると同じ事務所のキュルケとタバサにも声を掛ける。
アニエスがキュルケの側に近付く…キュルケは変身ポーズの練習中だった。
「キュルケちゃん♪調子はどう?いい感じに見えたけど♪」
「衣装がちょっときついのよね~!特に胸のあたりがぁ~」
と言いながらチラっと横目でルイズの方を見る。
明らかに声の聞こえているルイズはキュルケを睨み肩を震わせていた…。
「それは衣装さんに伝えておくわ!で…話は別なんだけど…例のアレ」
「あぁモデル事務所からの引き抜きの件?勿論断ったわよ!」
「でも条件良かったんでしょ?ホントにいいの?」
「だってあの事務所って『巨乳』しか入れない事務所でしょ?」
「まぁ社長がそういう嗜好らしいし…テファちゃんみたいな子ばかりだしね」
「で、私が条件出してさ…『この子と一緒ならいいよ』って言ったら」
と、タバサの事を見る。
「そしたら『貧乳のガキは必要ない』とか言うから!断ったのよ」
「あ…そうだったのね…」
「私とこの子が別々の事務所なんて考えられないもの♪」
「そ…そうね…まぁなんにせよ良かったわ、一安心」

 

そこで一度アニエスは手帳を確認し直すとタバサに向き直り…
「実はね…タバサちゃん?」
「……何?」
「ラジオ番組のオファーが来てるんだけど…?」
密かに聞き耳を立てていた周囲の人間から一斉に驚愕のどよめきが起こる!
「ラ、ラジオ~~????」「トークか?トーク番組か?しゃべるのか?」
アニエスがスケジュールを確認しながら尋ねる。
「どうする?この日なんだけど…?」
周囲が注目する中…タバサはしばらく考えた後…小さく頷いて言った。
「……やる」
出演者・スタッフ一同から歓声が沸き起こった!

 

(つづける?w)