ゆみさん/怪文書1

Last-modified: 2020-09-06 (日) 20:01:34

若い女子だらけでムラムラしてしょうがない
しかして手は出したら死ぬ部活の顧問みたいな「」長が
夜の色街ですっきりしようとしたら出てくるんだよね
お客さんいらっしゃいませユミでーすって

お互いゲェッ?!って顔で3秒固まった後
…見なかったことにする それでアレだお前も忘れろって「」長が言うんだけど
ちょ今月マジヤバくて緊急手段でツテでこのお店にねじ込んで来てるからサービスも無しで
マッハで帰られたなんてなったらマジヤバいんだけど!!?って
引き止められてですね

わかったわかったからバスタオル一枚でしがみつくなや!!
って
とりあえず時間内はプレイルームで過ごすことになって
お客さんおタバコ吸います―?なんてニヨニヨしてくるの
バスタオルをヒラヒラさせててね
なんならどストライクで写真指名の二時間コースだから
相手が同僚で職場の先達で扱い上は指揮下の部下って立場でだし
お互いバスタオル一枚だしで混乱してはいるものの
まだちょっと下腹のムラムラしたものが散らしきれない

湯気とシャボンが香る密室でタオル一枚その下は生まれたまんま
何も起こらないはずもな…やっぱダメ絶対今後このネタで良いように指図される…って葛藤してたら

ふーん?しかし「」長もやっぱりオトコなんだてっきりうちの子たちの誰かとヨロシクやってるもんだと思ってたけどへぇ…?
なんてちょっとしっとりしたカラダ寄せてくるの

…せっかく来たんだし一発抜いても罰当たらないでしょ!「」長さんもスッキリしたら時間適当に潰して帰ればいいしね!さーあどれどれ…「」長さんの結構大きいのね…ふーん…すっごいビクビクしてる…どう?今日はなんかちょっと気分いいから本当にたまたまよラッキーよね!…中に入れてもいいから…早くやっちゃってよ!恥ずかしいでしょ…

まぁ細かいとこは置いといて
もらった名刺に「次は高いレストランいってからホテルね「」長さん♥」ってね

池袋とか大久保あたりのヘルスでゆみさんと会いたい
指名用のむしろ不細工にされたようなフォトショ写真出されて
誰とは知らずに3サイズと自己PR文だけで選ぶ
少し待つとドア出たら女の子居ますからって案内されて廊下に行ったらびっくり仰天
太ももまで隠れるかなってちょっと丈の長いシャツを乳の谷間がちらっと見えるようなボタンの外し具合の恰好でゆみさんが立っている
「はーい、ユーミでーす! 今日はよろ……」と、そこで向こうも気が付いたみたいだ
二人とも一気に顔がこわばるがボーイの手前、ぎこちない素振りながら知らないふりをしてとりあえず手つなぐがその場でお出迎えのキスはしてくれなかった
部屋まで行く間に「あんたいつもこれよりドギツイ恰好見慣れてるでしょ!?」みたいなことをボソッと言われても
それとこれはやっぱり違うし、いつものお店で夜のお仕事姿や営業的に腕へ抱き着くくらいはあれどもそれとは場のノリも雰囲気も違う
もう二人そろっていつものような雰囲気にもできなくなってしまいもはやドギマギするしかないでいる
だってゆみさんだよ?ソープじゃなくてヘルスってところがミソだよね
たとえ風呂に落ちても体の最後の一線は許さないぞって思ってるのわかるよね
そこまで行ったらプライドもくそもないじゃんとは一瞬思っても
すぐにこの状況の異質さにそんな事考えてられなくなっちゃうんだ
ああ、ゆみさんって細いんだな……
握った手に少し力が入ってしまっていることに気が付いてすぐに緩めてゆみさんの顔を横目で覗くが軽く俯かせた顔の色はいつも通り透き通るように白いままだが完全に目が泳いでいる
どれほど歩いたか長い廊下の突き当りの部屋で足が止まると顔を向かい合わせてしまった。
ゆみさんは相変わらず泳がせた目線を合わせないで小さく口をパクパクさせるばかりで言葉が出てこないようだ
今度は俺が自発的に、分かりやすいように勢いをつけてぎゅっと強くその細い掌を握ったんだ
ユーミちゃ……いや、ゆみさん、今日はよろしくお願いします

適性持ちが重そうな人ばっかりだから重力って覚えるっす

でも闇も抱えてそうっすね

ゆみさんは重いっすか?
私が重いって…女性に対してそれはないわー隊長…
デリカシーって知ってる?知らないならみっちり教えてあげる
そう言いながら対面に密着してきて胸やら何やら柔らかいところが押しつぶされ形を変えて硬さを感じるのは服や下着だろう…とにかくそんな密着具合で耳元でゆみが息を吹きかけながら囁く
「こんなとき…なんて言うの?」
もういっぱいいっぱいで焦って出てきたのがごちそうさまですなんてトンチンカンな言葉が出てきた頃には実に失望したような顔で溜息をついたが彼女は曖昧に笑うとまた耳元に口を寄せて
「これでも隊長には好かれていたいの…私を絶対に、裏切らないでね?」
とぎりぎり聞こえる声でまた囁き首筋にキスマークをつけられた

BBAはお金払えば着てくれるっすよ

料金請求すっぞーってからから笑ってるから
ぽいってちょっとした重さの封筒を投げつけて
…マジなの?って言わせたい
言ったからには着てあげるけどいったい何着せるつもりよ
って金額換算にたじろいでるゆみさんに
着させるのはもちろん

ウェディングドレス

ウェディングドレス


そりゃもういかがわしいスケベ衣装で視姦されるんだ…
やっべー処理してあったかな…うわぁってなってるゆみさんに
仰々しい衣装ケースと大きなメイクボックスとスタイリストまで来て
えっ?えっ?ってなすがままに更衣室に連れられて気が付いたら
いつか夢見て目を背けた純白のウェディングドレス
思い描いてたような幸せな花嫁そのものにされちゃったゆみさんいいよね

あとコレも…ってリングの入ったケースを差し出して
受け取ってくれるか…?って
ここまでしておいて顔真っ赤にして聞くと

二人は幸せなキスをしてめでたしめでたし
いいよね

キャバ嬢は若けーのが青臭くチョコ臭くどぎまぎしてるのを見て
まぁここは邪魔しないであげますかってポジションを取るんだけど
いたずら心が勝ってふらっとコンビニでチョコ買ってくるんだよね
何やら事務所に戦乱の機運…!って戦々恐々としてる「」長が
独りでいるとこを見計らって肩をちょいちょい
ビクッと「」長が振り返った先には
ほぉーはばへんはいんのほっきーへーふよ!
(ほーらバレンタインのポッキーゲームよ!)
ってポッキー咥えてんー!ってやってるキャバ嬢
がウィンク一つぱちくり
まぁあまりに可愛くてズキュゥゥ-ンよね
だから『いつもありがと』って手書きで箱に書いたメルティキッスは渡しそびれちゃうの
良いよね

隊長♪ボトルいかがー?
なんてはいはい勤務中ね…おっかたいわねー文嘉ちゃんに影響されちゃったの?
これ濃い目のインスタントコーヒー
熱く淹れてあるから舌やけどしないでね
え?私からのチョコ?欲しいの?若い子にいっぱいもらってるじゃないお返しも大変でしょ?
私から欲しいって…あのねぇ口説くならお店でそれこそボトル入れながらにして頂戴ってうわマジな顔だやりにくっ…
じゃあこれ板チョコ
カカオマスちゃんと使ってるから安い割に美味しいのよ?
…そのすぐ顔に出るのやめた方がいいよ
じゃあそろそろお仕事しようかな
シラフじゃ面白くないから「そういう席」でもう一回誘ってね

じゃあゆみさんと甘いイチャコラをするには

飲み比べに勝って先にゆみさんを潰す必要が…?

ゆみさんがコイツ嫌いだから潰そうと思われない程度に親密な関係になればそんなことされないっすよ
ゆみさんが潰すのは無駄に高いプライドのせいで自分の事狙ってくる外野のちょっかいが面倒くさいからってだけっす
飲み比べなんかして…いや逆にワンチャンありそうっすね
ゆみさんが調子に乗ってコールしてたら「」長が十何杯目かの乾杯の後にぶっ倒れちゃって
真っ青になってお店だといつもは○○さんって呼ぶくせに素になって「」長の事「」長!って連呼するんすよ
こりゃもう自分が介抱するしかないじゃないっすか
まずキャバの控室に連れて行って「」長の寝ゲロ防止に喉に指突っ込んで無理やり吐かせるんすよ
でもってそのままだと詰まっちゃうかもしれないっすからマウストゥーマウスで中の物吸いだすんすよね
豪快なのか雑なのかなんなんすかねゆみさんって

この時間に帰ってくるキャバ嬢を起きて出迎えたい
今日早番だから寝に来ると思ったら案の定だよこっそりと用意したファンヒーターと電気毛布を支度してたら若干駆け足気味の足音が聞こえてきて不機嫌そうな声でなんで隊長がいるの…って言われるけどうわ酒くさっ水のんでさっさと寝ろと言ってコップ渡してまだ不満そうな目で見てくるキャバ嬢に明日早いんだからさっさと寝なさいって言うとうるさいわね隊長は私のかーちゃんかってのとぐちぐちいいながらこっちに背を向けて化粧を落とし始めたから見ないようにじゃあ俺隣の部屋で寝てるからなんかあったら起こしてって部屋を出たい
頑張るよなぁ身体大丈夫かなあと思いながら眠りについて目が覚めたら何故か自分の布団に潜り込んで寝てるキャバ嬢を見て驚いて飛び起きて時計を確認したらもう早番の勤務時間ギリギリでまずい…と思った瞬間ドアが開いてちょっと早めに来て事務処理をしようと思ってた文ちゃんと目が合うやばい!と思ったその時寝ぼけたキャバ嬢が俺の腕抱き締めて「あーしゅらばだー」と呑気なことをのたまうのいいよね
あとからさすがに反省したのかぺろっと舌だしてごめんと口パクで言ってくるのいい…

ちょっとじゃない書類仕事で残業の「」長
文嘉も試験前だし一人でこの量をか…ってうんざりしてたら
ひょっこりゆみさん参上

前によほどこっぴどく潰した客が店の前で待ってたとかで本業は自主早退
何とはなしに事務所の明かりを見て寄ったそうな

今宵の稼ぎをふいにしたゆみさんと手いっぱいの「」長
降ってわいたwin&winな事務作業の夜が始まった

あのラッパーなんとかならんか?
…名前出すのも禁止
どうでもいいことを喋りながらも快調に進む事務作業
ん?会話が途切れたな…と顔を上げると
ニマニマ悪い顔のキャバ嬢

…ところでさぁ隊長はウチのコ達だと誰がタイプなの~?

キータイプの手は淀み無くもからかい慨のある玩具が欲しくなってきたらしい

叢雲の子たちに新しく増えた子 まぁ…一応中野組も
より取り見取りって奴じゃない?

二人っきりの夜にちょっとした緊張感
不意を突かれて誤魔化しもできず まぁ「」長も男だしで
ついついううぅん?などと悩んだもののこれは罠
下手を撃てば しばらくは飽きるまでネタにされるだろう

そこで一計
…そうだねゆみさんかな いざというときは頼れるし
なんだかんだ若い子たちの面倒も見てるようだし
…そういうとこ素敵だと思うよ

半分はからかい返しのつもりだったが二言目にはするり 本音がスィと出た

ひょへ?!わたし?!なんて普段の余裕綽々な態度からは出てこない上ずった声
自分ご指名は想定外すぎたらしい

やっべと思ったもの後の祭り
しばらく気まずい沈黙が支配 いまや軽口さえもグラビティ
どちらが先に斬るか鯉口 一寸先はショウダウン
しかして
小一時間後に突然

帰る!!

ってゆみさんは帰っちゃったとさ

そうだね…いつもと違って今日は素面だったね二人とも

あー… 明日どんな顔で会えばいいやら
そして残りの事務は独りやら

放たれてしまった本音の行方はいざ知らず
成子坂の夜は更けていくのでした

つまりBBA可愛いどっとはらい

BBAの減衰が始まったあたりで落ち込んでるかな案外大丈夫かな?って様子を見に行ったら寂しそうな笑顔でスーツとギアを眺めてるところに出くわしたい
「なに?やっと肩の荷が下りたとこなのよー?何か労いの言葉とかプレゼントとかないわけ?」って意地悪な顔に戻って言ういつも通りの綺麗なゆみさんに指輪を見せたらどんな顔になるのか見てみたい

もうどれだけ飲んだのか…気づけばゆみとタクシーに乗っている
今日は退社の時間が偶然一致したゆみと自分とで軽く飲む…つもりだったのにこうも酩酊状態にされている

日頃セーブできているつもりだったのはゆみの手加減だったのか…
目的地についたらしく端末で決済した
残高は足りていたようだ
タクシーから降りてふらついてしまう俺をゆみが支えて一緒に歩いてくれる

こういったことには慣れているのだろうがこちらのはずかしさといったらない…というかここはどこなんだ?
そうこう考えているうちに俺は独り身の女性の部屋に侵入を果たしてしまっていたのだった

「年を重ねるだけじゃ心はそう変わらないものね…周りの子を見てると私が大人になったかのように錯覚しちゃう…嫌ね…こういうのキャラじゃないんたけど…」

そういいながらおもむろに服を脱ぎ始めるゆみから目をそらそうとするも目に飛び込んできた眩しいばかりの白い彼女専用のアクトレススーツから目が離せない
スーツの下に着込んでいたのか…なんで…?

「今日はね…はじめからこうするつもりだったの。全部明日には忘れてるから…今日だけ私をただの女の子に戻して?」

ズキズキと痛む頭を押さえながら起き上がる
昨日はゆみと飲んでて…それから?
目の前の景色に頭が混乱する
自分の知らない部屋だった
なにか甘い匂いがするような気がするベッドから降りると机の上に
『ダウンしちゃってたから泊めたよ。なにもなかったから安心してね。先に仕事いくから目が覚めたら適当に休んでいってね。帰るならオートロックだから戸締まりは大丈夫。ゆみより』
とキスマークつきのメモ書きが置いてあった
裏を見ると名刺…これはいったい…というか

忘れられるわけがない
年齢を感じさせない白い肌も素肌に擦り付けられた専用スーツの感触もひとつになった結合部の熱さも一心不乱になって求めた柔らかい胸や尻も…切なさにうるんだ瞳も…
かけられる言葉なんて酔いでそれどころじゃなかったし考えて出た言葉が彼女を救うとも思えなかった

ただの生娘を愛するように求めて愛を囁いた
それで良かったのかはわからない
ただ身体が覚えている感触がゆみを強く意識させた

成子坂では年長の方になるゆみと俺は必然的に会話が多くなり店で愚痴を聞いたり一緒に飲んだりする機会が多い
それを見た若いアクトレス達は冗談混じりにゆみさんもらっちゃったらいいじゃないかとかBBAは頼んだとか言ってくるがそれはとんでもない話なのである

知っての通りアクトレスの活動可能年齢範囲からしてゆみは年長となるから周囲の子達には大人な対応をするように心がけているしアクトレスに仕事に成子坂の子達のケアと何足ものわらじを履いて頑張ってる彼女を見て少しでも気晴らしをして甘やかしてあげたいとは思うが無責任に甘やかすのはよくないし

彼女が大人として振る舞うように俺自身だって彼女にとっていい大人をやれているのかは全く自信が持てない
いわば鏡写しの状態だから彼女をめとるなどそんな発想をすること自体がなくはないが自身を省みるととてもそんな事ができるとは思えないのだ

この心情を打ち明ければきっとちっぽけなプライドだと切って捨てられるのはわかっているから単なる逃げだが俺はもう少しだけゆみの遊び相手でいようと思う

一回りほど年の離れた少女たちに囲まれやいのやいのと担ぎ上げられる生活の中に飛び込んできた四谷ゆみはまさに俺にとっての天使だった。
もっとも、聖書に出て来る天使のように迂闊に触れると財布に天罰の下る厄介な天使なのだが。
年のそう変わらぬ彼女と飲みにいくことも増え、ついには宅飲みまで敢行する程度には親しくなった。そんな付き合いの末、いつものように己の家に上がりこんだ彼女は唐突にこう口にした。
「そういえば…隊長さぁ…あんたって彼女できたことあるの?」
楽しくも灰色だった青春時代がフラッシュバックした。悪友たちとバカ騒ぎしていたお陰で女子からは奇異の目で見られるか、或いはアホやる友達としてしか見られなかったあの頃を。告白してもそういう目では見れないとしか言われず笑い話にするしかなかったあの頃を。
目を逸らしモテモテだったぜと嘯いてみせるが、彼女は目を細めて、いなかったのねの一言でばっさりと切り捨てられる。
「私もね、一度も恋愛っていうのをしたことないのよ。恋愛じゃない付き合いなら沢山したんだけどね」
そう告げると彼女は愛飲する度数の高い洋酒に口をつけて一呼吸おくと、続けた。
「アクトレスとしての能力の衰え始める年齢って知ってる?」
彼女にしては珍しく真面目な声色に、ハッとしてゆみの顔を見上げる。
普段の凜とした顔立ち、飄々とした笑みとも違った、なんとも寂しそうに歪んだ口と、潤んだ目元は饒舌に今の感情を物語っていた。
「まさか…」かける言葉も見つからず、そう呟くしかなかった俺に、ほんの少しだけ口角を上げた彼女は続けて口を開く。
「ちょっとだけどね、エミッション能力が弱まったわ。自分の体のことだもの、自分が一番わかってる。覚悟はしてたけど…いざ!となると少し堪えるわね」
半ば諦観であるその笑みが心を突き刺す。こんな時に気の利いた言葉の一つもかけてやれなくて何が隊長だ。
そう、苦虫を噛み潰したように顔を歪める俺を前に、テーブルから身を乗り出し、顔を近づけたゆみは囁く。
「そしたら隊長がもらってくれない?私のこと」
呆気にとられ、小さく開いた口にゆみの唇が重なる。舌こそ絡めない、軽く触れるだけのキスだったが、俺の思考を奪うのには十分だった。
唇が離れた後も何が起こったのかわからないと上の空の俺を見て、ゆみはくすくすと笑う。
「本当に経験ないのね。キスくらいでこんなになっちゃって」
いつの間にかテーブルを離れて隣に座っていた彼女は指を頰に添え、消え入りそうな声で囁く。
「あなたは…どう?」

店の上がりの時間に合わせて待ち合わせ場所で四谷と落ち合う
何故かというと最近厄介な客に付きまとわれているということらしく、そんな相談を門外漢の自分にしてくるのもどうかと思ったが四谷に頼られているという高揚心からつい二つ返事で引き受けてしまったというわけだ
四谷はコートを羽織り小走りでごめん待った?とまるで恋人のように自然に腕を組んでくる
これから彼女を遠回りしつつ家(俺の家だが住所の所在を有耶無耶にしたいらしい)に歩いて向かうことになった
しかし少し酒の入った女性が歩くには少し遠いので途中公園で休憩すると今まで楽しそうだった四谷の顔にふと翳りが差す。不安なのだろうと努めて明るく振る舞うがどうも様子がおかしい。
「あの…隊長に一つ謝らないといけないことがあるんだ。困ったお客さんってのは嘘…隊長と二人きりになりたくて…」
突然の急展開に頭がついていかない…四谷が俺を?そんな都合のいい話が…そんな思考は背中への衝撃で霧散した
「お前が…お前がゆみちゃんを誑かしているんだな!」
背中にかけられた悪意と熱を感じる間もなく痛みが膝をつかせる
最期まで四谷の顔をまじまじと見ることは叶わなかった

「もー!なんで打ち水なんて文化残ってるのよ!何百年前の文化だと思ってるの!?」
ゆみがぷりぷりと怒りながら大股で事務所に入ってきた
彼女は水をかぶったのか黒いスーツはびしょ濡れで鬱陶しそうに脱ぎ捨てる
だが待ってほしい…今日は男の俺が事務所にいるんだけど…
髪についた雫が照明光を反射して輝き濡れた白いワイシャツは彼女の上半身に貼り付き形の良い胸と下着を浮き彫りにする
そのあまりにも美しい光景に中学生の様に前屈みになり本能的に目に焼き付けようと注視してしまう
視線に気付いたのかはさだかではないが濡れ透けで色気を振りまく四谷はこちらを見ると顔を真っ赤にして生娘のような悲鳴を上げた
俺は彼女がシャワーを浴びる間頬に紅葉を貼り付け外で正座させられたのだった

「隊長…今見てるんでしょ?」
目を閉じゆみが歌うように語りかけてくる
ドローンのバッテリーが心許ないため今日は監視カメラにアクセスして様子を見ていたのだがゆみにはお見通しの様だった
「別にいいんだけど黙って女性を見てるのはマナー違反だと思わない?でないとこんなところに遭遇したときあとで言い訳できないわよ?」
そう言いながらゆみは黒いジャケットを脱ぎワイシャツのボタンを上からゆっくりと外していく…
「ほらね?見なかったふりする?声をかける?それとも…黙って一人で自分を慰めるのかしら?」
自分が見られていることを強く意識しているのか開かれた襟元の影に隠れて下着は見えない
だがその少し上気して赤味の差した白い肌に落ちた影がよりその奥を想像させて興奮が治まらない
「今はここまで。反省したらもっと素直になってね。お酒を飲んで勢いをつけてから来てもいいわ?部屋は片付けてあるから」
ゆみは目を開いてレンズ越しにこちらを見つめるとグロスのぬめるような輝きを放つゼリーのようにぷるんとした唇を舐めた

「隊長モテモテねーチョコいっぱいじゃない」
ゆみが机の半分は埋める勢いのチョコを見て言う
「あまーいチョコにはにがーいコーヒーよね」
マグカップに湯気からわかるほどドロドロに濃く熱いのが丸わかりなコーヒーが置かれるがもしかして機嫌が悪いのかこの24歳
「かわいいもんじゃないか。懐いてくれてるのは素直に嬉しいよ。普通年上の先生みたいなのは鬱陶しいもんだろうしね」
「そんなおっさんみたいなこと言ってるとヤケドするわよ?女の子って隊長が思ってるほど子供じゃないんだから」
「へえ…そりゃ体験談?いずれにせよないない。身近な年上の男に憧れるのなんてファンタジーだろ」
「失礼ね現在進行形…よっ!」
後からゆみに軽く首をロックされるがいつものじゃれ合いなので背中に当たる感触が気持ちいいだけだ
「はいはい。でその現在進行形のお嬢さんは何がくれないの?」
「ばか。甘すぎるから塩対応してあげてるのよ」
そう言ってゆみは手を軽く振りながら事務所を出た
コーヒーに口をつけるとほのかに甘い
「コーヒーにチョコ入れるやつがあるかよ…」
机の上のチョコを見渡しながら半端に甘いコーヒーとの戦いが始まったのだった

たぶんBBAの入れ知恵っす

BBAから欲しかったっす・・・

2/13に隊長とお酒飲んで酔っぱらった隊長を家に招き入れて
日付変わったタイミングで口移しでウィスキーボンボンプレゼントして
そのまま朝まで甘くて濃厚なオトナの時間を過ごして
少し遅刻ぎみに急いで出社して若い子達の期待を裏切らないように立ち回れと釘を刺されつつ事務所に入る
それがゆみのバレンタインデー
おいたをしなければチョコを貰うまでなら許してくれる

今日こそゆみをなかしちゃる!
と思い立ったが吉日程々に酔ったタイミングでじゃんけんを提案!罰ゲーム付きだよ!と言ってみるとゆみはまぁ一回ぐらいならとまさかの快諾
よっしゃやるぞーといざじゃんけん!
ポン!と出した手はゆみがグー俺はパー!
勝った!やった!じゃあとゆみはずいと顔を近づけ何をさせたいの…?と
俺はデンモクを手に取り曲を入れる
曲名はそう『バレンタインデーキッス』
どうだよ四谷恥ずかしさに悶えろや!!
軽快なイントロが流れさあさあってときにゆみが隣に座ってくる
「わざわざ罰ゲームなんて持ちかけてくるから期待して太鼓持ちやってみれば頼みたいことがこれ?納得いかない」
目が据わってる…ああ…そういえば自分から誘ったことなかったっけと思いながら俺は襲われたのだった

  • 「はぁ…」
    何度めかわからないため息をつく
    二日酔いでも昨日の情事で腰をやってしまったわけでもなく考えるのは隊長の事だ
    どうしてあの男はこう…ぱっとしないというか残念なんだろう
    昨日はバレンタインデーだって言うのに子供みたいな罰ゲーム吹っかけてきて…普通おれのものになれーとか…そういうの期待しちゃうじゃない…
    なんであんなバカ…バカだけどいつもの成子坂のみんなを見て…飄々としたただのバカっぽいのにたまにちょっとその…男らしくて…私が大人としてうまくやれてるか心配になったときに限って側にいて甘えさせてくれて…そんなただのタイミングのいい人…
    もう落ちてしまっているのだどうしようもなく
    職業柄簡単に手球に取れるはずなのにあの隊長だけは妙に欲がないというかがっついてこない割にこちらに興味しんしんだから調子を崩される…
    「私…意外と魅力がない…?」
    嫌な想像を頭を振って払いながら今度は絶対隊長から襲わせてやると決意しバカヅラ下げて寝てる隊長を蹴り起こした

小結さんとイチャイチャしてキャバ嬢に嫉妬されたいっす
いままでなんだかんだ隊長からめっちゃチヤホヤされてたキャバ嬢なんすけど小結さんがきてから少しずつ変わって来るっす
小結さんにやたらと優しくしてあんな子のどこがいいのよ…とふてくされるゆみを尻目に小結さんのお尻を見て癒されたいっす…
隊長さん~いつも疲れ様です~なんて言われて頭を撫でられた日には僕はもうっす
もちろんそんなふうにイチャイチャしてるのを見てキャバ嬢もキャバ嬢としてのプライドをかけて、ねえ…少し酔っちゃったみたい…とかあざといテンプレ使って対抗意識を燃やしてくれるんすけどあえてスルーしてウコンの力をさっと渡したいっす
みんなでやる歓迎会とか祝賀会もいつもは1番にキャバ嬢にサラダよそったりお酒注いでくれるあの頃の隊長はもういないっす
全部あの女のせいで…そう思いつつもそんな発想をする自分に嫌気がさすゆみで今日もシコるっす

最近隊長と飲みに行く機会が減っている
アクトレスの増員や夜露の言うところの『ナワバリ争い』もあるだろうが私にはどうしても大関小結その人が入社したことに大きな原因があるように思う
いやまぁ私はそもそも追いかける女なんかじゃなければ別に隊長にそこまで惚れ込んでいるわけでもない…けど
「なーんか…釈然としないのよね…」
隊長とあまり目が合わない。話しかけても逃げられる。小結さんを見かけるとへらへらしながらついていく。
別に何とも思ってないけどね。売り上げにならないし…そう売り上げにならない商売あがったりなのだだから私は隊長を今一度私に惚れ込ませなければならない。
そうと決まれば行動は早く隊長のところに急ぐ…のはシロウト。
まずは身だしなみをチェックしどこからどう見ても美人の子を演出してから隊長を探し始める。
勝負は昼休憩終了5分前一方的に約束を取り付けて仕事に戻り逃げ場をなくす!さあ覚悟しなさい隊長…と
そのときふと食堂の厨房に小結さんと…隊長が見えた。
二人並んで料理を作っているようだ…
その姿はオシドリ夫婦を想像させるもので…私はそのまま踵を返してその場を離れた。

  • 最近ゆみの様子がおかしい。
    俺が話しかけようとするとそそくさと逃げていき全く会話ができないのだ。困ったな…今日中には決めないと非常にまずい。
    何故なら俺は3/14にゆみにホワイトデーのお返しデーt…飲み会を開催する予定だからだ。
    いつも世話になっているゆみと二人きりで酒を飲みながら小結さんに教わったクッキーを渡していい感じに…いい関係を築こうと思っているのだが…
    なんにせよ今日こそ失敗できないのだ。昼休みに小結さん指導の下本番クッキーを作りお墨付きが出てさあゆみを誘いに行くぞと思ったら食堂を通りかかったゆみが目に入る。
    これ幸いと小結さんに礼を言いゆみのもとに向かおうとするもゆみはどこかに歩きだしてしまった。
    俺は急いで後を追いかけたのだった。

ゆみとイチャイチャしたいという漠然たる願いを頭に秘めたまま仕事をしていたせいでなんかいつの間にか作業中の書類にゆみへのラブコールが混じっていた
隊長そろそろ書類作成終わった?と後ろから覗き込んで来るゆみの顔が見えたのはそれからだったなんてこった俺ともあろうものが接近に気づかないなんて
画面を注視してゆみは目をぱちくりさせて何これ?とだけ呟くもんだから俺はヘヘッ…アッ…はい…すんません…と持ち込み不可のカードゲームで遊んでたのを教師に見つかった時みたいな反応するしかない
その…隊長私のこと好きなの?そんな直球で聞かないでよ好きになるじゃんもう好きだったわ肯定するとゆみが立ち上がったその隙を見逃さず文書を削除する俺の1時間なんだったの怪文書部分だけ切り取れよ復元しろ復元
ふーん…へぇー…そう呟きながらニヤニヤするゆみに嫌な予感がぞくりと背を走る許してください仁王様
ゆみは言いたいことがあるから今日飲みに付き合えとのことで約束を勝手に取り付けられたあーこれあれじゃんこんなクソ隊長の下でやってられるか辞職してホスト君とくっつきまーすみたいなかんじで俺が酔い潰されて一人寂しく置き去りにされるやつじゃん

やっぱり胸なのかしら…大関小結にデレデレしている隊長を眺めながら四谷ゆみは考える
なんだかんだそこそこの付き合いでいい感じにもなってたのに数日前に入社してきた彼女に立場を奪われかけてるのは気持ちのいいものではない
もっとも別に付き合っていたというわけでもないし飲み友達くらいの感覚だったし
そう自分に言い聞かせてモヤモヤした気分を無理やり打ち払おうとしていると隊長から声をかけられた
相談があるから今夜飲みに行かないかとのことで隊長から誘って来るのはなかなか珍しい
久々に二人きりで飲めるということでそれまでのモヤモヤはぱっと霧散したがそれでも女としての本能は勘を全開に働かせ警鐘を鳴らしていた
悪い予感ほど当たるものでいざ飲みに行った時の相談というのは小結さんとデートすることになったが今まで童貞だった俺にはわからないから恋愛経験の豊富そうな私に尋ねたいとのことで
自分の初恋が無残な音を立てて崩れていくのを実感しながら私は客がしつこく誘ってきた名所について馬鹿正直に話すのだった
彼が少しでも笑顔でいてくれるのがせめて私にとっての幸せなのかもしれない
例えその笑顔が私に向けられるものじゃなかったとしても

ゆみさんとは夫婦漫才するっす

…ひょっとして小結さんには求婚するレベルっすけどゆみさんとは事実婚状態だから取られる心配はあんまりしなくてもいいっす?

傍から見てると完全に夫婦漫才のおしどり夫婦っすから誰もわざわざ聞かなかったっすけどまだ付き合ってすらいないっすか!?
そんなところに小結さん登場で隊長は一線引きつつ友好的に小結さんに接するっす
ちょっと私と対応ちがくない!?とゆみさんが暗黒オーラ背負ってもう大変!
知らぬは本人ばかりなり…このハチャメチャな恋模様はどこに着地するっすか!? 待て次号!!っす

「もう辞めちゃおうかしら」
今日はなにかと皆忙しいようで、珍しく事務所には仕事中の隊長とソファーで寝そべる私の2人だけだ。
そんな事務所で私が小さな声で呟いたのは、ただ言ってみたぐらいの意味しかない独り言だったのだが。
耳ざとい隊長にはバッチリ聞こえていたようで、飲んでいたらしいコーヒー片手にゲホゲホむせかえっていた。
「あー…なんだ、やっぱり二足のわらじって大変なのか?」
そりゃそうよ、と軽く返事をしつつ、キャバクラの事に想いを馳せる。
給料が良いとはいえ、客商売に競争社会で気苦労は絶えない。だからこそ、そんな言葉が不意に口から出たのかも知れない。
「俺はだな…成子坂製作所の皆の事を大事に思っていて、もちろんゆみもその中に含まれていて…いや変な意味じゃなく。
面倒見がいいのも知ってるし助かってる、それにゆみがいてくれたら落ち着くというか…歳も近いし…
でも倒れたりしたら大変だし無理に引き止めは…しない、けども…出来るならそばに…じゃない!一緒に、そう一緒に働きたいと思っていて…」
そこまで聞いて、吹き出してしまう。
「何言ってんの、ここじゃなくてお店よお・み・せ。
こーんな風にくつろいでても文句は出ないし給料も出る職場なんて、意地でも辞めないわよ!」
ケタケタ笑いながら答えると、そうかよかった、いやサボりはよくないぞ!と言ってパソコンと向き合ってしまった。
さっきの発言がよほど恥ずかしかったのだろう、後ろからでも耳まで真っ赤なのが見てとれる。
バカめ、恥ずかしいのはこちらも同じだ。
私は何かの間違いで火照った顔を見られたりしないよう、クッションに顔を深くうずめるのだった。

ゆみ?寝たのか?
まさか蟒蛇のゆみが酔い潰れて寝るだなんてそんなこと考え付きもしなかったが現に机に突っ伏して寝息を立てている
人の家で遠慮なく寝ると言うのは彼女らしくはあるのだが
首を悪くするぞと声をかけてみても反応することもなくアクトレス業に支障が出られても困ると彼女を抱きベッドまで運んだ矢先のことだった
突如ゆみは目を見開きにやっと笑うと俺をベッドの上に抱き寄せると首筋に熱いベーゼをくれた
こうでもしないと抱いてくれないでしょ?そう囁くと彼女は俺のズボンのチャックに手を

了リス・ギ了・了イギスのゆみさん人気はすごいよね
アニメ化に続いてOVA「ゆみと3LDK暮らし」全3巻にキャラソンCD3枚にバイノーラルボイスドラマCD「ゆみと添い寝」とバレイベ追加報酬の「おシゴト着」とアクトレス初の☆5専用ギアアペンド
ゆみさんは確かに魅力的だけど初めて出て来てキャバ嬢設定とか攻めてるなって言われてた頃からするとまさかこんなことになるとはって感じだ

あ…隊長!ねえ聞いてよ…
最近は言った若い子たちが「四谷さんゲーム」なんて始めたみたいで…
なにそれって私が聞きたいわ…噂を聞くに私の所作を真似て隊長をたぶらかすゲームらしいんだけど…って目をそらさないで
心当たりないわけないっしょ?
隊長も隊長よ…なんでやんわりと止めてくれないのよめんどくさいじゃない…
まぁ可愛いのは分かるわよ?だって私かわいいのが仕事だし…
ね?隊長…プロの可愛さ体験してみる?
安くしとくわ…今日の夜のあなたの時間で許してあげる
いつものお店で20時…残業?
私の為に終わらせて…ね?

6月にブライダルキャバ嬢が出るっすよ

「まさか私が本当に隊長と結婚することになるなんてね…隊長のこと好きな子に悪い気がするわ」
衣装を合わせながらゆみがあまり大きくない声で言う
隊長の事が好きな奴が他にもいるなんてないない
冗談にしたってむなしすぎるぞゆみというと彼女は困ったような顔をした
「知らぬは本人ばかりなり…ね。お陰で私が一足お先にゴールインしちゃったわけだけどその鈍さは刺されるやつよ」
そんなこと言われても俺はゆみに夢中だったし…もちろん隊長としてみんなのことをみてたけどあの年代の子達ならみんな人懐っこいもんじゃないのかな
処置なしと言った感じでゆみは顔を背けて話を切り上げ肩をすくめる
「まぁ…悪い気はしないわ」
ボソッと呟いたゆみは肩まで赤くなっていた

次のイベントはお花見よね!
場所取りは新人に任せて私たちはお酒の準備をしましょう♥
カラオケ型ギアがあればカラオケセット運ばなくてもいいのにね
ちょっと提案してみようかな…なんてシタラじゃあるまいしそんなことしないわ
冗談は置いておいてブルーシートにアウトドア用品と必要なものは意外と多いわ隊長
男の人手期待してるから頑張ってね?
あとどう考えても全員一堂に会するのは難しいと思うから隊長は期間中毎日花見をやるのよ
でないと不公平でしょ?
私も一緒に手伝ってあげるから頑張ってね…ダーリン♥
うまくいったらお店でいっぱいおごってあげるわ♥

シャード内の博物館には昔に持ち出された文化遺産が並べられている
さて今日はそんな博物館の優待チケットを貰ったので試しにと空いていた子を誘っては見たものの…ついてきたのは暇してたゆみだけだった
博物館は閑散としており優待券を配って人を入れようとするのもわかる惨状だった
とりあえず順番に見ようと歩いていくことにした
興味の湧いたもの以外はナナメ読みで済ませるようにして歩いているとゆみがある展示で足を止めた
「これがカメラ?全然わからないわ」
スマホなんかとは全然形の違う機械が置いてある
「銀塩カメラだね。よくこんな化石が残ってたもんだしかもOM-1N黒なんてお宝中のお宝じゃないか…OMっていうのはオリンパスの生み出した傑作フラッグシップでそれに装着されるZUIKOレンズも極上…しかもこのカメラの良さは軽くて小さい最高モデルという事なんだ…いい映りだったよ…55mmF1.2なんて憧れのレンズだった」
「…隊長?」
ゆみが不審者を見るような目でこちらを見る
俺自身も信じられないという思いに駆られる
今「誰」が話していたんだ…?
突然の恐怖体験に周囲にある骨董品に恐怖を抱いた俺たちはそそくさと博物館を後にした

壮年になってマーマみたいになった肝っ玉かーちゃんゆみいいよね
ガキんちょにまでゆみーゆみーって呼ばれておかーさんでしょってゲンコ張られるガキんちょがぐえーしてるときにこっそり昔の写真見せて誰だよスッゲー美人だな!とーちゃんフリンか?って言われてもう一発げんこつ噛ましてバカ滅多なこと言うなお前のかーちゃんだよって言ってはぁ嘘だろ!?ってビックリさせたい
その一部始終を見られててゆみに二人揃ってグリグリされたあとに遊んでないで皿ぐらい出す!って尻叩かれながら一家団欒の時間を過ごしたい

キャバ嬢を抱きしめながら「愛してるよ…夜露」って致命的な失言をして「なんでここで夜露ちゃんが出てくるのよ!」って涙ながらに叫ばれて「ち…違うんだ今のは四谷って言ったんだ…」って自分でも無理のあると思ってる弁明をしてやっぱり受け入れられず「いつもは名前で呼んでくれるじゃない!嘘吐き!」とビンタされた瞬間に奥歯に仕込んだ自決用小型爆弾を作動させて顔面爆発四散させながら死に隊

ゆみはかわいいなあ
散らかった部屋の中そんなことを言いながら私の頭を撫でさする隊長はいつものしゃんとした…とまではいかないにせよ社会人然とした態度はなく、猫を破顔しながら撫でる猫好きのようなものだった
まさか隊長の酔いが回るとこんなことになるだなんて思いもしなかったけど…まあ悪い気はしないからいいわね
普段キャバクラで愚痴聞かされたりセクハラされたりするのには慣れてるんだしたまには隊長も労ってやるか
そんなことを考えながらはいはいゆみちゃんですよーなんておどけてみせて隊長の頰に触れる
ほんのりと温かい熱が手に伝わり少しどきっとしてしまう
ゆみー愛してるぞー
そんな世迷言を吐きながら両手で髪をわしゃわしゃとかき乱す隊長にはいはい私もよと適当に返しながらこの厄介なお客さんをどうやって寝かせるかに思案を巡らせていた

かわいくてかわいいゆみ

隊長?分かりやすいおだてよりもっと分かりやすいこ・れ♥出してくれたらサービスするよ?
ちょっとなにマジになってるのよ…やめてよ…どうせ逃げるんでしょ?わかってるんだか…ちょっと近い近い!
まって…心の準備…おぼこいいうな!百戦錬磨よ!でも直球はダメ…待ってよぉ……

「あれ?ゆみじゃないか」
街中で偶然出会った彼女に声を掛けると、伏し目がちだった彼女の顔が明るくなる。
「あら隊長じゃない!奇遇ねぇこんな街中で」
こんな、という言い方に若干の棘があった。それもそのはず、今日は2/14。街中はカップルで溢れかえっている。
「ふーん。てっきりシタラあたりを連れてるかと思ったけど、そうでもないみたいね。寂しい独身貴族ってヤツ?」
何言ってんだ、と肩をすくめる。こちとら仕事帰り、さっきまで働く身分だったのだ。独身には違いないが。
「独りもんには辛い時期ねー♪周りが恋人同士だらけで気が滅入っちゃうんじゃない?もう慣れっこなのかも知れないけど」
そういうお前はどうなんだ、と言いかけるが、どうやら彼女も自分で言って虚しくなったようで気を紛らわすかの如く髪を弄りだした。
「はぁー。まぁいっか。とりあえず飲みにいきましょ!とっておきの店があるって前言ってたでしょ?ついていってあげる。モチロン隊長の奢りね♪」
有無を言わさぬ彼女の言動に呆れつつ、飲みに行くのは賛成だ。独りもんの気も紛れるだろう。
そして俺はせっかくだから、と腕を組んだ彼女と共に、とっておきの店に歩みを進めるのだった。

一人深夜の事務室でちんちんが寂しくなることは誰しもあることだと思う
ふと愛花ちゃんにちんちん舐めてもらいてえ~~~~と叫んでしまったが今製作所には俺一人しかいない多分
そう思ってたらなんか廊下の方からガタッて音がするんですね
もしかして幽霊かなー嫌だなー怖いなーと思って廊下に出て見るとそこには目を泳がせた四谷ゆみさんがいらっしゃってですね
私は何も聞かなかったわとかほざいて立ち去ろうとするからまあ待ってくれ話を聞いてくれと肩を掴むと寂しくなったままのちんちんがそのまま押し付けられる形になって蛍光灯に照らされたゆみの顔がほんのり赤くなったのが見えたのを最後に記憶が途切れて目が覚めたら拘置所にぶち込まれてました

「財布失くしちゃったみたい、探しに行くわよ。」
秘密手帳の次は財布かと思いつつゆみに付いて行く事に
「この映画館のこのスクリーンよ。今は恋愛映画に変わってるみたい。中を探すついでに観ていきましょ。」
こういうのって館員に聞くもんじゃないのかと思いつつ2時間映画を楽しむ
「ここのカフェ来てみたかったのよね」
明らかに初めて来た発言が聞こえたが聞いてないフリをする。コーヒーが美味い
その後あちこち財布を探すが見つからない。いったん事務所に戻ろうか。
「財布?ああ財布。なんだか事務所にある気がして来たわ。具体的にはロッカーの中。
見つかったら飲みに行きましょ。」
なんだか俺も猛烈にある気がして来た。
とりあえず今日行く店でも考えておくか。

日頃の激務を癒す一種の清涼剤としての役割をはたした連休も終わり、怒涛のごとく心身を打ちのめした平日も終わろうかとしていた深夜、同僚の四谷ゆみととも二人に成子坂に残っていた隊長はある生理的欲求を持て余していた。
そば食いてぇ。
理由は分からない。だが今は猛烈にそばが食べたい。
タデ科の植物である蕎麦の実を粉としまとめ上げ麺類とし古来より広く親しまれてきたそれは、調味として用いられるつゆによって時、場所、個人の好みにあわせいかような形をもとるいわば万能の食材としての側面を持つといえよう。しかし、かような万能性をもつということは必ずしも美味であるという保証にあらず、現に風味の失われた安物のそばをすすらねばならない時のあの荒涼とした惨憺たる胸の内と屈辱たるやもう…!!
「ちょっとどうしたのよ隊長そんな怖い顔して」
ゆみがこっちをむいて心配してくるがそんなの関係ねえ今俺に必要なのはそばなんだそば食いてえ。
とにもかくにも、この男の口内はあのつるりとした滑らかな喉越しと鼻へと通り抜けるさわやかな風味を求め、いまや主である男の体をも支配せんとしていた。
ああしかし悲しいかな、成子坂に赴任したばかりのこの男にはいまだ成子坂の土地勘というものが備わっていなかった。
かくなるうえは24時間営業のスーパーに赴き、あの忌々しい冷凍のそばをもって無聊の慰めとするほかないと一人悲壮なる決意を決していた男にその時、一筋の光明が差す!
「ところで隊長、今度の休みに飲みに行かない?蕎麦とお酒がおいしいお店が…」
ゆみがそう言い終わるより先に刹那、隊長は無意識のうちにゆみの手を取っていた。
「え、ちょっと何!?」
いつになく真剣な表情で見つめる隊長に四ツ谷ゆみは困惑する。
「行こう、すぐ行こう、今すぐに行こう」
「え、何それ。ていうかちょっと待って今財布がちょっとピンチっていうか首をつかむな!」
「大丈夫大丈夫今日は俺が奢るから!」
こうして隊長と四谷ゆみの二人は夜の街へと消えていった。なお、隊長の財布が空になったことは言うまでもない。

ゆみがよくやる人差し指と親指を輪にしてひらひら振るあれ
本人はお金のつもりなんだろうけどどうしても俺にはその…そういうことに見えてしまう
スーツでも私服でも見る度に前屈みになってしまいそうになるのゆみは気づいてないんだろうか
いずれにせよこのままでは精神衛生上よろしくないので他に人がいないところにゆみを呼び出してあの仕草をやめてもらえるよう相談を持ちかけることにしたのだが…
「え?私の手振りで隊長が…?ただの円マーク…手コ…!?違うわよ!!えっえっ?じゃあ今まで隊長ずっとそういう目で私のこと…?」
どう取り繕うてもセクハラ以外の何者でもない
相談した俺が馬鹿だった
ゆみに深く頭を下げ明日で仕事を辞めることを宣言した
何もそこまでと慌てるゆみを制してその場から離れようとするが裾を掴まれて阻まれる
「その…エッチな気分になっちゃうのがよくないんでしょ?だったら発散しちゃえばいいじゃない」
どこか無理した表情でゆみは右手の人差し指と親指で輪を作りひらひらと振る
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ゆみって束縛されるの嫌いそうだけどそんなゆみに束縛してほしいって思わせるほどぞっこんにしたいっす
チョーカー貰って首輪ねこれって顔を赤らめて喜んじゃうゆみ…ウッ見たいっす!
ことあるごとに未成年組と自分を比べてあれこれ言うゆみにやかましいお前しか見えとらんわって夢中で愛したいっす
箱で買ったゴムが足りなくなるぐらいエッチしてゴムなくなっちゃった…って言ったら多分大丈夫だからもっと…って誘ってくるゆみエロいっす腰が立たなくなるまでやるっす
次の日仲良く夕方まで寝ててデートがご破産になってがっかりするゆみと起き抜けにもう一回エッチしてまたプラン考えて出かけようって二人で雑誌覗き込みながらどこ行きたいか言い合いたいっす

ゆみ…結婚しよう
月並みだけど美しい告白をした彼は私の手を取り…
またあの夢だ。いい加減私の脳細胞もあんな男のことなんか忘れて仕舞えばいいのに
結婚だけして、やることもやらないで隊員庇って死ぬなんて…ふざけてるとしか言いようがないわ
もう本当…ふざけてる
どうして私はエミッション能力を失ってしまったのかしら?もう少し若ければ?もう少し早く彼と会っていれば?
後悔が高波のように押し寄せてくる
何度目だろうこの憂鬱な朝は
私はスーツに着替えるといつもの足取りで家を出た

私はスーツに着替えるといつもの足取りで家を出た

「おはようございます!ゆみさん!」
「こら!隊長でしょ。親しき仲にも礼儀ありよ。」
「というわけで~、今日は新任祝い格ゲー大会しようよ新隊長殿!」「どういうわけよ!!!」
......まったく、人のこと励まそうとしちゃって...あんた達だって無理して明るい顔してるじゃない
でもまぁ、あんたが救ったこの会社はどうにかやって行けてるわよ
だから.......また夢にくらい出て来なさいよね

ゆみの側に猫耳を置いておきたい観察したい
「んー?」
交代と引継ぎを終え机の上を軽くチェックするとなんだこれは…猫耳…?誰かの忘れものだろうか。と持ち主探しをしようと思ったもののディスプレイと書類の状態を見ると思った以上に進んでない…これは残業確定ね…そう思いながら猫耳の持ち主探しは一旦忘れて仕事にとりかかった。
「はぁ…ようやく終わった…気が付けば事務所の中に残っているのは私一人。完成した書類を社内ポストに入れ完成して整理したデータは所定のクラウドへ…さすがに疲れたわね…方首をコキコキ言わせながら回すとさすがにおばさん臭かったかしらと周囲を見る。よかった、誰もいない…。
「そういえば…」
結局この猫耳は誰のものなのかしら。持ち上げて手慰みに耳の部分を触ると思ったより質感がいい…出来がいいというのかしら…少し興味がわき、更衣室で試着を試みた。
「にゃーん?ゆみにゃんこですにゃ」
猫のポーズをしながらそんな遊びをしていると後ろから物音が…って隊長!?
最悪だ…どうしよう…私は対策を考えるも頭が真っ白になっていた。
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ゆみとホラー映画見たい
「映画?おごり?行く行くー」
隊長の緊張や覚悟からは想像もできないほどあっさり快諾したゆみと映画に行くことになった。隊長が映画の内容を伝えなかったことを思い出すのは当日になってからだった。
「は…? ほらー…えいが?」
映画館前で待ち合わせたゆみにたまたまもらった映画のチケットの話をするとにわかに顔を青ざめさせる。もしかして苦手だったかと聞くもいやいやへーきへーき。スプラッタがちょっと苦手なだけで話が面白かったらおっけーと言うのでじゃあと早速映画を見ることにした。
「ぁ~うそうそ待って待って…もう嫌ぁなんなのぉ…」
開始10分ともたなかったゆみを外の公園に連れ出しベンチに寝かせて膝枕をする。知らなかったとはいえ気の毒なことをしてしまった。
「あー…ごめん隊長…せっかくのチケット無駄にしちゃったねー」
「いいよ。俺が確認しなかったのが悪かったんだ。こっちこそごめんな」
飲み会とかとは違う二人っきりの外出…まぁその…デートがこんな滑り出しで若干へこんではいるがまぁ自業自得というものだ。
無意識にゆみの柔らかいネコ毛を撫でていたがその時のゆみの表情は誰も知らない。

ゆみが高いところのものを取ろうとしてるときに後ろから取ってあげたいゆみはらしくもなく男女の身長差を意識して恥じらってる…というところは見せないから普通にありがとーって言ってくるけど実はこっちのほうが近くに行ってふと下を見る
ゆみの頭とかつむじとかが見えて小さくて華奢だよなと思いつつ服の胸元にちらっと目が行ってしまって激しい自己嫌悪に陥ったり荷物を持った俺が廊下の真ん中寄りを歩くもんだからゆみとすれ違うときに少し体が擦れてしまって全力でその感触に集中して柔らかい身体だよなって想像してしまってそんなことばっかり考えてるからだめなんだと思ったり酔って冗談で手を握られてもう頭が真っ白になってあらぬことを口走ってしまって俺とゆみは付き合うことになったんだけど楓と文嘉なら言いふらさなそうだし安心だな一応社内恋愛だけど報告しておこうと思ってじゃあそういう事だから今後も改めてよろしく

「隊長なんか食べ物ないの?お腹空いたー」
人んちの冷蔵庫の酒をスッカラカンにしたゆみがぐだぐだと腹の減りを主張してきた
もちろんこんなこと聞くってことはすぐ食べられるつまみがないってことだ…というかゆみ人んちの冷蔵庫に頭突っ込んで物色すんのやめろ…
「あーっ!ひき肉あるじゃん!なんで冷蔵庫に乾麺が…?あとはーミートソース缶!!やった!!」
「やったじゃねーよ酒入ったまま料理する気か?」
大丈夫よーと勝手知ったる台所で勝手に料理を始めるゆみ…俺の分はあるんだろうな…
もちろんよーと手慣れた手付きでフライパンにミートソースを入れケチャップにチーズとひき肉を追加し温めつつポットのお湯を鍋に放り込み沸騰させスパゲティを3掴み入れてタイマーをセット
酒を飲んでるとは思えない手際の良さに舌を巻く
「店で食べ物とかも作ってたのか?」
「まさか。いっぱい食べるなら多少自分で出来たほうが都合がいいのよ」
重めの夜食が出来上がっていく匂いに腹をすかせながら俺は秘蔵のワインを取りに行くことにした

ゆみさんにホワイトデーの催促されたい
一生懸命お店回ったりネットの評価調べたりしてるのに
探してる横から
「それはちょっと違うわねー女心が分からないひとなんだからーとか」
いっぱい駄目だしされてじゃあどうしたらいいんですかーって泣きごと言ったら
「仕方ないわね…今回は特別にレクチャーしてあげるわよ」
って言っていい感じのデートコースとかいっぱい連れまわされたい
行く先々でチョコの専門店やら夜景の綺麗なレストランやら服屋やらと色々なところにいくもんだから
結局ゆみさん何が欲しいんですか?って尋ねると

「じゃあ今年分はこれを貰おうかな」

って呟いたと思ったら不意にキスしてきて
「来年はもっと頑張りなさいよ?期待しないで待ってるから」
って振り向かずに颯爽と帰っちゃって
来年のために指輪を用意するんだ俺

隊長お疲れ様
私?お酒の介抱ならなれてるから平気でーす
みんな寝かしつけたから私達はもう少しだけ飲みましょ?味もわからないうちにパカパカ開けられたら困るから秘蔵のはとっておいたの
イタリアの赤はやっぱり美味しいのよね
ツマミは…なんか適当に持ってくるわ
私の秘蔵のボトルを分けるなんてなかなかないんだから感謝してよね
じゃあ乾杯する?何にってそうね…ゆみと隊長介抱お疲れ様でした…ようやくの二人っきりに乾杯なんてどう?
隊長だけはアフターまで面倒見てあげる
朝までじっくりと楽しみましょ?

「海はいいけど何も塩水まで再現しなくたっていいわよねー」
ゆみがいつもより艶の少ない髪をいじりながら言う。シャワーは浴びたようだが軽くお湯で塩を流した程度らしくシャンプーとリンスは改めてやるそうだ。女性は大変だなと思いながら軽く髪を触ろうとすると弾かれたようにのけぞりちょっと隊長ー?とジト目で見られる。
「あーあ…早くお風呂に入りたい…予想はしてたけどお泊まりなしなんてつまんなーい」
なんて言うものだから俺はつい、魔が差して、オイルの仕返しにからかってやろうと思った。
「じゃあ明日は休暇をとって今日は宿をとろう。少し早いが二人っきりで温泉旅行だ」
ゆみは目を見開いて驚く。しめしめと思ったのもつかの間、もじもじしながら顔を赤くしたゆみはまんざらでもなさそうに黙って頷いた。

  • 「一時間後ぐらいにまたここで」
    大浴場前でそんなことを言うもゆみはなんだか煮え切らない様子…どうしたのというといつもの人をからかうような態度は鳴りを潜め俺の耳に口を寄せると「内風呂…あったよね…」とささやく。どうやら本当に本気らしい…というのはさすがに卑怯か。海の帰り、二人きりで宿に誘っておいて何もないなんて俺とゆみの関係性じゃどう考えてもおかしい。
    いずれいずれと思っていたいずれは今日だった。何の用意もないが心は最初から決まっていた。今日俺はゆみを抱く。うすらばかでも覚悟を決めれば時間をかけてでもやるだけだ。ガタンゴトンと自販機から吐き出されるやけに高い缶ビールを抱えてゆみと俺は部屋に向かった。。
  • 続きはろだで!

「」長は乙女回路持ち多そうっすもんね…

ババアと恋愛したがる隊長は間違いなく乙女回路持ちっす

そんな…そんなはず…男だからこそゆみと並んで歩いていくような同等で似てるけど違う価値観で離れては近づきを繰り返しながら何処かでその線が交わる様に互いを求めあって日頃から気楽に話していた相手を恋愛対象として意識して失うのが怖いからいつもどおりの軽口を叩きあってでも抑えられる気持ちじゃないから少しずつ距離を縮めて勇気を出して打ち明けた想いは通じ合っていて愛を育んで手をつないでデートもしてでもこれって今までと変わりないねって二人して笑ってじゃあ恋人同士がするようなことしよっかって夜景の見える丘で二人きりで誰にも見られずに唇を重ねてから付き合い始めて初めて「そういう施設」に入って緊張しながらもお互いの全てをさらけ出して体を重ねて絶対に離さないでねって束縛が嫌いなはずのゆみが自分だけを見てって懇願してくるのを望むのは普通のことっすよ

何度聞いたかわからない体調の軽口。でも隊長はずるい人で、とにかくタイミングがいいのだ。私がほしいと思ったときに一番ほしい言葉を投げつけてくるからもう男なんて信用しない…と思っていた私の心は浮足立ってしまう。それはいけないと頭ではわかっていても心が受け入れたがってしまう。例えば成子坂のみんなで来た南国シャードへのバカンス。
気象管理システムが時間の概念を思い出させるために映し出された夕日に片付けも着替えも終わって少し早く更衣室から出てきた隊長と鉢合わせた私は少し風に当たろうと海辺を散歩する。
こんな日が続けばいいのにね、なんて。何も考えずに言った隊長の言葉が私の胸を締め付けて、そういえば私の水着へのコメントまだ聞いてないんだけど?と機嫌が悪そうにぶっきらぼうな態度をとった。
彼は少し考える素振りを見せると、私の方に向き直り、言うのだ。「結婚しよう」と。何度聞いたかわからない冗談…だと思う。
でもこんなシチュエーションで…まっすぐ目を見て言われたら…
「今夜汽車から抜け出して海岸の星を見よう」
私も大概バカな女なのかもしれない。私はかわそうと身構えていた心を落ち着けて彼の言葉に返事をした。

ゆみさんのイベントのくだりでオイルを隊長が持ってて
からかい目的でじゃあ塗ってやるよなんてフロントの紐に手をかけたところでゆみさんが顔真っ赤にして隊長の手を抑えるんだけど
ゆみさんの手に全然力が入ってないんで紐がゆっくりゆっくり解けていって
ゆみさんも小声でちょっと…だめ…とか言って形だけの抵抗を繰り返した挙句蝶々結びが解けたところでゆみさんの潤んだ瞳と目が合って
そのまま浜辺に押し倒すような怪文書が見たいんで誰かに書いて欲しいっす

  • 「オイルがあったら塗ってもらったのにね?残念」
    そんなこともあろうかと…というか女性陣が多いから一応用意しておいたオイルがあることをゆみに告げると言い出しっぺの癖に狼狽している。これはれあゆみだなと思い、からかうつもり…と言っては嘘になるが僅かな下心といたずら心を持ってゆみに迫る。後ずさるゆみは静かな場所がいいからと人気のないところに準備したパラソルの下でレジャーシートに躓き尻もちをつく。その横に膝立ちになった俺はゆみの肩を掴んで仰向けに寝せて少しだけ体重をかけ、抵抗しにくくした。
    完全に目が泳いで言葉にならない音を出すゆみは腹の上に跨って手首を掴むとギュッと目を閉じそんなつもりじゃ…とか言いながら体をよじるが片手で彼女の豊満な胸を締め付ける水着の紐をとこうと手をかけると、それは本当に待ってと俺の手を掴んで力なく抵抗する。しかし抵抗はあまりに弱々しくいともたやすく彼女の柔らかい双丘を押しつぶしながら紐は解けてしまう。薄い布で押しとどめられていた胸が開放され眩しい白い肌が重力に逆らわず目の前に広がった。
    や…だめ…といつものこちらをからかうような態度はなりを潜め恥じらうゆみに目を合わせる。気温は高いというのになお湿っぽい吐息と潤んだ瞳が俺の理性を焼き切り、ついオイルを手に取り伸ばすと純白の水着が心もとなく覆い隠す白い肌を侵略せんと手を伸ばした。
    双丘の谷間を指先でなぞりあげ鎖骨をなめあげるようにオイルをなじませ刷り込むとゆみは上ずった吐息を漏らし目を固く閉じる。身体はは硬直しており肩に力が入っているが鎖骨から方にかけて何度も撫でるように手を往復させると力が抜けていくのがわかる。
    「今ならまだ冗談で済むから」
    そう言うゆみだがそれこそ冗談じゃない。海に来て、ゆみの水着姿を見てから俺はずっとこうしたいと思っていたのだ。
    ついに俺は彼女の柔らかい胸元に本格的に手をかけた。
    まずは水着から露出している部分を優しく撫で回す。上気した肌とその柔らかさで頭がおかしくなりそうだ。安心させるために好きだよ…あいしてるとつぶやきながら撫で回すがその言葉はどこから上滑りしている。
    遂に指先を水着に潜り込ませて隠された彼女の胸に咲く蕾をなぞりあげるとひときわ高く艶っぽい声を上げる。
    しばらく水着と胸に挟まれる手の感触を楽しんでいたがゆみの反応を見てそろそろいいかと思いそっと手首を返して外側に水着を目繰り広げる。
    散々撫で擦られた乳首はツンも天を指しその魅力的な胸の全貌があきらかになった。思わず息を呑みきれいだ…と呟くとほんとばか…しんじゃえ…とゆみが目に涙をためながら抗議した。俺は彼女の胸を揉みしだかんとてをのばし…その柔肌を思う存分に楽しむのだった。

無理がたたってフラフラな隊長が15分仮眠せさてくれって言ったら携帯のアラームを誰かに止められてて気付いたら柔らかな枕に頭を載せて終業時間になってる怪文書が欲しいっす

「も…もう無理だ…ゆみ…俺は仮眠を取らせてもらう…15分は絶対起こすな!15分たったら絶対起こしてくれ!頼むぞゆみ!」
隊長はテキパキ…と言ってもフラフラで見るからに精彩の欠ける様子でアラームを設定すると床に寝転がったと思ったらすぐに寝息を立て始める。
ほんと、バカなんだからとアラーム設定を解除した私は髪もボサボサでおよそ社会人とは思えない隊長の顔を見ると、ふといろんなことが胸をよぎって胸が一杯になった。まぁそれはそれとして…こんなチャンスは滅多にない。
枕代わりに使っていたカバンを自分の膝とすり替えると隊長は心なしか寝顔が安らかになった…気がする。多分気のせい。でもそれでいい。私がやりたくてやってることだから。
他の宿直のアクトレスはいない。朝まで隊長は私のものだ。
私は端末を使ってドローンの電源を切って電気も消すと隊長の頭を撫で、誰にも見られない暗闇の中、隊長の頬にちょっとしたいたずらを仕掛けた。
「無理するのもいいけど、私が癒せる範囲にしておいてよね」
翌朝目が覚めた俺は床に転がっており、目の前にはゆみの顔が…ん?翌朝!?
「朝じゃねーか!?」
飛び起きた俺はゆみになんで起こさなかったのとかいろいろ聞いた気がするが答えを聞く暇もなくデスクに向かった。
定時で出勤してきたアクトレスがぎょっとした顔でこちらを見るが徹夜…ではないが修羅場なんだ身なりの汚さは勘弁してほしい。
結局、俺の頬についていたキスマークに気づいたのは昼休憩トイレの洗面所だった…。

南国シャードでのバカンスにみんな受かれているようで、どうにも危なっかしいぐらい浮わついていたがこのシャードの水難対策はバッチリなので肝を冷やさずに俺もゆっくり休めそうだ。
そう思ってビーチチェアに寝転がり徹夜続きの睡眠時間を取り戻そうと目を閉じると自分を呼ぶ声が聞こえる。なんだよー眠いんだけどと明らかに気の緩んだ声で返すと頬に冷たい感覚で飛び起きる。なんなんだと見遣ると両手に缶ビールを持ったゆみがいた。
「隊長寝るのも飲むのも同じよ」
そんな馬鹿な。そういいながら飲むんだけどね。
「バカンスサイコー!乾杯!」
浮かれてんなこいつ…大体ゆみが俺に缶ビールとはいえ酒をおごるなんてどんな浮かれ具合だヴァイスでもくるんじゃないか。
そんな失礼なことを考えながらゆみを見ると白いワンピースで清楚なはずなのに充分に育った胸を小さく魅せるように締め付ける紐が股間に悪い。眠気と酔いでつい不躾な目線で見てしまったかと思い目を逸らすとゆみはつい今しがた見ていた胸を俺の胸板に押し付け首に手を回しながら言った。

「バレンタインのお返し、今欲しいなぁ」
やっぱ浮かれてんなこいつ。

  • 浮かれすぎだろゆみと言うも距離が近すぎてドキドキが止まらない。心臓がバクバク言ってるのがバレそうだバレるぐらいなら止まれと思いながらも身体に感じる暴力的なまでの柔らかさに言葉が出ない。どうにかしないとどうにかなってしまいそうだと思い何か対策をと模索するも何も思い浮かばないから酒と南国シャードのせいにして何も考えずに抱き締め返してみた。中学生かよと思わなくもないが憎からず想っている相手がこんなに積極的に攻めてきたのだからこれぐらいの錯乱は許して欲しい。
    しかしその反応が意外だったのか
    「あっ……」
    としおらしいまるで生娘みたいな反応をするゆみに思わずたまらなくなり、バレンタインのお返しなんて言わずに今すぐ抱きたいよと耳元で呟きながらいきり立った股間を押し付けると見るからに硬直した。職業のわりに変なところでうぶだから余計心をかきみだされる。
    少し身体を離して彼女の瞳を見つめていると、今度はゆみが辛抱たまらなくなったのか、唇の距離がゼロになった。
    俺達の日帰り旅行の予定が延長されることになったのはまた別の話。

ゆみさん他人のことになると大人としての立ち位置で頼れるのに私生活とか自分のことになると急に駄目になるギャップがよくないっす 好きになってしまうっす

年下限定で大人できて自分のことで駄目なところ年上の男に見られてさり気なくそこをフォローされて自分が子供になって相談できる相手になって気安く話せてそんな相手が冗談だろうとはいえ何度も結婚しようと言ってきてて職業柄慣れっこなはずなのに冷静さを欠く自分がいることに気づいて自覚してしまったらもうズルズルで相手のやることなすことに翻弄されてどうしようもなく女の子になってしまいつつも弱いところは見せられないと意固地になってキャバ嬢の経験からええかっこしようとしてもどんどんからまわってもうそれ無理ーになって泣きそうなのに不屈の心で耐えようとするのにバレンタインに未成年組からチョコをもらった話を聞いたり南国シャードでのバカンスで少し勇気を出して二人きりでの旅行に誘ったりしてもう私駄目になっちゃったんだってなって6月にウエディングドレスギア纏って次に結婚しようって言われたら受け入れようと決心するゆみさんいいよな愛してる…

  • 「隊長…私成子坂の子達には大人でいられてるかも知れないけど…実際は信じられないポカミスだってするし自分のことはその…わりとずぼらだしあの子達みたいに若くないし…若干面倒くさいかも…それでも隊長はいいの?」
    6月のある日、いつものように四谷とじゃれあってて流れで結婚しようと言ったら柄にもなく恥ずかしがりながら上目遣いでそんなことを聞いてくる四谷の可愛さの破壊力たるや動悸が止まらなくなる程でそんな新たなパターンを編み出してくるなんてずるいぞ。
    「人に良し悪しがあるのなんか当たり前だろ。全部ひっくるめて四谷が好きだよ」
    ゆみは目を潤ませる。今俺は何か間違えたのかと逡巡するが時間はオンタイムで進んでいく。
    「私ね…男には騙されてばかりで今は利用できるかどうかでしか見てなかった…でもね?隊長の優しさと包容力と気さくさにどんどん惹かれていってる自分がいることに気付いたの。ホント駄目な女ね…貴方のせいよ?だから…責任とって」
    熱を帯びた瞳に視線が絡みついて解けそうもない。そんなの俺だって、同じだ。冗談めかして本心を伝えて逃げ回ってただけだ。でももうやめにしようと思う。
    「四…ゆみ。結婚しよう」

「ただいま」
部屋のドアを開けて声をかけるとパタパタと小走りでエプロン姿に髪を後ろで束ねたゆみがおかえりなさいと出迎えてくれる。
「今料理中だったの。でも駄目ね…想定外のことがあると並列した作業があんまりうまくできないわ」
そういうゆみだが理想が高いだけで実はそれなりにできていることを俺は知っている。今だって俺の上着をテキパキと脱がし終わっており何かを欲しがるような目をしている。俺はゆみにそっと口づけると満足そうに笑って料理に戻るわ。もう少し待っててね、とまた小走りで台所に戻っていく。
機嫌のいい鼻歌を聞けて満足だが行ってらっしゃいとお帰りのキスは未だにちょっと恥ずかしいな、と思ったら台所から声が上がった。
「あーっ!酢が切れた!?これじゃ酢豚じゃなくてただのブタ!!」
やれやれと今しがた脱がせてもらったばかりの上着をはおり、酢を買ってくるよーと台所に声をかける。ついでにアイスでも買っていってやろう。

ゆみさんの水着って事務所に配置して腹から上だけ見てると白ワンピみたいで素晴らしいっすね

視点下げるとVラインがくっきり見えて素晴らしいっすねゆみ行為室に来いそう言うと隊長は彼女の手を取ると腕を引いて更衣室へ向かい横で見ていた文嘉や怜はまたかと呆れ顔でそれを眺めるのだった

「隊長…またなの?」
足元に立ち膝になり白磁のような太腿や腰を撫でまわす隊長にゆみはそう言うとすまん…と謝る隊長。謝られても困るがこちらを見上げる隊長に少しいたずらしたくなったゆみは自らも屈んで隊長の顔を抱きしめる。むにゅりと形を変える胸が紐の隙間から素肌の感触を隊長の顔に押し付けると彼はあからさまに動揺するも深く息を吸い込みながらゆみの身体を抱きしめた。普段は大人っぽいのにこういうところは子供みたいね…と思いながら胸に埋まっている頭を撫でる。このままからかってやろうと思ったけどたまには甘やかすのもいいかもしれない。いつもは同じ立場で並んで歩いている隊長に持ちつ持たれつでいつかは…なんて恥ずかしくて言えそうにないけどね。

「隊長はさ…24歳の女ってどう思う?」
カラン…とグラスの氷を鳴らしながら問いかけてくるゆみ
「一企業人としては…アクトレスはそろそろ引退を考えて今後の進路…身の振り方について考えて欲しいってところですかね…」
「そう……」
それは想定していた答えだったからか
はたまた望んでいたものとは違う答えだったからか…
顔を伏せてグラスを揺らす
琥珀色の液体が波打ちまるでそれはゆみの心を表しているかのようだった
「…でも個人的な意見としては…女性として一番魅力的な……いや、これから更に魅力的になるかもしれない分岐点なんだと思います」
グイッとカクテルを飲み干し隊長が続ける
「20歳を超えて大人としての経験を積み、それでもなお努力を続ける姿はとても魅力的だし…好きですよ、俺は」
その笑顔に男としての色気を感じ胸が高鳴る
まったく…大人としての経験を積んでるのにこれじゃ少女に戻ったみたいじゃない……
恥ずかしさを隠すようにゆみはグラスの酒を一気に煽った

エピソードでちゃんとデレてくれるキャラって誰っすか

デレって隊長…それむりー
大体私隊長のこといいお客さんでいい同僚だってだけで別にそんな若い子じゃないんだから惚れた腫れたなんてないない!
でもその口癖みたいに結婚しようって言ってくるのやめてよ…なんていうのかなー…私だって?そのちょっと寂しいときとかあるし…本気にしちゃいそうになるっていうか…
年が近いからか気軽に話せるし…整備部は磐田さんは歳上すぎておかたいし有人は軽いし…隊長は…なんかこう…えーっと
なんの話ししてたんだっけ?まぁその憎からず思ってはいるけど別に全然そういうのじゃないし!たまに愚痴聞いてくれたり一緒にお酒飲んでくれたり…そう!腐れ縁?みたいな?
何よいきなりマジな顔になっちゃって…やめてよ…タイミング悪いって今迫られたら私…待って待って!早退しま…ちょっと!聞いて…!?
もう…なんでこんなタイミングで告白するのよ…私…にやけちゃってばかみたいじゃない……

穏やかな日曜日の夕方はゆみとのショッピングで荷物持たされたい
「ほーら隊長へばらないの。休憩しましょ?」
日が傾き薄暗くなった公園でベンチに座って手に持った荷物を下ろして一息つくとゆみは笑いながら言う。
「どうしてシャードは地球の公転まで再現するのかしらね。一日一回も暗くなっていったら寂しい気持ちになりはしないのかしら」
「どうだろう。日照時間がどうだとか色々リクツはあるだろうけど夜が来るのはまた明日も会おうって事なんじゃないかな。ずーっと明るくてずっと一緒だったら疲れちゃうよ」
どうでもいい話をしながら時間を潰す。
えらそうなこと言いながら結局今日のゆみとの別れが名残惜しいのだ。
疲れた頃にちょうど目の前にベンチが出てくるなんて偶然何度もあるだろうか。ゆみが様子を見ながら気遣ってくれたからだ。
益体もない話に乗っかって過ごすのは俺が様子を見ながら気遣っているからだ。
そうやって寄り添っては離れを繰り返しながらも近づいていく。
街灯が足元を照らす頃、俺は初めて今日はまた明日。じゃなくてもいいかなとゆみを自宅に誘った。
水銀灯…を模したと言われる光に照らされたゆみは少し遅れて、頷いた。

>隊長の墓はゆみさんの酒でビチャビチャっす
マジやめてください

壷に収まるほど軽く、白くなった彼を抱えてから数ヶ月するというのに未だに現実を受け入れられない。突然ではあったけど、彼は未練はあれど無念ではなかったと思う
「あのボトル、とっても高かったのにどうするのよ……私は当面お酒飲めないし」
アクトレスを引退した私はかねてより企んでいた文筆家への転身で食いつなげている。借金も現役の内に稼ぎが間に合った
引退した理由は、能力減衰もあるがそれ以上に、新しい命を宿したから。愛おしくてたまらない彼の形見を優しく撫でると、その膨らみがわかる
「この子はお父さんの顔も見れないのよ……ほんっと無責任ね……」
墓石にお酒は御法度。代わりに雫の跡を誤魔化すようにグラスの水をこぼす。彼ならばこのくらい許してくれるはず
「あんたが居たってこの子に必ず伝える。だから、できれば美味しいお酒になってくれるよう見守ってほしいわ」
目元を拭うと、私自身に一旦の踏ん切りをつける
一瞬だった花嫁はもう母親。いつまでも悔やんでいたらお腹の子に悪いじゃない

「なによデレデレしちゃってまぁ」
ゆみは誰にも聞こえないよう独り言をつぶやく。その声は誰にも届かないが自分の心を鷲津噛むかのようにじんわりと効いてきた。
別に、隊長が誰を好きだろうと隊長の勝手だけど、今まで私にデレデレしてたくせに小結さんが来た途端に彼女の料理を食べて笑顔になっている隊長を見ると胸が痛む。
「これだと隊長が私のこと好きみたいじゃない…」
最初はもちろん冗談だったが隊長と気安く話したりからかって遊んだり…そんな日常がこれからは小結さんのものになるのかもしれないと思うとどんどん暗い気持ちに覆われていくようで…そうなってから自分が隊長に惹かれていたことを嫌でも認識させられる。
しかし認めてしまうと自分が自分でなくなってしまいそうで…
「そう、これは飼い犬に手を噛まれた気分って奴ね」
そう結論付けるとゆみは笑顔を張り付けてドロドロに苦く熱いコーヒーを差し入れる。
「ちょうど今詰まっていて眠気覚ましが欲しかったんだ。ありがとう四谷」
なによ…そんな反応…私がばかみたいじゃない。
ゆみの恋は前途多難なのだった。

  • 「おーい四谷!」
    ゆみを呼ぶとむすっとした顔をした彼女は何よと言わんばかりにデスクにアメを置いた。
    「ありがとう」
    俺はゆみに貰ったのど飴を舐めながら仕事に戻ろうとするがその前にとゆみにボールペンを渡す。
    相変わらず不機嫌そうだが黙って受け取ったボールペンを胸ポケットに入れたゆみは書類作業に戻った。
    「隊長?ゆみさんとテレパシーでもできるんですか…?」
    小結が不思議そうな顔で尋ねてくるが不思議なのはこっちの方だ。
    「テレパシー?何の話?」
    「だって今全然会話しないのにお互いに必要なもの渡してましたよね?」
    飴とボールペンの事かな
    「いやだって、ゆみが胸にボールペン差してないなんてどうせ失くしたか貸してるかだろうし四谷も俺がせきしてたの見てたんだろ」
    そういうとますます不可解そうな顔をする小結が俺に聞く。
    「じゃあ今私が何を必要としているかわかりますか?」
    「飯」
    即答すると「もー!」と牛みたいな声を上げてヘッドロックしてくるが全然弱いので頭に当たるたわわな感触に悶々とする。ガンと音を立てて仕事に詰まった俺にコーヒーをゆみが渡してくるのはそれからしばらく後の話だった。

「はいこれ、ゆみに。ハッピーホワイトデーでいいのかな」
隊長はゆみに淡いブルーに原色の青のリボンをあしらった箱を渡した。
「ちょっと待って。私バレンタイン特に何もしてないわよ?くれるって言うならもらうけど」
「ちゃっかりしてるよな。別に何かのお返しじゃなくてもイベントにかこつけてプレゼントの一つぐらい渡したっていいだろ」
釈然としない顔でまぁいいけどとプレゼントを開けるゆみ。中身を確認するとあからさまに渋い顔をした。何も書いていない箱だったからだ。
「ねえこれもしかして手作りってやつ…?」
妙に重いのは困るわよというゆみにやかましいせめて文句は全部開けてから言えやと言うとハイハイと箱を開ける。
「これ…」
「なんか熱心に見てただろ、ネックレス。気に入ってくれると嬉しい」
「だから重いんだってば。もう…隊長がつけてよ」
髪を上げてうなじを晒すゆみの後ろから手を回してネックレスをつける。うん、似合ってるな、なんていうとはいはいと流すが耳まで赤くなっているのが丸見えだ。
ここが事務所だということも忘れて隊長はゆみをからかっていた。

ゆみさんとホワイトデーに小さいけど美味しいフレンチ出してくれる店でゆっくり食事をとりたいゆみさんたらこういうとこ結構慣れてるからちょっとだけエスコートしてくれるんだと思うとこれは…ありがたい…

「えーっ?隊長が私にプレゼント!?」
ゆみは驚いた声を上げる。夜露は声が大きいっすよ!と諌めて続きを話すり
「いやあこの前女の子へのプレゼントは何がいいかって隊長がいろんな子に聞いてまわってて、そんなに聞いてどうするっすかって言ったら最大公約数が俺のホワイトデーのプレゼントになるとかわけのわからないこと言いながら手帳になにか書き込んでて…そしたら手帳からゆみさんの写真が落ちてきたのを見てしまったんすよ」
一息で夜露がそう言うと、ちょっと妬けちゃうっすねと頬をポリポリと掻いた。
「ふーん…へーえ…隊長が私にプレゼント…ねぇ」
なんだかんだ言いつつも期待で胸が抑えきれないゆみの前に隊長が姿を現した。
「おーいみんな!ホワイトデーのプレゼント持ってきたぞ!!みんな平等に俺の手作りクッキーだ!!」
その場にいる全員がずっこけゆみは逃げようと姿勢を低くして走り出した夜露を追いかけて全力疾走で事務所を飛び出した。
「なんだよ…男の手作りはそんなに嫌かよ…」
隊長はうなだれた。

ゆみって俺の側から離れて行くだろうなって気がしてたんだよね
上昇志向?というか玉の輿とか言ってたし
いい男見つけてどこか遠くに行ってしまうんじゃないかって
でもこうして仲良くなれて本当に良かったよ
とか隊長が言ってるのを恥ずかしがりながら聞いてるゆみさんの怪文書はまだっすか!!!

違うんっすよ!高級なホテルは予約埋まってるしどうしようって思ったら近くの居酒屋で飲み放題あるからそこでいいよって言ってくれるゆみが優しくて思わず飲みすぎちゃって「俺ずっとゆみのこと好きだったんだ…どこが好きかって言われると、全部だけど…成子坂に来てからみんなの為に頑張ってくれたり、ヴァイス撃退も積極的にこなしてくれて…それだけ頑張っているのに更に俺にもこうやって気をかけてくれる君が凄く好きなんだ…あ、ごめん俺酔ってるかも…」とか潰れつつ早口でまくしたてる隊長を半ばおんぶしてるような形で店から出して自室にタクシーで連れ込んで寝顔見てるゆみが素敵で

「うぷっ…げほっ…ゴホ」
えづく隊長の背をゆみがさすりながら言う。
「何やってんのよ隊長…飲めないってわかってたら飲ませたりしなかったのに」
ゆみのかけてくれる優しい言葉が余計隊長の心を重く沈ませる。
だって、ゆみは酒好きだし、俺も飲めないといけないと思って…と。そんな言い訳じみた弱音を吐くとゆみは隊長に目を合わせて穏やかな顔で言う。
「隊長が飲まないなら隊長が私の面倒見てくれるんでしょ?安心して飲めるってもんよね。私をおんぶしたときの役得はサービスにしといてあげるわ」
いたずらっぽい顔でそういうとゆみはいつ用意したのかコップ一杯の水を差しだしてきた。
俺はこれで、いいのかな。このままの俺で、ゆみと一緒に歩いていけたらいいな。
「じゃあ、絶対面倒見るからな。嫌だとか面倒とか鬱陶しいって言っても絶対俺がゆみの世話焼くから…だからもっと一緒にいたい。飲みに行くだけじゃなくって、デートとか、ゆみの時間が全部欲しい」
ゆみは少し驚いたような顔をすると、シラフの時に同じセリフが言えたら考えてあげるわと隊長に肩を貸しタクシーを呼んだ。

ほら、ホワイトデーのお返し
まだ事務所に人がいる上に何の情緒もなく小さい紙袋を投げ渡される
雑な好意に感謝しつつ雑な好意で答えるべく小袋を開けば中身はビニル袋に入ったクッキーと小さなポストカード
意図に感づきこっそりとポストカードを抜き出すとそこにはいつもの店に21時の文言
隊長らしいわと小さく微笑みクッキーを齧ると出撃の準備を始める
ほろ苦いチョコクッキーの後味とは真逆の爽やかな楽しみ
ああ、私はなんて安くて幸せな女だろう

職務中にゆみが吐き気をもよおした、彼女には珍しく二日酔いだろうか
5月の陽気も終わりかけこれから梅雨が来る、季節の変わり目はやはり誰でもこたえるか…
滅多にない不調に今までの行動をぶつぶつ回想しているゆみ
心なしか他の皆が熱っぽい視線や青ざめた顔をしていたような気がした、特に楓とシタラは今にも泣き出しそうだった
無理もない、実質成子坂をまとめ上げているのは俺ではなくゆみだ、それが不調となれば皆心配する筈、多少大げさすぎる気もしたが
「…あーっ!」
ゆみが突然声を上げ、そして俺の耳元に駆け寄り───

「…ホワイトデーのお返しじゃない…?」
言ったそばから俯いたゆみの顔はあの日と同じように真っ赤だった

ねー隊長ちゅーしよちゅー
ゆみが壊れた
酒樽ひとつを丸々腹に収めても酔わないのではないかと疑うほどの蟒蛇であるゆみがまるで酔いどれのようだ
幸い環境に恵まれてか酔っ払いの相手なんてしたことのない俺はどうしたらいいかわからず途方に暮れる
うっかり胸に手が当たるだけで料金請求するぞ~などと冗談を飛ばすいつもの姿は何処へやら腕に抱きつきその柔らかな部分を押し付けてきて正直たまらない
ねー隊長ったらー…隊長ったら私のことすきー?
酔っ払い戯言だと切って捨ててあーはいはい好きだよ…それより水でも飲んだ方が…
言うが早いかゆみは俺を強引に押し倒しのしかかるように体を倒してきた
何をするんだと抗議の声を上げる間も無く唇を塞がれ口内を犯される
長い長い接吻の後考えを張り巡らせることもできず混乱でのぼせ上がった俺の惚けた顔を見てゆみは満足げにつぶやく
やっと好きって言ってくれた…酔ったフリした甲斐もあったわね
騙されたのかと悔しむ暇もなくまたゆみの顔が近づいてくる
…もうどうにでもなれ

ゆみさんってさ

隊長の何が好きなの?

何が好きって…そりゃ、自分の仕事しつつみんなのことを気にかけて何らか手を回しつつも自分の手柄じゃないですよーみたいなツラして周りの仲を取り持とうとする気の回し方でしょ?出来ないことは素直に他人に回せる所もいいわね、あれって凄いことなのよ?他人に仕事を振るって結構ストレスかかるし上役といっても中間管理職なんだから完全になんでもできる実権を持ってるわけじゃないし、それが好きと言えば好きだけど、やっぱりなんだかんだ言って付き合ってくれるところよね…仕事も遊びもなにもかも全部言ったらわたしの思い通りにしてくれちゃって、そんな生意気だけども逞しくて眩しい事されたらそりゃもうコロッといっちゃうわよコローっと、気分落ち込んでる時に慰めの言葉だけじゃなく冗談言ってくれたりもするし、そんな男そんなにいないわよ?そもそも男ってのはいつもいつも勝手に女を振り回して…もう沢山なのよ、相手の事情に振り回されて、裏切られて、人間関係悪くして…そんな生活をあの人の前だったら忘れられるような気がするのよね…そこも好きなところと言えばそうなのかも、あとは気の回る所ねー、お酒が切れてたら注文なににする?とか聞いてくれたり

ねぇ隊長今日が何の日か知ってるでしょ?
そうそうエイプリルフール
というわけでわたしも嘘の一つでもついてみようと思うんだけど…
別に小結さんみたいにインパクトあるやつじゃないわよ?
パン党に転向するって聞いたときは流石に肝を抜かしたわ
それで肝心な嘘なんだけど…
わたしが隊長のこと好きっていったら信じる?
…何よちっとも動じないなんて隊長のくせに生意気ね
ところでエイプリルフールは正午までなんて話は知ってる?
あら?もうとっくに時間は過ぎてたみたいね

でも仮に終わってたとしても…本当のことを言うのは別に問題ないわよね?
それでさっきの嘘だけど隊長に選ばせてあげる
ただの冗談なのか
それとも本当にわたしは隊長が好きで好きでたまらないのか

ねぇどっちがいい?

→冗談だろ?
 俺も実はゆみのことが好きなんだ
 すまない…俺には磐田さんが…

「隊長~終電なくなっちゃった?」
ゆみが白々しくワイングラスを干しながら言う。どうせ最初から泊まるつもりだったんだろ、なんて今さら過ぎて言わないけどね。俺は片手でゆみのワイングラスにボルドーの赤を注ぐとまたあっという間にからになる。次からはマグナムサイズでいいんじゃねえかな……
「隊長私を酔わせてどうするつもり?なーんてこれぐらいじゃ全然余裕なんだけどね!」
ハイハイと面倒になって髪をわやくちゃにしながら頭を撫でると猫のようにすり寄って来る。色は抜いているがフワッとした毛の感触が気持ちいい。
「じゃあそろそろ寝るか」
と心にもないことを言うとゆみはむっと目を細めて本気で言っんの?と不機嫌な声を出す。
その顔が見たかっただけだよとキスをするとあっという間にふにゃっとした表情でゆみは服を脱ぎ始めた。

ずずっ、ずぞぞぞ ゆみがお蕎麦屋さんへ行こうとの誘いでほいほいついてきたがどうしたことだとても美味い。
なんでも商店会長さんお墨付きらしく気が付けば俺は一心不乱にそばをすすっていたがふと目の間に怪訝な顔を浮かべるゆみと目が合った。
すまん、何の話だったっけな?
俺がそばに夢中になっている間にゆみはどう見てもお高そうな一升瓶を手酌しながら不機嫌そうにぷりぷりしている。
そう怒るなって、なんだっけ、若い子が一気に増えたからっていい加減引退だとかお店でからかわれてるんだっけ?
気にすんな、ほら商店会長さんだってゆみのことを応援してくれているんだぞ?
言葉の合間を縫ってまたそばをすする。うまい、つゆのダシがいいんだな。
ケンジさんはこないだもお店でゆみのことをネコに例えてて……そうだ、イージスから新しいキャンペーンの話が来てたんだよ。
どうだゆみコレでイメージ回復に打って出ないか?ちょうどいい話が来ていたんだ。
……え、なに?嫌な予感がする?はっはっは、気にすんな!
デバイスに確か……あったあった! これこれ!
アクトレスねこみみもーどキャンペーン! ……そのまんまだな!
ほらこの新型猫耳ヘッドセットなんだが……ん?
どうしたゆみ? めっちゃかわいいだろこの猫耳?
期間中これを付けてるとなんと優先的に出撃時の中継が回ってくるそうで今あちこちの事務所から応募殺到しているんだが
抽選が厳しい上に角事務所1人までしか応募できなくてな……え? 若い子達にやらせたらいい?
恥ずかしがるなって!
それに若いのから選ぶと後々カドが立ちそうだろ? 年功序列ってやつでさ?
じゃあ小結さんだって? ゆみは一体何を言ってるんだ?
小結さんは猫っていうより犬って感じだろ、猫耳じゃダメなんだよ! わかる!?
そうするともう、ゆみしかいないんだ!
こないだお店で一緒にセーラー服を脱がさないで歌った仲だろ!?
……ってあーあ、ゆみが素直にうんって言わないからお蕎麦冷めちゃったよぉ。
あ、店員さん熱燗一合とざる2枚追加でー!
……さっき商店会長さんにも聞いてみたんだけど「いいじゃない!」ってゆみの猫耳姿見るのすごく楽しみにしてるんだぞ?
な、ゆみお前しかいないんだ……こらこら聞こえないふりして酒を煽るんじゃない!
みんなお前のねこみみもーどが見たいんだよ!
ん? 声を張り上げるなって?
いつもアクトレス姿でテレビに映ってて今更何を恥ずかしがってるんだお前は。
俺は本気で口説くためにこうして精一杯ゆみに言葉を伝えようとしているって言うのにゆみは男の本気をそうやってうやむやにするつもりなのか!?
ゆみ俺は本気なんだぞ!? 応えてくれゆみ! 責任取って結婚するから!
この店のそばのように末永くお前のこと幸せにするから! なあゆみ!
……って間違えた、猫耳の話だったなスマン今のは忘れ……おいおい、どうしたゆみ!?
なんで泣くんだ!?
そばに七味かけすぎて辛いのか!?
猫耳あげるから泣かないでくれゆみ!
(猫耳了リスギ了応援に用意したものを一部修正しました)

台風で交通網がなくなっちゃったな…っす

書類をトントンと揃えて片付けを済ませる。今日は早めにみんな帰しておいて良かったな、と思いながらメシどうしようかななんて考えていると不意に電子音が聞こえた。解錠音?誰かいるのか?そう思って少々用心しつつ扉に意識を向けるとそこにはずぶ濡れのゆみがいた。
「お疲れ様、隊長。これ差し入れね」
いやいやいやおかしいだろ何で来たんだゆみこうなるからさっさと帰れって言っただろ。
ゆみは悪びれもせずに、お店の帰りだから。家よりここの方が近かったしと言う。ああそうか、ここだけ休みにしたって仕方ないかと思い至る。とりあえずずぶ濡れのままのわけにもいかないからシャワー浴びてこいと言うと、やだ隊長かっこいい。私どうされちゃうのなんてふざけるから額を小突いていいから風邪引く前にとっととシャワー浴びてこい!と一喝した。
とはいえ着替えが必要かと思ったが、さすがに女性らしく着替えのひとつや二つぐらいはロッカーにあると言うのでとりあえずは安心だ。
三十分ほど経っただろうか。手持ち無沙汰にボーッとしていると水音がやみ、シャワールームからゆみが出てきた。バスタオル一枚で。


はぁー気持ちよかった。等とのんきな声を出しているゆみだが格好は油断しまくりどころの騒ぎではない。バカお前なんで服を着てないんだと言うと、夜間運転でクーラーの効きが弱いし少し冷やしておかないとまた汗だくになっちゃうじゃないも通るような通らないような話をする。いやそれにしたって男と二人きりでそんな格好してなに考えてるんだと目を逸らしながら言うが、ゆみは近づいてきてこともなげに答える。なに、考えてると思いますか?そっと俺の手を握りバスタオル一枚越しの身体を寄り添わせ耳元で囁く。差し入れのお酒、飲みましたよね?まだ大人ぶったこと言うんですか?これは一体なんだ…俺はこんなゆみ知らない…背中から抱き締めてきたゆみはまだシャワーの熱が残る身体を押し付けて来たまま手を俺の服の隙間に滑り込ませる。台風の夜だし、いいことしましょう?右手の薬指には前に贈った指輪が輝いていた。


私、正直言うとずっと期待してたの。この指輪を貰ったときからずっと。支給品を貰っただけ、なんて思えなかった。思いたくなかった。だって、隊長からの指輪のプレゼントだから。チャンスがあるって思いたかったのに、そ知らぬ顔で、ずるいひと。私だけが……みたい。プチプチと器用にボタンをはずして俺の服をはだけさせるとついに素肌同士がふれあってしまう。そんなこと…そんなこと言われたら俺だって……我慢していた感情が鎌首をもたげる。俺だって、指輪なんか渡す前からずっとこうしたかった。ゆみと正面に向き合い、バスタオルを奪い取って抱き締める。ゆみの一糸まとわぬ裸体を覆い隠すように強く。ゆみの身体の柔らかさが欲望を強く刺激して、ゆみの腹を押し上げる。現金な浅ましい男だと思うだろうか。でも悪いのはゆみだ。惚れた女の裸を見せられて、さらに誘われて正気を保てるほど人間できちゃいない。ゆみの目をまっすぐに見つめて告白する。好きだゆみ。俺と一緒になってくれ。ゆみは、答えずに情熱的な口付けをしてきた。それが、何よりの答えだった。


机に手をついたゆみを後ろから犯す。突き入れる度に跳ねる身体を抑えて逃がさないように、自分だけのものだと主張するように。ゆみの全てを自分だけのものにしたい。かなり乱暴な行為だったと思う。しかしゆみはその全てを感じとり、受け入れて自らも腰を動かしよりひとつになろうとする。いい、すごい、気持ちいい。その言葉の一つ一つが俺に自信を与えさらに行為は激しさを増していく。顔…顔を見せてと言うゆみとまた対面で向き合い、抱き締める。ゆみも強くこちらの背中を抱くと不意に爪を立てた。隊長…隊長は裏切らないでね。もうこれっきりにするから…と。他の子には目もくれないで私だけを見てと強く懇願してくる。その圧を全てを受け止めて、今度はこちらが無言で答えを返す。ゆみの膣内を強く擦り奥まで叩きつけ征服するように愛する。俺は自分の背中に傷が付くのも構わずにそのままゆみの中に全ての欲望を吐き出した。


荒い息が静かな事務所内に響く。ゆみの中に放った精をどうすることもなく繋がったまま未だに唇を貪りあい、萎えることのなかった怒張を突き動かし続ける。差し入れだった酒をあおり口内で混ぜあって飲み込むとよりガツンとした快楽がとうに消え去ったはずの理性をぶち壊して互いに互いを縛りつけて服従させようと口を開かせる。キャバ嬢なんかやめちまえ。シタラのでかい胸に鼻の下伸ばさないでよ。結婚してくれ。させてくださいでしょ。したいんだ。私もよ。脳が蕩けてるんじゃないかと思うほどのやり取りを繰り返しながら何度も、身体で確かめ合う。身体と言葉で絶対に離さないと誓う。息も絶え絶えに膝をつく頃には水分不足から頭痛に見舞われ冷静になってしまい二人してその場で頭を抱えた。周囲を見回すと二人の愛し合った証拠だらけで顔を真っ青にして二人で黙々と片付けを始める。台風は過ぎ去っていた。


また別の、ある台風の日。ゆみは一人で事務作業をしていた。みんなを先に帰しておいて正解だったわと自分の判断の正しさにひとりほくそえむ。トントンと書類をそろえて片付けると、今日の仕事は終わり。すると隊長がずぶ濡れのまま事務所に入ってくる。遅くなったな、ゆみとそのまま抱き締めてくるもんだから、抱き締められたまま、隊長の背中をバシッと叩く。その左手の薬指には、輝く指輪がはまっていた。

いつも通りの定時哨戒からの帰還後。
ギアを外すゆみの背後から薫子が声をかけた。
「ゆみ、腕を上げたわね。判断力も戦況分析も、いざという時の決断も迷いがないわ」
「そんな、ありがとうございます教か・・・あ、いえ、薫子さん」
「何度も言ってるじゃない。成子坂では同僚なのだから、教官って呼ぶのはやめてって」
薫子は微笑んで話すが、その言葉を聞いたゆみの瞳は儚げで、潤んでいるようにも見える。
「・・・ゆみ?」
ゆみの様子に気が付いた薫子が話しかけると、堰を切ったようにゆみの口から言葉があふれ出した。


「今までずっと我慢してきましたけど、やっぱり教官は教官です。私は、教官と同じ立場になんてなれません!」
「教官は、ずっと、私のあこがれで、理想で!夢で、手の届かない人で!」
「恋に破れた胸の痛みを誰にも打ち明けられずに一人苦しんでいた時!そっと抱きしめてくれた教官の温かさ!」
「初めてエミッション能力が使えた時に、一緒に喜んでくれた教官のあの笑顔!」
「模擬線の度に、本気で私に向かってきてくれた教官の真剣なまなざし!」
「全部全部、私は覚えてるんです、忘れたことはないんです!」
「かつて教官は私のすべてでした。今だって、私の心の大事な場所には教官がいます。教官が私を作ったんです」
「私はもう、お酒も飲むようになって、少女とは言えないけど・・・でも、私は教官の教え子なんです、教官の前では大人ではいられないんです」
「だから!だからせめて、せめて教官と呼ばせてください・・・せめて・・・」


一気呵成に感情のすべてを吐き出したゆみを前に、薫子は小さくため息をついた。しかし、その表情は優しい。
「・・・わかったわ。ゆみ。ありがとう。でも、他の人たちの手前もあるから、教官って呼ぶのは二人きりの時だけね」
そして。ゆみは薫子の胸で泣いた。声も出さず涙も流さずに泣いた。
果たしてそれはいかなる感情に基づくものなのか、ゆみ本人にすらわからなかったが、それは間違いなく剥き出しのゆみだった。
薫子以外誰も知らない、少女のゆみだった。


そして・・・そんな二人を物陰から気まずそうに見つめるシタラが、実はそこにいたのだが、それはまた別の物語である。
「私も一緒に出撃してたんだけどなー・・・こういうときどんな顔すればいいかわからなーい」

やって来ましたニルヴァーナ!
さあ指名するぞ!ゆみ!
出てきてうげ…みたいな反応するかと思いきやにこやかに指名ありがとうございますっ!だなんて営業モードのゆみに胸キュ…いやいやこんなのサービスだ例えるならバイト先に現れてニヤニヤ笑いながらわざわざ自分の対応するレジにガム持ってくる同級生みたいな感覚のはずだそうに違いない…なんて思っているとこちらへどうぞだなんて別室に案内されるやだ怖い何が怖いってこれアレだよシメられるやつだと震えながら審判と時を待つと少し豪華な椅子にお座んなさいと言われ言われるがままに座るとゆみが惜しげもなく白い足をさらして座る。こんなサービスあるのと聞いたらセクキャバやおっパブじゃないんだからあるわけないでしょとむくれてデコピンしてきた。痛くない。ゆみは首に手を回すと待ってたんだからと身体を寄せてきてこれ不味い不味いって支配人来て特別料金請求されるやつだってと言うと人払いしてるから平気だし。そりゃこの部屋の追加料金は貰うけどサービスは私の気持ちですだなんて言って頬にキスしてくるゆみ。まじか幸せすぎる…というかなんで…?照明が落ちて全身に柔こいサービスを受けた。

「ゆみ!結婚してくれ!!」

ゆみちょっと探し物手伝ってくれ、そう言って自室に同棲相手の四谷ゆみを呼び出した。
すると「なによ、私だってすることがあるんだからね?ホントに...」とため息をつきつつ愚痴を言いながらも渋々探してくれるゆみ。
ゆみにお礼を言いながら探しているとゆみが
「探し物ってこれ?」と言いながら封筒を出す。
あっ、どこにあったの?
「普通に机の下に落ちてたわよ」としらーとした目で見てくるゆみ。
やめろそんな目で見るな、本当にさっきまで見つからなかったんだよ。
「はいはいわかってるわよ、一応手伝ったんだから何か食べに連れて行きなさいよ」というゆみ。
そういうと思ってたよ、それこそ大丈夫だ、わかってる。
そう言いながら自分は机の中にしまっていた小箱を鞄に入れる。
しかし、レストランに用もないのにわざわざ行ってプロポーズを言うのが何故か恥ずかしくて理由づけをしてしまったが、こっちの方が面倒で恥ずかしかったかもしれない。
なんて思いつつゆみとレストランに向かう。
元々予約をしていたのもあって簡単に席に座れた、席に座ってコースの説明を受けるが頭の中に入ってこない、自分の頭の中はもうすでに数十分後のプロポーズのことしか考えれていない。
しかし結婚してくれなんて言ったらゆみはなんていうのだろうか「またなの?」とかいわれるのだろうか、それとも意外にま「ありがと...私しあわせよ」とか言うのだろうか、長い付き合いになってしまったがそこに関してはてんでわからない、もしかしたら苦笑されるのかもしれない、なんて色々なことを考えているとあっという間にコースの説明も終わっていた。
その後コースが始まるが味がしない、ゆみはワインと料理を楽しんで舌鼓をうっているようだが本当に味がしない、緊張で心臓が弾け飛びそうだ、はやく時間たってくれ...なんでコースにしたんだ自分。と過去の自分を恨みながら長いコース料理は終わって行った。
「美味しかったわ、でもいいの?たかだか探し物のお礼でこんなご馳走なんて同棲してから初めてじゃない?」と言うゆみ、さあここからだ...息を飲んで小箱を取り出す、そしていつもの冗談で言っていた言葉を言う。

ゆみ!結婚してくれ!!

隊長がゆみの専用スーツの脇から手を入れてお腹を触っている。ゆみは料金請求するからねといいながらもなんだか抵抗が弱い。調子に乗った隊長はゆみのへそを指先でくすぐると、ひゃっ!?とかわいらしい声を上げた。
「ちょっと?あんまり調子に乗らないの!」
こつんと後頭部で隊長の顎に攻撃するがぜんぜん力はこもっておらずまるで恋人同士のじゃれあいのようだ。
「ゆみ…いいか?」
何が、と聞き返すほどゆみもうぶではない。隊長の手を掴んで胸におしつけるのを返事の代わりとした。
隊長はゆみのむねを捏ねながらハイレグになった股間の布をずらす。指で掻き分けていくと、期待していたのかくちゅ、とおとを立てる。
「気が変わらないうちに、早くしてよね?私だって、したかったんだから」
そういうゆみだったが、後ろから見える耳は見てわかるほどに赤くなっていた。

「え?なになにこれを私に?いやー悪いねー…もーっと貢いでいいからねー」
日課の調査から帰ってきたら珍しく隊長が出迎えててくれてプレゼントを渡してきた。どことは言わないけど高級ブランドの紙袋、あまりそういうモノに興味はないけど貰える物は貰っておこう。普段はリップクリームだとかハンドクリームとか投げてくる癖にどういう風の吹き回しだろうか。まぁ、最近乾燥してきたからありがたく使わせて貰っているけど…。
それにしても貰ったときは面白かったなー。無神経というか隊長みんなの前で渡してくるもんだからゆみちゃんとか怜ちゃんとかが凄い形相で睨んできて…思わずブルったね。いたたまれなくなって逃げるように帰ってきたけどみんなに詰め寄られた隊長の姿も拝んでおきたかったような。さーてとりあえずそのプレゼントとやらを開けてみますか!財布かな?バッグかな?最近寒いしマフラーとか?
私は期待に胸を膨らませてビリビリと包装を破る。中には織物が入っていて…
「え?なにこれ?…腹巻き?」
なにこの素直に喜べない感じ…。明日からは○○式スーツにしよう…。
その日はよく眠れた
翌日事務所に行くとみんなの視線がなんだか優しかった

「こういう飲み方したのは久しぶりね、何のつもりかしら隊長さん?」
ゆみが何十杯目かのワインを飲み干す。今のは白ブドウだったか。高層ビルのレストランで男と二人きりでディナーという真理曰く女ならイチコロのシチュエーションでも相変わらずの酒豪ぶりだ。
「…何よ。何か言いたいことでもあるの?」
ゆみに見惚れて言葉がでないとは言えない。しかし今は言葉よりも行動だ。今日が最後のチャンスだ。とAEGiSに言われた指輪の小箱を後ろ手に握り締める。
「ゆみ!」
「何?やっと本題?」
ゆみがグラスを左手に持ち替える。その薬指にキラリと光るものがあった。
「ケッコン…してる?」
「え?ああこれ?ただの男避けよ。何?真に受けちゃった?」
なんだ。結婚指輪じゃなかったのか。よかった安心したこのまま行こう行ける押せ押せ押せ…!
「ゆみ!これを…受け取ってほしい!右手でいいから…!」
「あら…指輪?ふふっ、ありがと隊長。でもその告白は50点ね」
ゆみが小箱を開けて指輪を取り出す。左手の指輪を外して放り投げた。
「男なら「その指輪を本物にしてやる」くらい言わないとね?」
…初めての彼女とのキスはブドウの香りがした。

「なによ!」「あんたこそなによ!」
今日も娘さん達は元気だ…中学生と張り合う高校生は正直どうかとも思うがあれで任務中は良いチームワークを発揮したりもする…きっと彼女たちなりのコミュニケーションなんだろう
「ちょっと聞いてよ隊長!綾香ったら…」
なるほど…
「なによ風除け!新入りの肩持つっていうの?私はね…」
耳が痛い耳が痛いもっとボリューム押さえてくれ
「あらあらお父さんも大変ねー」
ゆみのやつ人事だと思いやがって
「助けてくれませんかね?お母さん」
「「今の言葉は聞き逃せないわね!」」
…おや?

ゆみ助けてボタンが欲しいっす
弱中強の3種類で押せばどこにいてもゆみに信号が届くのでゆみからの返事を待つっす
弱は手持ち無沙汰になったり構って欲しかったりゆみと話したりご飯食べたいけど現在地知らない時にとりあえず何回か押すっす
中はゆみになるべくその日中には相談したいことがあったりどうしてもゆみと行きたいところが出来た時にこのあと時間取れる?という使い方が主っすこれは時間を空けて何回か押すっす
強はアクトレスにレイプされそうだったり既成事実を作ろうやされるの察知したりもうめちゃくちゃゆみとえっちしたいちゅーしたい愚痴を聞いて欲しい慰めて欲しい時に押すっす これを押すとゆみも急いで駆けつけてくれるのでよっぽどじゃない限りは押さないっす
なんかマグマ大使みたいっすね

「隊長隊長!見てよこれ!」
今日は掃除と言っておろうが、なんじゃなんじゃ…写真?
「若い頃の写真か?今と違って随分かわいらしい…」
「いやー私にもこんな頃があったなーって思う訳よ。ちょっと時間旅行してこの時の私と話してみたいわ」
「へー、で?会話の内容は」
「そりゃもちろんあんたはこれから酷い男に引っかかるから、出会ったら股間を蹴りあげなさいって言うのよ」
下半身がシュッとした。いくら恨み辛みが積もっていようとそこはやめてあげてほしい…
「あ、そうだ。隊長はさ、今の私と写真の私、どっちが好き?」
「柄にもないことを聞くなぁ…」
「やっぱり若い子をコマすのがいいのかしらー?この鬼畜隊長」
「いや?今の方が好きだよ。今のゆみだから好きになったわけだしなぁ」
「…………ま、まあ口説き文句としては上出来ね。80点あげる」
「そりゃどうも。さ、片付けしようか」

「……はー、心臓に悪いったら…」

アキ作戦も無事終わり、賑やかになった成子坂も平常に戻ることになった。
AEGiSの経費で打ち上げをやろう、と加純が手続きをとってくれたこともあり、ワンフロア貸し切りで
カラオケ大会となった。始まって1時間半、そろそろ出来上がってくるのもいる。
「あー、飲んだ飲んだ。ねー隊長、お風呂行こっ。」
ご機嫌の京が隊長の隣に座り、訳の分からない台詞で隊長を持ち帰ろうとするが、向こう隣には殺気だった玲がギュッと手を取ってガードしている。
「隊長はみんなのモノだから・・・」
これで三人目である。(あとは深沙希、ニーナである)
「やれやれ、結婚してくれと言ってるけど、あれじゃあねぇ・・・」
ゆみは隊長を遠目に見ながら、事ある毎に「結婚してくれ」と言ってくる男の災難に溜め息を吐いた。
「じゃあ、次お願いしますぅ。」
と小結にマイクを渡され、ゆみは次が自分の曲であることに気づいた。
「ありがとう、さーて、分かるかな。」
玲と京がやり合っているのを無視し、ジト目でステージの方を見ている隊長は、次に歌うのがゆみであることに気づいた。
「ゆみが・・”あの日に帰りたい”?」
~泣きながらー小さな写真をー~
・・10代後半の若い娘ばかりの中では24歳の私は気後れしかないの。
・・それなのに顔を会わせりゃ「結婚してくれ」だって。
~あの頃のーわたしにー戻って、あなたにー会いたいー~
・・私も何も考えずに隊長と会いたかったよ。
・・信用できる男に初めから会いたかったのに。
隊長はそっと席を立ち、ゆみの歌っている近くに向かう。京と玲には気づかれないよう、そっと。
ポケットにはずっと渡し損ねているアニバーサリーリング。
歌い終わったゆみは、ステージの下に隊長が立っている事に気づく。
「どお、悪くないでしょ?気持ちはチップでお願いしまーす。」
いつもの軽口を叩きつつ、隊長に手を差し出す。そっとエスコートする隊長は、降りてきたゆみをいきなり抱きしめた。
「今の君が好きなんだ、結婚してくれ。ゆみ。」
想定外の事に、流石のゆみも呆然とマイクを落とす。ハウリングの音でみんなの視線は隊長とゆみの二人に注がれる。
「ば、ば、馬鹿言って・・」
「本気だよ、これを受け取ってくれ。」
「ええええっ・・なんでこんなところで・・」
「いちいちみんなに説明が要らないだろ。」
真面目な顔の隊長を見て、ゆみの心は昔に帰るように満たされていく。
「・・・馬鹿・・ん・・センスいいじゃん、これ・・」
ぽろぽろ涙をこぼしながら、柔らかな笑みを浮かべるゆみ。
「・・いくら積まれても・・流せないよ・・ありがと。」
「受け取ってくれるの?」
「ええ、ここにいるみんなが証人だから・・幸せにしてよ、ね。」
どっと沸き立つ会場。ここで初めて隊長は相当に恥ずかしいことをしたことに気付いた。
大方の人は祝福している中、何人かは殺気を湛えていたことを申し添える。