【ウコムと小さな石像の語り】

Last-modified: 2018-05-05 (土) 15:00:48

MS

その昔、海の神ウコムに3人の娘がおりました。
娘達はいつも陸に上がってみたいと思っておりました。
ウコムは愛する娘達の願いを渋々聞き入れ、3人を陸に上げてやりました。
日が沈むまでに必ず帰ってくるようにと、ウコムは言い、娘達も約束しました。
陸の上はすべてが珍しく、あっという間に夕暮れになってしまいました。
娘達は約束通り海に戻りましたが、明日も陸に行きたいと言いました。
3人はそれから毎日、夜明けと共に陸へ上がり、夕暮れになると海へ帰りました。
それが10日ほども続いたある日、娘達は3人の若い漁師の兄弟に出会いました。
漁師達と娘達はたちまち仲良くなり、楽しい時を過ごしました。
娘達の1人がふと気が付くと、夕陽は水平線の向こうに隠れようとしていました。
娘達はあわてて駆け出しました。
しかし、日が沈むと同時に、娘達の足は元の形にもどってしまいました。
追ってきた漁師達は大きな尾びれをくねらせている娘達を見て驚きました。
娘達は恥ずかしさのあまり叫びました。
「ウコムよ、わたし達を石にしてください!」
ウコムは愛する娘達の願いを聞きいれました。
3人の娘は3体の小さな石像に変わってしまいました。
漁師達は石像を拾い上げると、大声で泣きました。
そして、石像を海へ、大いなるウコムの下へと帰しました。
この後、漁師の兄弟は大漁が続いて、幸せに暮らしました。

詩人の一言

ここノースポイントでは海から何か引き上げると、すぐにウコムの下へ返して豊漁を願うそうですよ。