850年 ウドガルド 城跡近辺・壁上部 | |
コニー | 城が粉々になっちまったな… |
アルミン | 巨人の猛攻を受けたんだ…。仕方ないさ。でも、無事に生き残れて良かったよ、コニー。 |
コニー | 無事じゃねぇよ…。調査兵団の先輩方はみんな死んじまったんだ。ライナーだって俺を庇って怪我しちまうし…。ユミルも巨人になるしよう…もう何が何だか分かんねぇよ。 |
アルミン | そうだね…。僕らには知らないことが多すぎる。だからこそ、一刻も早くウォールローゼに空けられた穴を探さないと…。 |
ハンジ | ユミルはどう? |
調査兵団 | 以前昏睡したままです。 |
ユミル | …………。 |
ハンジ | とりあえずトロスト区まで運ばないとね…任せたよ。 |
調査兵団 | 了解です。 |
ハンジ | さて、我々は壁の修復作戦を再開しようか。 |
エレン | ライナー…怪我は大丈夫か? |
ライナー | 腕を噛み砕かれたんだ。もうダメかと思ったぜ…。本当にまいった…。 |
エレン | お前ほど強くても、そうなっちまうんだな…。 |
ライナー | 自分で選んだ道だが、兵士をやるってのはどうも…。体より先に心を削られるみてぇだ。まぁ、壁を塞がねぇことにはしんどいだの言ってる暇はねぇか…。 |
エレン | あぁ、お前らの故郷も遠のいちまうばかりだからな。 |
ベルトルト | …そうだよ! 故郷だ! もう帰れるじゃないか! ライナー! 今まで苦労してきたことに比べれば、あと少しのことさ! |
ライナー | そうか…後もう一息の所まで来ているんだったな。 |
エレン | …は? 何言ってるんだ、お前ら? |
ライナー | …エレン。話があるんだが…。 |
エレン | ……? |
ハンネス | おーーい! |
ミカサ | …ハンネスさん? |
ハンジ | 駐屯兵団の先遣隊だ。穴の位置を知らせに来たんだ。 |
ハンネス | …穴がどこにも無い。夜通し探し回ったが、壁に異常は見つからなかった。 |
ハンジ | それは本当かい? だとすれば、どうやって巨人は壁内に…。 |
調査兵団 | ハンジ分隊長ーーーっ! |
ハンジ | 伝令の早馬…。何かあったのかい!? |
調査兵団 | 先程、トロスト区壁門前に大量の巨人群が出現! 現在侵攻を受けております。 |
ハンジ | なっ! 今度はトロスト区に!? |
調査兵団 | エルヴィン団長より至急部隊を帰還させよと! |
ハンジ | …みんな!聞いたか!? すぐにトロスト区に戻る。先遣隊も一緒に来てくれ! |
ハンネス | 分かった! |
エレン | こうも立て続けに襲ってくるなんてな…くそ! …そうだ、ライナー。さっき何を言いかけたんだ? |
ライナー | …いや、今はやめておこう。 |
ベルトルト | …………。 |
トロスト区・壁門 | |
巨人 | オォオォオオォォオオォォ! |
アルミン | まずいね…壁門に向って大量の巨人が押し寄せてる。 |
エレン | それに見ろよ…あの一際デカい巨人を…。 |
壁の巨人 | オォオォオオォォオオォォ! |
ハンジ | うわぁっ!! 見たこともない新種だね! あれも奇行種かな? |
エレン | 超大型巨人にも見えるけど…背丈はアレよりも低いな。 |
アルミン | だとしても、十分な脅威だよ。壁門を塞いでいる岩が破壊されたら今度こそ…。 |
エレン | あぁ…。それだけは絶対に防がねぇと。 |
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ハンジ | エルヴィン! |
エルヴィン | ハンジ…戻ったか。 |
ハンジ | 状況はどう? 旗色は大分悪いようだけど…。 |
エルヴィン | 現在は調査兵団、駐屯兵団、憲兵団の三兵団で迎撃作戦を展開している最中だ。全体の指揮はピクシス司令が執っているが…。各兵団の連携が、上手くいっているとは言い難い。 |
ハンジ | まぁ、予想はついたけどね。あの酒飲みのじいさんも相当苦労しているだろうさ。 |
ピクシス | 調査兵団、駐屯兵団、そして憲兵団の兵士諸君よ! この地は再び巨人の脅威に晒されることとなった! だが、言わずとも分かろう。このウォールローゼだけは死守せねばならぬと! そして、同時にここは我々人類が初めて勝利を得た記念すべき地である! 希望の灯を絶やさぬためにも、もう一度諸君らに請おう! その心臓をわしにくれと! |
調査兵団 | はっ! |
ハンジ | 全兵団の共闘作戦か。こりゃ前代未聞だね…。 |
エルヴィン | ハンジ、帰還したばかりで悪いが…。 |
ハンジ | 分かってるよ。巨人の扱いなら調査兵団の私達の方が慣れているからね。 |
ハンジ | みんな!用意はいいかい!? 全員であちらのお客さん達をもてなしに行くよ。 |
エレン | 了解です! |
ハンジ | いや…エレンだけは、ここで待機だ。 |
エレン | なっ!? どうしてですか!? |
ハンジ | 巨人の能力が今後いかに重要か説明しただろ? 今失うわけにはいかないんだ。 |
エレン | くっ…分かり、ました…。命令に従います…。 |
ハンジ | よし! 他の者は私についてきて! あの巨人の迎撃に向かう! |
アルミン | 壁内の巨人出現に続いてこの侵攻、か…。いくら何でもタイミングが良すぎる。ただの偶然なのか? それとも何かの意図が…。 |
ミカサ | アルミン、どうかしたの? |
アルミン | いや、何でもないよ…。 |
巨人 | ウォオオォオオオオ! |
調査兵団 | 分隊長! 巨人、討伐しました! |
ハンジ | よし、周りはなんとか片付いたか、後は…。 |
壁の巨人 | ウォォオオォオオォオ! |
ハンジ | あの馬鹿デカイ新種だけだ。ただ…。 |
調査兵団 | 分隊長! 対象は体表面から、高熱の蒸気を噴出! 近づけません! |
ハンジ | 個性的過ぎるんだよねぇ。ぜひとも仕組みを調べてみたいところだけど…。どうするべきか。アルミン、何か意見はある? |
アルミン | …え? そ、そうですね…。今は待つしかないと思います。あの状態を保持し続けるにも限界があるはず。 |
ハンジ | その通りだね…。ここは根気比べしかない。各班! ヤツの監視を怠るな! |
調査兵団 | 了解です! |
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エルヴィン | それで…? その後、奇行種はどうした? |
ハンジ | 蒸気の噴出は止まず、日暮れと共に去って行ったよ。 |
エルヴィン | そうか…。一先ず事態は収束したか。払った代償も少なくなかったが…。 |
ハンジ | 仕方ないさ、事前の演習も無しに各兵団の連携を取れって方が無茶だよ。それに憲兵団は巨人との接触自体、初めてだからね。恐怖に染まった味方は、敵に勝る脅威だよ。 |
エルヴィン | だが、我々には時間がない。先程の巨人とていつ再び襲ってくるか分からない。限られた戦力で対処していくしかない。 |
ハンジ | 問題は山積みだね。これ以上、何も起こらないといいんだけど…。 |
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エレン | …くそっ! 巨人を前にして、見てるしかできないなんて…! |
ミカサ | エレン…落ち着いて。ここで怒鳴っても仕方ない。 |
エレン | 分かってるさ…けどな! |
リヴァイ | …エレン。お前が苛立ちをどこでぶつけようと構わないが…。蹴り飛ばした屑箱の中身は当然処理しておけよ? |
エレン | 兵長…? エルミハ区にいたはずでは…。 |
リヴァイ | 今の俺はこのクソ足のせいで戦闘は役立たずだが…人手は何かと必要だ。 |
ミカサ | …………。 |
リヴァイ | だが、お前は違うだろ? お前にしか出来ないことがあるはずだ。その事だけに集中しろ。空っぽな頭を無駄使いするな。 |
エレン | 兵長…。 |
調査兵団 | 伝令ーーーっ!! |
リヴァイ | …どうした? 用件を伝えろ。 |
調査兵団 | へ、兵長!? …はっ! カラネス区とクロルバ区が巨人に襲撃されております。 |
リヴァイ | 何…? |
ピクシス | 諸君、早朝よりすまぬな! 昨日の疲労が抜けきらぬ者も多いだろう! 休む時間を与えたい所だが…のんびりと落ち着く暇は今の我々にはない!既に聞いていると思うが…カラネス区とクロルバ区が、現在、巨人によって襲撃されとる! これより我々は部隊を東班、西班、この地の防衛班の三班に分ける。この作戦には調査兵団、駐屯兵団、憲兵談の全兵団で臨むことになる。侵攻してきた巨人の中には、未確認の新種も見られるとのことだ! この悪夢を晴らすためにも…諸君らの健闘を祈る! 全員、心臓を捧げよ! |
調査兵団 | は…っ! |
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ベルトルト | ライナー…怪我の具合はどうだい? |
ライナー | 良くはないな。だが、部隊には補給班として参加はすることになった。 |
ベルトルト | 負傷兵を駆り出す程、人手が足りないんだろうね…。 |
ライナー | ベルトルト…お前はどこの班になった? |
ベルトルト | 僕は西班に配置されたよ。 |
ライナー | そうか…。オレは東班だ。分かれちまったな…。 |
ベルトルト | ライナー…。くれぐれも気を付けてくれよ。後もう少しなんだ…。 |
ライナー | 分かっている…。お前も気を付けろよ。 |
ベルトルト | あぁ…。 |
ハンジ | …………。 |
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ハンジ | エレン、アルミン、ミカサ。ちょっといいかい? |
アルミン | どうしました? |
ハンジ | 三人だけに話があるんだ。ライナーたちのことについてね。前にも話した通り、アニと彼らは同じ出身地だ。なら、彼らがアニと同じく巨人化能力を有している可能性も否定できない。それで確認なんだが…二人の行動で何か違和感のあるものはなかったかい? |
エレン | ……。 |
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ライナー(回想) | …エレン。話があるんだが…。 |
エレン(回想) | ……? |
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エレン | …いえ、特には…。 |
ハンジ | そうか…。現状では二人の地下幽閉も先延ばしにするしかない。だが、警戒は必要だ。その為に三人には協力して欲しい。 |
アルミン | 僕達に…ライナー達を監視しろということですか? |
ハンジ | そうだよ。くれぐれも彼らに悟られないようにね…。 |
エレン | ですが、本当なんですか? あいつらが巨人なんて…。 |
ハンジ | 真実なんて分からないよ。ただそうだった場合…事態は最悪になるってことさ。 |
ミカサ | もし彼らが、その兆候を見せた時は? |
ハンジ | なるべくなら捕獲したい。だが、無理な場合は…排除もやむを得ないだろうね。 |
ミカサ | …了解しました。 |
エレン | …………。 |
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エレン | …………。 |
ジャン | エレン…おい、エレン! 出発だぞ! |
エレン | …わ、悪い! ぼーっとしてた…。 |
ジャン | しっかりしやがれ! ピクニックに行くんじゃねぇんだぞ! |
エレン | 分かってる! 少し考え事をしてただけだ…! |
ジャン | ったく頼むぞ…同じ班なんだ。寝ぼけて巨人になられちゃたまらねぇからな。いいか? くれぐれも倒す敵は間違えんなよ。 |
エレン | …あぁ…。 |
エルヴィン | これより我々東班は、カラネス区へと向かう! 陣頭指揮は私が執る! |
調査兵団 | 了解です! |
ハンネス | よう、二人も同じ班だったか。アルミンは…。 |
ミカサ | アルミンは西班です、ハンネスさん。 |
ハンネス | そうか…。まぁ、あの子は賢い子だ。一人でも大丈夫だろう。その代り二人は、必ず俺が守ってやるからな。オレは変わったんだ。もうあの時のオレとは違う。今ならあの巨人だって…。 |
エレン | ハンネスさん…あまり無理はするなよな。もう結構な年だろ? |
ハンネス | 生意気な口聞きやがって。お前ら新人兵士にはまだまだ負けんさ。必ず生きて帰るぞ、二人とも…。 |
エレン | ハンネスさん…。 |
調査兵団 | エルヴィン団長ーっ! 壁外部300の位置に巨人群です! |
エルヴィン | …何? |
調査兵団 | 我々と同じ方向に移動しております! |
ハンネス | カラネス区に!? これだけの巨人が、向こうに加わったら…。 |
エルヴィン | 防衛はより困難となる。それだけは何としても食い止めなければならない。巨人を足止めするための班を今より編成する! 各員、呼ばれた者はここへ! |
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エルヴィン | 後は…ミカサ、君にも加わって欲しい。実力はリヴァイが保証してる。 |
ミカサ | リヴァイ兵士長が…? …了解しました。 |
エルヴィン | もし君の方で必要な人員がいる場合は申し出て欲しい。 |
ミカサ | それでは…ライナーをお願いします。 |
ライナー | ……っ! |
エルヴィン | …分かった。ライナー、頼めるか。 |
ライナー | …了解しました。 |
コニー | …なっ!? ライナーは怪我してるんだ! こんな状態で戦うなんて! |
ライナー | 飛び回るだけなら問題ない。せいぜいヤツらの気を引いてやるとするさ。 |
コニー | なら…オレも残ります! ライナーの怪我は、オレに責任がありますから! |
ヒストリア | だったら、私も同じです! ここに残らせてください! |
エルヴィン | …分かった。以上の者で、防衛線を構築! 巨人の進行を食い止めろ! |
ライナー | 了解しました! |
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エレン | ミカサ…ライナーをどうする気だ? |
ミカサ | それを決めるのは私じゃない。エレンも分かってるでしょ? |
エレン | 今だって信じられない。あいつが裏切り者なんて…。 |
ミカサ | 余計なことは考えないで。今は生き残ることだけを考えて。だから…死なないで。 |
エレン | …あぁ。そっちのことは頼むぞ、ミカサ。 |
ミカサ | 心配しなくていい。私は必ずエレンのもとに戻るから。 |
エレン | そうじゃなくて…。いや、なんでもない。 |
ミカサ | ……? |
ライナー | 防衛線と言った所で…この人数じゃハリボテも同然だな。 |
ミカサ | 平地と言えど壁はそばにある。立体機動装置の使用には問題ない。 |
ライナー | 相変わらず肝が据わってるな…さすが首席卒業だな。 |
ヒストリア | それを言ったら、ライナーだって2番じゃない。 |
コニー | おぉ! よく考えりゃ首席と2番の夢のコンビだ! こりゃすげぇ! |
ライナー | あまり期待しないでくれるな。片腕でどこまでやれるか…。 |
コニー | …任せとけって。オレがお前の右腕代わりになってやるからよ! |
ライナー | コニー…。 |
コニー | 責任取らせてくれよな。オレだって兵士なんだ…護られてるばかりじゃねぇよ。 |
ライナー | そうだったな…。 |
コニー | でもさ…いくら頑張ってもよ、それを自慢する故郷はもうねぇんだよな。いるのは、変な巨人だけだ。母ちゃん似のよう…。 |
ライナー | コニー、それは気のせいだと言ったろ? |
コニー | ユミルが巨人になったんだ。もう誰が巨人になってもおかしくねぇと思うんだ。 |
ライナー | …今は忘れろ。生きて避難してる可能性もない訳じゃない。その時、凱旋する本人が巨人の腹の中じゃ、恰好がつかないだろ? |
コニー | そうだな…。あんなになっちまったけど、それでもオレの故郷だ。 |
ヒストリア | 私ももう一度ユミルに会うためにここでは死ねない。必ず生き残ってみせる! |
コニー | クリスタも張り切ってんな…。よっしゃ! やってやるか! |
ヒストリア | コニー、私の本当の名前はヒストリアだよ。 |
コニー | あぁ?ヒストリア? じゃあクリスタってのは偽名だったのか? |
ヒストリア | そう…事情があってね。私には二つ名前があったの。これからこの名前で生きる…ユミルとそう約束したの。 |
ライナー | …………。 |
ミカサ | ライナー…クリスタが気になるの? |
ライナー | …いや、何でもない。女神みたいなヤツだと思っただけだ。 |
ミカサ | ……? |
ライナー | ところでミカサ…お前は何の為に戦ってる? 聞いたことはなかったよな。 |
ミカサ | …私は昔、一度家族を失った。でも、そんな私を受け入れてくれた人達がいた。だけど、その二つめの家族も巨人によって失われた。あのシガンシナ区で…。 |
ライナー | …………。 |
ミカサ | 今の私に残ったものは少ない。だから、それを護るためなら私は何でもする。 |
ライナー | ようはエレンを守るためか。なぁ、お前らはその…付き合ってるのか? |
ミカサ | ち、違う! あくまで家族であって…。 |
ライナー | ミカサが動揺してる…。こりゃ珍しいもんが見れたな。ははっ。 |
ミカサ | それでライナーは…やっぱり故郷に帰るために戦っているの? |
ライナー | それがオレに残った全てだ。その望みだけが、今のオレを支えている。 |
ミカサ | そう…。 |
調査兵団 | …!?巨人を確認! 距離前方、1000! |
岩の巨人 | グォオオォォオオォ!! |
ライナー | あれが新種の巨人か…。 |
ミカサ | ライナー…。 |
ライナー | どうした? |
ミカサ | 頼りにしてるから…。 |
ライナー | …あぁ、任せておけ。 |