ゾンビ化現象(Zombienaization)

Last-modified: 2009-11-15 (日) 12:06:45
・ゾンビナイゼーション

ゾンビナイゼーションとは、世界の深層(イド)が現世に噴出している状態である。外から見ればその一帯は深い霧のようなものに包まれ、そしてそこにあったものはその瞬間から「まるで初めからなかったかのように」扱われる。これを発見・突入できるのはゾンビかその関係者だけである。そして外を覆う霧は時を追うごとに深く、黒くなっていく。もはや黒一色しか見えなくなったその時が、その中の世界が終わる時である。
その瞬間、黒い球体は地面へと引きずり込まれていき、中の人間達ごとイドへと飲まれていく。最終的に、そこには巨大な黒い孔がぽっかりと空いているだけとなる。そこに飲み込まれたものを救出する術は残念ながら見つかっていない。
ただし、ゾンビナイゼーションを止めることが出来ない訳ではない。沈み行く世界の碇、“アルケー”と呼ばれる存在を滅することにより、再び世界を浮上させることが出来る。彼らは自らのエゴにより世界をイドへと堕とそうとする、現世の破壊を目論むものたちである。
だが“アルケー”は鍵にすぎない。そこから引き出される力は渾然としたエネルギーそのもので、その力に方向性を与えるのは常に人間である。
自らの力でイドの力を手に入れたもの達の主張は極めれば一つ。「願いを叶える」という一点に帰結する。
彼らの多くはゾンビナイゼーションにより現世を生け贄に捧げて、自らの世界を作り出すことが出来ると信じている。しかし、人類にその後の世界を確かめる術はない。深く、そして暗いイドの中から帰って来たものは誰もいないのだから。
だが、新たな世界が顕現する片鱗がゾンビナイゼーションの最中に現れることがある。深度が深まるにつれ、一体を覆う霧の中はアルケーの願いを映した姿へと変化していく現象が見られる。無論、その代償として幾人もの命が失われていることも明らかに解る。何度も言うが、願いには代償が必要なのだ。
そして、一つだけ、願いが叶ったと言える実例が目に見える形で存在し、それは人類の悩みの種である。それが、”ゾンビ“。動く死者として立ち上がるものは、「死にたくない」という純粋な生存本能から来る強い「願いを叶えた」形であるという考え方が出来ることから、彼らがを世界新生の鍵だとして崇める宗教すら生まれる昨今である。
このゾンビナイゼーションを終わらせる方法で現実的に可能なものは見つかっていない。人類を含めた世界そのものの負の側面である「イド」を完全に消すことは叶わず、全生物が幸福になるか、世界に生物がいなくなった時がゾンビナイゼーションの終幕と科学者達は推測している。世界がゾンビ化するという最悪の結末を避けるため、人類は必死の延命作業を続ける他ない。
いまは、まだ。

・ゾンビナイゼーション深度対応表

0:無深・我々の良く知っているゾンビのいない現代社会。ゾンビ化は起こりえない。今この段階にあるのは、一部の清浄かつ人類未踏の聖域を除いて存在しない。
1:微深・このゲーム世界のゾンビ深度。ゾンビやその関係者がその領域に少数もしくは存在していない状態を指す。
2:軽深・ゲーム上でPC達がいる”普通”の状態。ゾンビがその領域に存在し、活動していることを示す。ただしゾンビナイゼーションは始まっておらず、“霧”がこの段階で確認されたことはない。なお2と3の間には大きな隔たりが存在する。
3;弱深(2段階)・世界のゾンビナイゼーションの始まり。ゾンビやその関係者達は視界のぼやけを感じる。この段階から死者のゾンビ化が本格的にスタートする。また、人々の心が麻痺し始め、多少の騒ぎや異常なことを気にとめなくなってくる。
4:中深(2段階)・世界に漂う霧が視認できるようになる。中に入る人間は何となく不調を感じ始める。
5:強深(2段階)・周囲を取り巻く霧が濃くなる。目眩や吐き気を訴える人間が増加するが、この段階ではまだ死なない限りゾンビ化は起こらない。また、ゾンビやその関係者はこの段階でアルケーが心に描く新世界の幻像(ビジョン)が見え始める。
6:激深・漂う霧が黒くなりはじめ、時折世界に支配者の望む世界の像が重なって見え始める。一般人の中でも意志が惰弱なものがゾンビとなってしまうケースが発生する恐れがある。もっとも、ゾンビの数があまりにも少ないため被害はほとんど発生しない。
7:烈深・すでに周囲を真っ黒な霧が漂い、世界の輪郭そのものが作り替えられた世界と二重に見える。ゾンビ化が完了した一般人が増加し、人間とゾンビの大規模な衝突が発生する。
8:深層・帰還できるデッドライン。領域内の生命体はよっぽど執着が強いか、強い信念があるかしなければ、ゾンビ化が加速度的に進行する。都市で発生した場合ゾンビとその被害者合わせて万単位の死傷者が事件解決後も発生する。なお、すでに世界の作り替えは終了しているため、反動で建物なども倒壊している。
9:消滅・手遅れ。世界はイドに飲まれ、生きとし生けるもの全ては生け贄となる。舞台となった場所にポッカリと開いた黒い孔の描写をして終了。例外無く中にいたPCは死亡する。

・ゾンビ

ゾンビとは、世界の深層(イド)に飲み込まれ、なお人の形を保ち続ける存在である。いかなる理由かゾンビナイゼーションの最中で死にきれなかった、世界への執着が強かったものが死を乗り越え、再び立ち上がる。
時に四肢が千切れても、もし臓腑が弾けても、たとえ脳漿が垂れ落ちても動くその姿から、彼らはブードゥの呪術者が使役した屍体の怪物“ゾンビ”の名前で呼ばれている。
彼らは死なない。いや、死ねないと言っても良い。彼らは現世と死との間で揺れ動き、その度に執着を心に立ち上がる。次なる生の代償は、こちらの世界の理(ことわり)。心の中の大切なものを犠牲に捧げ、ゾンビは立ち上がる。奇跡には代償が必要なのだ。
死と再生の果て、全てを捨てきった時、ゾンビの中のヒトの心はようやく苦死を迎えることが出来る。後に残るのは、正気をかけらも残さない化け物だけだ。
また、彼らは本能的に生きた人間の生気を求める。そのある種の衝動は人間性が薄れるに従って強くなり、前述のように知性のかけらも無い化け物となった後は人間の血肉を求めて彷徨いだす。これは自らの「生きたい」という望みを叶えるため、重度に損傷した体の欠落を補うための行為だとゾンビ学者達の間で考えられている。

・アルケー

イドと現実とを結ぶ、悪夢湧き出る“根源”。悪意や慟哭、その他強い負の感情のうねりの起こった場所に現れ、一体化することによって力を与える。アルケーとなるものの多くは人間だが、悲劇を生んだ器物や殺戮が起こった場所がアルケーとなる場合も存在する。言わばイドへ至る鍵とも言うべき存在。
イドに渦巻く形なき悪意へアクセスすることにより、アルケーに関わったものは感情を暴走させ、破滅的な行動へと己を向かわせる。そうして彼らは世界を巻き込んだ自殺、“ゾンビナイゼーション”へと駆り立てられる。
彼らはどうやってアルケーを知ったのか。悲劇の中で偶然か? 自らその方法を探したか? 鬱屈した心の闇が引き寄せたか? 無数のパターンがある中で、「アルケーは悲劇」というのが唯一絶対の法則である。そこで起こるのは世界に絶望するにたる惨劇。そうして生まれるのが、世界を全てイドへと引きずり込むゾンビナイゼーションの使徒である。
ただし、アルケー自身のゾンビ深度が進行しているとは限らない。しかし、最終的にはゾンビ化してしまうことであろう。

・アンカー

“心あるゾンビ”を世界につなぎとめるもの。
夢、理念、大切な人、もの……これを失ったゾンビは、本能と悪意に突き動かされる屍と化す。

変わる世界

イドは世界を変質させる。ゾンビナーゼーションの中変わっていく世界は“アルケー”を得たもの達によってその彩りを変える。多くの場合、世界は「腐る」。赤さびの浮いた建物、黒く粘つく大地、赤く濁る水、全体に漂う腐臭と耳鳴りのように残るすすり泣く声。世界そのものが「死と腐敗」というものに冒されたような全ては、人間にえもいわれぬ不安を想起させる。
マッドサイエンティストたちは、人間が心の中に抱く「死」のイメージがゾンビナイゼーションに投影されていると考える。「腐る」というのは人間が最も簡単に抱くことができる死のイメージゆえ、最も多いと言える。彼らはゾンビナイゼーション後の変質を「腐敗」、「地獄」、「幻想」の3つに大別している。
これらは全て死のイメージに直結している。「腐敗」は漠然とした死のイメージ。「地獄」は苦痛に満ちた死のイメージ。そして「幻想」は死への子供じみた憧れが元である。