XPとは何か

Last-modified: 2013-06-30 (日) 16:16:34

Windows XP発売以前、Windowsは一般家庭向けではWindows 95などのWindows 9x系と、ビジネス用途向けではWindows NTなどのWindows NT系が並行開発・販売されている状態が永らく続いていた。その状況はマイクロソフトにとって負担であり、この負担を軽減する目的で一般家庭向けWindowsをWindows NT系に統合することを目標に開発された。Windows XP以前に同様の統合化を試みたWindows 2000を基本に、その際統合の成功に至らなかった機能も含めて開発されている。 この一大変革によって、Windows XPはWindows NTの安定性・堅牢性とWindows 9x系のマルチメディア機能や使いやすさを併せ持った汎用 OS となった。NTカーネルを採用した一般家庭向けのWindowsはWindows XPが初であり、安定したOSを手軽に入手・利用することができるようになった。Windows XPの開発成功を受けて、マイクロソフトは長年の懸案であったWindows 9x系の終息を成すことができた。

永きに渡って販売されていたが、ネットブックなど超低価格機向けなどの一部の用途を除き2008年6月30日をもってマイクロソフトからの出荷は終了した[3]。2008年7月以降の入手方法は、流通在庫品のほかに後継製品となるWindows VistaのBusinessかUltimate エディション[4]、Windows 7のProfessionalかUltimateエディションからのダウングレード権[5][fn 1]を利用する形になった。一部の直販メーカーでは、この仕組みを利用して業務用向けオプションとして引き続きWindows XP ProfessionalをプリインストールしたPCが出荷されていたが、2010年10月22日に販売が終了した。また、米MicrosoftのDSP版も2009年6月30日に販売終了となり、店舗在庫限りとなった[6]。

米国の調査会社Net Applicationsによると、2013年1月における世界のOSシェアはWindows XPが39.51%であり、首位の座をWindows 7(44.48%)に明け渡したものの、XPが要求するハードウェアが既に全サポートを終了したWindows 2000ほどではないが、一応の低スペックであるため(後述参照)や、アプリケーションソフトによっては後継Windowsに対応していないなどの理由から、依然として根強いシェアがあり、一部のインターネットオークションや中古販売においてWindows XPリテールパッケージ版(特にクリーンインストール版のProfessional)は後発のWindows Vista、およびWindows 7、そして2013年4月時点で最新WindowsであるWindows 8より高額で取引されることも決して少なくない。

エディション

Home Edition主に家庭で使用されることを前提に開発されたエディションである。Windows XPの基本的な機能が搭載されており、ドメイン参加といったビジネス向けの機能は搭載されていない。Professionalエディションに比して、1つの物理CPUのみの対応(ただしハイパースレッディング・テクノロジーはサポートする)といくつか拡張性に制限がある。Professional上級ユーザーあるいはビジネスでの利用を想定した、Home Editionに対する上位エディションである。マルチ プロセッサへの対応や ドメインへの参加、リモートデスクトップのホスト機能、ダイナミック ディスクのサポートなどに対応するほか、IISやファイルシステム暗号化などセキュリティ保護関連機能も搭載する。Media Center EditionMCEと略される。バージョンは 2002(コードネーム:eHome、日本語版は存在しない)、2003(コードネーム:Freestyle)、2004(コードネーム:Harmony)、2005(コードネーム:Symphony)とそのマイナー アップデート版Update Rollup2(コードネーム:Emerald)の4種類がある。Professionalエディションの機能を基本に、テレビジョン放送やデジタルオーディオ機器などの AV 機能を付加したエディションである。MCEにのみ、Media Centerと呼ばれるテレビ視聴・録画、音楽再生・録音、ビデオ・DVD 鑑賞などを専門的に行うツールが収録されており、付属する専用リモコンで遠隔操作を行うことが可能である。ただし、Media Center EditionはOEM供給の形でのみ提供されるため、プリインストールPCを購入する必要がある(2005についてはDSP版が提供され、一部のハードウェアとセットで入手が可能となった)。2004ではドメインへの参加は可能であったが、2005では再インストール時(OEM版はインストール時も含む)のみにしかドメインへの参加はできなくなった。マイクロソフトも公式にはドメイン参加は不可能であるとアナウンスしている。その他の両バージョンの差として、サポートTVチューナー数が1から2に増加、導入済みService PackがSP1からSP2になったほか、2004では非対応だったPortable Media CenterやデータCD/DVDの作成について、2005で対応した。2005年10月にリリースされたUpdate Rollup2では、Xbox 360をクライアントとして使用することが可能となった。なお、AV機能が充実したPCは日本でも多数リリースされているものの、それらへのMCE採用例は少ない。日本の大手PCメーカーはAV機能に特化した製品を提供する際、ハードウェア・ソフトウェア(ドライバ、アプリケーション)を独自に開発・機能拡張することが多く、結果、OSにはHome EditionまたはProfessionalを使用すれば事足りるからである。この理由として、それら大手PCメーカーの殆どは大手家電メーカーでありAV製品に関する技術が潤沢であること、MCEのリリース以前から多くのAV機能特化PCを製造販売していたこと、そういった製品の多くは家庭向けであるからMCEよりもコストが低いHome Editionを採用したいこと、などが挙げられる。Tablet PC EditionProfessionalの機能に加え、ペンタッチ機能を付加させたエディションである。このエディションが搭載されたPCには必ず専用のペンが付属する。またタブレット操作を想定したエディションであるため、Windows Journalと呼ばれるツールでメモ書きができたり付箋紙やMicrosoft Officeなど一部のアプリケーションの付加機能が利用できる場合もある。Tablet PC Edition(2002)とTablet PC Edition 2005の2種類のバージョンが存在し、2002ユーザーはService Pack2をインストールすることにより2005へとアップグレードできる。OEM版とDSP版(2005のみ)での提供で、市販パッケージ版は存在しない。64 ビット版64-bit Itanium EditionItanium 環境のワークステーション向けのエディションである。Windows XPを基に開発され2002年に公開されたVersion 2002と、Windows Server 2003を基に開発され2003年に公開されたVersion 2003がある。16GBまでの実メモリと8TBまでの仮想メモリをサポート。IA-32向けアプリケーションソフトウェアがそのまま動作するという機構 (WOW64) を備えている。OEM供給の形でのみ提供された。後述するProfessional x64 Editionが発売される前の2005年1月4日に販売終了となった。Professional x64 EditionAMDによるx86アーキテクチャの64ビット拡張に対応したWindows Server 2003を基に開発されたクライアント向けのエディションである。機能の多くとそれを表すバージョン番号はWindows Server 2003と同じものである。2005年4月23日から販売開始され、OEM版とDSP版のみが提供された。市場限定版Starter Edition開発途上国向けのエディションである。対象国は低国民所得が故に海賊版が横行しており、その対抗策として廉価で提供されている。主要エディションに比して廉価提供の理由付けに、同時に開けるウィンドウ数が3つまでであることや画面解像度がSVGAまで、ネットワーク共有機能の制限やマルチアカウントが使用できないなどの大幅な制限が加えられている。Home Editionなどへのアップグレードは提供されていない。ポルトガル語(ブラジル)、タイ語などの言語版をはじめ複数のローカライズ版がリリースされており、それぞれ異なった壁紙やスクリーン セーバーなどが収録されている。ちなみに日本語版は提供されていない。Edition N
「マイクロソフトの欧州連合における競争法違反事件」も参照
欧州委員会の要求を受けて用意されたエディションである。Home EditionとProfessionalからWindows Media Playerが除かれている。主要エディションはメディアプレーヤーに関する消費者の選択権を狭めるとして、競争法違反に問われたため。Edition K および Edition KN韓国公正取引委員会の要求を受けて用意されたエディションである。KはHome EditionとProfessionalに他社製インスタント メッセンジャーへのリンクを追加したもの。KNはHome Edition KとProfessional KからWindows Media PlayerおよびWindows Messengerが除かれているもの。欧州連合域内におけるメディア プレーヤーに加えて、インスタント メッセンジャーについても消費者の選択権を狭めるとして、独占禁止法違反に問われたため。その他Home Edition ULCPC2008年4月3日にマイクロソフトがULCPC用としてメーカー向け販売を開始すると発表したものである[10]。なおマイクロソフト言うところのULCPCは一般においてネットブックやネットトップと呼ばれる超廉価版PCに合致しており、これらの市場向け製品に利用されている。Windows Fundamentals for Legacy PCsコードネーム "Eiger" と呼ばれたもので、2006年7月にシンクライアント版としてソフトウェア アシュアランス契約者向けに登場した[11]。Embedded組み込み用途向けエディションである。専用の構築ツールを使用してOSの機能をカスタマイズし、搭載製品の構成や用途に応じた OS パッケージを作成することができる。POSシステム、ATM、カーナビゲーション、アーケードゲーム基板、シンクライアントなどに使われているほか、大手メーカー製PCでTV視聴録画専用モードのOSとして採用されている例もある。

特徴

&ユーザー インターフェイスと外観
ビジュアル スタイル大きな特徴は、GUIのデザインを変更することのできるテーマの概念を取り入れたことである。Windows XP以降では、ボタンやウィンドウ・その他GUIの外観をまとめてビジュアル スタイルと称する。Windows XPでは標準として「Luna」が採用された。Lunaの他にマイクロソフトやその他のサード パーティーがリリースしているビジュアル スタイルが多数存在するが、標準ではマイクロソフト公式のものにしか変更できない。またデスクトップのアイコンの利用をスタートボタンへ集約、コントロール パネルなどといった設定項目もウィザードを取り入れ、初心者でも直感的に操作できるユーザー インターフェースとなっている。なお、処理能力が低い環境での使用や、Windows 2000やWindows 98以前の旧来操作性を継承したい場合、画面のプロパティの設定で「クラシック スタイル」を選択することで、「Luna」を使わない以前のバージョンに似たスタイルを設定することも可能である。
システム管理
ユーザーの簡易切り替えこれまでのWindowsはログオンしているユーザーを変える場合、必ずファイルを保存させてログオフする必要があったが、この機能によりログオフすることなくユーザーを切り替えられるようになった。この時、切り替える前のユーザーによって実行を開始したプロセスはバックグラウンドで動作したままの状態となる。これはサーバーOSで培われたターミナルサービスの技術を利用したものである。ただし、Windows Serverドメインに参加しているコンピュータはこの機能を使用することができない。システムの復元システムの環境をある時点の状態へ戻す事が可能となった。もともとは Windows Meから含まれた機能で、Windows XPはNTベースで初めて含まれた。
ハードウェアとデバイスドライバ
CD-R/RW の書き込みこれまでのWindowsでは別途ライティングソフトウェア(書き込みソフト)が必要だったが、Windows XPではRoxioのライティングエンジンが搭載されており、CD-RとCD-RWの書き込み機能に標準で対応した。フォルダにファイルを移す感覚で記録したいファイルを選択できるので利便性があり、直感的な操作が可能である。Windows Media Playerで音楽CDの記録もできるので、大半の環境では書き込みソフトの必要性はなくなった。ただし、ISOイメージ ファイルからのCD作成はできない、DAO(Disk at Once)での書き込みができない、パケットライト方式の書き込みができないなど、ライティング ソフトウェアを別途用いる場合に比して何点か制約がある。ClearTypeアンチエイリアシングを発展させたClearType採用により液晶ディスプレイ環境で、より鮮明な文字表示が可能となった。
Windows 9x系との互換性
Windowsアプリケーション互換モード
「Windows NT系#Win16サブシステム」も参照
過去のWindowsバージョンに依存したアプリケーション動作させるモード。Windows 2000にも搭載され、さらに改良が加えられた。Windows NT系である本製品は、Windows 9x系と設計思想が異なる。そのため、そのままでは動作しないアプリケーションが少なくなく、サポート終了したWindows 9x系からの移行のために用意されたモードである。また、過去のWindows NT系に特化したアプリケーション動作にも使われる。該当するプログラムのプロパティから「互換性」タブを選ぶことで、互換性を持たせるバージョンをWindows 95、Windows 98/Me、Windows NT 4.0、Windows 2000から選択できる。マイクロソフトが公表した、ライオン株式会社のWindows 98から Windows XPへの移行の事例によると、自社開発した12のアプリケーションで、そのまま動作したのは8、表示に問題はあるが動作したのは2、ソースの書き換えが必要だったのは 2で、80%以上動作したという[12]。また、互換性を高めるためのツールとして、Application Compatibility Toolkitが配布されている。これは現在の環境で利用しているソフトの互換性調査や、マイクロソフトへの報告、互換のために用意されたShim(設定)を組み合わせ、自力で動作させることなどが可能になっている。さらに、互換対応したアプリケーションのデータベースを利用できる。これは、本来の仕様では動作しなかったアプリケーションに、追加で互換性を持たせたことを意味する。
ネットワーク
リモートデスクトップPCをネットワークを介して操作できるリモートコントロール機能である。ホスト側のPCはProfessionalまたはTablet PC Editionである必要がある。RDPを利用しているのでUNIX系OSでも接続が可能となっており、大半のコンピュータがクライアントとなることが可能。ローカルユーザがログオン中の場合には強制的にログオフされる。リモートアシスタンス操作されるPCから操作するPCへWindows Messengerや電子メールで遠隔操作の通知を出し、許可が下りれば遠隔操作できる機能。PCに詳しくない人が遠隔地にいるPCに詳しい知人からサポートを受ける用途に用意されている。この機能の利用には、双方がWindows XP以降を利用している必要がある。IPv6当初は開発者向けとして、一般ユーザーに対するサポートの対象外となっていたが、Service Pack 1で正式にサポートされた。ただし、実装されているIPv6の仕様が初期のものであり、古くなっているため、実際に使用するには問題があることがある。また、ホスト名の解決を行うDNSクライアントサービス(リゾルバ)の実装がWindows Vista以降とは異なっており、非互換がある。Windows XPでは、IPv6を有効にすると、IPv4でのホスト名の解決に時間がかかるようになり、IPv4での性能が低下する。この性能低下については、Windows Vista以降で改善されたが、副作用として、ホストにリンクローカルアドレスまたはTeredoアドレスしか割り当てられていない場合、ホスト名からIPv6のIPアドレスを取得できなくなるため、IPv6で通信することが困難になっている。

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