アヒャのおもてなし 4

Last-modified: 2015-06-07 (日) 10:23:33
44 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/28(火) 23:50 [ c2cHpkdM ]
元は、ごく普通のアパートの台所だったのだ。
しかし、今そこにはアヒャの手によって、この世の地獄が表されていた。
テーブルの上の透明なポリ袋。
まだ血の付いている、ちびギコの腕が数匹分、無理矢理詰め込まれている。
ペットボトルには、八分目程、何者かの血が満たされている。
ヌラヌラとした血液が、ペットボトルのキャップのふちにこびり付いて光っている。
カッパッパーの皿と甲羅は、ハンマーとスクリュー・ドライバーで壊され、
甲羅の中身はクツクツと煮立った鍋の中で、
泥臭いにおいを発しながら、ドロドロに煮込まれている。
炊飯器では、おにーにが炊かれていたらしい。
高温の水蒸気で顔や体の米が溶けて、あまり原型を留めていない。
しぃは、まな板の上で腹を裂かれ、そのグロテスクな色彩の
内臓をアヒャとモララーに見せびらかすかのように仰向けに固定されている。
そのしぃのそばには、白い陶器の皿に臓器が盛られていた。

今まで、数々の虐殺をこなしてきたモララーだが、このような光景を見るのは初めてだった。
モララーがしてきた虐殺とは本質的に異なるアヒャのこの行為。
アヒャのそれは虐殺と言うより、むしろ……。
食事だった。
アヒャはゆっくりと、立ち尽くすモララーに近づいて行った。狂気の笑みを浮かべながら。

45 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/28(火) 23:51 [ c2cHpkdM ]
「アヒャヒャヒャ、なぁモララー。どうだこの際、無意味な虐殺は止めないか?」
モララーはぎこちなく振り向いた。
「なるほどね。食べれば有意義だって言いたいわけか。このキティ」
アヒャは、奇声にも似た笑い声を発した後、
おもむろにしぃのそばに置いてあった皿を持ってきた。
「肝臓だ。内臓だと、肝臓が一番ウマーだぞ。アヒャヒャ、ウマーウマー」
アヒャは肝臓をモララーの目の前にちらつかせると、生のままでそれを食べた。
クチャクチャと汚らしい音を立てながら、アヒャは肝臓を味わっている。
アヒャの唾液に濡れた口から、噛み切られた肝臓の切れ端が、少しだけこぼれる。
食べ終わり、口を手でぬぐうと、アヒャはモララーを見つめて言った。
「アヒャは、今までちび共しか食べたことがないアヒャ。今度は大物を食べてみたいと思ってるアヒャ」
アヒャの包丁がモララーの頬をかすめた。しかし、モララーもかなりの手練れだった。
素早い動きでアヒャの刃をかわす。
そして、とっさにカッパッパーの甲羅の近くにあったハンマーを手に取った。
アヒャは包丁を突き出し、モララーはハンマーを振り下ろした。
包丁はモララーの左手を深くえぐり、ハンマーはアヒャの頭を強打した。
アヒャの体が傾き、台所の床の血溜まりに倒れ込んだ。
モララーは、痛みをこらえながら、人目を忍んで自分のアパートの部屋に戻った。
素早く腕の手当をして、必要最低限の荷物をまとめて部屋を出た。

あれから、数年。
地方に隠れ、虐殺などの行為も自粛していたある日のこと。
「ミュイィ♪ ミュギ? ギュゥゥゥッ!! ギュィィ……」
ストレスが溜まっていたのか、つい一匹のべびギコを殺してしまった。
ふと、手に着いた返り血を舐めてみた。鉄の味がモララーの舌をおおった。
次に、べびギコの肉片を恐る恐る舐めてみた。噛んで、飲み込んでみた。
そして、狂ったように内臓を掻き出すと、手当たりしだいにむさぼっていった……。

 完