209 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/04/23(水) 20:03 [ VYRFLTSM ] 1/2 野原に、心地よい風が吹いた。 黄色いタンポポがゆらゆらと揺れる。 この穏やかな春の野原に、二人の子供が遊びに来ていた。 子供のモララーとちびしぃだ。小学校低学年あたりか。 彼らは、この日、野原にそれぞれ木を一本ずつ植えた。まだ小さな苗木。 「この木が大きくなったときには、虐殺なんてない、幸せな世の中になっているといいね」 「ウン。平和ナ 世ノ中ダト イイノニナ」 遠い、春の思い出。 あれから二十数年。二人とも、もう大人になった。二人は離れてしまったけれど、あの日のことは覚えていた。 あの時植えた木は二つ共大きくなった。 でも、あいかわらず世の中は虐殺と差別がはびこっていた。 モララーはひさしぶりに、しぃに会ってみることにした。 彼は、しぃが虐殺されていないか心配だったのだ。しぃは、生きていた。ただ、子供の頃とはだいぶ変わっていた。 彼女は、とてもワガママで、とてもうるさくて、とても目障りな生き物へと変化していた。 いわゆる、アフォしぃという生き物になっていたのだ。 再会したモララーは、しぃの変化を目の当たりにして驚いた。 が、しぃもあの日の木のことを覚えていた。 「子供の頃、野原に木を植えたね。平和な社会を祈って」 「ソウダネ。マターリノ ショウチョウノ キダネッ」 しぃは、甲高い耳障りな声で叫んだ。 「ネェ ネェ。マターリノ タメニ シィチャンヲ ダッコシテヨ」 しぃは短い両手を伸ばしてきた。モララーは身をかわした。 しぃは、変わってしまった。 「ナンデ ダッコシナイノ? マターリノ キヲ ウエタノニ? ドウシテ マターリ シナイノヨォッ!?」 モララーは、頭に熱湯を注がれたように感じた。怒りが、脳を占領する。 モララーはしぃの腕を掴み、無理矢理車に乗せると、あの野原に連れていった。 「ナニスルノヨォ? ヘンタイ、ユウカイハン、ギャクサツチュウッ」 しぃは、変わってしまった。 210 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/04/23(水) 20:03 [ VYRFLTSM ] 2/2 モララーとしぃは、野原に着いた。タンポポの中で、二本の細長い木が生えている。 しぃの手首は、モララーに掴まれ、青く冷たくなっている。 モララーは、暴れるしぃの腹に突きを放った。重たい突き。 しぃの目は大きく見開かれ、口から唾液がほとばしった。 二本の木をしならせ、ロープでしならせたまま固定する。 そして、ぐったりとしたしぃの体を逆さまにして、足をそれぞれ別の木に結びつける。 モララーは、しぃが意識を取り戻すまで待ち続けた。子供の時のことをぼんやりと思い出しながら。 やがて、しぃは目を覚ました。 「僕は、君を殺すよ。この平和の木を使って」 静かな、でも殺気と狂気をはらんだ声。 「ナンデッ? ナンデ シィチャンガ コロサレナクチャ イケナイノォォォッ!?」 耳をつんざく、しぃの絶叫。 「だって、今の君はアフォしぃだ。君は交尾して子供を産むだろ。その時、君はどんな教育をする? アフォしぃに育てられたベビも、やがてはアフォしぃになるだろう。そして、アフォしぃが増え、虐殺が増える。 アフォしぃがいなければ、虐殺は起こらない。世の中をマトモなしぃだけにすれば、平和になるんだよ」 モララーは、木をしならせていたロープをナイフで切断した。しなっていた木が、元に戻に、離れる。 しぃの足は、木が離れたため、股からヘソまで一気に裂けた。 血と細かな皮や肉片が、打ち上げ花火のように勢い良く飛び散った。 腹の亀裂から、熟れたザクロのような臓器達がひょっこりと顔を覗かせた。 いくつかの動脈が切れたらしく、心臓の鼓動に合わせて、一定のリズムを刻んで血が吹き出ている。 モララーは、しぃが絶命したのを見届けると、ナイフで自分のノドを切り裂いた。 しぃは、アフォしぃに変わってしまった。 モララーは、虐殺者に変わってしまった。 どちらも、平和な世界には相応しくない者達。 今でも、平和の木は野原に立っている。 青々とした葉を茂らせて、木漏れ日と戯れている。 平和の木は、二つ共大きく立派になった。 何故なら、しぃとモララーの死体の養分を吸い上げて、育ったのだから。 今だ、虐殺はなくならない。 完