398 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:11:35 [ 7YwzrkI6 ] 古代偉人小説アブネタシリーズNo3 「検察官」(原作:ニコライ・B・ゴーゴリ) 木枯らしがひゅうひゅうと吹きすさぶ寒空の元、 また同じように寒々とした村が一つ、あった。 この村の名前は、後御五里村 そしてこの村が、どことなく荒んだような空気がするのも当たり前 何せこの村の住人は、全員がしぃ族なのだ。 どいつもこいつも、生まれたときには既に親がいない いわば孤児。 外部からの客など、週に一度かそこらに 都市部に出かける連中が中継地点としてやって来るだけ この村はそんな連中が寄り集まった、吹き溜まりの村なのだ。 そしてそんな吹き溜まりの村が今、にわかに慌ただしくなっている・・・。 ~村長屋敷~ 屋敷の一室に、幾匹かのしぃが集まっている。 何やら会議をしているようで、この村の村長と思われるしぃが 他のしぃに向かって何やら発言した。 「皆さん。今日皆さんに集まってもらったのは、極めて重大な報告をするためなのです。 というのも、近々この後御五里村に、虐殺党の視察がやってくるのです。 それもレビゾル市・・・虐殺党本部からの、です。」 皆の顔に、緊張が走る。 「虐殺党!? ナンデコンナ田舎村ニ・・・・・・?」 「ナンテコト……! ナンデ今ニナッテ!?」 「ネエ、何ナノ…? 虐殺党 ッテ…」 「アンタ、ソンナコトモ知ラナイノ? …マアイイワ。 虐殺党ッテイウノハ……マア、ソノマンマノ意味ノ団体ヨ。 元々ハ、アフォシィヲ駆除スル団体ダッタンダケド、最近虐殺党ッテ改名シタノヨ。 マア、元々ガアフォシィ駆除団体ダッタカラ {良しぃやでぃなど、アフォでないしぃは対象にしない}ナ~ンテ言ッテルケド 党員ノ中ニハ、中毒レベルノ虐殺好キモイルモタイダカラ、ドウニモ、ネ……。」 皆が騒がしくなったところで、村長が話し出す。 「はいはい! みんな静かに! それで、その虐殺党なんですが、近々忌まわしくも 私たちしぃ族の大量駆除をもくろんでいるようなのです。 とは言っても、例によって{害を及ぼすしぃのみが対象}とのことですが。」 「ドウシヨウ…… ソンナノガ来ルッテコトハ…。」 「その通りです。おそらく…というより間違いなく その視察がここに来る目的は、視察ではなく調査…斥候でしょう。 私たちが彼らの言う、{害を及ぼすしぃ}かどうかのね。」 「ソンナ……!」 「それで、視察官がこの村にやってくるのです! それで、分かりますね? もし、虐殺党に睨まれるようなことがあったら……」 村長しぃは親指を立て、喉の前で首を掻き切るように真横に振る。 「まだ誰がいつ来るといった詳しい情報は調査中ですが、近日中に来ることは確かです。 ですので、いいですね皆さん! くれぐれも気をつけてくださいね! それでは、今日はこれで解散にします!」 399 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:12:15 [ 7YwzrkI6 ] それから数日。村には目立って大きな動きはなかった。 ことが起こったのは、会議から5日後のことだった。 村長屋敷に、一匹のしぃが血相を変えて走り込んできた。 「村長! 大変デス!」 「何なの? 騒々しいわね。」 「ソ…ソレガ…、宿屋ニ…、モララーガ…泊マッテイルンデス!」 「? モララーが? それがどうかしたの?」 「ソレガ、普通ノモララージャナインデス!」 「……? どこが、どういうふうに?」 「ハイ! ソノモララーハ、何デモ三日クライ前カライルソウデ 宿屋ノ主人ト何カ話シテイルトコロヲ偶然見カケタンデスガ、ソノモララーハ…… 普通ノモララーヨリ 頭ガ良サソウデ 普通ノモララーヨリ 思慮深ソウデ 普通ノモララーヨリ 良サソウナ服ヲ着テイテ、 普通ノモララーヨリ 怪シイ雰囲気ヲ醸シ出シテイテ 普通ノモララーヨリ…………」 「はいはい、もういいわ。 とにかく、宿屋に普通じゃないモララーがいる、と。」 「ハイ! オマケニ…… 宿屋ノ主人ニ聞イテミタラ コウ答エタンデス! 『アノモララーハ レビゾル市カラヤッテキタ“モラスターコフ”トイウ方デス。 デモ トテモ妙ナ方デ 部屋ニ籠モッタッキリ 殆ド外ニ出テコナイ』 …トイウコトナンデス! 村長! ヤッパリコノモララーガ 例ノ………」 「そうね………。一度、確かめてみましょう。行くわよ! 一緒に来なさい!」 「ハ ハイ!」 400 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:12:57 [ 7YwzrkI6 ] 「ちっきしょう…… なんでこんなしぃ族しかいねぇへんぴな村に、俺は泊まってるんだ……」 一人のモララーが宿屋のベッドの上で、ぶつぶつ愚痴をこぼしている。 「くそったれのニダー共めが……。奴らが麻雀に誘い込んできやがった時、気づくべきだった……。 あんのやろうども、よってたかって やれ九連宝燈だの、国士無双だの、大三元だの…… イカサマ野郎どもめ! 1時間もしねえ内にすっからかんにしやがった! リベンジしてやるッ! ……といきてえところなんだが、そんな金なんかあるわけがねえ……。 くそ……。思えば、虐殺党クビんなったときから、この調子だ……。 元はと言えばあのバ課長! あいつのせいなんだ………! 何が『君のホラはもう聞き飽きた。もううんざりだよ。』 だ、馬鹿が! 能なしが! そんな訳のわからん理由で、将来の虐殺党の指導者となる、この俺をクビにするとはッ! ちっ……。ふん、まあいい…… 今にあいつは分かるだろう。 この俺をクビにしたことが、どれほどの愚行かということを、な!」 ………………………………………… 「にしても、何というシケた寒村だ ここはッ!! どこもかしこもかび臭エ! まあいい。俺の眼鏡にかないそうな、選ばれし者の町を見つけるまでの……辛抱だ。」 そうして散々わめいていると腹が減ったのか、モララーの腹が鳴る。 「………っと、腹減ったな。……おい! 何か食い物を持って来いッ!!」 しかし、何の返事も返ってこない。 「誰も、いねえのか……?」 試しに扉を開けて外を見るも、やはり誰もいない。 「……っくしょおッッ!! だからしぃ族は嫌なんだッッ!! 生きる価値もねえような薄汚いクズ共めが! この俺を誰だと思ってやがるッ!? 俺がもし死んだら、手前らが一生働いても返せねえほどの損害なんだぞッ!? 分かってんのか!? ………ハァ………ハァ………くそッ…………。」 散々わめくと、今度は疲れたのか ベッドに横になったそのままの姿勢で、居眠りを始めた。 そうして、しばらく立ってから 何者かが扉を叩く音に、モラスターコフは目覚めた。 「(誰だ……? まさか宿屋の主人か…? よもや宿賃の催促か………? ばかなやつだ。 そんなことをしたところで、どうなるかはわかっているだろうに………、まあいい。 どうせ暇だったし、イラついていたところだ……。) 誰だ? 入って来いよ!」 モラスターコフは扉が開かれるのを身構えて待っていたが 扉が開かれた瞬間、あっけにとられた顔をした。なぜなら 扉の先に待っていたのは宿屋の主人ではなく、多少はいい身なりをした(村長の)しぃだったからだ。 401 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:13:36 [ 7YwzrkI6 ] 「あ、あれ? ……あ、いや、で、何か用か?」 まだ呆気にとられている様子のモラスターコフに、村長しぃが切り出す。 「ハニャッ!! 申し遅れました! 私、この村の村長でございます。今宿屋に、外からのお客様がお泊まりになっていると聞きまして…… お泊まりになっているお客様に何かご無礼でもあったら大変ですので 今、ご様子を伺いに来た次第でございます。」 「ほ~う。」 村長しぃの腰の低さに、思わずモラスターコフは高圧的になる。 「じゃあ、言わせてもらうが ここの宿屋は何なんだ!? 食事を頼んでも全然出てこないし、 あげくのはてには何か頼もうにも、さっきまで誰一人としていなかったんだ! まったく、俺がいたレビゾル市のそれとは大違いだな! なァ!?」 まくしたてるモラスターコフに、村長しぃは少し震えながら 「ハニャッ!! 申し訳ございません! 身共も指導の方はきちんとしているのでありますが 今日はたまたま、風邪をひいておりまして………」 「風邪だとォ!? そんな言い訳で通るとでも思ってるのか!? これがレビゾル市だったら、貴様ら今頃原型とどめちゃいねえぞ!? いいだろいいだろ。近日中にはこの村から、人っ子一人消し去ってくれるわ!」 村長しぃはますます目の色を変えて 「ハ ハニャニャッ!! い、いえいえ! そんなつもりでは! どうか、どうか落ち着いてくださいまし!」 「落ち着け………? ほほう。被虐生物である貴様らしぃ族が、俺達モララー族に意見するとはな。 いい度胸だな、面白い………! 今夜は久々に血の雨が見れそうだ……!」 「シィィィィ!! お、お許し下さい! お許し下さい! 私どもにご不満がございましたら、何でもお申し付け下さい! ですから、ですから………」 「………ちっ。それじゃ、まず食事を用意しろ! 俺は腹が減って仕方がないんだ。」 「お、お食事でございますか! それなら、お詫びと言っては何ですが 村長屋敷の方にお越し下さいまし! 御馳走の用意を大至急致しますので!」 「……ふん、まぁ大至急っつったって、しばらくはかかるんだろ。 まぁいい。その間(金をせびれそうなやつでも見つけるべく)村の中でも見て回るか。」 「む……村の中……ですか?」 「ああ、よくよく考えたら、この村に来てから直行で宿屋に来たからな、俺。 金でもせ…… ゲフンゲフン! いや、退屈しのぎに村の中でもぶらついてみようかと思ったんだが……」 「! そ、そうでございますか! それではどうぞ、ごゆっくり!」 「? ふん。じゃあな!」 モラスターコフは荒々しく扉を開けると、外へと出ていった。 後に残った村長しぃの元に、先程まで宿の外で様子をうかがっていた何匹かのしぃがやってきた。 「村長! 今ノモララーガ………?」 「………。先程、調査の報告が来ましたが、間違いないようですね………。」 村長しぃは、声のトーンを落とす。 「エェッ! ジャア………」 「静かに! まだ話は終わっていませんよ! それで、今後のことですが、彼には絶対、不満を感じさせないようにしなければなりません。 彼には気持ちよく帰ってもらわないと、私たちの首が飛びますからね………。 それで、今後の身の振り方についてですが……………。」 402 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:14:40 [ 7YwzrkI6 ] しばらくして、モラスターコフが宿屋に帰ってきた。 「あ~あ、くそっ。金をせびるどころか、誰一人外にいねえじゃねえか……。 しかし、さっきの村長といい、この村の連中は何か変だな。 どいつもこいつも、俺のことを恐れている……? なぜだ……? 近頃は有象無象の虐殺党の幹部共が、“党員以外の虐殺は禁止”なんて言ってやがるから 前見たく、モララーを見たり、脅されただけでびびるしぃも、ほとんどいないはずなんだが……?」 ブツブツつぶやきながら、モラスターコフは『宿屋』に戻ってきた。 「あ、そういやあいつら、屋敷に来いとか言ってやがったな。間違えて宿屋に戻って来ちまった。 しかし御馳走だかなんだか言ってやがったが、大丈夫だろうな……… この俺の味覚は、超一流の高級料理しか受け付けねえんだぞ……。」 戻ろうとしたその時、何か話し声が聞こえてきた。自分が泊まっていた部屋からだ。 「ん? 俺の部屋に、誰かいる……?」 扉に耳を当てて、盗み聞きを試みる。 「それで……彼は…………なのです………が………」 「ジャア ………デ……… …………トイウコトハ…………。」 声からすると、中にいるのは先の村長しぃと しかしどうにも、中の連中は声を潜めて話しているらしく、うまく聞き取ることが出来ない。 「何だ何だ何だ? 俺の部屋で秘密の談義? あいつら何話してるんだ?」 しばらく耳を当て続けているも、相変わらずのひそひそ声でうまく聞き取れない。 しかし、突然一匹のしぃが大声を上げた。 「デモ虐殺党モ、ナンデコンナ時ニ視察ナンカヨコスノヨ! 何モイm……フゴッ!?」 「声ガ大キイワヨ! 誰カニ聞カレタラ ドウスルノヨ!」 「ゴ ゴメン! デモ………。」 「そこ、うるさいわよ! とにかく、いいですか! 彼にはこのことを、絶対に勘ぐられてはなりませんよ! ですから、この後の行動について、もう一度………」 またひそひそ話になってしまったが、モララーは満足げな笑みを浮かべて立っていた。 「く く く………、そうか………。だからあいつら、俺を恐れていたのか………。 よりにもよって、この俺を虐殺党の視察と間違えるとはな。 さっき村長しぃを、散々脅したのが決定的だったかな? ……まあいい。とにかく…… こいつは、久々に楽しめそうだ……!」 モラスターコフは思わずほくそ笑み、村長屋敷に向かって歩き出した。 403 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:15:36 [ 7YwzrkI6 ] 「あれが、村長屋敷か……」 宿屋から歩いて数分、モラスターコフは村長屋敷に着いた。 「ん。あれ、何であいつら……」 モラスターコフが屋敷の門の方に目をやると、そこには村長しぃ以下数匹のしぃがいた。 (俺のが先に出たはずなのに……。先回りしやがったか? ふん。まぁ、どうでもいいか。) つかつかと門の所に歩み寄る。 「モラスターコフ様! お待ちしておりました! 準備はすっかり整ってございます! どうぞ中にお入り下さい!」 モラスターコフは促されるままに中に入り、そのまま大広間に案内された。 「まぁ、予想通りというか………」 大広間には、既に宴の準備がなされていた が 所詮は寒村の宴。場所も料理も、どれもこれもすべてがしょぼい。 唯一救いなのは、酒だけは多少まともな物が用意されていたことぐらいか。 (これが、歓迎か………? 手一杯の、歓迎かぁ………? 嘗められたもんだなぁ………俺も……… くっくっくっ………!) 不気味な薄笑いを浮かべるモラスターコフを、しぃ達は心配そうな顔つきで見守る。 (この……クズ虫どもが………!! 貴様らには仕置きが必要だ……な! 覚悟しておけ……!! ただ宴をひっくり返す ブチ壊すより、もっと面白い趣向で仕置きをしてやる……!) モラスターコフの出す空気に耐えかねたか、村長しぃがワイン瓶を手に近寄ってくる。 「さ、さぁ! まずはお酒をお飲み下さい!!」 「ん! あ、ああよ。」 ワイングラスにつがれた酒を、一気に飲み干す。 やはり、酒の味は悪くない。 「さぁ! どんどん食べて、飲んでください!」 とりあえずは促されるままに、酒を、料理を口にする。 とりあえず、は………… 404 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:16:37 [ 7YwzrkI6 ] 「なんか………面白くねぇなぁ………」 宴が始まってしばらく後、突然モラスターコフがぼつりとつぶやく。 そして、思わず凍り付くしぃ達。 「な……何が………ですか?」 「面白くねぇっつったんだよ。酒飲んでも、飯喰っても な~~んも、面白くねぇ。」 見る見るうちに、青ざめるしぃ達。 そんな様子を面白がるように、モラスターコフはあたりを一瞥すると 「だから、俺が面白くしてやる。……おい まずは、ちびしぃとベビしぃを数匹連れてこい………。早くしろ!」 「ハ ハニャッ!!」 弾かれたように、しぃが数匹外に飛び出していく。 全員、モラスターコフがなぜちびやベビしぃを必要とするか、 これから何をするつもりなのか分からぬわけではなかったが、 彼を怒らせたら全てがおじゃんになる。 故に全員何も言わず、ただ黙っていた………。 「連レテ参リマシタ………。」 先程外に出たしぃ達が戻ってきた。 足下には、ちびしぃやベビしぃが、数匹。 どいつもこいつも、これから俺になにをされるか分かっていないような 無邪気なきょとんとした目で、俺を興味深そうに見つめてくる。 対して、連れてきたしぃ共 -おそらくこいつらの親か?- は、一様に暗い。 まぁ、当たり前か。 405 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:17:23 [ 7YwzrkI6 ] 「ご苦労さん。 ………さて」 アルコールの臭いをまき散らしながらモララーが立ち上がり ちびやベビの所に歩み寄る。 すると 「臭いです! それに、何でここにクソモララーが、いるんですか! 早く出ていかないと、アボーンしますよ!!」 ちびしぃが相変わらずの、恐れ知らずというか、大胆不敵なDQN発言をかます。 顔色を変え、慌てて飛び出そうとする大人しぃ達を後ろ手で制止すると モラスターコフはそのまま大人しぃ達の方へと振り返った。 「ではこれから、このモラスターコフ様が、貴様らにレクチャーをしてやろう。」 「レクチャー……? 何の……ですか……?」 「しぃ族の生態学。 感謝しろよ? レビゾル仕込みの俺のレクチャーが聴けるなんてよ。めったにねぇ機会だぞ? じゃ、始めるとしますか………まず………。」 モラスターコフは、先程のDQN発言のちびしぃの頭を鷲掴みにする。 大人しぃの中から、小さな悲鳴が上がる。 「痛いです! 早く放しなさい! このバカモララー! 放さないと……グゲッ!」 ぎゃあぎゃあ喚くちびしぃの首を少し絞め、モララーは“レクチャー”を開始した。 「ちびしぃの生態に関しては、興味深い点が多い。 まず、なぜちびしぃは全角しゃべりが出来るのか? っつー点についてだ。 こいつぁ、言っちまえば簡単なこった。あの全角しゃべりは 第二次性徴するときの、副産物だ。」 「副産……物……?」 「そ。しぃ族に限らず、モララー族、モナー族 どの種族も一定の年齢に達すると、個人差はあるが第二次成長期 俗に言う思春期だな を迎える。んで その思春期になるとだ、脳味噌から成長ホルモンが分泌される。 こいつの作用で、肉体は爆発的な変化を遂げるわけだ。 骨格・筋肉の変化……そして声変わり とか。で、だ……」 モラスターコフは、鷲掴みにしたちびしぃを前に出す。 「その時の成長ホルモンは、声帯にも異常を及ぼすんよ。 他種族であれば、そのままストレートに声帯に働きかけて、声帯を変化させるんだが しぃ族の場合、その周辺の筋肉やら各組織を活性させ、結果として一時的に 全角しゃべりができる声帯構造になるんだ。つまり間接的に声変わりするんだなぁ。 そして大概の場合、成長期が落ち着けば また声帯は元の状態に戻り、 あの聞き苦……ゲフンゲフン! ……半角しゃべりに戻るわけだ。 つーわけだ。質問は?」 「………………………………。」 まぁ、当然ながら質問は帰ってこない。どうせ理解などしてはいないだろうからな……。 もっとも、そうでないと……困るんだがなぁ♪! 406 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:18:46 [ 7YwzrkI6 ] 「なるほど。イマイチ理解できてねーよーだな。 じゃあ……実践してみっか。」 モラスターコフは、ちびしぃを鷲掴みにしたまま もう片手で、卓上のステーキ・ナイフを手に取る。 何をするか察知したのか、大人しぃの中から悲鳴が上がる。 「よ~っく、見てろよ~~?」 ナイフを目の前にちらつかされ、流石のちびしぃも青ざめる。 「や、やめなさい! や、や、やめないと…………」 「アボーンするんですかぁ~?? どーぞ!!」 モラスターコフのナイフが、ちびしぃの喉笛を縦一文字にかき斬った。 「アアアアアァァァァァアア~~~~!!!!」 しゅうしゅうと、霧のようにちびしぃの喉笛から血が吹き出る。 「散々DQN発言してくれちゃって………でもな ヒック まだ終わっちゃいねぇんだよぉぉぉぉぉ!!!」 次にモラスターコフは、ちびしぃの喉の傷口に両手をやり バリバリと一気に、横に広げた。 「~~~~~~~~!!!!」 最後に吐血し、悲鳴にならない叫びを上げ、ついにはちびしぃの目から生気が失われた。 散々強気な、大胆なDQN発言をしていたちびしぃ。 だけどもう、その口が開かれることは無くなった。 「さてと、皆々様。見えますかぁ!? ゲフッ」 また酒臭い息を吐いて、モラスターコフはちびしぃの死体を大人しぃ達に向ける。 「分かんだろ? ここの部分。妙に膨れてんだろ? 分かる? ここが膨れてるせいで、クソちびどもぁ全角しゃべりができるんだよ。 あん? まだ分からねぇって顔してんな………あ、そっか。」 しゅっ 一閃。 モラスターコフは、今度は近くにいた大人しぃの喉を切り裂いた。 思わず周りから、今度は大きな悲鳴が聞こえる。 「………比較対象を………作ってなかったなぁ~~♪ ック! 比較対象がなきゃ、どれだけ膨れてるかなんて、分かんねぇもんなぁ♪ ヒック! ってと!」 モラスターコフはちびしぃをやったときと同じように 切り裂いた大人しぃの喉を、バリバリと横に広げていく。 そして、その横にちびしぃの死体を並べる。 「見ろよ? 今度こそ分かるだろ? これ、これだ。中央あたりの管みてぇなやつ。これが声帯だ。 な、一目瞭然だろ? 大きさの違いが。な?」 だがしかし、大人しぃ共は誰も見ていない。 青ざめた顔で目を背ける者、顔を手で覆って泣いている者、嗚咽を漏らす者 まぁ、当然と言えば当然か。 「………さ~てと、それでは、レクチャーその2。 今度は、ベビしぃのオマソコの収縮率について……」 407 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:19:22 [ 7YwzrkI6 ] 「モ……モウ……ヤメ……!」 そのベビしぃの親か 母しぃとおぼしきしぃがモラスターコフの所に駆け寄ろうとする。が 「ヤメナサイ! 何ヲスル気!?」 「デモ…デモ! ベビチャンガ……ベビチャンガ!!」 「我慢……シテ……!! オ願イダカラ……! ココデアイツヲ怒ラセタラ……ミンナオ終イ……。 ダカラ……耐エテ……!!」 「……………………!!!」 別のしぃの説得で、どうにか母しぃは矛を収める。 そしてそのまま、その場に泣き崩れた。 くくくくく……… いいねぇ、その表情………。 泣き崩れたしぃを、モラスターコフは満足そうに眺めながら レクチャーを続けた……。 408 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:20:12 [ 7YwzrkI6 ] 「分かったか? ベビしぃのオマソコ、つまり括約筋だが これの収縮率は、ベビといえどかなりのものである! ………このように………!」 モラスターコフはちびしぃよろしく、ベビしぃを前に出す。 ただ、今回は鷲掴みではなかった。 なぜならその手は、ベビしぃのオマソコに深々と突き刺さっていたからだ。 モラスターコフの拳の形に膨れるベビしぃの腹。 「ベビしぃの頃から、マグナム級のティムポが入るんですねぇ。」 もちろん、無理矢理入れたのは言うまでもないが。 「イ イチャーヨゥ!! ヤ ヤメテェ!! タチュケテェ! オジタン ヌイテェ!!」 涙や涎をボロボロこぼしながら、ベビしぃは必死に哀願する。 ベビしぃのオマソコは限界まで伸ばされており、血がダラダラと流れている。 おそらくオマソコだけでなく、拳を納めた子宮も同様であろう。 「オジ オジ オジジジジジ……!!」 限界突破の苦痛に、ベビしぃは口から泡を吹き、白目をむき……人事不省だ。 「おやおや……。ベビちゃんはもう、おねむですか。 じゃ、レクチャーはお開きにしましょ。……よっ」 「バグウゥゥゥゥッッ!?」 ぐったりとしていたベビしぃが、突然バネ仕掛けのように跳ね起きる。 そして、鮮血。 モラスターコフが無理矢理腕を引っこ抜いたか? 否。 よく見ると、ベビしぃの腹からモラスターコフの指が突き出ているではないか! ベビの子宮は、拳の状態で限界まで延びきっているというのに その中で指を広げればどうなるか。言うまでもない。 「ベビちゃんのお腹からお花が裂(咲)きました! なんつって! ぎゃははははは!!」 そりゃお花じゃなくてチェストバスターだろ、というツッコミが聞こえてきそうなくらいの 異様な光景。モラスターコフ一人の狂笑がこだまする。 「とりあえず、レクチャーはこんな位で、終了! 後ぁ飲んで騒いで、楽しみましょぉーか!! ヒャハハハハ!!」 躯と化したベビしぃを投げ捨てると、酒の回ったモラスターコフは もう、止まらない。 一晩中、飲めや騒げやの大暴れ。 409 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:20:51 [ 7YwzrkI6 ] 翌日。 何とモラスターコフが、複数のしぃのお供を連れて、村を回っている。 なんでも、昨日の“レクチャー”の続きだとか。 「で、この土地がどうしたって~?」 「ハ ハイ! 数年前カラ ナゼカ痩セテシマッテ 作物ガ満足ニ 実ラナイノデス……。」 「ほ~……。だったら、レビゾル流の土地復活術を教えてやろう。」 モラスターコフは、紙に何やらメモすると 「……おい! そこのしぃ。ここに書いてあるやつを持って来い!」 「ハニャ! スグニ 持ッテキマス!」 「ご苦労。」 モラスターコフの両手には、スコップと、そしてお決まりの…… ベビしぃが10匹近く、握られていた。 「ヂィーー!! イタイデチュヨゥ! サッサト ハナチナチャイ!」 「チィハアイドル ナンデチュヨ! ヤサシクチナチャイ!」 「クルチィヨゥ! ハヤク ハナチテェ!」 「どうやら降ろして欲しいようなので、じゃ。」 手を開き、ベビしぃ達を地面にどさどさ落とす。 そして両手で、スコップを持ち……振り上げる。 「よ~~~く、見ておけよ。レビゾル流、土地復活術!!」 振りかぶったスコップを、モラスターコフはベビしぃの山に振り下ろした。 ぐっちゃ 「ギーーーー!! ヂィノカラダガ マッブダヅニィィィィ!!」 「ヤメテェ! ナコ チュルカラァァァァ!! ヤベデェェェ!!」 「スコップと、ダッコしてて下さ~い♪」 哀願は虐殺厨を興奮させるという。ベビしぃが泣き叫ぶたび モラスターコフはスコップをより激しく振り下ろす。 骨も肉も何のその。スコップ両手に片っ端から叩きつぶしていく。 ぐちゃっ ぐちゃっ ぐちゃっ ぐちゃっ!! 血が、肉が、腕が、足が どんどんちぎれ飛び、そして形をとどめなくなってくる。 「でっきあがり~~!!」 はしゃぐモラスターコフの足下には 数分前とは比べようもない、完全に叩きつぶされ、すっかりミンチ肉となって一体化した 10匹近くのベビしぃがいた。 「あとはこのベビミンチの上から土をかぶせりゃ、この土地は蘇るぜ。」 「ア アリガトウ…ゴザイ…マス」 「お礼は結構。これも人助けよ。ククッ!」 「ア アノ デ デスガ スコシ……」 反論には敏感。モラスターコフが眉をひそめる。 「やりすぎだって言いてぇのか? 人がせっかく教えてやったのに え?」 「イ イエイエ! トンデモゴザイマセン! ホントウニ アリガトウゴザイマシタ!」 「……よろしい。じゃ、次行こうか。」 正に傍若無人のモラスターコフ。この蛮行が終わるのは、いつのことやら……。 410 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:21:42 [ 7YwzrkI6 ] そして、夜。 またもや村長屋敷で、VIPモラスターコフの宴会が開かれていた。 「じゃあ、一人づつお酌をしに行ってきて……… その時、これを渡すのも忘れないでね。」 村長しぃが、一匹のしぃに酒瓶と、宝石を手渡す。 「ア アノ モラスターコフ様?」 「あん? なんだお前……?」 「イ イエ オ酌ヲシニ参リマシタ。」 「酌か。注げ」 差し出されたグラスに、震える手で酒をつぐしぃ。 そして 「コ コレハソノ ツマラナイモノデスガ………」 宝石を手渡す。 「………。ほ~。」 小さな掌から渡された宝石を、モラスターコフはその掌で転がしながら見つめる。 (……この光具合、光沢………。 こりゃまがい物じゃねぇな。本物だ……! ククッ こりゃいいぜ……!!) モラスターコフはまるで、新婚の夫婦のようにだらしない笑顔を浮かべる。 そんな笑顔に、やや後ずさりした様子のシィベだったが 「私、コノ村デ八百屋ヲヤッテイル“シィベ”ト申シマス! モラスターコフ様。レビゾル市ニオ戻リニナラレテモ 私ノコト ヨロシクオネガイシマス!」 「あ、ああ。分かってるよ。シィベちゃんね。うん うん。」 「ハ ハニャァ! サ ササ モットオ酒ヲ!」 411 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:22:20 [ 7YwzrkI6 ] 「………はぁ。あの子ったら……やりすぎよ……。」 うれしそうな顔でモラスターコフに酌を注ぐシィベを、呆れ顔で見つめる村長しぃ。 「ま、いいわ。彼も気分良さそうだし。じゃ、次シィファ 行って来て。」 「ハニャッ! 行ッテキマス!」 「失礼シマス モラスターコフ様!」 「お、次か。」 「私、コノ村デ 「あいさつはいいから、さっさと酌ついで………それともちろん“ツマラナイモノ”もな。」 「ハ ハニャ! モチロンデス! コノシィファ 注ガセテイタダキマス!」 そしてその後も、次々と 「私 シィワト申シマス! ササ!」 「シィサデス! 今宵ハタ~ント 召シアガッテクダサイナ♪」 「私ハシィエト(ry」 次々にやってくる酒と、宝石。 これまでに散々飲んでいるだろうに、モラスターコフの機嫌は鰻登りに上がっていった。 412 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:23:03 [ 7YwzrkI6 ] 「ジャ 最後デスネ 村長」 「ええ、よくやってくれたわね。みんな。 この分なら、ほぼ成功間違いなしでしょう。」 「アトハ 村長ダケデス! ガンバッテクダサイ!」 「ええ。まかせておきなさい……。」 「失礼します。モラスターコフ様。」 「お、あんた確か村長さんだったっけな。ック……。」 「はい。若輩者の身ではございますが……」 「よせよ謙遜は。……あんたも酌を?」 「ええ……。 どうですか? 今宵の宴は……。」 「最高だぜ。うまい酒と、きれいな宝石と…… しかし、この宝石はどこから?」 「この近くに、鉱山がありまして。そこから。」 その言葉を聞いた途端、モララーの目の色が変わった。 「鉱山!? ……そいつぁ、どこにある……?」 「? ……この村から、ちょっと離れたところですが……。」 「な、なぁアンタ……。ちょっと、相談なんだが……」 モラスターコフの声が、小さくなる。 「鉱山を……売ってくれと……?」 「頼むぜ。金はレビゾルに帰ってから十分な額を持ってくるから! な、頼むぜ。な!?」 「しかし、あの山は………。」 「だからよォ、頼むって言ってるじゃねぇか! な!? な!?」 「ですが、あの山は昔から我々しぃ族に代々伝わるもので、そう簡単には……」 「だからさ……… !(おっと)」 しつこく食い下がっていたモラスターコフが、突如ニヤリと笑う。 「……あっそ、くれないの。じゃいいよ。なら 俺がレビゾルに帰ったら、どうなるか……」 「!!」 村長しぃの顔が凍り付く。 (そうだよ。俺にはこの“虎の子”があるんじゃねえか。 下手に出る必要なんかなかったんだ。忘れてたぜ……。へへ。) 「さぁ、どうするかな?」 村長しぃは目をつむって、しばらく考えていたようだが 「………ならば、仕方ありませんね。 その代わり……」 「ああよ。さっきも言ったが、こいつに関しては代金を払ってやる。レビゾルに帰ってから、持ってきてやるよ。 (誰が払うか ボケ!!) ……んじゃあ、権利書を……。」 「………分かりました。しかし、今で大丈夫ですか? かなりお酒を召しておられるでしょう……?」 「………そうだな。じゃあ、明日の朝 俺を起こしに来たときに持ってきてくれ。明日発つんでな。 今夜はもう、寝る。」 「分かりました。では、明日の朝に。」 村長しぃが、奥に消える。 「さてと、じゃあ俺も部屋に戻るとしますか……!」 413 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:23:43 [ 7YwzrkI6 ] ククッ クククッ………! 部屋に戻ったモラスターコフ、グフフと満面の笑みを浮かべる。 今日は何て、ツイてる日だ……! 大量の宝石に加え、宝の山の鉱山ときた!! クフフッ! これで俺も、億万長者か……! おっと……。こんなめったにないグッド・ニュースは…… 故郷の貧乏役人のモナーリンにでも、教えてやるか。 フフ フフフ フフフフフフフ………!! 414 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:25:31 [ 7YwzrkI6 ] 「オハヨウゴザイマス! モラスターコフ様!」 かんだかいしぃ族の叫び声。一番起こされたくない起こされ方で モラスターコフは起こされた。 「やれやれ……何て起こし方だ…!! まぁいい。どうせこの村とも、今日で最後だからな……!!」 モラスターコフは荷物をまとめ、案内されるままに宿の入り口まで歩いた。 そして一同のお見送り。村長しぃが一歩、歩み出る。 「モラスターコフ様。お約束のものです。」 土地権利書をモラスターコフに手渡す。 「ああ。確かに。レビゾルに着いたら即、送るからよ。」 「はい……。その……もうひとつ…… レビゾル市で……よろしくお願いします。」 「! はいはい。まかせときなさい。 じゃ、そろそろ行くわ……( って、あれ? 何か忘れてるような……。まあいいか。)じゃあな!」 「またのご来訪を、お待ちしております!!」 モラスターコフの姿が見えなくなるまで、村のしぃ達は 精一杯、手を振り続けた。 「ふぅ……。やっと、行きましたね。」 村長しぃ以下、全員が胸をなで下ろす。 「さてと、じゃあお茶でも飲みましょうか。」 一同、宿屋にぞろぞろ戻る。 「やっと、行きましたね。これでひとまずは安心ですね。」 宿屋の食堂で、楽しそうに茶を飲むしぃ達。 「肩ノ荷ガ下リタワ~。ヤット終ワッタノネ~」 「フフ………あら?」 村長しぃが、床に何か落ちているのに気づく。 「これは………手紙? 差出人は…… ! モラスターコフ!?」 全員、村長しぃの方に振り向く。 「な、何で彼の手紙がここに? 食事をしに来たときに、落としたのかしら…… あら……開いてるわ。」 開いた便箋。好奇心は抑えられない。 手紙を読み始める村長しぃ。何時しか周りには、全員が手紙の内容を見るべく集まっていた。 そしてまた、手紙を読んで行くに連れて、全員の顔色が変わっていった。 拝啓 モナーリン そっちはどうだ? 元気してるか? こっちは元気だ。 というより、聞いてくれ! 俺もとうとう、億万長者だぜ! 実を言うと、偶然泊まった村の連中 しぃ族なんだが が 俺のことを虐殺党の視察と間違えてくれてな。 もうすげぇのよ! 山のように宝石をくれた上に、その宝石の 鉱山の権利書までくれたのよ。分かる? この俺の強運! まったく、しぃ族の馬鹿共には頭が下がるぜ~! あいつらの脳味噌って、ほんとに少ねぇんだなー! 笑えてくるぜ まったく! じゃあな! いつか帰ったら、その時の話をたくさんしてやるからよ!! ふろむ モラスターコフ 全員が、絶句した。 まるでそこだけ、時間が止まったかのように。 今の今まで、視察と思っていたモラスターコフは、ペテン師。大うそつき。 そんな大うそつきを、今まで手厚くもてなしていたのだ。 飯を要求されれば宴を、酌を。 ベビしぃ、ちびしぃも何も言うことなく差し出してきた。 そして宝石、鉱山の権利書までも……… どれもこれも、彼が虐殺党の視察だと思っていたから。 逆らえば、どうなるか目に見えていたから。 だが、実際はどうだ? 手厚くもてなしたその男は 自分たちを散々騙して、逃げていった……………。 ああ、なぜ、気づかなかったのか…………! だけど、もう遅い。 口達者なペテン師は、彼女達から散々巻き上げて そして、逃げていってしまった………。 終 415 名前:あれで終わるわけないでしょ ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:26:14 [ 7YwzrkI6 ] 「フヘヘヘヘ! これで俺も、億万長者か~~!」 レビゾル市の自宅、パクッてきた宝石と権利書を机に広げ ニヤニヤとほくそ笑むモラスターコフ。 「あれもできる。これもできる。ウケケケケ 何をしようかなぁ~~?」 と、そこに ピン ポーン…… 呼び鈴が鳴った。 机の宝石と権利書を、押入にしまい込む。 「誰だぁ……? はいはい 今開けるよ!」 がちゃ 「久しぶりだね。モラスターコフ君。」 「アンタは………。」 驚くモラスターコフ。無礼が服を着て歩くような輩が、なぜ? それもそのはず、ドアの前に立っていたのは、かつての上司 部下か? 数名を引き連れた、虐殺党の“課長”だった。 「バ……あ、いやいや。課長! どうしたんですかい?」 「何。少し話があってね。お邪魔するよ。」 「どーぞ……!」 フハハハハ! ふん。バ課長め。 やはり俺の才覚に気づいて、よりを戻そうってハラだな。 馬鹿め! 馬鹿め! 今頃気づいても遅いんだよ! 見てろ。お前に地面に跡がつくぐらい土下座させてやるからなぁ~~! 416 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:27:16 [ 7YwzrkI6 ] 「さて、話というのはだね。」 (俺に虐殺党に戻ってくれって言うんだろ? 分かり切ったことを!) 鼻を高くするモラスターコフ。だが 課長の口から出た言葉は、まったく意外なものだった 「君に、とある事件の容疑がかかってるんだよ。」 (へ……?) 言うやいなや、課長は捜査令状を広げる。 そして、捜索に動き出す部下達。 「な……? え……? な…なにが、どうなって……?」 「………少し前、ここレビゾルの宝石店が相次いで強盗に会うという事件があった。 そのうち一件は店主が殺害され、その店主が持っていた山の権利書が奪われたのだ。 ………覚えているかな?」 「…………え……? そ、それって……?」 モラスターコフの顔に、冷や汗が浮かぶ。 「そしてここ最近、我々はその手の売買の闇ルートの規制を厳しくしているから よほど強いパイプを持っていない限り、なかなか素人は売りさばけない……つまり」 課長はモラスターコフをじろりと睨み付ける。 モラスターコフは歯をガタガタ震わせ、顔面は完全に蒼白になっている。 「まだ処分できずに、どこかに隠している可能性があるのだよ。……おや」 気がつくと、課長が話している間に部屋を捜索していた部下達が立っていた。 手には、例の宝石と 権利書と。 「………フム。こいつは………間違いなさそうだね。えらく簡単に見つかったな。 じゃ、モラスターコフ君。一緒に来てもらおうか。」 課長の合図と同時に、部下達がモラスターコフを拘束する。 「ま…ま……待ってくれぇ!! こいつは……罠だ 罠なんだぁ!! 課長! 頼みます! 俺の話を…… 「言いたけりゃ本部で言ってくれ。まぁ、もっとも…… 在籍中に『ほら吹きモラスターコフ』と呼ばれていた君の話など、誰が聞いてくれるかね? ま、時間はそうないんだ。あんまりウソはつくなよ?」 「ち、違う! 違う! 違います! 俺じゃない! 俺じゃないんです!!」 「強盗数件と、強盗殺人と……… ま、寿命がつきる前には出れると思う……いや、でも……無理かな? ま、いい。連れてけ。」 「ちょ、ちょ、ちょっと………! え!? 待って……待ってくれよ…… 待 っ て く れ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ………!! 「ふん、ゴミクズめ。よもや犯罪をやらかすとはな。救いがたい男だ。 しかし……… 誰が密告してきたんだろうな………。 あの声は………しぃ族かな……? まぁ、そんなことはどうでもいいか。犯人も捕まったことだし、一件落着だ。 さてと、儂も戻るとするか……。」 417 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:28:08 [ 7YwzrkI6 ] 「……うまく、いったようね……。」 所変わって、ここは後御五里村 村長屋敷に村の主たるしぃ達が集まり、新聞を読んでいる。 もちろん連中が読んでいるのは、モラスターコフの事件だ。 「イイ気味ネ! キャハハハハハ!!」 「ですが、本当にいい時期に来てくれました。 当初の予定では、レビゾル市から宝石や権利書を盗んだ後、 闇ルートをじっくり探す予定でしたが、まさか……。」 「ソノ間ニ 虐殺党ガ視察ヲ送リ込ンデクル ナンテ……」 「札束等なら燃やしてしまえたんですが、宝石は隠滅しようにも、そうはいきませんからね。 山に捨てようと、川に捨てようと、無理矢理誰かに売りつけようと…… 本物の党の視察の嗅覚は、ハイエナ並みと聞きます……。 どこに隠しても、まず見つかっていたでしょう。……まぁ、権利書の隠滅は容易だったかもしれませんが 宝石が見つかれば、結局は同じ。疑いの目をかけられて この村は確実に消えていたでしょうね。」 「確実ニ“害を及ぼすしぃ”扱イサレテ 一心不乱ノ大虐殺……。」 全員が、安堵のため息をつく。 「調査結果で、あのモラスターコフが視察でないことは分かっていました。が それがなくても、彼がそれでないことなど、分かり切っていましたがね。」 「本物ノ視察ハ アンナ目立ツ行動シマセンヨネ!」 「“自分ハレビゾルカラ来タ”ダノ“レビゾル仕込ミ”ダノ…… 本物ノ視察ナラ 絶対言イマセンヨネ! 自分ノ身元ヲバラスヨウナコト……。」 「もともとああいう性格だったようですが、宿屋で聞こえよがしに言った“アレ”が効きましたね。 偶然を利用したわけですが、うまくいきました……。」 「『デモ虐殺党モ、ナンデコンナ時ニ視察ナンカヨコスノヨ! 何モイm……フゴッ!?』デスネ? アレデソノ気ニナルナンテ 救イヨウノナイ馬鹿ネェ!」 「あんな馬鹿な視察を本当に送り込んでくれていたら、ずいぶん楽だったんですけどね。 ………とはいえ、彼は無実だった。そんな者に強盗の証拠品を押しつけるわけですから 普通は党に密告などしないんですが、彼は少しばかりやりすぎましたね。 あれだけの傍若無人な振る舞い それに “奇形”のベビやちび達を殺すはいいにしても、その後私たちの仲間まで手に掛けるとは。」 「ヨカッタデスヨネ!“奴隷”カ“ストレス解消”ノタメニ 奇形ヲ飼ッテオイテ! ……マァ アノ子マデ 殺サレルトハ 思ッテナカッタケド……。」 「一匹奇形ナラ、兄弟皆奇形。10匹ナラ10匹 全部……! 寒気ガスルケド ソレデ奇形ノ数ガ稼ゲタンダカラ 今回ハ役ニ立ッタワケネ フゥ 悲シム“フリ”ッテノモ 疲レルモノネェ……」 「デモアイツ ヨク宝石トカガソノ事件ノモノダッテ 気ヅキマセンデシタネ?」 「彼もあの時は相当酔っていましたし、それに 彼らから見れば下等種族の私たちに、はめられるなんて思ってもいなかったんでしょう。 ちょっと考えれば、分かることなのに もし本当に宝石の算出できる鉱山を持っていれば、誰がこんなみすぼらしい生活をするものですか。 フフフ……。本当におめでたい男でしたね……。」 そして、村長しぃはすっと立ち上がる。 「さて、これで残すは、数日後にやって来るという本物の視察です。 こちらは冗談ではありません。本番です! いいですね皆さん! では、解散!」 418 名前:cmeptb ◆KSdlFS2kHA 投稿日:2005/07/14(木) 11:29:32 [ 7YwzrkI6 ] そして数日後、今度はモラスターコフの判決が新聞に出た。 本人は断固無実を主張したが、イソップ物語よろしく 昔散々ホラを吹きまくっていたのが災いし…… 有罪 そして、その判決は………………言うまでもない。 そして彼を贄として、後御五里村は今日もある。 あいかわらずの、変わらぬ毎日を送っている。 底知れぬしぃ族の、邪悪さをその中に隠しつつ。 end