流石兄妹の華麗なる休日~百ベビ組手~ 前編 (1)

Last-modified: 2015-06-27 (土) 22:41:40
3 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:36:41 ID:???
新スレ乙です。僭越ながらも1番乗りで申し訳ありませんが、早速新作投下させて頂きます。


【流石兄妹の華麗なる休日~百ベビ組手~ 前編】



「父者~。どこか遊びに連れてって欲しいのじゃぁ~」

先日11歳の誕生日を迎えたばかりの妹者が甘えるような声を出して、父者の背中に抱きついた。
それはまるで木にしがみ付く蝉を連想させ、何だか暑苦しい。

「い、妹者・・・降りてくれないかな?私は腰を痛めてるんだ・・・」

妹者にしがみ付かれた父者が声を絞り出した。
それを聞いた妹者は慌てて、

「あ・・・ごめんなのじゃ」

父者の背中から離れたが、すぐに標的を変え、

「兄者~。退屈で爆死しそうなのじゃ~」

そばであぐらをかいてゲーム雑誌を読みふけっていた兄者の背中に飛びつく。
兄者は突如として飛びついてきた妹者の衝撃に少々驚きながらも、横に居た弟者に声を掛けた。

「弟者よ。何故妹者は退屈だと爆死してしまうのだ・・・?」

「さあ・・・それほど暇だという事だろうな」

弟者が冷静に返した。
時は6月。初夏だ。場所は流石家の居間。
状況は見ていただければ分かる通り。
妹者が退屈のあまり、父者にどこか連れてって貰うようにねだっていた所だ。
しかし父者は腰痛で療養中。久々の休みなのでゆっくり休んでいたいらしい。
そこで今度は兄者に矛先を変えたという事だ。

「兄者は何か用事でもあるのじゃ?」

妹者に訊かれ、兄者は答える。

「い、いや・・・別に無いが」

すかさず妹者は、兄者の体を背中から揺さぶり始める。

「じゃあどこかに連れてって欲しいのじゃ!お願いなのじゃ、ね~ね~ね~ね~ねぇ~・・・」

ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ・・・・・・・・・・。
妹者の必殺ヴァイブレーションに、兄者はたまらずギブアップ宣言。

「わ、わかった、妹者よ・・・わかったから止めてくれ・・・うぷ」

「わ~い!兄者に勝ったのじゃ~!」

どさりと倒れた兄者の横で妹者が勝利宣言。
そして即座に弟者にも声を掛ける。目をキラキラと輝かせて。

「ちっちゃい兄者も一緒に行くのじゃ!」

弟者は少し困った顔をしたが、目を輝かせる愛妹の前では断る事も出来ず、承諾。

「わかった。俺も行こう。妹者、支度して来なさい」

「やった~!着替えてくるのじゃ♪」

妹者はピョン、と一つ跳ねてから、『ブーン』のポーズで部屋を出て行った。
まあ、俺も暇だったしな・・・とひとりごちてから、弟者は未だに床に伏す兄者に声を掛ける。

「兄者・・・大丈夫か?」

「あ、ああ・・・何とかな」

兄者が起き上がりながら答える。

「ところで、どこへ連れて行くんだ?金もあまり無いぞ・・・」

「そうだな・・・弟者よ、今日は何日だ?」

「今日か?」

弟者はちら、とカレンダーを見てから答える。

「今日は6月17日、日曜日だが」

そう告げると、兄者はポン、と手を叩いた。

「それなら丁度いい。今日はあれだ、町内広場で『百ベビ組手』の大会があるじゃないか」

「それだ!あれなら俺達も妹者も楽しめる、まさに打ってつけだな。金も掛からんし・・・」

その時、早くも可愛らしい服に身を包んだ妹者がバン!とドアを開けた。

「支度できたのじゃ!」

「早いな・・・妹者よ」

弟者は思わず苦笑するのだった。

4 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:37:21 ID:???
家を出た兄妹3人組は、早速町内広場へ向かって歩き出した。

「~♪」

鼻歌を歌いながら上機嫌な妹者がどんどん歩いてゆくので、続く兄者と弟者は付いて行くだけで精一杯だった。

「い、妹者よ・・・随分とご機嫌だな」

弟者が尋ねると、妹者は笑顔を崩さずに答えた。

「だって、久しぶりのお出掛けなのじゃ!」

言いながらもどんどん歩調が速くなる妹者。
兄2人はついに小走り状態で付いていく事となった。
道中、兄者が思わず弟者に漏らした。

「まったく、我が妹ながらなんてパワフルなんだ・・・」

それを聞いた弟者も、肩を軽く竦めながら言う。

「禿同だ、兄者。伊達に母者の血は引いてないな・・・」

「ああ、その元気を1割でいいから俺に・・・」

「兄者~!早くするのじゃ~!」

妹者の大声で会話を遮られた兄者と弟者は、互いに苦笑一つしてから、妹者の待つ方向へ駆け出した。
町内広場は、もうすぐそこだ。

5 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:37:56 ID:???
パン!パン!パン!

雲が1つ2つ浮かぶ青空に、花火の音が響く。
抜けるようなスカッとした快晴の空の下、大勢の人だかり。
広場のあちこちに特設ステージや臨時のプレハブ小屋、大きな柵で囲まれた古代ギリシャのコロッセウムを思わせる闘技場らしきエリアなんかが作られている。
また、様々な食べ物や飲み物、射的に金魚すくい等のアトラクションの出店まで出展しており、文字通り『お祭り騒ぎ』状態だった。
さて、大人から子供まで入り混じっての人の波に、早速飲み込まれた流石兄妹達。

「妹者、はぐれるなよ~!」

弟者の声に、

「大丈夫なのじゃ~!」

割とそばから妹者の声が返ってきた。この分なら大丈夫か、と弟者はほっと一息―――ついてもいられなかった。
とにかく押し寄せる人の波、波、波。まさにタイダルウェイヴ。

「あ、兄者よ・・・とりあえず落ち着ける場所に行かないか?」

最早どこにいるかもわからない兄者に弟者が提案すると、

「う、うむ・・・そうしよう」

弟者から見て5時の方向から兄者の返答が返って来た。

「このままでは・・・あっという間に・・・ばらば、あ、いや、ちょ・・・弟者、助け・・・」

弟者に向かって話しかけていた筈の兄者の声がどんどん離れていく。
見れば兄者は、人の波に流されてどんどん弟者から離れて行ってしまっていた。
十代後半の健全男子ならこれくらいどうという事も無さそうだが、兄者の場合は日頃の運動不足が祟っているのだろう。
はぁ、とため息一つついてから、弟者は人の波を掻き分け掻き分け、ようやく兄者の左手首を掴んだ。

「まったく、しっかりしてくれよ。妹者より先に兄者がはぐれてどうする・・・」

「うむ・・・スマンかった」

兄者は弟者に陳謝。
そのまま弟者は兄者の手首を引きながら、これまた流されそうな妹者の手を握る。
そして2人の手を離さないように、弟者は人ごみからの脱出を図って歩き出した。
その姿はまるで、雪山で遭難者のソリを引っ張って走るセント・バーナード犬のようだった。

「それ・・・褒めてないだろ」

弟者は誰にとも無く呟いてから、弟者はまた歩き出した。
彼方に見えた、レストハウスを目指して。

6 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:38:28 ID:???
「もうクタクタなのじゃ~・・・」

折り畳み式テーブルに突っ伏した妹者が、力無く呟きながら、メロンソーダのストローを銜えた。

「まだ来たばかりなんだがな・・・まあ、この人込みでは無理も無いか」

弟者が同調しつつ、手に持ったアイスコーヒーをストローでかき混ぜる。
カランカラン、とグラス内の氷が涼しい音を奏でた。

「賑わっているとは思ったがな・・・まさか、ここまでとは」

兄者は一息でグラスの烏龍茶を半分ほど空け、一息ついてから言った。
弟者はどうにか人込みを脱出し、近くにあったこのレストハウスに辿り着いていた。
兄者達が囲むテーブルは折り畳み式の物で、中央にはビーチパラソル。それぞれの手には注文した飲み物のグラス。
おかげで中々に涼しい空間が出来上がっていた。
そんな中で、弟者は入り口で貰った地図付きパンフレットを広げた。

「・・・さて。この後はどうするんだ?いつまでものんびりしている訳にもいくまい」

弟者の言葉に、兄者が顎の先を摘みながら返答した。

「そうだな・・・やはりここはメインイベントの百ベビ組手本戦を見に行かないか。
 時間的にも丁度良いしな」

言いながら兄者は自らの左腕の腕時計を示した。
時計の針は9時32分を指していた。
パンフレットを見れば、本戦は10時からとなっている。

「では、そろそろ行ったほうがいいな。余裕があるに越した事は無いさ」

弟者が立ち上がろうとしたが、兄者がそれを引き止めた。

「まあ待て。少しくらい休んでからの方が良かろう。時間も無い訳ではないしな・・・」

弟者はそれを聞いて、再び椅子に腰を下ろした。

「・・・まあ、それもそうか」


―――10分後。
グラスを空にした3人は、そのまま本戦会場となっている特設ステージへと向かった。
(ちなみに飲み物代は壮絶なジャンケン対決の末、兄者が支払った)
レストハウスからも見える位置にあったので、今度は大して労せずに会場へと辿り着く事が出来た。
それは最初に来たときにも目に留まった、闘技場のようなステージだった。
入り口のゲートの前で、唐突に兄者が言った。

「弟者。せっかくだから、お前も出てみないか」

え、と軽く驚いた表情で弟者が振り向く。

「い、いや・・・急に言われてもだな・・・」

「見ろ。『飛び入り参加大歓迎!お気軽に受付にお申し付け下さい』と書かれているではないか。
 お前も最近家の周りにアフォしぃなんかが出なくて退屈していただろう?丁度良いじゃないか」

「ちっちゃい兄者、頑張るのじゃ!」

妹者にも後押しされた弟者は少しの間思案していたが、

「・・・まあ、俺も最近運動不足だったからな・・・。
 ――わかった、せっかくだから出よう。兄者と妹者は、観客席に先に行っててくれ。
 俺は自分の番が終わってから行くよ」

それから弟者は兄者と妹者を見送ると、受付へと向かった。

7 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:39:11 ID:???
―――『百ベビ組手』。
名前から察した方も多いだろうが、この競技は、簡単に言えば空手なんかの『百人組み手』のベビしぃverだ。
無論、空手とは違い相手を虐殺する事が前提だ。
要するに、ベビしぃ100匹をいかに迅速に、かつ華麗に虐殺するかを競うのだ。
武器や方法などは基本的に自由。始めからフィールドに100匹放たれている場合もあれば、その都度追加される場合もある。これは、大会によって異なる。
この辺は後に説明があるのでこのくらいに。
本戦会場は、言うなれば野球場をそのまま小さくしたような感じだ。
観客席に囲まれて、直径25m程度の円形のフィールドが広がっている。
フィールドの隅には入退場口とベビ入場用の金網付きゲートがある。(無論、ベビの退場口は無いww
フェンスの一部にはガラス張りの所があるが、これは恐らく招待客や来賓が観戦するための席なのだろう。
また、他にも似たようなガラス張りの部分があるが、その向こうには席ではなく妙にガランとした、人が普通に立って歩き回れる程の広い空間が広がっていた。一体何の為なのか・・・?

受付で手続きを終えた弟者は、早速控え室へと向かった。
ちょっとしたホール並みの広さの部屋に、男女合わせて20人近くのAAが居た。
部屋には備え付けのロッカーや革張りの長椅子、自動販売機などと設備は充実している。部屋の上方には、大きなモニター。
さて、どうしたものかとキョロキョロ部屋を見渡していた弟者に、肩をチョンチョンとつつくと同時に不意に声がかかった。

「オイ、弟者!コンナ所デ何シテンダヨ?」

ややソプラノ気味な声に弟者が振り向くと、そこには弟者の高校のクラスメイトのつーが立っていた。その手には持ち込んだらしいナイフが握られている。

「ん?ああ、つーじゃないか。何してると訊かれてもな・・・百ベビ組手出場以外の目的で、ここにいるとは思えないだろう」

弟者が答えると、やや小柄で勝気なこの少女は腰に手を当てて笑った。

「アヒャヒャ!ソウジャネェッテ。オマエガコウイウ大会ニ出場スルナンテ珍シイナ、ッテ思ッテサ」

それを聞いた弟者は、頬をポリポリとかきながら言う。

「むう。俺も最初は観戦目的だったんだがな・・・兄者や妹者に薦められて、出る事にしたんだよ。俺自身、虐殺はご無沙汰だったしな。
 つーはこういうの好きそうだとは思ったが・・・まさか出ているとは思わなかったな。いつから出ているんだ?」

弟者の質問に、つーは少し声のトーンを落として言った。

「3,4年前クライカラカナ。ソレニ、出テイルモナニモ・・・ホレ」

囁きながらつーが取り出した物―――それは、首から下げる為のストラップが付いた、金色に輝くメダルだった。
それこそまさに、この『百ベビ組手』の覇者の証だった。そこには『第39回大会優勝者 つー』と刻まれている。
文字の上にはでかでかと、ベビしぃの死骸を踏み台にしてポージングするモナーが描かれていた。

「おいおい・・・優勝までしてるのか。凄いじゃないか。第39回って事は・・・丁度去年か」

弟者からの賞賛に、つーは顔を真っ赤にしながら、腕をパタパタと振った。

「オ、オイ・・・アンマリ大キナ声デ言ウナヨ。恥ズカシイジャネーカ・・・」

と、その時。
ブン、という低い音と共に、部屋の上部に取り付けられたモニターの電源が入った。
そこにはこれから自らがベビを屠殺して周るであろうフィールドが映し出されている。
少しではあるが、観客席の様子も見て取れた。
まじまじとモニターを見上げていた弟者に、つーが声を掛けた。

「ソロソロ開会式ガ始マルナ・・・オイ、チャント見テオケヨ?ルールノ説明ナンカモアルカラナ」

「ああ、わかった」

弟者が答えながら、そばにある2人用の椅子に腰掛ける。つーが寄ってきて、その隣に座った。
それから2人は、ほぼ同時のタイミングでモニターを見上げる。
モニターの中では丁度、1組の男女がフィールドの中心へ向かって歩いてきていた。

8 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:39:41 ID:???
野球場のスタンドそのものとも言えるような観客席。
その中段のやや前寄り、位置にして選手入場門の上にあたる席に、兄者と妹者が陣取っていた。

「うむ。ここなら見やすいな」

兄者が呟く。

「バッチリなのじゃ!兄者、まだ始まらないのじゃ?」

妹者が待ちきれないといった体で腕を振る。
そんな妹者を微笑ましく思いつつ、兄者は腕時計を見た。

「そろそろ始まるはずだぞ。・・・ほれ、見てみろ」

兄者が指差した先に妹者が視線を移す。
2人のAAが、フィールドの中央に向かって歩いてきたのである。片やモララー、もう1人はガナー。
2人が丁度フィールドの中央に辿り着き、歩みを止めた瞬間―――ざわついていた観客席が、ぴたりと静かになった。
それを確認すると、2人はハンドマイクを取り出した。
そして、モララーが大きく息を吸い込んだ。

「レディース エーン ジェントルメーーーン!!!」

英語の発音にはあまり聞こえない英語で、モララーが叫んだ。何だか矛盾している気もするが気にしない。気にしちゃいけない。
その声はマイクによって拡張され、スタンド中に響いた。

「ベビ虐殺が大好きな諸君!『百ベビ組手』本戦へようこそ!!」

モララーがさらに叫んだ。それを聞き届けたガナーも、マイクを口元へ持っていく。

「本日は是非、華麗な虐殺と・・・ベビしぃ達の阿鼻の叫びを、心行くまでお楽しみ下さい!」

その言葉が終わると、モララーが一歩前へ出た。

「本日の、司会進行はこの私、モララーと・・・」

続いてガナーも前へ出る。

「私、ガナーが務めさせて頂きます!」

そして2人は優雅に一礼。

『不慣れではございますが、どうぞ宜しくお願い致します!』

その瞬間、観客席から『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』とかなりの大歓声。
その大歓声に照れ笑いを浮かべながら、モララーが再びマイクを構える。

「ではここで、本日ご招待致しました、来賓・ゲストのご紹介をさせて頂きます!」

そこで2人は、今日のゲストや来賓を一人ずつ紹介していった。
この町出身の国会議員、売れっ子アイドル、ブレイク中のお笑い芸人達etc・・・。

「さいたまかっ!」

ツッコミに合わせて、アヒャがヒッキーの頭をパチン!と叩いた。

「いや、何が・・・!?」

「どーも、ありがとうございました~!」

ゲストのお笑い芸人『アヒャ&ヒッキー』の即興漫才を締めとして、紹介は終わった。
最後のネタによって笑いの絶えない観客席に向かって、モララーが叫ぶ。

「いやぁ、アヒャヒキはやはり面白いですねぇ!ではここで、今回の競技のルール説明をさせて頂きましょう!
 ギコ君、カマン!」

モララーのコールと共に、入場口から1人のギコが歩いて来た。
そこでガナーが苦笑しながら付け足す。

「こちらは面白くも何ともありませんが、我慢して聞いて下さいね~」

観客席から微笑。
そこでギコは、モララーのマイクを奪い取って叫んだ。

「おいおいガナーちゃん、そいつはキツい言い方だな、ゴルァ」

「だって、本当の事じゃ無いですか~」

ガナーの返しに、ギコは頭を掻いた。

「いや、そうだけどさ・・・もうちょっと、オブラートに包むっていうかさ、もっと、こう・・・」

身振り手振りを交えてうろたえるギコ。観客席から再び爆笑が聞こえてくる。
モララーがそこで助け舟。

「まあまあ。それについてはまた後でって事で・・・ほら、説明説明」

「おっと、忘れる所だった・・・じゃ、改めて」

ギコはマイクを構えなおし、説明を始めた。

9 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:41:31 ID:???
「え~、基本的なルール説明をさせて頂きますよ、と。
 ルールは簡単!そこいらに転がっているベビ100匹をひたすらヌッ殺す!それだけ!
 武器は基本的に何でもアリだが、重火器なんかは簡単過ぎるのでタブー。ハンドガン、手榴弾くらいまでだな。
 武器は持ち込みでもいいし、レンタルでもオッケーだ!もちろん、素手でもよし!
 ちなみに、使用するベビしぃは全てノーマルなベビしぃだ。フサやワッチィなんかは混じってないぜ。
 方式はタイムアタック方式。100匹目が絶命した瞬間までのタイムを計測。
 一番早かった奴が優勝だ!3位までが表彰台、5位までが入賞。
 なお、それとは別に1人、審査員特別賞ってのも用意されてるから、希望を捨てちゃあ駄目だぜ?
 こっちを狙うなら、そうだな、速さだけじゃなくて方法や見た目なんかにも気を配ってみたらどうだ?以上っ!」

ろくに呼吸もせずに言い切り、ギコはマイクをモララーへ返した。
そして全方位の観客席へとお辞儀をしてから、再び入退場口へと引き返してゆく。

「ご苦労様!ギコ君ありがと~!」

モララーが叫ぶ。
ガナーがギコに向かって手を振りながら言った。

「面白くは無かったけど、とても重要なお話でした!では、次は・・・」

「・・・おやおや。もう待ちきれないってご様子ですねぇ、皆さん・・・」

途中で遮り、モララーが後を引き取るように言った。
そして2人は顔を見合わせる。
その顔を戻してから、2人は観客席へ言葉を放った。

「しょうがないので、残りの開会式の予定はパス!」

「早速、本戦へ突入しちゃいましょう!」

その瞬間の観客席からの歓声の大きさと言ったらもう。文字通りスタンドを揺るがすほどだった。
もっとも、本当に飛ばしてしまったのか、はたまた最初からそのつもりだったのかはわからないが。

「うへ~、すごい大歓声なのじゃ」

妹者が肩を竦めながら、兄者に向かって呟く。

「まあ、それくらい皆、楽しみにしていたという事だろうな。ほら妹者、いきなり始まるみたいだぞ・・・」

兄者が答えながら、フィールドを指差した。
見れば司会の2人はいつの間にか特設された実況席へと下がり、どうやら最初の挑戦者らしいフサギコが入場口からフィールドへと姿を現していた。
スタッフらしいジエンが駆け寄り、フサにマイクを手渡した。

「では、挑戦者NO.01!フサギコ選手の登場だァ~~っ!!」

モララーの紹介が終わらない内に、観客席から再び大歓声。
フサはやや驚きながらも、渡されたマイクをポンポンと叩き、テストしている。
ガナーがマイクを通し、フサに声をかける。

「フサギコ選手、自己紹介をよろしくお願いしま~す!」

フサは軽く司会の2人へ向かって会釈をし、マイクを口元へ運んだ。

「え~と・・・市立第2モララ高等学校2年、フサギコです。
 同校ラグビー部、主将をやっています。
 虐殺はあまり慣れていませんが、精一杯殺らせて頂きます!」

ワァァァァァァァァァ!!

やっぱり大歓声。
ラグビー部だからなのか、彼の腕にはラグビーボールが抱えられていた。
そこでモララーが実況席からフサに尋ねた。

「第2モララ高のラグビー部は強いってもっぱら評判だよ!
 ひょっとしてそのボール、虐殺と関係あるのかい?」

フサは「ありがとうございます」と一礼してから、

「はい。せっかくなので、ラグビーを虐殺に応用してみました」

その答えに実況席の2人は『おお~っ・・・』と同時に呟く。
興奮を抑えようともしないモララーがマイクへ向かって叫びまくる。

「そいつぁ楽しみだ!頑張ってちょーだい!
 それでは、本日のある意味での主役!『殺られ役』の、ベビしぃちゃんの登場だぁ!カマン!」

彼のコールと共に、『ベビ入場口』のゲートが開いた。

ガーッ!

すると、ゲートが開いた瞬間・・・

チィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィ・・・・・・・・・・・・

ナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコ・・・・・・・・・・・・・

聞こえてくる鳴き声。まるで洪水の如く溢れてくる。
やがてぞろぞろぞろと現れる、ベビしぃの群れ。
這うように歩いてきながら口々に、やれナッコだの、やれハナーンだの、やれコウピだの言っている。
100匹全てのベビしぃが入場したのを確認すると、ゲートは元通り閉まった。
このゲートが次に開くのは、次の挑戦者が入場する時だ。
つまり、ここにいるベビしぃ達が1匹残らず死んだ時。それまでは決して開かない。
―――そう。ベビしぃ達が生きてこのゲートをくぐる事は、もう無いのである―――。

10 :へびぃ:2007/04/17(火) 00:43:53 ID:???
入場したベビ達は、フィールド上のあちこちに勝手に思い思いに散っていく。
その場で眠りこける者、追いかけっこをはじめる者、互いに抱き合って(ダッコし合って)マターリする者・・・。
一部のベビは、選手であるフサを目ざとく見つけ、さっきから足元に集まって「ナッコナッコ!チィヲ ナッコチナイト ギャクサツチュー デチュヨォ!」などと喚いてみたり、
尻を向けながら「チィト ハヤク コウピシナチャイ!コウピ!」などと言っている。五月蝿い事この上なく、観客の嗜虐心をいい感じに煽ってくれている。
一部のヒートアップした観客が、「早く殺っちまえ~!」と叫んだ。
するとモララーが、

「まあまあお客さん、マターリしましょうよ。慌てなくてもベビは逃げない、っつーより逃げられませんから、ね?
 それではフサギコ選手、準備をお願いします!」

と観客を宥めつつ、フサに準備を促した。
フサは司会の2人にぺこりと一礼してから、『準備』を始めた。
彼は自らの両膝と両肘に、ラグビーやインラインスケートなんかで使用するプロテクターを装着した。
その頃、彼以外の部分でも変化は起こっていた。

「ん?あれは・・・?」

「兄者、どうしたのじゃ?」

怪訝そうな声を出した兄者に向かい、妹者が問う。
兄者はフィールドの一角を指差し、答えた。

「いや、あそこを見てくれ。あんな所にしぃがいるんだが・・・」

「あ、本当なのじゃ。でも、そんな偉い人には見えないのじゃ」

「うむ。俺もそれが気になってな・・・」

妹者も怪訝そうな顔。
2人が以前から気にしていた、フェンスの向こうのガラス窓の部屋。
あの部屋に次々と、しぃ達が現れたのだ。
兄者が周りを見回すと、観客達も次第に気が付いたらしく、しきりに指さしながら首を捻っている。
それに気付いたらしく、ガナーがモララーに問い掛けた。

「モララーさん。あの部屋にいるしぃ達は、一体何なんでしょうか?
 ゲストには見えませんが・・・」

するとモララーは、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに含み笑いをしながらマイクに向かって囁くように言った。

「んふふふふ・・・あれですか。あれはですね・・・。
 実は、今回殺されてくれるベビちゃんを提供して下さったお母様方なんですよ~。
 せっかくだから、特別席で我が子の死に様をバッチリ見物して頂こうと思いましてね。
 今はこちらの音声は伝わってません。競技の際には、お互いに音声が伝わるようにしますよ。
 では、先にあちら側の音声をお聞き願いましょうか・・・」

するとモララーは、手元のボタンをポチッと押した。
やがて、スタンド中に特別席内の音声が聞こえてきた。

「ハニャーン!ベビチャーン、オカアサンダヨ!」

「ベビチャンヲ ナッコシテクレルナンテ、ギャクサツチュウニシテハ イイキカクヲ カンガエルジャナイ」

「マ、シィチャント ベビチャンハ カワイインダカラ トウゼンヨネ!」

「ムシロ、イママデ コウイウノガ ナカッタコトガ オカシインダカラ!」

「ツイデニ シィチャンモ ダッコシテヨー!ハニャーン!」

どよめく場内。
再びガナーがモララーに問い掛けた。

「ところで、あのしぃ達には何て説明してあるんですか?」

「ああ。百匹のベビを、いかに素早くダッコやら何やらでマターリさせるかを競う競技、って言ってあるよ。
 完全に自分の子供がナッコしてもらえると信じてるみたいだね。
 というわけで皆様。ベビの虐殺だけではなく、あちらのしぃちゃん達が絶望に打ちひしがれる様子も、合わせてお楽しみ下さいね~!」

そして観客からの拍手喝采。
その時、フサが準備を終えたらしく、近くに設置されたボタンを押し込む。
実況席のテーブルに設置されたランプが点灯したのを見て、モララーが言った。

「おやぁ?丁度準備が整ったようですね」

「では、皆様大変長らくお待たせ致しました!
 いよいよ、競技開始の時間です!」

大歓声に包まれるスタンド。

「兄者、いよいよなのじゃ!」

「ああ。お楽しみの始まりだな・・・妹者よ、しっかり見ておくんだぞ」

観客席の兄者と妹者も、フィールドへと視線を固定する。

「ヤット始マルナ・・・弟者、緊張シテルノカ?」

「ん・・・まあ、少しな。つーはもう慣れっこだろう?」

「マアナ。全クシナイカッテ言エバ微妙ダケド、他ノ人ノ競技ヲ見テレバ落チ着クモンサ」

「なるほど、流石だな」

控え室の弟者とつーも、モニターを見上げた。


楽しい楽しい、血と肉と悲鳴の舞踏会が始まろうとしていた―――。

11 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:05:20 ID:???
開始の合図の前に、モララーが手元のボタンを押した。
恐らくこれで、親しぃの特別席にもこちらの音声が伝わるのだろう。
それは司会や観客の声だけじゃない。愛する我が子の断末魔も、である。

「ベビチャン、ナッコハ モウスグヨ!」

「セッカク ダカラ コウピモ シテラッシャイ!」

「ソレニシテモ アノフサハ シアワセモノネ!コンナニ カワイイ ベビチャンタチヲ ナッコシテ コウピシテ マターリデキルンダモン!」

「デモ、ヘンナカッコウネ。ナンデ アンナカッコウヲ・・・?」

「キット、スコシデモ タクサンノ ベビチャンヲ マターリサセタイカラ カラダガ タエラレルヨウニ シテルノヨ!」

「ハニャ、ナルホドネ!ベビチャーン、タクサン ナッコシテ モライナサイ!アイテノ コトナンカ シンパイシナクテ イイワヨ!」

何も知らない親しぃの声。それを聞いたスタンドにいた観客、司会、スタッフ、選手、ゲスト等の人々は、内心ほくそ笑んだ。

「それじゃあ、競技開始だゴルァ!よーい・・・」

先刻、説明係として登場したギコが、いつのまにか入場口の脇に立ってピストルを空へ向けていた。
それを聞いたフサが、いかにもこれから全力で走りますよ、といった感じで姿勢を少し低くし、片足を前へ出した。
その腕にはラグビーボールが抱えられたままだ。

「チィチィ!イヨイヨ チィヲ ナッコチテ クレルンデチュネ!」

「マズハ チィガ ナッコチテ モラウノ!アンタハ アトヨ!」

「チィィィィ!マズハ セカイイチ カワイイ コノチィガ ナッコナノ!」

「コウピ!コウピー!」

「Zzz・・・マァマ・・・ナッコォ・・・」

「ハナーン・・・マチャーリ デチュヨゥ・・・」

ベビ達の反応も様々だ。
まずは自分がナッコしてもらうと周りのベビを押しのけようとするベビ、ずっとフサへ向けて尻を振り続けるベビ、
まだ眠りこけてるベビ、相も変わらず互いにナッコし合って終始マターリ状態のベビ・・・etc、etc。
共通しているのは、どのベビもこの後自らを襲う災厄に欠片ほども気付いていないという事か。
ギコが、トリガーにかけた指に力を込めた。そして―――

―――パァン!

ピストルが咆哮を放つ。それは、競技という名目の殺戮ショー開始の合図。
瞬間、フサは前方へ向かって猛ダッシュ。それを後押しするかの様な観客の大歓声。

「ハナーン、ナッコ♪」

「マズハ チィヲ ナッコ チナサイ!」

「コノ セカイイチカワイイ チィヲ ナッコ デキルコトヲ カンシャ・・・チィィィィ!ドコニ イクンデチュカ!」

「ハヤク コウピー!」

早速ナッコにコウピをねだって来るベビ達。
しかし、フサはそんなベビ達に目もくれず、脇をすり抜けて行った。
口々に文句を言うベビ。中には追いかけて捕まえようとする者もいたが、ラグビーによって鍛え抜かれた健脚に叶う筈も無く。
というか、ベビしぃが全速力で走った所で、幼稚園児にだって叶う筈は無い。
フサが走るその先には、互いにナッコし合ってマターリ空間を生み出すベビ2匹。
左側にいるベビは既に眠っている。右側のベビも目を閉じて恍惚状態。あちら側に言わせれば、マターリしているのだろう。
ナッコし合うベビ2匹まで後3mくらいの所で、フサが地を蹴った。
フサは空中で体を伸ばし、両手でラグビーボールを持ち直して、それを振り上げた。
流石に殺気のようなものを感じ取ったらしい右側のベビが、目を開けた。
目の前に迫るフサ。もう1m程度。だがベビは状況を理解してないらしく、とろりとした表情を崩さない。
そして、フサの体が地面へ着く直前、彼は腕を思いっきり振り下ろしつつ、叫んだ。

「―――トライッ!!」

寸前、ベビが口を開いた。

「・・・ナッコ?」

―――そして。


―――グチャァッ!!


「ヂピギュゥッ!?」

尖った形状をしたラグビーボールの先端を脳天に叩きつけられ、ベビは異常な断末魔と共に、下半身を残して肉塊へと化した。
頭部が割れ、あちこちから脳味噌がはみ出し、血は止め処無く噴き出す。目玉が飛び出してごろり、と地に転がった。
その刹那。

12 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:07:52 ID:???
『シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!????』

『チィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!????』

『ドワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』


3種類の大絶叫が、同時にスタンドに轟いた。
たった今までベビ達がナッコして貰えると信じきっていた親しぃ達の叫びと、
自分達をナッコしてくれると信じていたフサの突然の殺戮行為に驚愕したベビ達の叫びと、
見事にベビが肉塊へと変貌したのを見て大興奮の観客の声援。
しかし、その大絶叫の間にも、フィールド上のフサは動いていた。
素早く起き上がると、今度はたった今潰したベビのすぐ横で眠るベビに狙いを定めた。
今度はキックで飛ばすらしく、足を振り上げる。
すると、ターゲットのベビがナッコし合っていた相手のベビの血液や脳漿の付着によって目を覚ました。
そして顔を上げ、フサと目を合わせる。

「・・・ハナ?」

しかし、フサの足は止まらない。

ドゴッ!!

「ヂュィィィィィィィィィ!!?」

鍛え抜かれた足から放たれたキックの威力は相当なものだった。
ベビしぃは蹴られた部分―――側頭部から脇腹にかけて―――が潰れてへこみ、鼻や口から血が溢れていた。
そのままベビはあれよあれよと空の旅。そして数秒後の後に、

ガッシャーン!!

という音と共に観客席とフィールド上空を仕切る金網に激突、その衝撃でさらに潰れてから、ドサリと地面に落下した。
落下の衝撃でますます潰れたベビ。内臓にも被害が出たらしく、体中の穴からどす黒い血液を垂れ流した。当然、もう動かない。

「チィィィィィィ!?ギャクサツチュー デチュヨォォ!」

「チィノ ナッコハ ドウナルンデチュカ!?」

「タチュケテェェェェェ!チニタク ナイデチュー!」

「ハナーン!マンマー!タチュケテー!」

「コウピコウピー!」

次の瞬間、ベビ達はパニックに陥った。
突如として目の前に現れた殺戮者に、ベビ達は混乱を隠せない。
生き延びようとして我先に逃げようとするが、ここは高いフェンスで仕切られたバトルフィールド。逃げ出せる筈が無い。
ベビ達の顔に、絶望の色がありありと浮かび始めた。
―――もっとも、一部のベビは全く動じていない様子。
それは、単に目の前の惨状が受け入れられないか、未だ気付いていないか、眠っているかのどれかなのだが。
また、パニックに陥ったのはベビ達だけではない。

「シィィィィィィィ!?ベビチャンガー!!」

「ドウナッテルノヨ!ナッコト コウピデ ハニャハニャンジャ ナカッタノ!!?」

「シィノ ベビチャンガ シンジャッタヨォォォォォ!!ビエェェェェェェェェェン!!!」

「ベビチャァァァァァン!ニゲテェェェェェェ!!!」

「シィィィィ!カベサンガ ジャマデ ベビチャンヲ タスケニ イケナイヨゥ!!ココヲ アケテヨゥ!!」

そう。ベビ達の親であるしぃ達もまた、突如目の前で繰り広げられた殺戮に、完全に混乱した模様。
バタバタと暴れだす者、大声で泣き叫ぶ者、ガラス窓をドンドンと叩く者、我が子に必死に呼びかける者―――。
それら全ての行為が、全くの無駄であるという事にも気付かず、しぃ達は必死だ。

13 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:09:15 ID:???
やがて、フサが再び動き出した。
彼はふぅ、と一つ息をついてから、再び猛烈な勢いで走り出した。
前方にベビの群れ。

「チィィィィィ!コナイデ クダチャイヨゥ!」

「コロスナラ コッチノ クチョベビカラニ チテヨゥ!」

「チィィィィィィ!?コノ セカイイチ カワイイ チィニ ナンテコトヲ イウノ!?」

「マァマァァァァァァァァ!!!タチュケテェェェェェェェェ!!!」

「ナッコーーー!!」

口々に叫びながら逃げるベビ。
本人は必死のつもりなのだろうが、あっという間に差が詰まってゆく。
そりゃそうだ。ベビしぃが全速力で走っても、その速度は時速1km程度か、それ以下だ。まさに牛歩。―――それは牛に失礼か。
フサはベビの群れに突っ込む寸前にもスピードを一切緩めず、足元のベビを次々とスパイクシューズを履いた足で踏み潰さんと駆け抜けた。

グシャッ!

フサの足が群れの最後方をチィチィ言いながら這っていたベビしぃを踏み潰した。

「ギュビィィィィィィィ!!!!」

奇声を発してベビしぃが潰れた。胴体をまるまる踏み潰されたベビ。心臓まで潰れたらしく、口から血を流してすぐに事切れた。
フサは一切スピードを緩めず、そのままの勢いでベビを次々と踏み潰していった。

グシャッ!

「ミヂィィィィィ!!??」

グチョッ!

「ナッゴー!ナッブギョォォォォ!?」

メシャッ!

「ゴヴェェェェェェェェェ!!!!」

「ヂィィィィィィィ!!!モウ ヤァァァァァァァ!!!!マァマァァァァァァ!!!」

次々と潰されていく同族の姿を見て、ベビが泣き叫ぶ。

「ベビチャァァァァン!コノ ギャクサツチュウ!ヤメナサイ!」

「シィノ ベビチャンガァァァァァ!!!ベビチャァァァァァン!」

「イヤァァァァァァ!!!ベビチャンガ シンジャウヨゥ!」

「オナガイ、ハヤク ココヲ アケテェェェェ!ハヤクシナイト シィノ ベビチャンガ、ベビチャンガァァァァァァァ!!!」

「シィィィィィ・・・シィノ、シィノ、ベビチャァァァァン・・・」

親しぃ達も叫ぶ叫ぶ。目の前で我が子が殺されようとしているのに、手も足も出ないという絶望感。
中には既に、ベビを殺されたショックで意識がお花畑に飛ばされてしまったしぃもいる模様。
一方フサは、ある程度走った所で足を急に止めた。
ベビ達や観客たちも、フサの次の行動に注目する。
すると、フサは持っていたラグビーボールを、少し離れた所に思いっきり投げつけた。
近くにベビが居たが、この様子ではまず当たらないだろう。

「チィチィ!ヤッパリ ギャクサツチューハ バカデチュ!ハズシテルデチュ!」

「ヨウヤク コノチィノ イダイサニ キヅイタノネ!」

「ハナーン ヤット マチャーリ デキマチュ・・・」

ベビ達は安堵しきった様子。

「ハニャッ!アノ ギャクサツチュウ ボールサンヲ ハズシテルヨ!」

「ホントホント!アンナトコロニ ナゲルナンテ ヴァカミタイ!」

「マ、ショセン ギャクサツチュウナンテ コンナモンネ!」

「サア、ハヤク ベビチャンヲ ナッコシナサイ!」

親しぃ達も好き勝手言っている。
しかし、観客の殆どは『ラグビーボールの特性』を知っており、内心でほくそ笑んだ。

14 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:09:51 ID:???
ラグビーボールが着弾。フサが投げた方向にベビはいない。余裕の表情のベビ&親。
しかし、その表情は一瞬で凍りついた。
着弾したラグビーボールは、フサが投げた方向を12時(フサがいる方向が6時)とすると、なんと突如として7時の方向へバウンドした。
その先にはベビが1匹、余裕の表情で寝転んでいた。
ベビは突如として向かってきたボールに驚き、

「チィィィ!?ナンデ ボールサンガ・・・」

ゴシャッ!

「ヂュィィィィィッ!」

そして、ボールの直撃を食らって倒れた。
フサが全力で放ったボールの勢いはこれまたかなりの物。ベビは顔面を潰され、頭部の体積が1/3程度になってしまった。生きている筈が無い。
さらに、ベビを1匹昇天させたにも関わらずボールの勢いは全く衰えず、着弾してから今度は真横、3時の方向へ飛んだ。
その先にもまたもやベビが。

「チィィィィ!?コナイデェェェェ!!」

ベビが叫ぶが、ボールに何を言っても無駄な訳で。

グシャッ!

「ヂュピィィッ!?!?」

―――当然、潰される訳で。飛び散る血液と脳のコラボレーションが、観客達を魅了する。
それからというもの、ラグビーボールはフルパワー状態を維持しながら、ベビ達が全く予想できない方向へと跳ねまくった。
何故、このような現象が起こるのだろう。それは、ラグビーボールの形状に理由がある。
通常のサッカーボール等の球形のボールは、どの部分で着弾しても力の掛かり方はほぼ同じ、従って決まった方向にしか跳ねない。
しかし、ラグビーボールは楕円形をしているため、着弾する箇所が異なると、力の掛かり方も全く異なってくる。もちろん、跳ね方だって全く異なる。
従って、次にどの部分で着弾し、どの方向に跳ねるかなんて全く予測が出来ないのである。

15 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:10:22 ID:???
「チィィィィィ!!マァマァァァァァ!!タチュk」

グチャッ!!

「ナッゴォォォォ!!!ナ」

ブチュッ!

「アニ゙ャァァァァァァァァァァ!!!コンナノ マチャーリジャ ナ」

ビシャッ!!

叫ぶベビ、そして叫んだそばから潰されていくベビ。
完全に次の動向が予測できないラグビーボールは、まるで意思があるかのように次々とベビを潰していった。
何しろ、次はどの方向に、どれくらいの速度で、どこまで跳ぶのか。それらが全く予測できないのだ。
現実にそんな兵器があったとしたら、手練の兵士でも避ける事は困難を極めるだろう。
ましてや相手は単なるアフォしぃのベビ。運動神経は皆無に等しい。
それが最新鋭の兵器では無くてラグビーボールだったとしても、かわす事なんて出来やしなかった。
『ラグビーボールなんかで殺せるのか?』なんて疑問を抱いた方もいらっしゃるだろう。
だが、ラグビーボールの空気をしっかりと入れ、それなりの力で投げつけたなら、革張りのボールはかなりの威力を持つ。
前述したが、相手は単なるベビなのだ。体の脆いアフォしぃのベビの強度なんてたかが知れている。
ベビ達にとってそのラグビーボールは、まさに軽快に跳ね回る鋼鉄の塊のような物だった。

また、ボールが次々とベビを仕留める間も、フサは休んでいた訳では無かった。
彼はおもむろに駆け出すと、近くで恐怖に慄いて体が硬直していたベビを1匹、掴み上げた。
そしてそのベビを、片腕でしっかりと抱くようにして持つ。

「アニャ?ナッコデチュカ!?アニャーン・・・ヤット チィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ・・・ナッコ・・・」

腕に抱かれたベビはナッコと勘違い。瞬時にマターリモード。
(ちなみに、片腕で抱くようにしてボールを持つのはラグビーの基本)
フサはそんなベビも意に介さず、猛烈なダッシュをかける。
そして、これだけの惨劇が起こっているにも関わらず眠りこけている(ある意味大物な)1匹のベビを補足。
この時点で観客の半数はフサの目論見に気付いたらしく、wktkが止まらないご様子。
中にはまるでジョルジュ長岡の如く腕を振りまくって『うおぉぉぉぉ!!』なんて叫んでヒートする観客も居た。
縮まっていくフサと眠りベビの距離。
それが5m程度に達したとき、フサは抱えていたベビを片手持ちに持ち替えた。

「ハナーン・・・?」

マターリのあまりとろけそうになっているベビは、さして気にしていない様子だ。
そしてフサとベビの距離が3m程度になった時―――

―――跳躍。

空中でフサは、ベビを両手で持ち直して、その手を高々と振り上げた。
その様子は、つい先刻、ボールをベビに叩き付ける直前の瞬間と酷似していた。

「チィチィ!タカイタカイ デチュネ・・・。タカナッコ デチュ・・・」

―――いくらなんでも気付いても良さそうなのだが。
第一、今貴方は逆さまに掴まれているのですよ、ベビちゃん?

一瞬の静寂の時。そして。

ドグチャァッ!!

『ヂュビギョォォォォォォ!!!??』

この世の生き物が発したとは到底思えない奇声の二重奏(デュエット)。
互いに叩きつけられたベビの頭部は最早原型を留めない程に崩壊した。
特に叩き付けた方のベビ(掴まれてた方)は、頭部がグシャグシャに千切れて、さらに首から上が吹き飛んだ。
吹き飛んだ頭部は既に千切れていた事もあって見事に空中分解。
傍で目をひん剥いて事の顛末を見届けていた1匹のベビに、血肉のスコールが降り注いだ。

「チィィィィィィィィィ!!!!??イヤァァァァァァァァァァァ!!!!キモチワルイ デチュヨォォォォォォ!!!」

突如として文字通り降り掛かった災厄に、ベビは悲鳴を上げた。
全身を血液、肉片、脳漿で染め上げ、さらに耳の辺りを飛んで来た目玉でデコレーションしたベビ。
周りのベビも、遠巻きにしてそれを観察している。

次は自分が、あんな目に遭うのだろうか―――。

そんな言葉を脳裏に過ぎらせながら。

16 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:10:49 ID:???
「キモイ デチュヨォォォォォ!タチュケテェェェェェ!!ナッコォォォォ!!」

全身血肉塗れとなったベビが、半ば転げまわるような形で暴走を開始する。
他のベビに向かって突進する血塗れベビ。―――だが。

「チィィィィ!?コナイデェェェェェェ!!!」

「クチャーヨゥ!キモチワルイヨゥ!!マチャーリジャ ナイデチュヨゥ!!」

「アンタミタイナ キモイノハ ホコリアル カワイイ ベビシィトハ ミトメナイデチュ!!コノ キケイ!!」

口々に言いながら一目散に逃げてゆく。
血塗れベビを気遣う者は、誰一人としていない。『大丈夫か』の一言も無い。
それどころか、そのベビを罵倒し、蔑み、挙句『奇形』とまで言ってのけた。
運が悪ければ、自分がその『奇形』とやらになっていたかも知れないのに、そんな事は頭に無い。
奴らの頭は都合の悪い事は全て忘れるような構造をしているらしい。まさにアフォしぃの思想そのものだった。
蛙の子は蛙。アフォしぃの子はアフォしぃ。という事か。

「チィハ キケイナンカジャ ナイデチュヨゥ・・・ナッコ・・・ナコ、ナコ・・・」

周りのベビ全員から非難され、行き場を無くした血塗れベビが、その場に立ち止まって呟く。
だが次の瞬間、背後に誰かの気配を感じた。ベビの顔が明るくなる。
こんな自分でも、傍にいてくれる仲間がまだ居たのかと、ベビはゆっくり振り向く。
振り向きざま、ベビは両手を突き出しながら言った。

「ナッコ♪」

―――そこに居たのは、自らと同じベビしぃでは無かった。
目の前で数多のベビを屠ってきた、フサの姿があった。

「ヂ・・・」

ベビの顔が凍り付きかけた。―――何故、未完形なのかって?
凍り付く暇も無く、その頭は蹴り飛ばされてしまったから。
蹴られた頭部は、首から離れてかなりの速度で飛んでいく。鮮血の尾を引きながら。
そのまま、遠くにいたベビの、これまた頭部に直撃した。

ゴシャッ!

「ギヂュゥゥッ!!?」

命中の瞬間、生首の直撃を食らったベビの頭部は爆散した。
そしてさらに、その頭部の破片が近くに居た数匹のベビを襲った!

グシャシャッ!!ブチュッ!バキッ!

「ブギュッ!!」

頭蓋骨の大きな破片が側頭部に突き刺さり、脳を露出させたベビ。

「アギギギギィィィィ・・・」

顔面に大量の歯が突き刺さり、まるで蓮コラ画像のようになったベビ。

「ミ゙ギュゥゥゥゥゥ!!ウヴィィィィ!!」

顎の太くて丈夫な骨の直撃を受け、顔面を砕かれたベビ。
蹴り飛ばした首がベビを直撃し、さらにそのベビの砕けた頭部が周りのベビに命中する。それはまるでビリヤードのようだった。



「チィィィィィ!!ナッコスルカラ タチュケ」

グチョッ!

唯一フィールドで生き残っていたベビを、フサが踏み潰した。
と、その瞬間。

パァン!

再びピストルの音が、高らかに鳴り響いた。
それは、競技終了を知らせる合図だった。

「競技終了ォォォォォォォォ!!100匹屠殺完了っ!!」

「フサギコ選手、お疲れ様でした~!」

すっかり興奮したモララーが叫び、ガナーはフサに労いの言葉をかける。

「タイムはぁっ・・・6分7秒!!これはいきなり好記録っっ!!」

モララーのコールに合わせて、スタンドの金網を吹き飛ばさんばかりの大歓声が轟いた。