536 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:23:51 ID:??? 前編の際にコメントを下さった方々と、読んで下さった方々全てに感謝を込めて。 【流石兄妹の華麗なる休日~百ベビ組手~ 後編】 「それにしても」 場所は、やはり競技場ゲート前。ひとしきり弟者の労を労った後、兄者が再び口を開いた。 「最後のグランドフィナーレは、凄まじかったよな・・・」 「ああ、全くだ」 「本当に凄かったのじゃ」 弟者と妹者も兄者に賛同する。 「最後に何かあるとは思っていたが、まさかあんな展開とはな・・・」 「うむ・・・」 そこで、3人はもう一度、閉会式を回想してみる事にした。 「―――特別審査賞は・・・挑戦者NO.09!料理人モナー選手です!!」 司会者の1人、ガナーが最後の入賞者を発表した。 いかにもコックといった姿のモナーが出てきて、もう1人の司会者、モララーから賞状を受け取る。 そして、そのまま4位入賞の弟者の横に並んだ。 表彰台の頂点にはトロフィーを掲げたつーが君臨している。その左隣、2位の席には銀色に輝くメダルを首から下げたおにぎりの姿が。彼は地元でも有名な虐殺者だ。 つーの右隣、3位の場所にいたのは、最初に虐殺を行ったラグビー少年のフサギコだった。やや緊張した面持ちで、ブロンズで出来たメダルを撫でている。 なお、5位に入ったのは自衛隊所属の丸耳ギコだった。彼の顔からは『何とか入れて良かった』という安堵感が滲み出ている。自衛隊の仲間と賭けでもしていたのだろうか。 全ての賞を発表し終えた司会者2人は、再びマイクを構え直した。 「以上で、結果発表を終わります!」 「入賞した方々と、惜しくも入賞を逃した選手の皆様にも、どうか暖かい拍手を!」 パチパチパチパチパチパチパチパチ!! 客席から大きな拍手が聞こえて来た。 拍手が大方止んだ所で、モララーが口を開く。 「それでは、このままグランドフィナーレへと移行させて頂きま~す!」 その瞬間、観客席から凄まじいほどの大歓声が聞こえて来た。どうやら、相当楽しみにしていたようだ。 弟者が驚きながら周りを見渡すと、出場者達が全員、体をほぐしたり、武器を取り出したりと、何やら準備を行っている。 彼は慌てて、既に表彰台から降りているつーをせっついた。 「なあ、今から何をするんだ?何も聞いてないんだが・・・」 「アヒャ?アア、弟者ハ飛ビ入リダカラ知ラナイノカ。 ・・・マア、見テロッテ。スグニワカルサ」 「・・・?」 弟者が変わらず首を傾げていた、まさにその時。 『あの』声が、スタンドに響き渡った。 「シィィィィィィィィ!ハナシナサイヨ、ギャクサツチュウ!」 537 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:24:21 ID:??? 骨髄まで到達しそうなほど不快感がびりびりと響く甲高い声。 スタンド中の視線が、フィールドへの入場口へと注がれる。 そこには、競技中に特別席で我が子の死に様をじっくりと観察させられた親しぃ達の姿があった。 その数、弟者から見えてるだけでも100匹以上。実際は倍以上いるだろう。それだけの数のアフォしぃが、 「ハニャーン!ハニャーン!ハナシテヨゥ!」 「シィノベビチャンヲ カエシテヨゥ!」 「シィチャンニ ナニカシタラ マターリノカミサ(ry」 「ダッコダッコォォォォォォ!!」 ―――などと喚き散らしているのだから、五月蝿い事この上無い。 出場者達が、一様にニヤリと笑みを浮かべる。その瞬間、弟者は全てを理解した。 「・・・ナ?モウワカッタダロ?」 「ああ、よ~くわかったよ」 弟者は言いながら、レンタルテーブルから先刻使用した小剣とハンドガンを引っ掴んだ。 「皆様、準備はよろしいでしょうか?」 ガナーの問いに、出場者達は『オーッ!』と一斉に返す。 ニヤニヤ顔のモララーが、一歩前に出た。 「それでは・・・グランドフィナーレ・開始っ!! 思う存分殺りまくれェェェェェェェェェェェッ!!」 モララーの叫びと同時に、司会者2人がバックステップで司会席に戻る。 そして出場者達は、既にフィールド中央付近まで歩いて来ていた親しぃ達に、一斉に飛び掛った。 「ハニャッ!!?」 一番先頭に居た親しぃの短い叫び。それが、彼女の最期の言葉となった。 「アーッヒャッヒャッヒャ!!」 いの一番に飛び出したつーの放ったナイフが、その心臓を正確に抉ったからだ。 グシャッ!! 「ギャッ・・・」 そのまま親しぃはばったりと倒れ、もう動かなくなった。 「シィィィィィィ!?ギャクサツチュウダヨー!!」 「タスケテェェェェェェ!!」 「ベビチャンヲ カエシテェェェェ!」 「ハニャーン!ハニャーン!!」 「ハヤクシィチャンヲ ダッコシナサイヨ!」 怖がって逃げ出すしぃも居れば、今の一撃が見えなかったのか、横柄な態度を取るしぃも居る。 しかし、相手の事など関係なかった。どっちにしろ、殺すのだから。 「よし・・・つーに続くか・・・」 パァン! 弟者の狙い澄ました射撃が、ダッコを要求していた親しぃの眉間にぽっかりと風穴を穿たった。 「ダゴォォォ!?」 頭から血を噴きながら、しぃがその場に倒れ伏す。 それによって、その場に居た親しぃ達の殆どが状況を理解したようだ。 「ハニャァァァァァン!タスケテェェェ!!」 「ダッコスルカラ・・・ネ?マターリシヨ♪」 「コウビモシテアゲルカラ・・・」 「シィチャンヲ コロシタラ マタ(ry」 次々とお決まりの台詞を吐いていく―――全てが無駄だとも知らずに。 その瞬間、20人の選手達は、一斉に『虐殺者』の牙を剥いた。 「シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!?」 538 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:24:43 ID:??? それはまさに地獄絵図だった。 際限なく飛び散る鮮血が、まるで雨のように大地を濡らす。 血だけじゃない。腕が。足が。耳が。上半身が。下半身が。首が。肉片が。 ありとあらゆる親しぃ達のパーツが、フィールドをデコレーションしていった。 出場者20人全員が全員、それぞれ違った方法で親しぃ達を次々と屠っていく。 例えば――― グチャッ!グチャッ!! 「ハギィィィィィ!!ヤベテェェェェェ!!」 スパイクシューズを履いた足で、何度も何度も親しぃの腹を踏み潰すフサギコ。 しぃの腹部からは血が溢れ、見ても分かるくらいにブヨブヨと柔らかくなっている。内臓にも影響が出ているようだ。 ジュゥゥゥゥゥゥ! 「ア゙・・・ギャァァ・・・ギ・・・」 親しぃの腹部を切り裂いて腸を引きずり出し、その体と繋がったままの腸のみを油で揚げている料理人モナー。 体の内部にある筈の物をを高熱に晒す苦痛は想像し難い程だ。凄まじいという事はわかるが。 ブシュゥゥゥゥゥゥゥ・・・ 「ジギャァァァァァァァァ!!イダイヨォォォォォ!!タスケテェェェェェ!!」 ドラム缶くらいの大きさの巨大ビーカーになみなみと濃硫酸を入れ、その中に親しぃを放り込んだ科学者じぃ。 もうもうと煙が立ち上り、水面には気泡を発する肉片がいくつも浮いている。親しぃ本体は、既に筋肉組織が露出して、それも半解している為かなりグロテスク。 ブリュリュリュリュ!! 「シィィィィィィ!!オシリガ イタイヨォォォォォォ!!」 ここでも自慢の唐辛子ペーストを使用して、親しぃをジェット機にして見せたニダー。 親しぃの脱肛した肛門からは津波の如く糞が噴出している。数秒後、その親しぃは猛スピードで壁に激突して潰れた。 ダッダッダッダッダッダ!! 「アギュゥゥゥゥゥ!!ハギャァァァァァ!!」 手にしたマシンガンで、しぃの体のパーツを1つずつ蜂の巣へと変えていく自衛隊丸耳ギコ。 両腕と片足は、すでにマトモな皮膚が弾痕に隠れて見えない。 ドグシャッ! 「ハギッ・・・」 両手持ちの大きなハンマーで、親しぃの頭部を一撃で砕いた銀メダリスト・おにぎり。 横薙ぎに振るわれた大槌は、しぃの頭をまるで力を入れすぎた西瓜割りのように粉々に吹き飛ばした。 「アーッヒャッヒャッヒャッヒャァァァァァ!!」 ザシュッ!グシャッ!!ブシャッ!! 「ギニャァァァァァァァァァ!!シィチャンノ カワイイ アンヨガァァァァァァァァァ!!」 若き覇者・つーは親しぃの足をつま先から千切りにしていく。 肉片が積み重なるたび、親しぃの悲鳴も増量していく。 スパァッ!ブッシャァァァァァァァ・・・ 「ジィッ!・・・ア・・・シィィィィ・・・」 弟者は、持っていた剣で親しぃの頚動脈を見事に切り裂いた。鮮血が噴水の如く噴き出す。 さらに彼は、血を噴くしぃを抱えると、別の親しぃに向かってその大量の血を浴びせかけた。 「ハニャァァァァァァァァ!?ヤメテェェェェェェェェ!!キモチワルイヨォォォォォ!!」 悲鳴を上げるしぃ。あっという間に彼女の全身は真っ赤に染まった。 その他、選手達は多種多様な方法で親しぃ達を次々と我が子の元へと送ってゆく。 そう考えれば、それはある意味慈悲なのかもしれなかった―――送られる先が、多分地獄であるという事を除けば。 539 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:02 ID:??? 数百匹居た筈の親しぃ達は、僅か5分程度で肉塊の山と化した。 フィールドは大量の肉片とおびただしい量の血液、そしてどぎつい異臭に覆われていた。 かなり劣悪な環境だったが、選手、観客共に大満足の表情だった。 「それでは、これで『百ベビ組手大会』を終了と致します!」 「選手の皆様も、観客の皆様も、本日はありがとうございました! また来年、このフィールドでお会いしましょう!!」 司会の2人が締めの言葉を発し、大会は閉幕となった。 閉会宣言の後も、暫くの間、盛大な拍手が絶えなかった。 ―――以上、回想終わり。 暫くの間黙っていた3人だが、弟者が不意に口を開いた。 「・・・うん。やはり凄かったな」 「ああ」 兄者が答えた。とにかく凄かった―――それが3人の感想だった。まあ、的確といえば的確か。 ふぅ、と息をついてから、兄者が再び口を開く。 「・・・ま、なんだ。とりあえず何か食べに行くか」 言いながら、彼は時計を覗き込んだ。既に12時を回っている。 妹者が腹部を押さえながら呟いた。 「そういえばお腹空いたのじゃ・・・」 「そうだな・・・そうするか」 弟者も賛同した。実際、あれだけ運動すれば腹も減るというものだ。 兄者が先頭に立って歩き出そうとしたその時、後ろから声が掛かった。 「ヨウ!3人揃ッテナニシテンダヨ?」 振り返るまでもなく、3人にはその正体が分かった。この高い声、間違いない。 「おっ・・・チャンピオンのお出ましだな」 弟者が言いながら振り返ると、そこには顔を真っ赤にして恥らった様子のつーの姿が。 「ダ、ダカラソウヤッテ呼ブナヨ・・・恥ズカシイッテノ・・・」 「つーちゃん、おめでとうなのじゃ!」 妹者からの賞賛に、まだ顔を赤らめながらもつーが答える。 「アア、アリガトナ。弟者モ、初メテニシテハヤルジャネーカ。 コレナラ、ゴキブリノ刑ハ勘弁シテヤルカ」 後半は弟者に向けられたものだ。 弟者は、頭を掻きながら苦笑。 「ははは・・・それは良かったよ。 それより、つーはこれから何か用事でも?」 つーは即答した。 「イイヤ。暇デショウガナカッタトコロダゼ」 じゃあ、と兄者が言った。 「これから俺達は昼食なんだが、つーも一緒にどうだ。 優勝記念だ、奢ってやるぞ?」 つーは、顔をぱっと輝かせた。 「ホントカ?ジャア、オ言葉ニ甘エヨウカナ」 「じゃ、行きますか、と」 返事を聞き届けた兄者が、踵を返して歩き出した。 弟者、妹者、つーの3人は、慌ててその後についていった。 540 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:20 ID:??? 「・・・おい・・・」 兄者が苦悶の表情をしながら言った。弟者は呆れ顔、妹者は驚愕の表情を浮かべている。 「アヒャ。ナンダ?」 つーがご機嫌な様子で答える。 「・・・俺は、確かに昼食を奢ると言った」 「アア、言ッテタヨナ。アリガタク、ゴ好意ニ甘エテルゼ」 そこで兄者は、ふぅぅぅぅぅぅ、と長い長いため息をついた。 「だがな・・・」 一度言葉を切り、彼はそのまま続けた。 「―――食べ放題だなんて、一言も言ってないんだぞ・・・」 言い切ってから、彼は頭を抱えてしまった。 つーの目の前には、大量の空になった皿やら器が積み重ねられている。軽く二桁。 恐らく、これだけで状況を大体理解して頂けたと思う。 場所は、流石兄妹が来たときに休憩に使ったレストハウス。4人はここへ昼食を取りに来たというわけだ。 兄者、弟者、妹者は、それぞれ1品ずつ。弟者は少し多めに頼んでいたようだが、まあ普通だろう。 ―――だが。つーの注文量は尋常では無かった。 何せ、注文を店員に伝える時の言葉が、 「メニューノ端カラ、全部1ツズツ!」 だったから。兄者だけでなく、弟者に妹者もこれにはぶったまげた。 自分たちよりも明らかに背格好の小さい(妹者は別だが)少女が、これだけの量を注文するなんて。 そして、彼女は店員が困惑の表情で運んできた料理の数々を全て平らげてしまった。 これだけの量だ、金額も相当なものになる筈だ。兄者は、己の軽率な発言を深く深く後悔した。 彼にとって不幸中の幸いと言えるのは、ここのメニューの数があまり多くなかった事か。 兄者が、げんなりした様子で財布を覗き込む。 足りるかどうか―――弟者も少し不安になった。いざとなれば、自分も資金援助をしなければならないかも知れない。 で、当の本人はというと―――ご満悦の表情で腹を撫でている。その顔に罪の意識は無く、兄者は怒る気にもなれなかった。彼女は天然だ。 ―――5分後。外で待つ3人の元へ、何だか少しやつれた様子の兄者が戻ってきた。店員がついて来てない様子を見ると、資金はどうやら足りたようだ。 「アヒャ?兄者、ドウシタ。調子悪イノカ?」 兄者がげんなりしている様子を見たつーが、心配そうに声を掛ける。その声に悪意は感じられず、自分自身がその原因だという事にどうやら気付いていない。 彼女は、やはり天然だ。 「い・・・いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」 兄者が片手を上げて答えた。とても大丈夫には見えないが、とりあえずこの後も広場を見て回る元気は何とかありそうだった。 弟者はそう判断し、すたすたと歩き出した。その後を元気に妹者とつーが、よれよれと兄者がついてくる。 「さて・・・次はどこへ行くかな」 少し歩いた後、弟者がそう呟いて辺りを見渡した。その時、不意に妹者がある方向を指差した。 「ちっちゃい兄者。あれは何なのじゃ?」 3人が一斉に、妹者の指差した方向へ視線を持っていく。 その方向には、何やらでっかいガラス製の水槽のような物があり、中には透明な液体がたっぷりと入っている。 その手前には何やら大きな箱が置いてあり、傍らには白衣姿の女性が1人立っていた。 弟者は、その人物に見覚えがあった。 「あ。あれは・・・」 「『百ベビ組手』ニ出テタヨナ、アノ人」 つーも気付いたようだ。 そこに居たのは、『百ベビ組手』にも出場していた、科学者のじぃだった。 「何か店でもやってるのか・・・?」 何だか気になった4人は、彼女の元へと歩いていった。 541 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:38 ID:??? 4人がその場所へ歩み寄ると、それに気付いたじぃが彼等の方を向いた。 「いらっしゃい・・・あら」 どうやら彼女も覚えていたらしい。まあ、片方は優勝者だから当たり前かも知れないが。 「さっきはどうも。2人とも、凄かったわよ」 ニコリと笑ってじぃが言った。弟者が一礼してから、口を開く。 「いやいや・・・貴方の方も、硫酸を使用しての『見せる』虐殺、見事でしたよ」 それを聞いたじぃは『ありがとう』と答える。 彼女は競技の時も白衣姿だった。歳は―――二十歳前後か。 その後聞いた話によれば、彼女は近くの研究所で働いているらしく、薬品の扱いにかなり長けているようだ。薬剤師の免許も持ってるとか。 暫く会話を楽しんだ後、弟者が訊いた。 「ところで、ここで何をしてらっしゃるのですか?」 質問を受けたじぃは、背後の巨大水槽を指差しながら答える。 「ちょっとした商売ね。簡単に言えば、景品つきくじ引きかしら。 あの水槽も商売道具。ところで、あの中身・・・何が入ってるか、わかる?」 4人は少しの間シンキング・タイム。数秒の後、つーがおもむろに口を開いた。 「ヒョットシテ・・・アレモ硫酸?」 それを聞いたじぃは、パチンと指を鳴らして『ピンポーン!正解!』と言い放った。 そこで兄者が、ポンと手を打った。 「なるほど・・・大体読めたぞ」 「あら、お兄さんはわかっちゃったようね」 微笑を浮かべながら、じぃが言った。 ここで、じゃあ、と切り出したのはまたも弟者。 「その箱は一体・・・?」 弟者が言ったのは、水槽の傍らに置かれている大きなダンボール箱の事だ。蓋が閉じていて、中身は見えない。 そこで兄者が、ハイ、と手を上げた。 「弟者よ、俺が答えよう。間違ってたらスマン。 その中身は恐らく―――」 兄者は一旦そこで言葉を切った。そして、そのまま続ける。 「―――ベビしぃ、ですね?」 「ご名答!!」 じぃが言いながら、ダンボールを開けた。それと同時に、箱からひょっこりと数匹のベビしぃが顔を出した。 そして、身をこっちに乗り出しながら、両手を突き出して、 「ナッコ♪」 お決まりの台詞。見れば、箱の中には数十匹のベビしぃが詰まっている。 口々にチィチィ、ナッコ、コウピ、と鳴いている。百ベビ組手を髣髴とさせる光景だった。 よく見ると、ベビしぃの背中にはそれぞれ番号が書かれている。 「ベビしぃに硫酸、そしてくじ引き・・・ああ、そういう事か!」 弟者もどうやら答えを見つけたようだ。 「ところで、幾ら?」 兄者が訊くと、じぃはピースサインを作りながら笑顔で言った。 「一回200円!・・・と言いたいところだけど。 せっかくだから、半額におまけしちゃう。貴方達だけよ?」 ここまで言われては引くしかあるまい。4人は、彼女の好意に甘える事とした。 542 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:25:55 ID:??? 4人で合わせて400円をじぃに手渡すと、彼女は小さめのホワイトボードを取り出した。 そこにはマス目が書かれており、端から順に番号が振られている。所々の番号の所に、マグネットが張られている。 「じゃあ、お好きな番号をどうぞ♪」 4人は少しだけ考えてから、それぞれ番号を決定した。 「う~ん・・・16番」 「じゃあ、5番で」 「12番デ」 「25番なのじゃ!」 じぃは『了解!』と呟いてから、4人のコールした番号の所にマグネットを張り、それから箱を再び開ける。 中からチィチィと聞こえて来る箱に手を突っ込み、それを出した時には、彼女の手に1匹のベビしぃが。背中には『16』と書かれている。 「アニャーン ナッコチテ♪」 じぃの手に掴まれながら、ベビしぃが言った。 箱を閉じてから、彼女が再び何かを取り出す。今度はパネル。 そこには、簡単なイラストと一緒に賞の内容が書かれていた。 それによると、灰色の玉がハズレ、緑が5等、紫が4等、青が3等、黄色が2等、赤が1等。 景品が何なのかは書かれていない。当たってからのお楽しみ、という事だろう。 「でも、その玉とベビしぃと、一体何の関係があるのじゃ?」 妹者が首を傾げた。 兄者は、「見てればわかるよ」とだけ言い、じぃの次の行動を待つ。 彼女はその手にベビしぃを掴んだまま、硫酸入り巨大水槽の前に立った。 そして、ベビしぃを両手で持ち直す。 「ハナーン・・・ナッコデチュ・・・」 ベビしぃがうっとりと呟いた。まさに、嵐の前の静けさ。 じぃが、まるでバスケットボールをシュートするようにして、ベビしぃを掴んだ両手を顔の前へ持っていく。 そして彼女は、膝を軽く曲げ、十分反動を付けてから――― ヒュッ! ―――ベビしぃを投げた。水槽の中へ向かって。 「アニャーン!」 投げられたベビしぃは弧を描き、ある程度上昇した後、一直線に水槽の中―――硫酸プールへ落ちていく。 ドボーーン!! ベビしぃが強酸性の飛沫を上げながら、透明な液体の中へ飛び込んだ。次の瞬間。 ブッシャァァァァァァ!! もうもうと上がる煙。そして、 「ヂュギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」 即座に聞こえて来る、ベビしぃのあまりに悲痛な叫び。 543 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:17 ID:??? 「おお~っ・・・」 弟者が感嘆とした様子で呟いた。 今まさに、水槽の中ではベビしぃが強力な酸によって溶かされている。 既に全身の毛皮は完全に溶解して消滅、もがいている為に酸に浸かったり浸からなかったり、の上半身はまだ見られるが、 ずっと浸かりっぱなしの下半身は表皮のみならず真皮まで溶解を始めている。筋肉組織がまる見え、ああグロテスク。 「マンマァァァァァァァァァ!!ダヂュケテェェェェェェェ!!!!ナゴナゴォォォォォォォ!!!」 ベビ自身から噴出した血液で少しだけ赤く染まった水槽内の硫酸。 バチャバチャともがくベビの周りには、既に体から離れてしまった肉片がプカプカと浮き、それすらも煙を上げて溶けている。 見れば、ベビしぃの足は既に肉が消滅して白い骨がまる見え、そして溶解を始めている。 ベビしぃは一刻も早くこの生き地獄から逃れようと、硫酸に塗れた手で水槽の壁面を引っかくが、半溶解した手でツルツルしたガラスを登る事など到底不可能。 「ナゴォォォォォ!!ナッゴォォォォォォォォォ!!!!ヂィィィィィィィィ!!!」 ベビしぃの足は既に消滅していた。付け根が辛うじて残っている程度だ。 やがて、ベビしぃの下半身から紐状の何かが出てきた。 よく見るとそれは、下半身が溶解したために体外へと零れ出てきた腸だった。 全身を強酸で焼かれるという激痛に、更に内臓を溶かされる苦痛が追加。さあ大変。 「ナ、ナ、ナ、ナッギュォォォ・・・アギィィィ・・・ヂ・・・」 あれほど五月蝿かったベビしぃがやけに静かになり始めた。命の灯火もそろそろ消える頃か。 はみ出していた腸も既に溶解し、腕の骨も露出し、顔に至っては口の形が完全に崩壊し、眼球は片方が潰れて目漿が流れ出している。 ベビしぃが再び叫びを発しようとして崩れた口を抉じ開けた瞬間、歯が何本もぼろぼろと落下した。歯茎が溶けているらしい。 「・・・うぅ~・・・」 妹者が口元を押さえて、水槽から顔を背けた。11歳の少女にこの光景は流石にショッキング過ぎた様だ。 兄者はよしよし、と妹者の頭を撫でてやってから、水槽の中で確実に消え行くあまりに矮小な命を見つめた。 「ギャ・・・ヴィィィィ・・・ビャ・・・ヂ・・・」 どろどろに溶けた口では、まともに発音する事も出来やしない。 開いた口から硫酸が喉へ流れ込み、声帯までも潰されたらしいベビしぃは、 「・・・ガァ・・・」 と呟いたのを最後に、喋らなくなった。 それと同時に、パタパタと動いていた腕もその動きを停止し―――ベビしぃはついに、抗う事を止めた。 口がパクパクと動いている事からまだ生きているようだが、最早その体はただ溶かされるのを待つだけ。 ベビしぃの全身を気泡と煙が包み込み、『ジュワァァァァァ』という音が一層激しくなって、やがて――― シュゥゥゥ・・・ ベビしぃは完全に『消滅』してしまった。骨の一欠片も残さずに。 ―――否。ベビしぃのいなくなった水面に、何かが浮かんでいる。 それは、5等に当選した事を示す、緑色のガラス玉だった。 544 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:34 ID:??? 兄者に『もう大丈夫だぞ』と声を掛けられた妹者を含めた4人は、暫くの間水槽を見つめていたが、 「は~い、おめでとう。5等当選ね」 パチパチと手を叩きながらじぃが言ったので、そっちを振り向いた。 「5等の景品は―――はい。モナ・コーラ2リットル3本よ。 あんまり揺らさないように持って帰ってね」 そう言って、彼女は兄者に大きなペットボトルが3本入った袋を渡した。 兄者は軽くお辞儀をしながらその袋を受け取る。そこでじぃは、再び箱に手を突っ込んだ。 そして彼女は、一度に3匹のベビしぃを掴み出した。それぞれ背中には「5」「12」「25」と書かれている。 「ナッコ!ナッコ!」 「チィヲハヤク ナッコシナチャイ!」 「ナッコチテ チィタチニ チュクシナチャイ!コノ カトウセイブチュドモ!」 口々に喚くベビしぃ達。つーはその言動に早速キレかかっているらしく、ナイフを取り出そうとして弟者に止められた。 「まぁまぁ」と苦笑しながらつーを宥めつつ、じぃがベビしぃを掴んだ手を軽く振った。 「どうせすぐにGo to hellなんだから、少しくらい言わせてあげたっていいじゃない」 そして、水槽に向き直った。 その横で、妹者が兄者に問いかける。 「兄者、あのガラス玉はどこから出てきたのじゃ?」 兄者が答えた。 「簡単な事だ、妹者。ベビしぃが溶けた後に、その場所にあの玉が現れたんだ。 となると、どこから来たかなんて訊くまでも無いだろう?」 妹者がハイ!と手を上げた。 「わかったのじゃ!あのベビしぃのお腹の中!」 「ピンポ~ン!」 兄者の代わりにじぃが正解を告げ、それと同時にベビしぃ達を順番に水槽へ放っていった。 「チィィィィィィィ!」 「ナッコォォォォォ!!」 「ハナーン?」 宙を舞うベビしぃ3匹。迫る水面。それはベビしぃ達を確実に冥府へと誘う、地獄への入場門。 そして――― ドボドボドボォォォォン!! 弟者が選んだ5番のベビしぃは水槽の中央よりやや右寄りに、つーが選んだ12番のベビしぃは水槽の中央付近に、 妹者の選んだ25番のベビしぃは水槽の左端に、それぞれ飛び込んだ。 ブッシュゥゥゥゥゥゥゥ! その瞬間、同時に3箇所から煙が立ち上り、 『ヂギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!???』 三重奏(トリオ)の悲鳴が、5人の耳を打った。 545 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:26:56 ID:??? 「( ゚д゚)トケター」 つーが呟いている間にも、ベビ達の肉体は溶解してゆく。 最初の犠牲者であるベビと同じように、表皮、そして皮膚がどろどろに溶けて内部組織がまる見えだ。 「ヂギィィィィィィィィィ!ナゴォォォォォォォ!」 濃硫酸で溺れるベビ達の悲痛な叫び。そんなに大口開けて、口から硫酸が流れ込んだらどうするのか。 ―――まあ、どちらにせよ死ぬからそんなに変わりは無いか。 と、ここで珍事が起きた。 「ヂィガタスカルノ!アンタガ ヂニナヂャイヨォォォォォ!」 「ヂュィィィィィ!!ガブッ、モゴボゴゴゴゴ・・・」 12番のベビが、5番のベビの上に乗っかるような形になっている。つまりは、自分が溶かされる苦痛から逃れるための足場になれと言う事だ。 何と、この極限状態においても自らが助かる為の醜い争い。だから、どっちにせよ死ぬんだってば。 で、どうなったかと言うと――― 「ゴボォォォォォォ・・・モギィィィァァァ・・・」 「ヂィィィィィィ!ナンデ シズムデチュカァァ!?マターリ デキナイデヂュヨォォォォ!!」 乗っかられたベビは全身が硫酸の海に沈み、まともに身動きも出来ぬまま硫酸攻め。 殆ど無事だった顔面も酸に浸かり、溶解を始めた。口、目にも硫酸が流れ込んだ。恐らく、もう目は見えまい。 乗っかった方のベビも、引き続き濃硫酸に悶え苦しむ結果に。 当然である。いくら浮力があるとは言え、ほぼ同質量のベビが乗れば沈むのは必定だ。 耐え難い苦痛によって冷静な判断力を失ったベビに―――いや、そうでなくとも、ベビしぃ如きにそれを考える事など不可能だった。 「ヂュァァァァァァ!ダヂュゲデェェェェェ!!」 乗っかっていた12番のベビがついに5番のベビの上に乗っていられなくなり、再び硫酸プールに全身を放たれた。 5番のベビはようやく解放された訳だが、もう遅すぎた。 際限なく浮き沈みを繰り返し、何も見えず、声も出せず、ただ溶かされるだけの肉塊となっていた。 どろり、と目があった位置に空いている穴から、半熟卵を思わせる様子で半解状態の眼球が流れ落ちた。 全身から泡を発し、浮き沈みを繰り返す物体。それはまるで――― 「―――天ぷら揚げてるみたいだな」 弟者がぼそっと呟いた。その横で、じゅる、とヨダレを啜る音が聞こえたので見ればそれは妹者で、彼女は弟者の腕を引いて、 「ちっちゃい兄者、今日の晩御飯は天ぷらがいいのじゃー」 と言った。水槽内で繰り広げられる地獄絵図とはまるでそぐわないほのぼのした台詞で、皆の笑いを誘った。 先程はそのグロテスクな光景に顔を苦くした妹者だったが、もう平気らしい。 精神の足腰の強さも母者譲りだな・・・と、兄者と弟者はこっそり顔を見合わせ、小さく肩を竦めたのだった。 546 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:15 ID:??? 「ギュガァァァァァァァ・・・」 12番のベビが、およそベビしぃらしからぬ奇声を上げる。 耳が溶けて無くなった丸い顔。内臓がはみ出した腹。黒目が無くなり、常に白目を剥いた目。 奇声を発する為に開けた口から多量の硫酸が流れ込んだ。最初のベビと同じパターンだ。これでもう奴は喋れない。 硫酸を飲み込んだベビしぃは、喉を焼かれるショックでついに最後の体力を使い果たしたらしく、 「・・・グゲェ・・・」 と発したのを最後に、うつ伏せ状態で沈んでいった。 「終わったな」 「ああ、後は結果待ちだな」 兄者と弟者の会話。ベビ達はもう全員息絶え、後は肉体が滅するのを待つだけだった。 ―――あ、そうそう。25番のベビは、水槽の隅っこで誰からも注目される事無く孤独に生涯を終えてましたとさ。(w シュゥゥゥゥゥゥ・・・ 暫くは皆無言で、肉の溶ける音を黙って聴いていた。 やがて煙が晴れ、音も止んだ。それは、ベビしぃの肉体の完全消滅を表していた。 兄者以外の3人は、自分自身が選んだベビしぃが居た位置へ視線を走らせた。 弟者が選んだ5番のベビが居た所には、灰色のガラス玉。 「む、外れたか・・・」 ちょっと残念そうに、弟者が呟いた。 「残念だったわね。そうそう、ハズレの場合はポケットティッシュなんだけど・・・せっかくだし、多めにあげちゃおうかな」 そう言ってじぃは、ポケットティッシュを弟者に10個も渡した。おそらく通常は1個か2個だろう。 「ど、どうも・・・」 弟者は苦笑しながら、それを受け取った。手からこぼれて落ちそうになったティッシュを慌ててキャッチする。 一方、つーが選んだ12番のベビが居た場所。そこには、青色のガラス玉が浮いていた。 「アヒャ!当タッタミタイダナ!何等?」 嬉しそうにつーが訊いてくるのを聞き、弟者が先刻じぃが出したフリップに目を走らせる。 「えーと・・・青は3等だな。良かったな、つー」 「アッヒャッヒャッヒャ!今日ハツイテルナー」 笑うつーの元へじぃが駆け寄った。 「おめでとう!3等はこれよ」 そう言って彼女が差し出したのは、3000円分の食事券だった。 思わずビクンッ!と兄者が体を竦ませた。先刻の昼食時の悲劇を思い出したのだろう。 「・・・なんつーか、ベストチョイスだな。偶然ではあるけどさ」 弟者が兄者とつーを交互に見ながら苦笑した。 「アリガ㌧!コレデ、後デ何カ食ベテクルゼ」 まだ食べる気なのか、と兄者は、別に自分が奢る訳では無いのに肩を落とした。 547 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:31 ID:??? 残るは妹者の選んだ25番のベビだ。水槽の端に投げられ、誰にも気付かれず死んだとあって、ここからではガラス玉を確認出来ない。 「こっちの方か?」 兄者が先頭で、水槽の右側に周った。 「お、あったあった・・・おおっ!」 兄者がガラス玉を確認すると同時に、驚きの声を上げた。 水槽の壁面に水飛沫がやたら跳んでいた。恐らくここが、ベビしぃが絶命した場所と見て間違い無いだろう。 そしてそこには――― 「―――赤い、ガラス玉・・・て事は、1等か!?」 そう、そこには赤いガラス玉があった。 つーが持ってきたフリップを見ると、確かに赤い玉の横には『1等』と書かれている。 「わーい、やったのじゃー!」 ピョンピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現する妹者。 「おめでとー!1等当選者は初めてよ」 じぃが、何時の間にか取り出したハンドベルをチリンチリンと鳴らした。 ひとしきり鳴らし終えると、彼女は水槽の反対側へ姿を消し、すぐに戻ってきた。その手には小包。 「1等景品は何と!最新ゲーム機のニソテソドーGS!はい、どうぞ」 「良かったな、妹者」 説明しながら、彼女は小包を妹者へ差し出した。 「ありがとうなのじゃ!」 喜色満面、という四字熟語がこれ以上似合う表情も無いだろう、というほどの笑顔で包みを受け取る妹者。 パチパチパチパチパチ! 何時の間にやら集まっていたギャラリーから暖かい拍手。 百ベビ組手会場に続き、再び拍手喝采を浴びた妹者は、またも顔を真っ赤にして兄者の影へ隠れてしまった。 観衆からどっ、と笑いが起こった。 548 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:27:57 ID:??? 「それじゃ、色々どうも有難う御座いました」 「バイバイなのじゃ!」 「また会いましょうね。それと、薬を使う機会があったら、うちの薬をヨロシク!」 そんな会話を最後に科学者じぃと別れた4人。 少し歩いてから、兄者が3人を振り返って尋ねた。 「さて、これからどうする?」 「もう少し遊びたいのじゃ!」 妹者が即座に答えた。 「まあ、時間もまだあるし・・・もう1箇所くらいなら周れるんじゃないか?」 弟者が言いながら、腕時計を確認する。時刻は午後3時。 「ン、モウソンナ時間ナノカ・・・悪イ、モウ帰ラナイト」 つーの言葉に、妹者が残念そうに唇を尖らせた。 「えー、もう帰っちゃうのじゃ・・・?」 「引キ止メテクレルノハアリガタイケド、用事ガアルカラナ・・・マタ遊ンデヤルカラ、勘弁シテクレッテ」 つーが言いながら、妹者の頭を撫でる。 「・・・わかったのじゃ。また遊んで欲しいのじゃ!」 「ワカッタヨ、約束スル。ソレジャ、マタナ」 つーは今度は兄者と弟者の方を向く。 「ああ、また明日、学校でな」 「またな。・・・言っとくが、今度は奢らないぞ・・・」 笑顔で返した弟者と、ややげんなりした顔の兄者。 「アヒャヒャ!マタ会オウゼッ!」 対照的な2人の表情に思わず笑ってしまってから、つーは3人に背中を向けた。 彼女の小さな背中が人混みに紛れ、完全に見えなくなるまで見送ってから、弟者が切り出した。 549 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:28:27 ID:??? 「さて、俺達はどうしようか?」 「まだ遊びたいのじゃ!」 妹者が即座に返した。 だろうな、という表情を作ってから兄者は、 「そうだな・・・もうあまり時間も無い。短い時間で楽しめるような出し物でもあればいいが・・・」 そう呟きながら、パンフレットに載っている地図を人差し指でなぞる。 その指が、ある一点で止まった。 「ん?『妊娠しぃdeお御籤』てのがあるぞ。何やら気になるな・・・」 「どれどれ」 弟者が横合いから地図を覗き込んだ。 「お、ここからすぐ近くじゃないか。せっかくだ、行ってみるか?」 「さんせーなのじゃ!」 妹者も即決だった。 かくして3人は、地図を頼りに再び歩き出した。 「ここだな」 兄者が言った。 地図上の場所へ行くと、運動会なんかで使用される白テントが張ってあり、テーブルが1つ、2つ。 そこには受付兼案内役らしい1さんが座っている。『お御籤』の名を冠するに相応しく、袴姿だ。 「いらっしゃい。『妊娠しぃdeお御籤』へようこそ。やってくかい?」 3人に気付いた1さんがにこやかに笑いかけながら口を開いた。 「宜しくお願いします」 兄者が頭を下げ、弟者と妹者もそれに倣う。 しかし、兄者はここで妙な事に気付いた。 テントを見渡しても、その肝心のしぃの姿が1匹もいないのだ。 『妊娠しぃ』と言うからには当然しぃを使うのだろうが、姿が見えない。何故だろうか。 しかし、その疑問はすぐに解消される事となった。 すっく、と1さんが立ち上がりながら言った。 「それじゃ、ついてきてくれるかな」 そして彼はテントを出、その裏に回った。 3人は慌ててその後を追っていく。 550 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:28:49 ID:??? テントの裏に回った3人が見たもの。それは――― 「ハニャーン!ハニャーン!ハナシナサイヨゥ!」 「シィチャンニ コンナコトシテ タダデスムト オモッテルノ!?」 「ハヤク コノナワヲ ホドイテ ダッコシナサイ!」 耳から入って直接脳を刺激するストレス。アフォしぃ特有の甲高い声だ。 それは、異様な光景だった。 そこら中に木が生い茂っている、ちょっとした林のようなエリア。 その木にはロープが括り付けられ、その先には何と、しぃが吊り下げられているのだ。 しかも、どのしぃも腹が大分膨らんでおり、一目で妊娠しているとわかった。膨らみ具合からして、もう数日もしない内に生まれるだろう。 ロープはしぃの両腕と両足に括られ、大の字をさせるような格好だ。 「・・・なるほどね。大体読めたぞ」 「お、お客さん、勘がいいね」 兄者の呟きを聞いた1さんが笑顔を見せる。兄者の勘の良さはここでも冴え渡っているようだ。 「ねーねー、どうするのじゃ?」 妹者が兄者の腕を引きながら尋ねると、 「今説明してくれるみたいだぞ」 代わりに弟者が答えた。