Torturing “afosee” to death

Last-modified: 2015-06-25 (木) 22:32:24
304 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:29:26 [ 1YFz5few ]

                             REVENGE

                      Torturing “afosee” to death

305 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:29:56 [ 1YFz5few ]

夜風が程良く吹く、ある晩のことであった。
「ふーー。……少し、飲み過ぎたかな?
 ……まあ、いい。こうして夜風に当たっていれば、じきに冷めるだろう。」
仕事の帰りに一杯飲んできたのか、頬を赤らめたモララーが歩いている。
「やれやれ。もう、こんな時間か……。またガナーに、帰りが遅いって文句言われそうだな……
 ……確かに、まだあいつとは新婚ホヤホヤだよ? でも、酒飲んで帰るくらい、いいじゃねえかよ!
 しかもそれに便乗して、親父やお袋まで説教に乗り出すんだから、たまったもんじゃねえ……。」
モララーは両手を広げて、やれやれと言った様子で愚痴をこぼしているが
心の底から言っているわけではない。なにしろこのモララー、仕事先の同僚のガナーと
結婚して間もないのに、近所でも評判の もちろん本当に自他共に認めるおしどり夫婦なのだ。
モララーの両親と同居してはいるが、何の問題もない 極めて幸せな家庭。
これでガナーのお腹に新しい命が宿っていたら完璧なのだが、それはまだのようだ…… 

「ふぁ~あ。やっと我が家か。」
新築の匂いがまだ残る一軒家の前で、モララーはあくびをする。
家の明かりは、ついていなかった。

306 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:30:41 [ 1YFz5few ]

「あ~あ。もうみんな、御就寝か………。
 俺が帰るまで、みんな鍵を開けて待っててくれよ……」
懐から鍵を取り出した、その瞬間

ごとっ がさがさ……

家の中から、不審な音。
モララーの胸の中が、ざわめいた。

(まさか……強盗? それとも……泥棒?
 まさか………まさか………)
はやる気持ちを抑えて、モララーは扉を開けた。
鍵は、かかっていなかった――

家の中に入った途端、モララーは異様な雰囲気を感じた。
それは、視覚からでも、聴覚から感じ取った物でもなく―― 嗅覚からのものであった。
家の中に、鉄の臭いが充満していたのだ。
もちろんモララーの家は、鉄工業も、はたまた鍛冶屋も営んではいない。
とすると、この鉄の臭いは……?

がさがさ…… がさがさ……

(この、家中に満ちた、鉄の臭い……それに、あの物音……… まさか……そんな……)
モララーの全身から、汗が噴き出す。口がかちかちと鳴り出した。
そして例の不審な物音は、居間の方から聞こえてきた。
自分の心臓の音が周りに響きそうなくらいの静けさの中、モララーは闇の廊下を静かに歩く。
そして、居間の扉の前に立った。

(誰だ……誰がいるんだ………?
 頼む! ……頼むから、俺の家族の中の誰かが、腹が減ったからレアステーキを喰っているとか
 そういうのであってくれ……! 頼む……!)

アル中患者のように震える手で、扉のノブを掴む。
そして

307 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:31:20 [ 1YFz5few ]


ガチャッ!!

「誰だ!!」

意を決して扉を勢いよく、一気に開けた。
すると

「ハ ハニャッ!?」        . . . .
闇の中から、聞き慣れたある種族の声
そして

ガシャーーン!!

声を発したものが逃げたであろう、 ガラスを破る音がした。
「くッ!! この野郎、待てッ!!」
モララーは、急いで後を追おうとする……が
「!!」
足下に絶望的な感触を覚え、踏みとどまった。
ぬるりとした、なま暖かい、鉄の臭いを放つ液体を踏んだ感触………。
もう、その液体が何であるかは、言うまでもないだろう。
モララーは、震える手を必死に押さえつつ、部屋の明かりをつけた。

―――――――………………

部屋の明かりをつけない方が良かった ―――しかし、もう遅かった。

308 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:32:29 [ 1YFz5few ]


    惨    劇


そう呼ぶことすら出来ない光景が、そこにあった。

床  壁  天井
テレビ  タンス  カーテン  ピアノ
机  椅子  電灯  本

部屋のありとあらゆる物が血で真っ赤に染まり、その中に3体の
これまた真っ赤のAAが倒れていた。


「あ……あぁ………あああ……! うわあぁぁぁ!!!」

血の海の中のAAの元に、モララーは猛然と走り寄った。

「おい! 親父ッ! 親父ィッ!! 何とか言え 親父ッッ!!!」
反応は、無かった。
「お袋! ……なぁ 頼むよ、目を開けてくれ! お袋!!」
モララーの呼びかけもむなしく、その体は既に冷たくなっていた。
そして
「ガナー……? なぁ、ウソだろ? ウソだよな? みんなで俺をからかってるんだろ!?
 みんなで部屋に鉄粉混ぜた赤ペンキぶちまけて、死んだフリしてるだけなんだよな? なあ!?
 もういいよ! 死んだフリは! だからはやく目を開けてくれ! ガナー! 早く! 開けろォ!!」
しかしモララーの絶叫の後には、しん……、とした、静寂。
この部屋の中で、モララーに返事をする者はいなかった。
父も、母も、そして最愛の妻、ガナーも……… 皆、事切れていた。


そ……ん……な……

あ……ああ………あああ…………ああああ………!!

309 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:32:52 [ 1YFz5few ]



う わ あ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ ! ! ! ! ! !

310 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:33:31 [ 1YFz5few ]

「………で、あなたが帰宅して、ここの扉を開けたら
 何者かがその窓から逃げて、部屋は既にこんな状態だった……と。」
「はい………。そう……です……。」
警官AAが、手帳にメモしながらモララーと話している。
モララーの家は、警官、鑑識、それと野次馬や報道陣でごった返している。
「まぁ、現場の痕跡や、あなたが聞いた泣き声から判断すると
 犯人は、しぃ……それも、アフォしぃ……ですね。」
「…………………」
「……あ、そ、それでは、今日はこの辺で………。
 また何か新しいことが分かったら、ご報告いたしますので!」
警官AAは、そそくさと立ち去っていった。


数日後
「はい、次の方 ……おや…… また、ですか……」
「すいません……先生……。」
ここ数日、モララーは近くの精神科に通っていた。

「やっぱり……まだ、ダメなのかね?」
「はい……。未だにあの光景が夢に出てきて……
 起きているときも何とか、処方してもらった精神安定剤で正気を保っている状態で……」
「しかし、これ以上薬を強くすると、君の体にも影響が……」
「このまま狂い死にするよりは、ましですよ………。」
「分かった。しかし………
 これ以上強い薬は、持ち合わせていないよ。これでもダメなら、もう無理だよ。」
「はい…………。」

処方された薬を手に、モララーは病院を後にした。
「これで………なんとかなるな………よし
 いよいよ、だな………。」
モララーの目が、鋭く光る。

…………犯人のアフォしぃを、絶対に見つけてやる………
絶対にこの手で、復讐してやる………
絶対に、すぐには死なせない………
じわりじわりと、すぐに死んだ方がいいと思うくらいに、なぶり殺してやる………!!
この俺から、愛する物を奪ったアフォしぃを
地獄の、奈落の底に 叩き落としてやる…………!!

311 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:34:00 [ 1YFz5few ]


その日の午後から、モララーは町の中を歩いていた。
もちろん、散歩をしているわけではない。
アフォしぃの捜索だ。
しかし、しぃを探すなら、原っぱや土手のダンボールの中を探すのがセオリーのはず
……と、思っている人もいるかも知れない。
しかし、モララーには考えがあったのだ。

(お袋は、こんなご時世に未だにタンス預金をしていた………
 で、その金があの事件でタンスから消えた。
 言うまでもない。……アイツが、持ち去った。
 現金や通帳 総額で、300万ほどの大金を………
 …………アフォしぃのあの性格で、そんな大金を手にしたら
 果たして汚いダンボールの中で、じっと蓄えるだろうか……?
 絶対に………ない。おそらくは…………。)

その時であった。
「ハニャ―ン! ココノオ店モ 安物シカ ナイワネー!
 マッタク オ金持チノ シィチャンノ眼鏡ニカナウ高級店ハ ナカナカ無イワネェ………」

見るからに身分不相応な、毒々しい派手な恰好をしたアフォしぃが
悪態を付きながら服屋から出てきた。

「コンナ貧民街ニ 期待シタシィチャンガ 間違ッテタワ!
 コンナニオ金ガアッテモ コンナトコロジャ使イ切レナイワヨ アハハハハハハ!」
懐から数枚の万札を取り出して、見せびらかすように振りながら笑う。
1円や10円の硬貨でも、争って奪い合うほどの経済状態の
“普通の”アフォしぃの取れる行動ではない。

………間違いない………アイツだ………!!

312 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:34:57 [ 1YFz5few ]

モララーは静かに、そのアフォしぃの所へ歩いていった………。

「ねぇ! ちょっと! そこの可愛いしぃちゃん!」
「ハニャ? 何ヨアンタ?」
振り返ったアフォしぃの目の前にいたのは、にこにこと笑うモララーだった。
「いやぁ……。こんなに可愛いしぃちゃんは、初めてみるなぁ……!」
「何ヨ? アンタシィチャンヲ ナンパシニ来タノ?」
「まぁ……そんなとこかな? あ
 よかったら、そこのレストランで食事でもどうかな? もちろん奢るよ!」
「フン マァ…モララーニシテハ 上出来ジャナイ
 分カッタワヨ ジャア 行キマショ!」
強く握り締められたモララーの手には、血管が稲妻のように浮き出ていた。

フガッ………フガッ……フガッ………

食事マナーもどこへやら、アフォしぃはまさに
獣のように汚く料理を食い散らかしていた。

「ハニャーン! マズマズノ味ジャナイ! モララーニシテハ エライジャナイ!」
「…………」
料理の味と、ワイン瓶丸々1本分の酔いとで、しぃは上機嫌だ。
「アトハ デザートネ! 特大パフェ 楽シミダワー!」
「あ…… しぃちゃん。ちょっと聞きたいんだけど」
「ハニャ? ナニ?」
「いや……こんなこと言うのも何だけど
 しぃ族ってさ、みんなその……あんまり、お金持ちじゃなくて……貧乏じゃない?」
「マァ フツウハネ」
「じゃあ、何でしぃちゃんはそんなにいい格好をしているんだい?」
「フン チョット前ニ アル家カラ モラッテキタノヨ」
「………と、言うと?」
モララーの声が、ややうわずる。
「ジジイト ババアト 若イ 弱ソウナガナーガ 住ンデイル家デネ
 コノシィチャンニ 泣イテ喜ンデオ金ヲクレタノヨ! キャハハハハハハ!
 ホラ コレヨ!」
酔ったしぃは見せびらかすように、持っていた鞄を広げる。
大量の1万円札が、乱雑に詰め込まれていた。
そしてその1万円札の山の中に一つ、形の違う物が。
預金通帳だ。
名前は、「藻螺崎 模裸世」 ………モララーの、母親の名前だ。
モララーの顔が、凍り付いた。

313 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/14(月) 22:35:38 [ 1YFz5few ]


「ハニャニャ………? ドーシタノヨ 固マッチャッテ! ! コレハ アゲナイカラネ!」
………もはやモララーには、しぃの言葉など耳に入っていなかった。

これで、ハッキリした………
俺の親父、お袋、そして、ガナーを殺したのは、こいつだ………!!
ついに、見つけた………!!

「……? マ イイワ チョット トイレニ行ッテクルネ!」
しぃが席を立って数秒後に、デザートがやってきた。
特大パフェと、極甘のココアだ。
ふっ とほほえんだモララーは、懐に手を伸ばした。
そして、何かの錠剤を取り出し、しぃのココアの中に落とした……。


「ハァ~ア! デザートガ来テタノネ!
 ジャ イタダキマース!」
テーブルに着くのもそこそこに、しぃはデザートにかぶりつく。

「ム グッ! ミ ミズ……!」
急いで食べ過ぎたのか、喉にパフェを詰まらせたようだ。
すかさずモララーが、ココアを差し出す。
しぃはココアをひったくるようにして受け取ると、一気に飲み干した。
「ンッ……ンッ……ンッ……  パァッ!!
 ハァ 苦シカッタ! アリガト!」
「いいえ。どういたしまして。」
「ジャア パフェノ……ツヅ……キヲ………?」
突然しぃが、ふらふらと揺れる。
「ア……レ……? ナンデ……?
 ナ……ン……カ………ネ……ム………………イ………………………………」

ばったりと、しぃは机に突っ伏した。
先のモララーがココアに忍ばせた、睡眠薬によって……

――――いよいよ準備は、整った――――
 
あとは―――――

モララーは会計を済ませると、しぃを肩に担いで
足早にレストランを出た。


319 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:03:09 [ /bDJGCsY ]
>>313続き

「この日を どれだけ待ったことか………!」

地の底から聞こえてくるような重々しい声に、しぃは目を覚ました。
「……ニャ? ……ココ ドコ……?」
「我が家の、地下室だよ。」
「!! ダ ダレ!」 

突然の声に驚いて飛び上がろうとしたが
「ッ!?」
しぃは全身を、頭以外の全身を動かせなかった。それもそのはず
しぃは今、衣服をひん剥かれて、十字架に張り付けられたキリストのように壁に立たされ
四肢を末端と付け根の二カ所、鍵の着いた鉄の輪で拘束されていたからだ。
「ナ ナニヨコレ!? ジョ ジョウダンデショ!?」
何とか拘束からのがれようとじたばたするしぃ。
ガチャガチャと五月蠅く音を立てるしぃに、モララーは静かに歩み寄る。
「君は、なぜ自分が今こんなところにいるのか、分かっているのかい?」
穏やかなモララーの言い方が気に触ったのか、しぃは顔を真っ赤にして喚き散らした。
「ワカルワケナイデショ! コノド低脳!! サッサトシィチャンヲ解放シナサイヨ!!
 シィチャンハ 暖カクテ 奇麗ナオ家ニ 住ンデルンダカラネ! コンナトコロニイタラ 風邪ヒイチャウデショ!」
「暖かくて、奇麗なお家………? ほう。
 僕の家族を皆殺しにして、奪った金で作った“お家”か?」
「!」
モララーの突然の発言に、しぃは一瞬絶句した。が
「……ナニヨ アイツラ アンタノ家族ダッタノ
 フン! マッタク トンデモナイ礼儀知ラズナ連中ダッタワ!」
「何……?」
「シィチャンガ寒クテオ腹ガヘッテルノニ ソレヲ無視シテ自分タチダケ 暖カイオ家ノ中デマターリスルナンテ!
 許セナイワヨ! シィチャンガ苦シンデルノヲ見タラ 喜ンデ泊メテヤルノガ 礼儀ッテモンデショ!
 ダカラ思イ知ラセテヤッタノヨ! シィチャンヲ無視シテ自分タチダケマターリスルト ドウナルカッテネ!!」
「…………!!」
「ソレニアノヴァカドモ 結構オ金持ッテタワ!
 フン! シィチャンニ対スル無礼ヲ考エレバ少ナカッタケド 慰謝料トシテモラッテオイタワヨ!
 マ アイツラモコレデ分カッタデショ シィチャンヲ大切ニシナイト ドンナ目ニアウカッテネ! キャハハハハ!!」

………………………

320 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:03:41 [ /bDJGCsY ]

モララーは、かつて味わったことのない感覚を体感していた。

アフォしぃの犯罪だ どうせ動機は救いがたいものだろう
そう思って、ある程度の覚悟はしていたつもりだった。
だが


シィチャンガ寒クテオ腹ガヘッテルノニ ソレヲ無視シテ自分タチダケ 暖カイオ家ノ中デマターリスルナンテ!
許セナイワヨ! シィチャンガ苦シンデルノヲ見タラ 喜ンデ泊メテヤルノガ 礼儀ッテモンデショ!
ダカラ思イ知ラセテヤッタノヨ! シィチャンヲ無視シテ自分タチダケマターリスルト ドウナルカッテネ!!



ソレニアノヴァカドモ 結構オ金持ッテタワ!
フン! シィチャンニ対スル無礼ヲ考エレバ少ナカッタケド 慰謝料トシテモラッテオイタワヨ!
マ アイツラモコレデ分カッタデショ シィチャンヲ大切ニシナイト ドンナ目ニアウカッテネ! キャハハハハ!!


想像だに、できなかった。
要するに俺の家族は このどうしようもないゴミクズの
ねじ曲がった自己中心的な思考と、嫉妬


………そんなくだらないものに、奪われたのか………?
そしてもう二度と、奪われた家族は帰ってこないのか………?


モララーの心に、炎が広がった。
新月の夜よりも コールタールよりも
はたまた地獄の闇よりも 暗く、暗く、どす暗く
この世のいかなる“黒”をも凌駕するどす黒さを携えた、
希望 喜び ……そう言った陽の感情を一瞬で焼き尽くすかのような
憎しみ…憎悪の炎が燃え広がった。

わなわなと体を震えさせながら、モララーはすっくと立ち上がる。
「貴様に………教えてやる………!!
 なぜ………貴様がそこにいるか ということを……!!」
「ナ 何言ッテンノヨ! サッサト…… ムグッ!!」
しぃはその言葉を言い終えぬうちに、猿ぐつわを噛まされてしまった。

“復讐”だ………。

 心の底から 骨の髄から 後悔・恐怖するくらいに………………………………………



               な  ぶ  り  殺  し  て  や  る  !  !  !

321 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:04:14 [ /bDJGCsY ]

「ナ ナニヨ… ナブリゴロス ッテ………」
「これから少しずつ、教えてやるよ……。」
何時しかモララーは、ペンチを持っていた。
そのペンチをゆっくり、少しだけ刃先を開けると、しぃの指の指先を挟んだ。
そして開いた方の左手で、しぃの指のその少し下をつまむ。

ふっ とモララーはため息を付いて、その手に力を込めた。
左手でしぃの手を台に押さえつけると、右手のペンチでしぃの指の先端を引っ張った。

「シッ!? イ イタイイタイイタイ!! ヤ ヤメテェ!」
しぃは必死に指に力を入れ、抗おうとするが
怒りのモララーの腕力の前では、『嵐』前の灯火。

ぐ き っ

「ア゙ッ ア゙ァアァァァァァーーー!!!」

鈍いイヤな音が 響いた。
見るとしぃの指が一本、だらりと不自然に長く延びている。
しぃの指の関節が一つ、外されたのだ。

「………まだ、最初の一回目だぞ? この程度で参るなよッ!!
 テメエの指関節10個、全部外してやるんだからよ!!」
続けてモララーは、第二関節を外しにかかる。

ぐぎっ!!

「ビィィィィィ!!」

「痛いか……? そうだろうなぁ……
 脱臼の痛みは、大の大人でも気絶するんだぜ……?
 そんな痛みを、『まず』指の関節全てにくれてやる!!」

モララーの手際は、その心中の怒りに比例するように激しくなり
5回目、6回目、7回目…… しぃの悲鳴は、ますます大きくなっていった。


「……よくも俺の家族を、虫けらのように殺してくれたなぁ……。」
全ての指関節 親指から小指まで を外したモララーは、しぃの腕の拘束を解き、
その指が全て脱臼・伸ばされたしぃの手の上に、自分の手を重ねた。
「『シィチャンヲサシオイテマターリスルナンテ 許セナイ!』 だと……………?
 『シィチャンヲ無視シテ自分タチダケマターリスルト ドウナルカ思イ知ラセテヤッタノヨ!』だとぉ………?」
そこまで言うとモララーは、しぃの手を強く握る。
「ふざけるな!!! そんな救いようのないふざけた理由で、
 俺の最愛の家族を奪い去りやがって!!!」
左手でしぃの手首を掴み、右手でしぃの手を引っ張る。今度は………

ボ  グ  ッ

「ーーーーーー!!!」
手首が外され、だらりと垂れ下がる。

「ナ ナニヨウ!! シィチャンガマターリデキナイコトガ ドレダケ重大ナコトカ ワカッテルノ!?
 アンナヴァカドモハ シィチャンノマターリニ協力スルシカ能ノナイヤツラナノ!! 
 シィチャンヲマターリサセレナイヤツナンテ 虐殺厨ヨ! 虐殺厨! 虐殺厨ガ何人死ンダッテ 」

ベ キ ッ ! !

「テェェェェェェーーーー!!!」
しぃの池沼発言に逆上したモララーが、続けざまにしぃの肘をヘシ折った。

「テメエを満足させれないやつは生きる価値がねえだとぉぉ!!??
 貴様は何様のつもりだ!! あぁ!?」
激情に駆られたモララーは、両腕で二の腕を掴むと
そのまま力任せに引っ張り、肩を脱臼させた。

322 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:04:59 [ /bDJGCsY ]

指・手首を脱臼させられ、肘を折られ、肩をまた脱臼させられ、
泡を吹いているしぃにモララーが話しかける。
「貴様の腕を、ソーセージにしてやるよ。」
モララーはしぃの脱臼させられ、伸びた指を掴むと、例によって関節から上を左手で固定。
そして何と今度は、その関節から下をぎりぎりとねじり始めたのだ!
「ビベェェーーー!! ヤッ ヤメッ! ヤメデェェ!! ギエェェェェェェェェェ!!!」

ただでさえ無理矢理伸ばされ、痛めつけられた神経や筋が、今度はねじり伸ばされているのだ
その痛みは、半端なものではない。
「ねじったら、もとにもどらんようにしないとな!!」
蜂の腹のように、本物のソーセージのくびれのように、くびれた指関節をモララーはねじり上げると
そのくびれをクリップピンで挟み、固定した。
「さあ。次は手首だ!」
「モ モウ カンベンジデェェェェ!!」
しぃは必死に懇願するが、モララーはどこ吹く風。
手首も指同様、ギリギリとねじあげる。
指よりも骨面積が多いせいか、それとも血管やら何やら色々詰まっているせいか
指よりは抵抗感があったようだが、すぐにねじられ、ピンで固定された。

肘関節は、これだけ『折った』せいで、内部に骨の破片でもあったのだろう。
ねじると、『ぶぢぶぢ、めちぐち』…骨の破片が筋肉を引き裂くような、不気味な音がした。

そしてしばらく後、しぃの片腕は、見た目は完全にソーセージの束になっていた。
肘、手首、指が10カ所……ねじられた、ソーセージ である。
機能をおそらく失っているであろうその腕は、所々で血液が滞ってどす黒く変色していた。
「イ……イダイ……イダァイヨゥゥ………」
「フン。 痛いか。でもな
 貴様が味わったのは、まだ片手だけ。まだまだこれからなんだよ!」

323 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:05:31 [ /bDJGCsY ]

モララーは、今度は金槌を手に取った。
見るからに重そうな、数キロはありそうな代物である。

(や…やめてよ! あんなので頭を殴られたら……)
しぃはソーセージになった片腕の痛みなどどこへやら 動かぬ体を必死に動かす。
「ヤ ヤメテェ! ソンナノデ殴ラレタラ シィ 死ンジャウヨゥ!!」
そんなしぃの哀願に、モララーは薄笑いを浮かべて
「死ぬ……? 何寝ぼけたこと言ってんだ………?
 だれが殺すかよ。こいつはな………」
モララーは、金槌を高々と振り上げる。そして
「こう………………使うんだよッ!!!」

ド ゴ ォ ッ ! !

一気に、振り下ろした。

しばらくモララーは、金槌を壁に打ち付けたまま その動きを止めていた。
そしてしばらく後、金槌をゆらりと上げる。
金槌には、血と毛皮が少し、付着……。
さてこの金槌、一体どこに振り下ろされたのか?

「ヒ………ヒ……… モウ ヤメテェ………」
「右腕は………関節をはずし、ソーセージ………
 そして左腕は………ぼろぎれのようにしてやるッ!!」
そう。見ると今度は、しぃの左手の人差し指の先端がターゲットになっていた。
金槌に潰され、骨は粉砕・肉は平ら
血液やら内部の液体が噴き出し、見るも無惨な状態。
「………さっきは一関節ずつ、脱臼させていったが………
 こんどは一つずつ、叩きつぶしてやる……!」
ダ ン ッ ! !

宣言通り、先程潰した人差し指の上、第二指を叩きつぶした。
指一本が完全に潰され、真っ平らになった計算になる。

ド ン ッ
ダ ン ッ
ゴ ン ッ

次々としぃのかわいらしい、その細い指に金槌が振り下ろされ、潰されていく。
日曜大工などで釘を打ちそこね、金槌が指に当たった痛みの比ではない。
何分こちらは、最初から潰すことを前提にしている。破壊力が違う。

「くそうッ! くそぉッ!! 畜生ッ!!!」
金槌を振り下ろすモララーの目から、涙がこぼれ落ちる。
「ビィィィィ!! シ シィノオテテガ 痛イヨォォォォ!! ダッコォォォォォォォ!!」
何時しかしぃのオテテは完全に潰され、ぼろ雑巾がぶら下がっているようにひらひらしていた。
そして今度は腕に攻撃を加えているわけだが、何のことはない。
しぃ族の骨など、ポッキーのようなもの  一撃で指と同じく、平らになっていく。
「何も出来ないうちに、逝っちまった!!
 俺のかけてきた苦労の恩返しを、何も出来ないまま!!
 せっかくこれから、恩返ししていこうと思っていたのに!! ぐぞぉッ!!!」
ますますの力を込めて金槌を振り下ろすモララーの脳裏には、若き日の自分が映し出されていた。
喧嘩っ早かった自分の尻拭いをするために、あちこちを奔走していた両親。
怪我をさせた相手の家、警察、学校……… ほぼ毎日のように呼び出され
ペコペコと頭を下げていた。

「畜生!! かけてきた苦労の万分の一も、恩返しできなかった!!」
ダゴォッ!! ボゴッ!! ゴボォッ!!

また、回想が蘇ってくる。
数年前、ようやくモララーも社会人となった。
喧嘩っ早かった悪ガキも、ようやく大人の仲間入り
経済的にもかなり余裕が出てきたので、何か両親にしてやろうと思っていた。
「腰痛持ちの親父のために、家族温泉旅行にでも行くかな………」
「海外好きなお袋のために、どこか外国に連れて行ってやろうかな………」
家族水入らずで嬉しそうに笑っている、桃色の家族像が映し出される。

が、そんな家族像に突如ヒビが入り、がらがらと崩れる。
その崩れた奥から顔をのぞかせたものは、実に嬉しそうに、
下卑た満悦の笑みを浮かべ、高笑いするアフォしぃ。
桃色の家族像は、一転して暗転の闇に塗り替えられた。

「うおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉ!!!」

ゴグッ!! グジョッ!! ぶしゅぅぅっ!!
骨が砕ける鈍い音、肉がつぶれるイヤな音、吹き出す血。

「ヤメテヨォ!! コ 殺サナイデヨォォ!! シ シィニハ 生キル権利ガ アルンダヨォ!?」
「人の生きる権利を平気で奪っておいて、自分だけが何を言うかぁッッ!!!」

ド  ゴ  ォ  ン  ! !

324 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:06:56 [ /bDJGCsY ]
………………

とうとうしぃの左腕は、肩まで真っ平らに叩きつぶされた。
見るも無惨、潰された腕からは血や脂肪、内部組織がグロテスクにはみ出している。

「ア……アフェア………ヘェ……ウ」
そして左腕を潰されると同時、しぃの様子が 目つきが、おかしくなる。
痛みのためか、それとも恐怖のためか…… でぃ化の前兆ではない
俗に言う、“壊れた”状態になる前兆だ。
だが、そんな状態になることを見越したように、モララーはふっ と笑うと
何かの薬が入った注射器を取り出し、しぃの首筋に注射した。
とたんに、しぃの目つきが元に戻る。
「ア………ハニャ………??」
「気がついたか? ………精神安定剤を注射してやったんだよ。
 発狂されて旅立たれちゃあ、ダメなんだよ。最後まで苦しんでもらわなきゃあ………」
「ヒ……ヒ……」
「ククク……。こいつに関してだな、俺が君に唯一感謝するのは。」
「?」
「貴様が起こしたあの事件、あれほどの凄惨さ故、かなり新聞や週刊誌に取り上げられたわけさ。
 で、変な言い方すれば、その生き残りの俺の顔も広まった。
 だから」
「ダ ダカラ何?」
「医者共は、俺が情緒不安定です なんて言やぁ、疑わずに精神安定剤を処方してくれたのさ。
 普通、強めの安定剤を手に入れようと思うと、時間がかかるモンだが………俺の場合は違ったのさ。
 何せあれだけ凄惨な事件の生き残りだ。精神的に不安定になってもおかしくない ……そう思われたんだろうな。
 疑うことなく、強めの薬も処方してくれたよ。
 まぁ生憎、俺の心はずっと貴様に対する復讐心で一杯だったから、不安定になりようがなかったんだが。」
「ソ…ソンナ………」
「というわけだ。つまり、お前は発狂という最大の逃げ道が、無くなったわけだ。
 だから最期の最期まで、存分に苦しめてやるよ………。」
モララーの眼差しは、凍り付くような負の感情に支配されていた……。

325 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:07:32 [ /bDJGCsY ]

「………さて、しぃちゃん。……お腹へったろう?」
「ハ ハニャ……?」
「あれだけ叫んだんだ。さぞ疲れて、空腹だと思うんだよ。」
「マ マア………」
「だから特別に、御馳走してやるよ………まあ、体力切れで死なれるのはゴメンだからねぇ
 で…………そうだ! 石焼き芋はどうだい?」
「ヤ ヤキイモ……? イ イイワヨ」
ほんとの所は、焼き芋なんて! とも思っていた。 でも
これ以上モララーを起こらせると………
素直に、従っておこう………
「じゃあ、ちょっと待っててね。」
モララーはくるりと向きを変えると、扉を開けて外に出ていった。


「お待たせ!」
数分後、モララーは部屋に戻ってきた
両手に少し大きめの一斗缶と、鉄のバケツを持って。
「じゃ、早速始めるよ!」
そう言うなりモララーは、いきなりしぃの右足の拘束を解く。
そして一斗缶を、そのしぃの右足がすっぽり収まるように設置する。
「……………?」 
「楽しみにしてろよ。あと少しでできるから。」
モララーは厚手の頑丈そうな手袋を両手にはめると、バケツに手を伸ばした。
「おまちどおさま。じゃあ………

喰 ら え っ ! !


モララーは、バケツの中身を一斗缶にぶちまけた。
ざぁぁぁぁっ だか がらがら だかの、何か固いものが雪崩落ちる音
そして、熱気。

「ギィエェェェエエアアアエエグアアアアア!!!!」
「時間は少しかかるけどね でも味は格別だよ?
 なんってったって、自分のアンヨなんだから!!
 石焼き芋 ………堪能あれ!!」
そう、モララーがぶちまけたバケツは、真っ赤に焼けた小石が満杯に詰まっていたのだ。
それが今、一斗缶の中のしぃの右足を焼いているのだ。

「ア アヅィィィィィィ!! イ イヤァァァァァッ!!」
冷や汗か、熱気の汗か? しぃは汗だくになりながら右足を
真っ赤に燃える石の山から出そうとあがく。だが所詮、しぃの貧弱な脚力。
石がぎっしり詰まった一斗缶の中で動かそうにも、ままなるわけがない。

おそらく今、しぃの右足は、真っ赤に燃ゆる石によって
その純白の、ふわふわした美しい毛皮が焼かれているだろう
その下の細く、柔らかくしなやかな筋肉もじきに焼かれるだろう
最後には、骨まで達するか?
白い煙がもうもうと登り始めた。

326 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:07:58 [ /bDJGCsY ]

「石焼きは、じっくりと、じっくりと熱を通すから、早々簡単には終わらんぞ……」
そうこうしているうちに、黒い煙も混じってきたようだ。
じりじり、ぶすぶすと、肉を焼き焦がす音がする。
「一種の予行演習だな。地獄の業火に焼かれる前の、よお?
 いやいや、煉獄か……?」
「ナ 何言ッテンノヨ!! シィチャンガ地獄ナンカニ堕チルワケガ ナイデショ!!」
「何……?」
「シ シィチャン達シィ族ハ! 生マレタトキカラ ズーット マターリノ神様ニ マモラレテイルノヨ!!
 ダカラシィチャンハ死ンダラ マターリノ国ニ イケルノ!! 地獄ナンカニハ 堕チナイノ!!」
「……自分が『マターリ』できなかったから、他人の『マターリ』を奪った。
 そんな貴様が、その『マターリの国』に行けるとでも思っているのか………?」
「何言ッテンノヨ!! シィチャンノマターリハ 神様ガクレタモノナンダヨ!! 
 ダカラシィチャンガマターリデキルノハ 当然ノコトナンダヨ!? 
 シィチャンハマターリスルタメナラ 何ヲヤッテモ許サレルノ!! 神様ガ許シテクレルカラ 何ヲヤッテモイイノ!!」
モララーはそれを聞くやいなや、棚に手を伸ばした。
棚にあったタバスコを掴むと、ふたを開けて一気に焼け石の上に振りかける!!
一瞬でタバスコは蒸発し、気体となってしぃの目や鼻に襲いかかった。
「イ 痛イィィィィ!! オメメガァァァ!! オ オハナガァァァ!! ギャアァァァァァ!!」
「貴様はイスラエル人か!? ユダヤ教徒か!? 数世紀前の白人か!?
 ……その腐り果てた選民思想、叩きつぶしてやるッ!!」
モララーは驚くような速さで立ち上がると、立てかけてあったノコギリを手にした。
そしてまだ無傷の左足に目を向けると、ノコギリで一気に引き裂きにかかった!
「うがあぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁっっ!! があぁぁっっ!! がぁっ!!
 ぐるあぁぁっ!! ごらぁっ!! ああぁぁぁぁっ!!」 
激情でその目を真っ赤に染め、獣のようなうなり声を上げて
縦に横に袈裟切りに 13日の金曜日顔負けに、ノコギリを振りまくった

しばらく斬りつけると、モララーの手が止まった。
疲れたのか? ……否! そうではない!
モララーはゆらりと立ち上がると、その耐熱手袋をはめた手で
しぃの右足を苛んでいる焼け小石を数個掴むと
しぃの左足の、たった今引き裂いた、骨まで達している新鮮な傷口に押しつけた!!

「√ ̄\/ヽ/Wヾ√ヽ―――!!!!!」

もはや声にならぬ悲鳴を上げ、口をぱくぱくさせるしぃ。また、目つきが怪しくなる
そしてその声で正気に戻ったのか、ハッとなったモララーは
即座に安定剤を注射。しぃはまた地獄の苦痛に呼び戻された。
「さぁて……… いよいよ俺の復讐も、クライマックスだ。
 最期は、別の場所だ………。」
しぃの拘束を解き、右足を焼け石からひっこぬくと
モララーはしぃの首根っこを掴み、部屋を後にした。

327 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:08:34 [ /bDJGCsY ]

「逃げたいのなら、いつでもどうぞ。」
しぃをあざ笑うように、モララーが言う。
右腕はソーセージのようにねじられ、左腕はぼろ雑巾のように潰され
右足は骨が見え、肉が炭化するまで焼かれ、左足は同じく骨が見えるまで引き裂かれ、焼かれている。
………こんな体で、逃げれるわけもない。

「『それ! まずは基本の耳もぎだ!』『シィィィ! シィノオミミーー!!』
 『次は手もぎだ!』『シィノオテテーー!!』
 『くらえ! 足もぎ!』『シィノ アンヨーー!!』 ……か
 フン……。よく、こんな生ぬるい方法で満足するもんだな………。
 もぎ取ってしまったら、痛み 苦痛は一瞬じゃないか……。
 十分に苦しめることが、できないじゃないか……
 ………ま、俺のやってることも、それの延長に過ぎないんだがな………。」
モララーは、扉を開けた。
キッチンだ。

(もう……料理を作ってくれる家族は………一人も………いないんだよな…………。)
そしてモララーは、テーブルの上にしぃをどさりとのせる。
しぃの目に、無造作におかれた包丁が入る。
「………別に包丁使って、解剖しようなんて思っちゃいねぇよ。」
モララーは鍋を持ってくると、調理台の上に乗せる。
「水攻めだ。……あの中には、ご想像通りのモノが入っている。水だ。
 さて、これからあの中に顔を沈めるわけだ。………どうなると思う?」
しぃは、水攻めのことは知っていた。
友達のしぃが、土手で遊んでいたときに虐殺厨に捕まって
川に顔を沈められていた。
しばらくバタバタして、動かなくなっちゃった………。

モララーは、しぃの首を掴んだ。

あ 『水攻め』にあうのかな……
でも、いいや。これで死んだって
今までのやつみたいに、痛そうじゃないもん
ちょっとは苦しいだろうけど、でも、ちょっとの我慢だよね
ちょっと我慢したら、マターリの国に行けるんだもん………

「…………お前、何をそんな穏やかな面してやがる……?
「エ ダッテ……」
「お前まさか、こう思ってるんじゃないだろうな。
『水攻めなら、痛くなくて、比較的楽だ』………なんて。
 ………コレを見ても、そんなことが言えるかな?」
モララーはしぃの首を掴んだまま、調理台の鍋の所まで運んでいった。
そこでしぃは初めて、鍋の中身とご対面したわけだが………

たしかにそこには、“水”が入っていた。
いや、“水”と呼ぶべきか? 確かに化学式は、H2Oなのだが……
グツグツと煮えたぎり、ぼこぼこと泡を立てて沸騰している
やはりこれは、“熱湯”と呼ぶべきだろう。

呆気にとられた表情の顔をしたしぃの後頭部を
おなじみの耐熱手袋をつけてしっかりと掴む。

じゃ、逝こうか。

ド ボ オ ッ ! !

328 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:09:29 [ /bDJGCsY ]

「ギャブブブブブブッ!! ボゴォォッ!!」
押さえつけられている首を必死に動かそうとして、もがく様子がモララーには伝わってくる。
「苦しめェ……苦しめェ……苦しめェッ!!」
押さえた頭を握りつぶさんばかりの力を込め、ぐいぐいと熱湯の中に押し込む。

一方のしぃも、それはたまったものじゃない。
熱湯の焼ける痛みと、呼吸が出来ない窒息感が相成れば当然だ。
痛みとパニックで激しく泡 息を吐き出し、それで余計に呼吸が苦しくなる。そしてパニクる。悪循環だ。
そしてパニックから、思わず熱湯を飲んでしまう。

食道が焼けただれていくような感触の中、しぃは熱湯から引き上げられた。
ああ。つけられる前なら(セフレとして)ギコが寄ってきたかも知れないその顔は
顔中が真っ赤、醜く火ぶくれを起こし、見る影もない!
さらりとした毛並みもまだらに抜け落ち、どこのキモオタが寄ってくるかという感じだ。

「見事に、ゆであがったっつー感じだな。」
しぃの火ぶくれした顔を、安物らしい目の粗いタオルで乱雑に拭く。
「ビ ビィィィィ バヴェデェェェ!!」
紙ヤスリで火傷の跡をこすられるような感触に、動く首を必死に振って悶える。
「うるせえなぁ………! まだ前戯だぞ……!? ガタガタ騒ぐな!
「ベベ!?」
「これ一発でしとめるつもりなら、最初から沸騰させた油でも使って
 貴様の顔面を唐揚げにしてた、さ。………でも、それじゃあだめだ。
 貴様には、さらなる苦痛を与えてやらんとな……!!」
モララーは、熱湯鍋をよそにどけると、別の鍋を手に取った。
今度はレンジの火にかけたまま。
「これで、最期だ。」
モララーにまた首筋を捕まれると、しぃは火ぶくれしたまぶたを必死に開ける。
鍋の中身は……銀色の……液体……? 何……?

それでは生涯最期のお楽しみだ。

“鉛”の海に溺れてしまえ!!

ザバァッ!!

329 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:09:54 [ /bDJGCsY ]

確かに、鉛は融点のさほど高い金属ではない。
でもね、温度が低いのは、苦しませるのに最適なのさ
仮にこれが、溶けた鉄だったとしてみると
鉄って溶けると、1500度にもなるんだよね
そんなマグマ並の温度の中に顔突っ込んでみろよ 即死でないにしても、すぐに死ぬだろ。
だから低い温度で溶ける鉛は、最適なのさ。
それに温度が低い低い って言っても、数百度もあるわけだからね

事実、顔を鉛の中に突っ込まれたしぃは、かなり激しく
丘に打ち上げられた魚のように体をのたうたせ、暴れている。
一度焼かれた皮膚がまた焼かれ、またしてもの窒息感………
しかも、前回の比でない。

と、しぃの後頭部を押さえつけていたモララーが、異変に気づいた。
泡が、しぃの呼吸の泡が立たなくなったのだ。
窒息死したか? しかし、首筋に左手をやると、脈を感じる。
………………??

不思議に思ったモララーは、しぃを液体鉛から引き上げた。
原因は、すぐに分かった。

しぃの顔全体に、突っ込んだ際にしぃの顔の表面温度で冷やされたのだろう
固まった鉛がこびりついて、まるで鉄仮面のように顔全体を覆っていたのだ!
まぁ、口の部分は息の泡のせいで少し固まらなかった部分があるみたいだが
ヒュー ヒュー と木枯らしのような呼吸音。
「クククク。いいざまだなぁ ええ!?
 今のお前に、何が見える? マターリの国か? 神様かぁ!?
 ………んなもん見えるわけがねえだろ! 今のテメエに見えてるのはなぁ………
 闇……底知れぬ地獄への入り口なんだよ!!! 死ねぇッ!!」
モララーはしぃの『胴体』を掴むと、今度は何と!
垂直落下式に鍋の中にしぃの頭を全て、突っ込んだのだ!
先程引き上げられ、空気中で冷やされた鉛仮面は
溶けることなく、より一層周りの鉛を固め、分厚くなっているであろう。
要するに復活は、ありえない……。

先まで無事だった後頭部や耳まで焼かれ、しぃはその体を一層震わせる。
頭を無駄に動かすは、苦痛を少しでも和らげようとする意味か?
愚かな。体を動かせば、その分苦しみがますだけだというのに!!

思い知れ! 思い知れ! 思い知れ!
そして十分に思い知ったら……… 


死  ね  ッ  !  !  !

330 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:10:13 [ /bDJGCsY ]

……………………………………
しぃが、静かになった。
頭を動かすことも、体を震わすことも、
そして、脈拍も………

モララーは、鉛の海からしぃの頭を引き上げた。
耳や後頭部まで固まった鉛はこびりつき、フルフェイスヘルメットのようになっていた。
というより、顔全体が鉛色のボール。
モララーはしぃの体から手を離すと、その場に座り込んだ。

これで、終わったわけか………
この、救いがたいゴミクズへの、復讐が………
やっと………やっと………………………

モララーの目から、涙があふれ出した。
止めどなく、まさに滝のように………

331 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/28(月) 20:11:33 [ /bDJGCsY ]

「みんな。見ててくれたかい?」

モララーは、3人の遺影に向かって話しかける。
「あんなゴミクズに殺されて、無念だったかと思うけど……
 まぁ、しっかり引導を渡してやったよ。ハハ。
 あ、そうだ。これ見てくれよ。」
モララーはごそごそと、何かを取り出す。見るとそれは
半分に割られてはいるが、あのときしぃの顔面についていた鉛の仮面だった。
「内側を見て欲しいんだ。ほら!」
モララーは、仮面の内側を遺影に向ける。
そこにはしぃの、苦痛に満ちた表情がデスマスクのようにハッキリと写し取られていた。
「すごいだろ? 鉛がこびりついて偶然出来たんだろうけどね………」
ハハハ と一人で笑うモララー。
「……それじゃあ、俺は出かけるよ。また、帰ってきてからね。」
モララーは意気揚々と、会社へと出勤する。
その軽い足取りは、事件が起こる前よりも晴れ晴れとしたもののように見える。
彼の傷は、癒されたのか?
復讐を果たして、彼の傷は完全に癒されたのだろうか?
いや………

「………ん?」
歩くモララーの前に、白い物体が立ちふさがる。
「モララー! 命ガ惜シカッタラ コノシィチャンニ何カ(ry」
「アフォ……しぃ………? !」
突如、彼の頭の中が真っ白になる。

「……? ナニヨ!? サッサトダシナサイヨ!」
「……………。あ、いやぁ 悪い悪い!
 でも僕、こんな可愛いしぃちゃんを見たのは、初めてだなぁ……
 良かったら、おいしいレストランを知ってるんだけど、どうかな? もちろん奢るよ!!」
「フン! マ モララーニシテハ 上出来ネ! サッサト案内シナサイ!」
「ははは………」

このあとの彼の行動は、言うまでもないだろう



         フラッシュ・バック



すべてのしぃが、家族を奪ったアフォしぃに見える。

彼の傷は、まだまだ癒されていない。
これが治るは、いつの日か………

                  end