アイドルおばさんと化け物王子(♀)。 2「アイドルおばさん、『化け物王子』と友達になる件。後編」

Last-modified: 2017-12-05 (火) 00:43:35

小説1-2 い表紙 完成.png

※この物語はあくまで2016年のアイカツスターズのマイキャラのお話です。DCDの方とアニメの方の時系列を調整してるので時系列がちょっとずれてます。
(しつこいようですが)マイキャラの設定上対立コンテンツの話が入っています。伏字にしますが敏感な方、そしてマイキャラの話が苦手な方は閲覧をお控えください。またこの物語はアイカツっぽさはあまりありません。そして長いです。すみません…

 

*前編の超簡単なあらすじ(あくまで超簡単に描くので詳しく知りたい方は「「小説1-2 前編」」を見てください。(注)長いです)*

 

四ツ星学園で午前中は事務員として働き、午後は「月の美組」の幹部補助員(半分生徒、半分職員扱い)として幹部の仕事の手伝いをしながらアイドルをしているアラサー一歩手前のおばさんMixA(ミカ)。はあることがきっかけで遭遇した自分の追っかけファンであり画家(美人画絵師)でもある四ツ星学園、鳥の劇組の弦田 流寧(ツルタ ルネ)と友達になりたいと思ったのだが、自由奔放で超マイペースな為孤独?な日々を送っていたMixAは友達の作りかたを知らなかったため、自分がMC?を務める大人向けアイカツ広報番組「4☆Night」の「天の声」でもありディレクター(兼プロデューサー)の「てんちゃん」に思い切って相談してみたところ、「てんちゃん」から(数少ないMixAのファン向けのカオスな動画)「4☆Night えくすてんでっと!(通称 『えくすて!』)」の番組の企画として何か教えてもらったようだ。
そしてその翌日、MixAは流寧と会う約束をしていたので流寧のアトリエ部屋と化しつつある四ツ星学園の美術準備室へ向かったのだが……

 

「走り込みの際に転んでしまって…… 保健室に誰もいなかったので自分で手当てしてみたのですが……」

振り向いた流寧の顔は左半分の皮膚がなくなっていた。まるで人体模型を彷彿させるかのように顔の筋肉がむき出しになっており傷口の血の固まり具合が生々しく感じる。
顔の皮膚の半分がなくなっているであればかなり痛い……というか病院に行かないといけないはずなのだが、流寧は痛そうにしながらも淡々と話し狂気に満ちた表情を見せMixAをじっと見ていた。

「え、マジで? 病院行かなきゃダメじゃんか…… 応急手当できるやつどこ行ったかな、家に忘れてきたかも」

半分皮膚がなくなった流寧を見たMixAは、一瞬何が起きたか分からなくなっていたが、流寧の話を聞き自分の学生鞄から救急車を呼ぶためのスマホ…… ではなくなぜか「救急セット」を探していた。その表情は若干焦っている。

「あー… ない。なんで持って来てないんだよ、アイドルの卵の顔が大変なことになってるのに……」

そういうとMixAは今度はありあわせの物でどうにかできないかスマホで検索しだした。

「『顔 怪我 応急処置』…… あー… やばい、鞄に入ってるやつで出来るやつないじゃん……」

スマホに文字を入力する指の動きと学生鞄の中を必死にまさぐっているMixAの表情からしてかなりあたふたしているのが見える。

(怖がらせるどころか心配をかけさせてしまった…… この「化け物」は失敗のようですね……)

それを見ていた流寧はさすがに申し訳なさを感じたのか一気に「人間」にもどってしまいMixAに「ネタばらし」をすることにした。

「あの…… 騙してしまいすみません、実は痛くないんです」

「へ?」

「MixAさんを怖がらせたくて、顔の皮膚が無くなったようなフェイスペイントをしていたんです。ご心配をおかけしてしまいまして申し訳ありませんでした」

流寧は椅子から立ち上がり、頭を下げていた。長い黒髪で表情はうかがえないが申し訳なさそうな声をしている。

「もぉ…… 心配したじゃんか。 化粧だったんだ……」

流寧の発言を聞きほっとしたMixAは流寧の化粧が気になったのか、学生鞄からメガネケースを取り出しそこからメガネを出し着用する(MixAは裸眼でのアイドル活動には支障はないのだがかなり近付かないと細かい物が見えづらい程度に視力が悪いため事務員としての仕事やOFFの調べもの等にはメガネをしている)と流寧の隣に置いてあった椅子に座りそこから頭を下げている流寧をじっと見る。

「立って頭下げてたら化粧が見えないよーー、座って顔上げてみて。ちゃんと化粧見たくてメガネしたから」

「えっ……」

「心配かけることしちゃだめだよ、ほんっとに心配したんだから」

「ご、ごめんなさい……」

穏やかに話しながらもちょっぴり怒っていたMixAの発言を聞き申し訳なさそうに顔を上げ、MixAの隣に置いていた自分の椅子に座った流寧の顔をMixAは好奇心に満ちた顔でじっと見ている。「追っかけをするほど好きなアイドル」のなかなか見られないレアなメガネ姿に見つめられた流寧は冷静さを保ちながらも流寧の部分の顔は興奮からかほんのり赤く染まっていた。

「うわーー、すごい。化粧でこれだけ描けるのか…… よーーく見たら絵なのわかるけどパッと見たらビビるね」

「あ……、ありがとうございます」

「追っかけをするほど好きなアイドル」に自分の作品を褒められ嬉しそうに、そして恥ずかしそうにしていた流寧をMixAはまるで子どもが初めての物を見るかのような目で見ていた。
顔の筋肉の部分がかなりリアルで流寧がしゃべるとまるで顔の筋肉が動いているように見えて面白いのか、MixAは子供のように夢中になって流寧の顔を見ている。

「皮膚の下ってこんな感じなのかな…… 面白いなあ……」

自分の「化け物の顔」を子どものように夢中になって見ているMixAを不思議に思ったのか流寧はあることを聞いた。

「あの……、この顔怖くないんですか?」

「ちょっとびっくりしたけどね」

「そ、そうなんですか……」

「あ、そうだ!あたし流寧ちゃんに聞きたかったことがあるんだったわ」

始めは怖いという感情よりも流寧の顔を治さなければと思っていたので若干驚いたが、まじまじと見ていると造形の凄さに驚いていたMixAはそう答えた。そしてMixAは一昨日答えが聞けなかった「あの質問」を流寧にぶつけてみることにした。

「流寧ちゃんはなんで仮面してお化けみたいになったり今みたいに皮膚の下みたいな化粧したりしてるのかなーーって。怖がらせたかったってさっき言ってたけど……、なんで?」

「あっ…… それは……」

MixAから「化け物」になる理由を聞かれた流寧は質問の答えをどう答えればいいのか結局2日間ずっと考えていた、というかMixAを怖がらせる方法を考えることにウェイトを置いていたので結局どう答えればいいのか分からなかったので戸惑っていた。戸惑っている流寧を見たMixAは「てんちゃん」から『えくすて!』で言われたこと(後述)をとっさに思い出したのか、少し考えた後こう答えた。

「ごめん…… 無理して言わなくてもいいよ」

「……」

「でもお化けみたいになったり今みたいに怖い化粧したりして怖がらせたい!って頑張ってるところ、いいなって思う。面白いなあって思うし」

MixAはちょっと恥ずかしそうにしながら流寧を誉めた。家族や一部の使用人以外に「化け物」としての姿を何度も誉められたことがなかった流寧はすぐに『「化け物」になる理由』を答えられなかったのが申し訳なく感じたようで、うつむき加減で考え事をしていた。

(せっかくMixAさんが褒めてくださったのに、答えられなかった…… そういえば一昨日も褒めてくださったのに……) 

流寧は一昨日初めて流寧が「化け物」の姿をMixAに見られた際に、そして今日も「化け物」の姿にも関わらず楽しそうに話しかけてくれるMixAに対して「化け物」のことを隠していることが申し訳なく感じていた。

(この姿を喜んで下さるならこの姿に扮する理由を答えないと失礼になる…… もしそれで引かれてしまって二度とここに来てくれなくなっても……)

流寧はMixAに自分をほんの少しでも知ってもらいたいという気持ちが芽生えたのか、恥ずかしそうにしながらも顔をあげ少し真剣そうな顔で口を開いた。

「人を脅かすのが好きなんです」

「へっ……」

「脅かした人が怖がってくれると嬉しいんです。怖がって欲しいからフェイスペイントや仮面で妖怪に扮したりしているんです、この姿のアタシは『化け物』なんです……」

「化け物」の事をMixAに話した流寧の顔はMixAに引かれてしまうのではないかという気持ちとMixAに嫌われてしまうのではないかという気持ちで不安そうに、そして寂しそうな顔をしていた。

「だから言ったじゃんか、無理して言わなくてもいいって……」

数分程うつむいて考えるほど悩んでいた流寧を見ていたMixAは流寧がなぜお化けのようになるのかをMixAなりに理解した。そしてMixAは引くどころかもっと流寧に興味を持ちもっと友達になりたいと思ったのだが流寧が寂しそうな顔をしているのがどうしてなのか分からなかったのか「てんちゃん」からもらったアドバイス(後述)を思い出して少し考えた後流寧に自分の気持ちをはにかみながら伝える。

「ファンに悲しい顔させるのはアイドル失格だなあ…… 困ったな、あたしは流寧ちゃんのことすごいなーーって思ったんだけどなーー」

「え?」

「だってさ、流寧ちゃんって人間のお化け(なんか違う)なんでしょ? すごいじゃん」

「あっ…… その……、人間のお化けじゃなくて……」

「え? 違うの? じゃあ…… 人間の…… 妖怪?(それもなんか違う)

「違います、『化け物』です…… ククク…… ククク……」

流寧はMixAなりの(なんか違う)解釈をすぐ訂正したが、MixAの解釈が面白かったのか「化け物の顔」も流寧としての顔も笑っていた。それを聞いていたMixAは、流寧が若干怖い笑い声で笑っていたを見て嬉しそうにしながらも、流寧からの訂正を素直に受けとめ、謝罪する。

「『化け物』か…… ごめんごめん」

「ククククク…… この姿を褒めていただいて嬉しく思います、お話してよかったです」

「あたしも流寧ちゃんが笑ってくれて嬉しいよ、ファンには笑顔でいてほしいから」

「MixAさんのファンでいてよかったです」

「もぉ、恥ずかしいって……」

MixAはアイドルとして、そしてMixA個人として「追っかけをするほど好きなアイドル」に「化け物の姿」が受け入れられた流寧の笑顔を見てとても嬉しそうに、そしてファンからの「ファンでいてよかった」という発言でとても恥ずかしそうにしていた。笑顔になった流寧の顔を見て、MixAはあることを思いついたようで……

「ねぇねぇ写メ撮ろうよ、その化粧落としちゃうんでしょ?」

「そ、そうですね…… いいんですか?」

「うん、一緒に撮りたい。 ブログにも載せないしネットにもあげないから、お願い!」

「わかりました! アタシでよければ……」

「よっしゃ、ちょっと待ってて」

MixAは流寧の「化け物の顔」と一緒に写メに撮っておいて「友達と撮った写メ」として個人的に大事にしておきブログにも他のネット媒体にも一切あげず、宝物にしたいと思っていたので流寧におねだりする。そんな風にMixAが思っていることを知らない流寧は「大好きなアイドルとの写メ」として一緒に写ることにした。MixAはメガネを外しメガネケースにしまうとメガネケースをしまった学生鞄から左利き用のビビッドピンクの手帳型スマホケースを付けたピンク色のスマホを取り出し、カメラの準備をしながら流寧の隣に寄る。流寧の隣に寄ったMixAは、部屋からだけではなく流寧からも香る「さっぱりとしたバニラの香り」を嗅いでにっこりとしている。

「甘い香りするね。部屋からも流寧ちゃんからも」

「お香なんです…… オーダーメイドしてもらっていて」

「いいじゃん、バニラの香りと柑橘系の感じが大人っぽいなーーって思うし」

「本当ですか? ありがとうございます」

「さっぱりとしたバニラの香り」を誉められた流寧は嬉しそうにしていた。匂いの話になり思わずMixAの匂いを嗅いだ流寧はMixAから塗り薬のにおいがしたのが気になりMixAの体の不調なのではないかと心配そうに尋ねる。

「そういえばMixAさん、塗り薬のようなにおいがするんですが……」

「あはは…… 今日走り込みしすぎちゃって、明日筋肉痛やだなあって思って塗り薬塗ってたんだ。一応フローラルの香りのやつにしたけど、やっぱり臭いよね」

MixAは流寧の質問に対しちょっぴり申し訳なさそうに答えた。そして「てんちゃん」からもらったアドバイス(後述)を参考に、照れながら話す。

「流寧ちゃんとなにしゃべろうかなーーって考えて歌いながら走ってたら走りすぎちゃったよ、走りながら歌うのも楽しくてつい……」

「さっきの歌声、やっぱりMixAさんだったんですね!」
「聞こえてたの!?」

MixAは流寧に歌声を聴いてもらえたのが分かって嬉しそうにしている。それを見た流寧はMixAの質問の回答にやっぱり……と思い、先ほどのMixAの歌声を思い出して笑顔になっていた。

「ええ、聴こえてました。聴いていてなんだか話しかけられている気分になって…… 危なく『人間』に戻るところでしたよ」

「ごめんごめん…… でも歌ってよかった、流寧ちゃんが笑顔になってくれたから」

ピピッ

「へへへ…… 撮っちゃった」

流寧の笑顔を見逃さなかったMixAは即座にスマホの液晶のカメラのマークを押した。MixAのスマホの液晶には嬉しそうな表情のMixAと「化け物の顔」と流寧としての顔、どちらの顔も笑顔の画像が映っていた。笑顔の2ショットが撮れたからかMixAは嬉しそうに流寧に自分のスマホに保存された画像を見せると流寧も嬉しそうな表情を見せる。

「いいですよ、MixAさんが喜んでくだるなら…… あ、もう1枚撮りませんか?」

「いいよーー、どんなポーズする?」

「MixAさんは好きなポーズ取って下さい、ただ良いと言うまで目をつぶっていてくださいね」

「えーー、どうしようかなーー 無難にピースにしようかな…… あ! 目つぶらないと」

「ククク……」

MixAは無難にピースをすることにして、流寧の指示通りに目をつぶる。流寧はというと、どうやら「化け物」として写りたいらしく、怪しい動作を取る。

「いいですよ、目を開けてください」

「どれどれ…… うおおおお、すごい」

ピピッ

MixAはカメラのマークを押した。そこには笑顔でピースをするMixAと、心霊写真の如くMixAの肩から見切れるように映っている「化け物」が映っていた。

その画像を確認したMixAは、「化け物」が映っているのにも関わらず、とても嬉しそうにしている。

「よっしゃ、『化け物』ちゃんとも撮れたーー」

「喜んで下さって嬉しいんですが、『化け物』は人間を怖がらせる存在であって人間を笑顔にする存在ではないんですよ……」

「へへへ、ごめんごめん。あ、普通のスマホで写真撮っちゃった…… 画像送れないじゃん、流寧ちゃん『アイカツ!モバイル』しか持ってないよね」

「大好きなアイドル」と写メを撮れた嬉しさと同時に怖がってくれないMixAに対して若干の悔しさを滲ませる「化け物」を尻目にMixAは普通のスマホで写メを撮っていたことにようやく気付き、学生である流寧は「アイカツ!モバイル」しかもっていないのではと思い流寧に聞いてみると、流寧は机の下に置いていたデフォルトのキーホルダーがすべて外された代わりに明らかに高そうなメンズ物のシルバーの特殊な形のクロスのチャームと黒革のストラップがついたバックチャームが1つだけついている学生鞄からアイカツ!モバイルではない高そうな黒革の手帳型ケースを付けた「黒いスマホ」を取り出す。

「スマホですか? 持っていますよ。絵師としての仕事の情報伝達の為学園から所持許可をいただいているんです」

「マジで? じゃあ『アレ』教えてくれる? 画像加工してあとで送りたいし、またここに遊びに来るとき連絡したいし」

「え? いいんですか!?」

「うん、いいよ。てか時間見たらもうすぐ17時じゃん…… もっとしゃべりたかったなーー」

マゼンタピンクが奇抜な小悪魔系の柄が可愛らしいMixAのスマホの待ち受けの時計表示には「16:55」と表示されていた。今日も定時に帰らないと面倒なことになるため、あと5分で「時間切れ」である。流寧ともっともっと話したかった為「時間切れ」が惜しかったMixAは子どもの様にちょっぴり拗ねているような顔をしている。そんなMixAの顔を見た流寧は(か、可愛い……)と思いながらもMixAを冗談?混じりで宥める。

「また遊びに来てください、来る際には連絡して頂ければまた『化け物』に会えるかもしれませんよ?」

「むー… わかった、じゃあ教えて」

そういうとMixAは先ほどまで座っていた椅子に座り若干拗ねながらも自分のスマホを操作したあとスマホを正面に差し出すと、流寧も拗ねているMixAを見ながら先ほどまで座っていた椅子に座り自分のスマホを操作すると、それをMixAのスマホに近づける。
お互いのスマホにお互いの情報が出てきたのを確認すると、二人ともスマホをいじり、お互いの情報を登録した。

「あとで画像送るから」

「楽しみに待っていますね」

PPPPPPPPPPP……

二人のスマホにお互いの情報が入ったのを見計らったかのようにMixAの「アイカツ!モバイル」から定時のアラームが鳴り響いた。MixAはそれを聞くと寂しそうな顔をしながら学生鞄の中の「アイカツ!モバイル」のアラームを止め、自分のスマホを学生鞄にしまうと、学生鞄を肩にかけてちょっと寂しそうに流寧のことを見ている。流寧もどことなくちょっと寂しそうにしていたが、MixAに悟られないようにうっすらと笑顔を浮かべていた。……が

「次はいつ来れるかまだ分からないから来れるときは連絡するね! あっ、あたし流寧ちゃんに言いたいことがあるんだった」

「何でしょうか?」

「あのね、あたし流寧ちゃんと友達になりたいんだ」

大事なことを言い忘れていた事を思い出したMixAははっとした顔になるとちょっと恥ずかしそうにしながら流寧に「友達になりたい旨」を伝えた。それを聞いた流寧の顔はは面をくらったような表情をしていた。

「友達…… ですか?」

「うん、友達になりたい」

「あ、あの…… 友達というのは…… なんでしょうか…… 」

友達という物がなにか分からなかった為返答に困った流寧は困った顔で申し訳なさそうにしながらMixAに質問をするが、MixAも友達というものがよく分かっておらず、若干焦っていた。

「え、えっと……、次遊びに来るまで考えていい?」

「は、はい。 分かりました」

「やばい、急がないと…… じゃあね流寧ちゃん、またね」

そういうとMixAは流寧に手を振ると流寧も「お疲れ様です」と言い小さくお辞儀をすると笑顔で小さく手を振った。それを見て焦りを忘れ笑顔になったMixAはまた急いで小走りで帰って行った。
MixAが小走りで帰っていく足音が聞こえなくなった瞬間、流寧は「大好きなアイドルと一緒に写メを撮り、『アレを教えてしまったどこか友達?になりたいと言われた」という喜びと興奮とほんの少しの困惑でまた顔がゆで蛸のようになり体が固まってしまった。
その数分後おもむろに学生鞄から「父親が経営している化粧品会社のメイク落としのシート」を出すと何枚も使用しながら「化け物の顔」を流寧の顔に戻していた。
そして完全に流寧の顔に戻った後今回は自分の寮室で作品を仕上げたいのか、準備室の隅に置いていたコンパクトサイズの漆塗りが綺麗な黒のお香ケースの中に入っている高そうなお香立ての中のお香の消火を確認するとお香ケースのふたを閉じ、学生鞄に入れ学園の寮に戻った。
……が寮にもどった後は数分ごとにスマホをチェックしていた。どうやらMixAからのメールを待っている様子。

 

(すごく緊張して絵が描けない、ドキドキする……)

本だらけの机の上には描きかけのキャンバスと使い古しで絵の具のシミがカラフルについているパレット、そして絵の具と筆、水入れバケツが置いてあったがなぜかどれも今日は使われていなかった。椅子の上で机に置いてある描きかけのキャンバスではなく「黒いスマホ」と向かい合う流寧の顔はゆで蛸…… とまでにはいかなかったが顔が赤くなってしまっている。
そんなこんなで何度も描きかけの絵とスマホを交互に見ているうちに食事の時間になってしまい、「黒いスマホ」をMixAのファングッズ置き場になっている机に置いてある充電スタンドに置くと食堂へ向かいドキドキしながら一人でなぜか何かに自分の存在を気づかれないようにこそこそと夕食を済ませた(ちなみに流寧が食べたのはから揚げ定食)。流寧は緊張のあまり食事が喉を通らなかったが食堂で食べている他の学生に不審がられたくなかったからかゆっくりだが完食した。

夕食を済ませた流寧は、自分の寮室に戻りスマホを確認すると、「新着メール 1件」と待ち受け画面に表示されていた。それを見た流寧はドキドキしながらメールをチェックする。

【こんばんは☆ 加工しようと思ったけどやっぱりやめた! 加工したら流寧ちゃんの化粧台無しだもん】

そう表示されたメールの下には加工されていないMixAと撮った画像が2枚添付されていた。そしてその上には

【『みっくす!』と『えくすて!』見れたらでいいから見たら感想教えてね☆」】

と書かれていた。さらにその下には

【友達って何なのかちゃんと考えてるよーー】

と表示されていた。

(凄く嬉しいけど…… ど、どう返信したらいいんだろう……)

普段仕事と家族や使用人への連絡以外でメールを使用しない為MixAからのメールを返信する文章はどうしたらいいのか分からなかった流寧は右手にスマホを持ち、顔をゆで蛸にしながら数分ほど固まっていた。
そしてそのまま流寧はMixAにメールを返信できないまま「4☆Night『みっくす!』」と「4☆Night『えくすてんでっと!』」を見ることとなった。

 

☆金曜日の午後…☆

【お仕事お疲れ様です! 台本受け取りました。『アイカツ★アイランド』で「4☆Night」は何するかまだ内緒なんですね…】

昨日塗った「フローラルの香りの塗り薬」のおかげでなんとか筋肉痛を免れたMixAはいつも通りの若干濃い化粧に今日は梅雨時の雨で寒かったのだろうか、薄手の黒いカーディガンに白いブラウス、黒いタイトスカートにストッキングと黒いシンプルなハイヒール、そして(度がきつい)ピンクの金属フレームがキラキラ可愛らしいメガネという装いで四ツ星学園の職員室で事務仕事に打ち込んでいた。
今日は週2日ほどの一日中事務員としての出勤のためアイカツが出来ないため体が動かせずずっと座り仕事なのだが、仕事をさくっと終わらせ事務担当の上司からの次の仕事の指示まではアイカツ関連についてのメールのチェックや印刷等を許可されているため、MixAは職員用のデスクトップPCのメールから「てんちゃん」から届いた「台本」付きのメールをチェックし、「台本」を職員用のコピー機で印刷しチェックしながら「てんちゃん」宛ての返信メールを打っていた。

(「てんちゃん」大事なことギリギリまで言わないからなあ… まぁ「みっくす!」も「えくすて!」も最初から視聴してる感じ支障ないっぽいし、あたしもなんとかちゃんと出来てるしいいや)

MixAは「てんちゃん」に若干困りながらも収録や自分で視聴した「みっくす!」や「えくすて!」で今まで何もトラブルが無く、MixA自身もなんとか付いていけているためすぐにマイペースさを取戻したのか、気にすることをやめた。
事務員用の椅子に座り自分のデスクに置いていた薄ピンクの薔薇柄のマグカップに注いでいたカモミールのハーブティーを美味しそうに飲みながら台本を読んでいる(台本といっても数枚のプリントにざっくりとした収録予定とざっくりとしたトークテーマ(予定)が書いてあるだけなのだが)と「てんちゃん」からすぐメールが届いた。

【何もしないかもしれないですよ… とりあえずトークの方考えておいてくださいね。MixAさんが情報提供してくれた『アイカツ★アイランド』の情報に基づく予定なので改めて資料チェック等お願いします。】

トークテーマについてざっくりと考えながら「てんちゃん」からのメールを読んでいたMixAは、やけにメールのスクロールが長いことに気づく。「?」と思いつつ空欄しかないメールのスクロールを下げた一番下には一言だけ記載されていた。

【ところで、友達になりたいって子と友達にはなれましたか?】

その一言を読んだMixAはぎくっとしていた。確かに昨日MixAは流寧と『アレ』を交換したり一緒に写真を撮ったりしていたのだが流寧からは昨日送信したメールの返信が来ず、MixA自身も流寧と友達になれたのかどうか全く自信がなかった。そしてMixAは流寧に聞かれた「友達とは何か」ということを昨日からちょくちょく考えていたのだが人間関係を形成することをこの前まで無意識にだが諦めていたMixAがその答えにたどり着ける訳もなかったためどうしたらいいのか全く分からなくなっていたのだ。

(ああ…… 確かに一昨日言ってたな、どうなったか教えてって……どう言えばいいか分からない状況なんだけど)

MixAは難しい事を考える顔をしながらも、この状況を打破するためのヒントが欲しい為「てんちゃん」にとりあえずありのままの状況を伝える為、メールを返信する。

【わかりました、来週までトークの方考えておきます。それと友達の件なんですが、『アレ』を交換したり一緒に写真を撮ったりしました。でも友達になりたいと言ってみたら困ってたみたいで…… メールの返信も来なくて自信なくなってきました】

(あの事聞いちゃだめだったかなあ…… 友達になりたいって言わなきゃよかったのかな、嫌われたかも……)

MixAは昨日のことを思い出し、「どうしてお化けみたいになるのか」ということを聞いてしまったのが本当は流寧は嫌だったのだろうと流寧のあの寂しそうな顔、そしてMixAが流寧に言った「友達になりたい」という告白をした際の流寧の困った顔を思い出していた。
普段はマイペースなMixAが珍しく相手の表情をなんとなくだが気にすることからよほど流寧と仲良くなりたかったのか昨日のことを思い出せば思い出すほど落ち込んでしまっていた。
そんなMixAを慰めるかのように「てんちゃん」からメールの返信が届く。

【そういったことも予想していたので『えくすて!』で「あれ(後述)」をやりました。『えくすて!』のメールコーナーの今までの投稿やMixAさんの過去のライブ映像を見た感じMixAさんのファンは変わった方が多いという印象を受けたので、あえて「あの企画」をやりました。それと、一日メール来なかったぐらいで落ち込まないこと、一昨日私が言ったことを思い出してください。】

「てんちゃん」からのメールを読んだMixAは、「あれ」本当に喜んでくれるのかなあ……と怪訝そうにしていたが、一昨日『えくすて!』で「てんちゃん」から言われたこと(後述)を思い出し焦ることをやめた直後、横から「次はこれお願いしまーす」という女性の声と同時に「ドン」と音がしたのでMixAは「分かりました」と言い横を見ると「終わったらこれまとめて下さいね」と書かれたふせんが貼ってあった沢山の書類が積まれて置いてあった。
さて事務仕事しますか、と思ったMixAはカモミールティーをすっと飲み「てんちゃん」にメールを返信する。

【わかりました。また何かあったらメールしますね、そろそろ事務仕事に戻らないといけないのでこれで失礼します。】

MixAは「てんちゃん」へのメールがちゃんと送られたことを確認すると、メール作成画面を閉じふせんが貼ってあった資料からチェックし始めた。

 

★日曜日、ちょっと遅めの朝……★

「『4☆Night えくすてんでっと!』今日も始まりました!司会はあたし『補助員のアイドルおばさん』MixAと」
「収録日のランチは冷やし中華でおなか一杯のDの『てんちゃん』がお送りしまーーす」
どんよりとした梅雨時の雨でちょっと肌寒い四ツ星学園の寮の一室には「さっぱりとしたバニラの香り」が朝から立ち込めていた。雨で若干暗いのにも関わらず電気も付いていない一室の本だらけの机の上で黒ずくめの何かが椅子に座り黒革の手帳型ケースを横向きのスタンドのようにした「黒いスマホ」で動画を見ている。「黒いスマホ」には緑色の背景に美味しそうな紅茶と煎餅が置いてある白いテーブルと赤いソファに座った濃いピンクのセットアップに身を包んだ赤とピンクの中間の髪色のツインテールが若干痛々しい胸の大きな女性……
MixAが映っている。

(『みっくす!』愉しかったぞ…… 生のお姿も可愛らしいが、テレビ越しで見るのも可愛らしい…… )

黒装束に黒いマントに血まみれになった白い手袋、そして浅く被っているマントのフードの中の艶のある長い黒髪に血まみれの顔…… もとい血まみれになったように塗ったのであろう白い手袋と血まみれになった人物の顔の絵が描いてある白い仮面をしている「化け物」は血まみれの顔に頬杖をして「黒いスマホ」で動画を見ていた。血まみれの顔の目の部分から僅かにうっすらと見える「ブラックオパール」は僅かながらキラキラと光っているように見える。

「さて、『みっくす!』の未公開も見終わったところでメールコーナー!と行きたいところなんだけど、今日は緊急企画!」

「え、緊急企画ですか?」

「そう、題して…… 『「てんちゃん」の友達の作り方講座』!」

「お、打ち合わせで『てんちゃん』が考えてたやつですね!」

「こら! それ言っちゃダメでしょ……」

「へへへ、すみません」

ククク…… ククククク……

一連のMixAのマイペース?な発言と「てんちゃん」のツッコミを見ていた「化け物」はくぐもった笑い声を発する。「化け物」はくぐもった笑い声を発しながらも友達……?と一瞬思った様子だが気にせず動画を見ている様子。

「てなわけで、今からMixAさんには友達作りにおいて大事なことを覚えてもらうから。台本とペン持ってきた方がいいよ、書いた方が覚えるでしょ。今週もざっくりとしたことしか書いてない台本に書いていいから、裏はまだ何も書いてないと思うし」

「あ…… わかりました! 持ってきますね」

ちょっと考えた後何かを思い出してあっ! といった顔をするとMixAは急にちょっとだけ真剣な顔になり、一度セットからいなくなると「4☆Night 台本入れ」と描いてある…… もといデザインされているクリアファイルとピンク系の幾何学ハート柄にデコレーションを施したペンケースを持ってきた。MixAはちゃんと書きたかったのか床に直に正座するとそれを白いテーブルに置き、真っ白な台本の裏と(ピンク系のグラデーションデコが綺麗な)シャーペンを用意しシャーペンを左手に持った。それを見たのか「てんちゃん」は話し始める。

「じゃあ始めますか、『「てんちゃん」の友達の作り方講座』! 」

「よっしゃ、マジで頑張る」

スタッフの拍手が鳴り響く中MixAはちょっと真剣な顔をしていた。それを見た「てんちゃん」は感心している様子。

「お、MixAさん真剣な顔してるじゃん。珍しいなあ…… あ、視聴者の皆さんにはどうして今日この企画なのは後でちゃんと説明するからね」

「今回はちゃんと覚えて帰りたいので、ちゃんと教えてくださいね」

「オッケーー、今回友達作り超初心者のMixAさんの為に超大まかに教えるからね、いっぱい教えるとMixAさん頭痛くなってそうだし」

「あはは…… お願いします!」

MixAは「てんちゃん」の発言に笑いながらも珍しく真剣に「てんちゃん」の話をちゃんと聴こうとしている。それをみていた「てんちゃん」はその真剣さに感化され気合が入ったようでMixAの真剣さに応えるために短期間で考えたほぼ即興の企画の話をMixAにわかりやすく噛み砕きながら話し始める。

「よし! じゃあいくよ。一つ目は『自分の考えを相手にありのままに分かりやすく伝えること』。」

「え? それあたし結構やってるじゃないですか、番組とかライブとかで」

「あのさー… MixAさんは伝えようとしてるのは分かるんだけどさ、分かりづらいの。2か月一緒に仕事してきた私でようやくわかってきたんだから、ちゃんと分かりやすく伝えないと」

MixAは台本の裏に「てんちゃん」が言っていた言葉を書きながら気になったことを質問する。

「じゃあどうやって伝えたらいいんですか?」

「それがね…… 相手にどうやったらちゃんと伝わるかなーーって考えてから話すしかないんだな」

「考えてからしゃべればいいってことですか?」

「そうそう、考えてからしゃべる! まあ毎回やらなくてもいいから、たまーーにでいいから考えてからしゃべってみて」
「わかりました! 友達作るのって難しいなあ…… 頭使うって言うか」

普段ほぼ考えない思考にさっそくMixAは悪戦苦闘したようで難しそうな顔をしながら左手のシャーペンを走らせる。いつもなら難しそうな顔をしながら目の前のお茶やお菓子を見ているのだが今回はお茶やお菓子ではなくちゃんとカメラ…… もといカメラの隣にいる「てんちゃん」を見ているようだ。

「いつもはこの顔だとすぐ飲み物飲んじゃうんだよね…… ライブでもマイペースなMixAさんが真剣にしてるところ結構レアじゃないかな? ファンのみんなこれ見てびっくりしてるだろうなあ」

(『姫』の真剣なお姿…… 何かあったのか……)

動画越しではあったが、「化け物の正体」がプリ○ラ時代から追っかけをしているのにも関わらずあまり見たことがなかったMixAの真剣な姿を見た「化け物」は何かあったのではないかと動画を見ながらも心配そうに首をかしげている。

「今日はマジで頑張ります、マジで」

「他のこともこれぐらい頑張って関心をもってやればあっちでホントに『神』になれるんだろうけどなあ」

「あたしは『神』になりたくてあっちでもアイドルしてる訳じゃないんで…… ファンの為にやってるんです」

「それは知ってるから。にしてもホントに今日はMixAさん真剣だなあ…… 私もその真剣さに答えないとね」

MixAはにこにこしながらも珍しくちょっぴり真剣そうに話す。それをみた「てんちゃん」はますます気合が入った様子で話を続ける。

「じゃあ二つ目。二つ目は『焦らない、急かさない』こと。」

「焦らないってのは分かるんですけど、急かさないってどうゆうことですか?」

「うーん…… 私はいつもMixAさんをあんまり急かさないようにしてるんだけどなあ」

「え!? そうだったんですか」

「だってMixAさん超マイペースでしょ…… この番組を見てるファンの皆さんはMixAさんの超マイペースなところが見たくて見てると思うからね、MixAさんは焦ったりする?」

「焦るときは焦りますよ、事務仕事の締切前とか」

「焦ってるときはどんな気持ちになる?」

「やばい、どうしようって気持ちになりますね。それで急かされるともっと焦っちゃいます」

「そうそう、それを相手にやらないようにってことね」

「そうなんですね!」

MixAは感心しながら左手のシャーペンでメモを取った。一通りメモを取ったMixAはさっと自分の取ったメモを見て「てんちゃん」が教えてくれた通りできるのか不安になったらしく不安そうな顔をしながらてんちゃんにちょっぴり弱音を吐く。

「これ…… あたしにできるんですかね」

「大丈夫、MixAさんならできる!」

「マジですか?」

「マジです。」

「相手のことを考えながら話す」や「相手を急かさない」といった「超マイペースで自由奔放なアイドルおばさん」にはかなり難しいであろう「人間関係を形成するための基本」をMixAに噛み砕いて教えた「てんちゃん」は視聴者がおいてけぼりにならないようにどうしてこんな企画をしているのか視聴者に説明する。

「あ、視聴者の皆さんのために説明するね。実はMixAさんずっとお友達いなかったみたいなんだけど最近お友達になりたい人ができたんだって。だけどどうしたら仲よくなれるか全く分からないみたいで私に相談もらったからせっかくだし番組で教えよう!ってことになって今教えてるところなんだけど……」

「うーーん……」

ウン年ぶりの「友達作り」の大変さをようやく理解したMixAは「てんちゃん」がした視聴者への説明が耳に入らないほど不安になったのか、先ほどよりもっと不安な顔になっていた。
それを見ていた「てんちゃん」はMixAの背中を押すために優しく檄を飛ばす。

「あのさ…… 何もしないで友達になりたい人と友達になれるわけないでしょ?」

「そうですけど……」

「とりあえず、友達になりたいって子と今度会うとき試してごらん。反省とか後悔は試してみた後でいいから」

「そうですよね…… 不安になってもしょうがないし……」

「てんちゃん」が飛ばした檄がMixAに効いたようで、MixAはとりあえず「てんちゃん」に教わったことを流寧に試してみようと思い笑顔で軽くガッツポーズをした。

「わかりました。やってみます!」

(我は『姫』になんてことを…… )

「てんちゃん」に檄を飛ばされとりあえずやってみようという気持ちになり笑顔を取り戻したMixAを動画で見ていた「化け物」の様子がどこか可笑しい。
どうやら『MixAさんがお友達になりたい子』に心当たりがあるようだがなぜか「化け物」は「血まみれの顔」を「血まみれの手」で抑えていた。その様子はまるでMixAに不安そうな顔をさせてしまったことで落ち込んでいるように見える。

(あんなに真剣な顔で…… 慣れないことをさせてしまったのに…… あんなことを言ってしまうとは……)

MixAが不安そうな顔をしてまで「友達の作り方」を学んでいたのを今知った「化け物」は「化け物の正体」が木曜日にMixAと会った際にMixAがちょくちょく考え事をしながら話していたことや質問を無理に答えないように言っていたことは「てんちゃん」から教わったことを頑張って実行していたからだということを確信した。それと同時にMixAが言っていた「友達になりたい旨」を質問返しで濁してしまったことがショックだったのか「化け物の正体」が出そうになっている「化け物」は椅子に座りながら「黒いスマホ」の液晶を「血まみれの手」で押し動画を止め急にフードを深く被りだすと頭を抱え固まっている。

 

(ただ『俺』も友達というものが何も分からない…… )

「化け物の正体」…… 流寧は今まで生きてきて友達というものについて知らなかったためか頭が混乱していた。その後流寧は「化け物」の姿のまま数分ほど頭を抱え考え事をしていた。

(まてよ…… 友達というものが何か分からないなら、友達というものが何か一緒にさぐればいいのではないか?)

数分ほど考え事をしているうちに流寧は無意識のうちに……

(「みかさん」に木曜日の返答をしなくては……)

MixAと「人間」として仲よくなりたい気持ちが宿ったのか「化け物」はいつのまにかフードを取って血まみれの仮面と血まみれの手袋を外し「人間」…… 流寧に戻っていた。
そしてあろうことか流寧は先ほどまで見ていた動画を一度閉じ「黒いスマホ」を右手に持つと慣れた手つきでスマホの液晶画面を指で動かしている。

『おはようございますMixAさん。突然すいません、お電話してもよろしいでしょうか』

(今日はMixAさんOFFだったはず…… でもひょっとしたらまだ寝ているかもしれない)

流寧はMixAと話したかったのか、電話してもいいかという内容のメールを送信した。「追っかけをするほど好きなアイドル」のスケジュールをざっとだが把握していたので今日はMixAはOFFだということを知っていたがそれでも流寧は不安そうにしている。

(寝ているか…… 諦めよう)

流寧がうっすらとため息をついてスマホを動画視聴用の横向きに戻そうとしたその時だった。

PPPPPP……

(で、電話……)

突然流寧のスマホから着信音が鳴り響き、その液晶画面には(着信 MixAさん)と記載されていた。流寧は恐る恐る受話器のマークをタッチすると自分の耳元にスマホをあてる。

「もしもし……」

「もしもーし、おはよう流寧ちゃん。今起きたとこだったからメール気づくのちょっと遅れちゃった、ごめんね」

スマホの向こうからはMixAの眠たさと嬉しさが混じった声が聞こえる。どうやら流寧からメールが届くまで寝ていたようだったが、流寧が電話をくれるということが嬉しいというMixAの気持ちがMixAの方から電話をくれたことと声からは伝わってくる。

「おはようございます。起こしてしまってすいません、どうしてもお話ししたくて……」

「気にしないで、むしろあれからメール来ないからどうしたのかなーーと思ってたよ」

「すみません…… どうメールの文面を返信すればいいか分からなくて……」

「メール? 流寧ちゃんがいつも家族とかに送ってる感じでいいよ、あたしも普段ブログとかで書いてるまんまでメールするから」

「わかりました。そうさせて頂きますね、MixAさんからのメール…… 楽しみにしていますね」

「あたしも流寧ちゃんからのメール楽しみにする」

「ククク……」

「あはは…… あ、『みっくす!』と『えくすて!』見てくれた?」

「あ、あの…… その件なんですが……」

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楽しそうに話すMixAの声を聴き嬉しそうにしていたが『みっくす!』と『えくすて!』の感想を聞かれ、『えくすて!』で話していた『MixAさんが友達になりたい子』がまさか自分ではないかと思い電話した流寧は緊張で顔が赤くなり固まりそうになりながらも口を開く。

「『みっくす!』を見終わって今『えくすて!』を途中まで見終わったんです。実は『えくすて!』で『てんちゃん』さんが言っていた『MixAさんが友達になりたい子』というのは……」

「ごめんね、迷惑だったよね…… 急に『友達になりたい』なんて言ってびっくりさせちゃって」

「黒いスマホ」の向こうからは申し訳なさそうにしているMixAの声が聞こえてくる。それを聞いた流寧はMixAを慰めながらも『えくすて!』で『てんちゃん』が教えた内容がちゃんと出来ていたことを優しく伝える。

「そんなことないですよ」

「えっ……」

「『えくすて!』で『てんちゃん』さんから教わったことちゃんとやっていたではないですか…… 」

「ちゃんと出来てた!?」

「出来ていましたよ。それで…… 『友達になりたい』という件なんですが……」

「あー… あれから友達って何なのかあれから考えてみたけどぜんぜんわからなかったよ」

「あの…… 俺……、ヴヴン、アタシも友達というものが何かわからないのですが、MixAさんと一緒に友達というものを一緒に学びたいと思っていまして……」

「うーーん…… どうゆうこと?」

流寧はMixAに「『みかさん』と友達になりたい旨」を伝えた。OFFの電話にも関わらず若干緊張していたからか流寧の「化け物の姿」ではない「何か」か出かかっていたが、流寧がMixAを尊敬するあまりへりくだった表現になってしまったためMixAは流寧が何を伝えたいのか分からず考えていたためか「何か」には全く気づかなかった様子。

「要するに、『みかさん』と友達になりたいんです」

「マジで!?」

「はい」

何を伝えたいのか分からなさそうにしていたMixAの為に流寧はちょっぴり真剣な声で「『ストレートに』友達になりたい旨」を伝えた。それを聞いたMixAは驚いていたが「黒いスマホ」越しでもわかるほど嬉しそうにしていた。

「ありがとう! 流寧ちゃんと友達になれて嬉しいなーー」

「喜んでいただけて嬉しいです」

「流寧ちゃんのこと困らせないように頑張らないとね」

「これか…… 」 「アタシこ…… あっ」

MixAも流寧もOFFで他人とあまり話さないからか会話のタイミングがかぶってしまったが……

「あっ…… ごめん、流寧ちゃん。先にしゃべっていいよ」

MixAが大人の余裕?なのか会話のタイミングを譲ってくれた。それを聞いた流寧はスマホ越しではあるがちょっぴり申し訳なさそうにしながらも話し始める。

「すみません、ではアタシから…… アタシこそみかさんを困らせてしまうかと思いますが、ちゃんと友達でいられるように精進しますね。ところでみかさんは何を言おうとしていたんですか?」

「んっと、これからいっぱい仲よくしてあたしも流寧ちゃんも友達っていうのが何なのか分かったらいいなーーって話そうかなって」

「これから友達というものが何なのか一緒に学びましょう」

「うん! 一緒にお勉強しよう!」

『友達?』を得た流寧はスマホを片手に嬉しそうに微笑んでおり、スマホの向こうから聞こえるMixAの声もとても嬉しそうに聞こえる。

「あ、『えくすて!』最後まで見てないんだよね? 早く最後まで見て感想教えて! 電話でもメールでもSMSでもいいよ、今日はメールコーナーがね……」

「まだメールコーナーのところまで見ていないので言わないでください……」

「ごめんごめん、そういえば流寧ちゃんってメールコーナー投稿したことある? あたしのファンって言ってたから気になっちゃって」

「それはノーコメントです」

「えーー、教えてよーー」

こうしてMixAと流寧はようやく『友達?』になれたようだ。というかMixAは番組があるのでまだいいとして流寧はアイドル活動をしていないようだが大丈夫なのだろうか……

(アイカツっぽくない創作だとは承知だが)つづく(・ω・)