アゾリウス評議会/The Azorius Senate(MtG)

Last-modified: 2024-05-11 (土) 14:35:47

登録日:2022-03-04 (金) 00:08:00
更新日:2024-05-11 (土) 14:35:47
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迷路のような文様は、アゾリウスの法の中核を具現化している ―――
意志を試し、変化を止める厳格な構造だ。

アゾリウス評議会/The Azorius Senateとは、TCG、マジック・ザ・ギャザリングの背景世界に存在する組織である。

概要

都市次元ラヴニカに存在する10のギルドの1つで、法の作成や整備を担当する。配色は秩序のと知識の
治安維持という点はボロス軍/Boros Legion?に似ているが、ボロスが法の執行者、実働部隊なのに対し、アゾリウスは裁判や刑の執行といったところ。
ボロスとは捕えた犯罪者を引き渡すなど協力関係にあるが、実際にはアゾリウス側も兵力を持つ、すなわち被っている部分があるため、互いに(特にボロス側は)内心快く思ってないなど、相変わらずギルド間の中がよろしくないラヴニカらしい部分もある。
分かりやすく言えば、ボロスは「秩序を守るために怪しい奴がいたらひっとらえることも辞さない」動の秩序管理、アゾリウスは「法律に違反してないんだったらしょっぴく根拠がないので放っておく」静の秩序管理って感じ。
「アゾリウス評議会による重要指名手配被疑者10人」なんていう公式のストーリー記事もあり、良くも悪くも秩序を維持する専門家としての性格を有している。

アゾリウスで最も恐れられている刑罰は、自由にされることだ――世界の只中に、すべての魔法の防御を失って戻されるのだ。(《抑制の場》のフレーバー・テキスト)

前身はラヴニカの公式政府であり、それゆえか官僚的で保守的、分かりやすく言えばお堅い人が多い。
また、アゾリウスが求めるのは現状維持である。法とはそもそも秩序を守るものであり、この法に従っていれば平穏無事に過ごせるという思想を持っている。
人を褒めるときにすら法律を引用してそれに従って褒めるという描写があり、秩序のためにラヴニカの住人に自由を与えないディストピア的な思想を持っている。
一概に善とはいいがたいギルドであり、実際にギルドマスター(主導者的存在)が支配力を高めるために暴走したこともある。
ジェイスの現恋人であるヴラスカを徹底的に迫害したのもアゾリウスであり、ゴルガリが「行き所を失った弱者が最後に流れ着く場所」という性格を持っていることも踏まえるととても絶対善とは言い難いギルドである*1

例によってどのギルドに対しても快く思っていない一面はあるが、その中でもラヴニカの秩序を乱すディミーア家/House Dimirラクドス教団/The Cult of Rakdosに対して強い敵意を示している。
ラヴニカブロック時には対立しているギルドはゴルガリ団/The Golgari?という事になっていたが、ラヴニカへの回帰ブロックでの他ギルドへの感想では、むしろ「観念を共有している部分もあり、理解を深めたい」と比較的温和な姿勢をとっている。理解しがたいともいってたが。

ギルドパクト

アゾリウス評議会はラヴニカの法の基礎となる魔法、「ギルドパクト/Guildpact」と最も密接にかかわるギルドであり。
1万年以上昔、ラヴニカ全土で10のギルドが争っていたが、その際にアゾールが考案したのがギルドパクトである。10のギルドそれぞれに役割を与え、戦争を終結させた。
その後ラヴニカを支配しようとするディミーアのパルン、ザデックにより、ギルドパクトは破られ、魔法に頼らないギルドパクトが再度作られるも、強制力がなかったこともあり形骸化、一時期はギルド自体の崩壊寸前にまでなった。

その後も各ギルドが争いをやめず、全面的な抗争に発展する。しかし、イゼット団/The Izzetのパルンにしてギルドマスターのニヴ=ミゼット?によって、各ギルドの迷路競争が開催される。ミゼットはギルド間の全面抗争に陥ると、アゾールが秩序維持のために仕掛けたリセット呪文、「至高の評決/Supreme Verdict」が発動することを知っていたのだ。
ディミーアのギルドマスター、ラザーヴの暗躍から、混乱も起きたが、最終的には精神魔導士のPW、ジェイス?によって沈静し、その後ジェイスは「生けるギルドパクト」としてラヴニカの平和維持に努めることとなった。

その後、ニコル・ボーラスのラヴニカ侵攻で、力線が乱れ、ジェイスのギルドパクトとしての魔法は失われてしまった。
しかし、イゼット団のPW、ラル・ザレック?は「ボーラスに殺害されたニヴ=ミゼットに力線を注ぎ、ミゼットをギルドパクトとして復活させる」ことを提案した。1ギルドのパルンがギルドパクトになるという提案に、当然反対意見も起きたが、最終的には執行され、ニコル・ボーラスへの逆転のカギとなった。
その後は二ヴ=ミゼットがジェイスに変わる「生けるギルドパクト」として活躍しているようだ。やっぱりこの竜ラヴニカ好きすぎんだろ。

主要人物

アゾール/Azor
パルン(ギルドの創設者)であるスフィンクスのアゾール。ラヴニカの回帰ブロックまでは登場していなかったが、実はプレインズウォーカー?であったことが判明。
イクサラン次元で、邪悪なPWニコル・ボーラス?を封じるために自身の灯*2を捧げて、次元渡りを封じるアーティファクト「不滅の太陽」を作成していた。

登場カード

  • 法をもたらす者、アゾール/Azor, the Lawbringer

アウグスティン四世/Augustin IV
『ラヴニカ・ブロック』時代のギルド指導者である盲目の大判事。
アゾリウスの権力を絶対的にするために、自分たちが創造したはずのギルドパクトを崩壊させるべくザデックと共に暗躍。
ギルドパクト崩壊後はサデックを用済みとばかりと殺害したが、最後は霊魂と化したサデックによって逆に殺されてしまった。

登場カード

  • アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV

イスペリア/Isperia
アゾリウスのアドバイザーであるスフィンクスの女性。
『ラヴニカへの回帰ブロック』時代ではギルド指導者となった。
『ラヴニカ3部作(ラヴニカのギルド~灯争大戦)』のストーリーでは他ギルドの様々な出来事の裏に不穏な空気を察知し、全ギルドに協力を提案するが…。

登場カード

  • 不可解なるイスペリア/Isperia the Inscrutable
  • 至高の審判者、イスペリア/Isperia, Supreme Judge

ラヴィニア/Lavinia
アゾリウスの拘引者である女性。『ドラゴンの迷路』ストーリーでは迷路走者を務めた。
当初はジェイスを目の敵にしていたも、紆余曲折あり生けるギルドパクトとなったジェイスのサポートを務めるようになった。
生真面目な性格だが、頻繫にラヴニカからいなくなるジェイスの報復に彼の執務室を迷路に変えたり、ジェイスの食事に彼の嫌いなブロッコリーを混ぜたりと中々茶目っ気のある女性。
非プレインズウォーカーながら非常に出番が多く、ジェイス以外のプレインズウォーカーとの絡みにも恵まれており、特に《ラル・ザレック》との「ジェイスが嫌いな者同士から始まった友情」は何とも言えない人間味にあふれている。

登場カード

  • 第10管区のラヴィニア/Lavinia of the Tenth
  • アゾリウスの造反者、ラヴィニア/Lavinia, Azorius Renegade

ドビン・バーン/Dovin Baan
『ラヴニカ3部作』の時代にてアゾリウスのギルドマスターの座についたカラデシュ次元の元・主席検査官。ヴィダルケンと呼ばれる高度な知性を持った種族の男性。
ボーラスの思想に協力してラヴニカに渡り、アゾリウスの法の脆弱性を見つけてそこを突いていくことで合法的に大判事の地位を手に入れた。
アゾリウスの「秩序を維持する」という思想には共感しており、カラデシュの技術の粋を凝らした飛行機械の諜報網を導入したり、GPSのような機能を有した《アゾリウスのロケット》をギルド構成員に配ることで仕事を効率化させたりと積極的に改革に取り組んでいる。
一方で完全に外様の者がギルドを牛耳ることに危機感を覚えた層も一定数おり、ラヴィニアはその一人である。

登場カード

  • 大判事、ドビン/Dovin, Grand Arbiter
  • 法を築く者、ドビン/Dovin, Architect of Law など

ゲーム内の特徴

Azorius Guildmage / アゾリウスのギルド魔道士 (白/青)(白/青)

クリーチャー — ヴィダルケン(Vedalken) ウィザード(Wizard)

((白/青)は(白)でも(青)でも支払うことができる。)

(2)(白):クリーチャー1体を対象とし、それをタップする。

(2)(青):起動型能力1つを対象とし、それを打ち消す。(マナ能力は対象にできない。)

2/2

法の番人という立場に加えてコントロールに長ける白青という組み合わせということもあり、防御的で対戦相手の行動を妨害するカードが多い。
非常に悪い言い方をすれば、MTGのライトプレイヤーが抱く「性格悪そうな色」のイメージを組み合わせたもの。
実際「ラヴニカ:ギルドの都」ブロックの頃はドロー・ゴーの話題熱がまだ冷めやらぬ頃だったので、割としっくりくるキャラ付けである。

固有メカニズム

予見/Forecas

Sky Hussar / 空の軽騎兵 (3)(白)(青)

クリーチャー — 人間(Human) 騎士(Knight)

飛行

空の軽騎兵が戦場に出たとき、あなたがコントロールするクリーチャーをすべてアンタップする。

予見 ― あなたがコントロールするアンタップ状態の白か青のクリーチャー2体をタップする,あなたの手札から空の軽騎兵を公開する:カード1枚を引く。(あなたのアップキープの間にのみ、毎ターン1回のみ起動できる。)

4/3

『ラヴニカ・ブロック』におけるメカニズム。ターン開始時に1回のみ、コストを支払うとともに手札にあるこのカードを見せることで能力を起動できる。
2通りの使い方が出来て柔軟性が増す。さらに予見能力で使う場合は手札に残り続ける上に打ち消されにくいため再利用が非常に容易であり、「予見能力を使った後にそのまま素出し」ということもできる。
遊戯王を知っている人なら《黄金の天道虫》を思い浮かべてもらえばいいだろう。ほとんど同じ動きをする。多分あれの元ネタ。
ただし当時*3の白青が強すぎたため、意図的に弱くされた部分があり、そこまで大きな活躍は見られなかった。
そもそも再利用が容易なのでコストを重くするかテキストを弱くするしか手法がないというのもあり、使ってみると使用感がものすごくもっさりしている。

まったく活躍しなかったかというとそんなことはなく、たとえば《再誕の宣言》というカードは《砂の殉教者》との相性の良さから採用され、
毎ターンとんでもない量のライフ回復を行って現状維持をし続けながら相手の心をへし折るというギミックを組み込んだデッキ「殉教者トロン」のメインパーツとなった。アゾリウスの「現状維持をよしとする」フレーバーとぴったり合うデッキである。
他にも一時期はモダンで《雲の群れ》が使われていたりと、wikiなどで語られるような「意図的に弱くされたのでまったく活躍できなかった」という印象とは割と遠いメカニズムである。

留置/Detain

Azorius Arrester / アゾリウスの拘引者 (1)(白)

クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)

アゾリウスの拘引者が戦場に出たとき、対戦相手1人がコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それを留置する。(あなたの次のターンまで、そのクリーチャーでは攻撃もブロックもできず、その起動型能力を起動できない。)

2/1

『ラヴニカへの回帰ブロック』におけるメカニズム。次のターンまで攻撃、ブロック、起動型能力を起動できなくする。いかにもコントロールカラーな防御的な能力である。
地味ながらも柔軟な能力で、予見に比べると人気の高いメカニズム。

附則/Addendum

Sphinx's Insight / スフィンクスの眼識 (2)(白)(青)

インスタント

カードを2枚引く。

附則 ― あなたがこの呪文をあなたのメイン・フェイズ中に唱えていたなら、あなたは2点のライフを得る。
『ラヴニカの献身』におけるメカニズム。「自身のターンのメインフェイズで唱えたら追加効果がありますよ」というもの。その性質上、この能力を持っているのはインスタントか瞬速持ちに限られる。
インスタントというカードは基本的に対戦相手のターンに唱えることで本領を発揮するのだが、こちらはあえて自分のターンにソーサリーのように唱えることでボーナスが得られるというもの。
「タイミングを取るか、ボーナスを取るか」という判断が難しく、初心者にはなかなか悩ましいカードである。
MTGはデザインの都合上「条件を満たすとボーナスがもらえるカードは、ボーナスがないと相場より重い」「インスタントは唱えるタイミングに融通が利くのでソーサリーより重い」ということが多いため、
そもそものカードパワーが不足していたことから《不敗の陣形》《予知覚》などの一部のカードを除いてあまり活躍はしなかった。

代表的なカード

ギルドの固有能力自体はそろいもそろって地味なものが雁首を並べているが、カード自体は環境を定義するレベルで強いというなかなか困ったギルド。
ラヴニカが舞台になるたびに青白コントロールとその亜種が復権することからも分かるように、ここに挙げたものがほんの一例にすぎないほどに強いカードがそろっている。

Suppression Field / 抑制の場 (1)(白)

エンチャント

起動型能力は、それらがマナ能力で無いかぎり、それを起動するためのコストが(2)多くなる。
「ラヴニカ:ギルドの都」で登場したエンチャント。
マナ能力以外の起動型能力にコストを化す、まさに白感溢れるカード。「緑白エンチャントレス(レガシー)」「不朽の理想(旧スタン、モダン)」「白単信心(モダン)」のようにエンチャントを並べる系統のデッキでたびたび用いられる。
起動型能力全般が引っかかるため、実は意外なカードが引っかかる。フェッチランド、プレインズウォーカーの忠誠度能力、《リシャーダの港》のタップ能力など様々なカードが足をすくわれる上に2マナと非常に軽く、
さらに2枚目以降も無駄にならないというナイスデザイン。こちらが適切にデッキを組めば相手だけを悶絶させることが可能なので、一時期の「白は優遇された色」という風潮の論拠にもなるほどのやり手のカード。
一方でマナ能力で大量のマナを生み出すエルフデッキや、単純に横並びをさせて殴りかかるだけの白ウィニー、淡々と除去とハンデスを繰り返して相手のリソースを削る黒コンをはじめ、引っかからない相手には一切引っかからないというニッチなカードでもある。

Grand Arbiter Augustin IV / アウグスティン四世大判事 (2)(白)(青)

伝説のクリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)

あなたが唱える白の呪文は、それを唱えるためのコストが(1)少なくなる。

あなたが唱える青の呪文は、それを唱えるためのコストが(1)少なくなる。

対戦相手が唱える呪文は、それを唱えるためのコストが(1)多くなる。

2/3
「ディセンション」で登場したカード。ラヴニカの大判事。白と青の呪文が軽量化し、対戦相手の呪文にコストを課すという実に青白らしくアゾリウスらしさに溢れたカード。
青と白の双方を含むカードは(2)軽くなるのだが、伝説のクリーチャーなので2枚以上並べられないのが弱点。
当時から青白系のデッキで人気のあったカードだが、近年では統率者戦での活躍が非常に目覚ましいらしく、統率者として公開するとヘイトが高まるそうな。

Azorius Guildmage / アゾリウスのギルド魔道士 (白/青)(白/青)

クリーチャー — ヴィダルケン(Vedalken) ウィザード(Wizard)

((白/青)は(白)でも(青)でも支払うことができる。)

(2)(白):クリーチャー1体を対象とし、それをタップする。

(2)(青):起動型能力1つを対象とし、それを打ち消す。(マナ能力は対象にできない。)

2/2
「ディセンション」で登場したギルド魔道士サイクルの1枚。ほとんどリミテッド用のカードなのだが、MOのルール「モミール・ベーシック」では『出たら勝ち』というとんでもないルールブレイカー。
モミール・ベーシックはクリーチャーを展開する手段を「Momir Vig, Simic Visionary Avatar」というアバターの自分のターンに1回しか使えない起動型能力に完全に依存している。
つまり青を含む3マナを出せる状態さえ維持しておけば、対戦相手はその後クリーチャーの展開が一切できなくなる。あとは元々出ていたクリーチャーよりでかいクリーチャーが出るまでじっくり待って、デカブツで相手を殴ればいい。
このカードが出るわずかな可能性に期待して2マナでモミールを起動するかということがモミールプレイヤーの間でよく話題になったものだが、最近はモミール自体が下火なのでこの手の議論もあまり見かけなくなった。

Supreme Verdict / 至高の評決 (1)(白)(白)(青)

ソーサリー

この呪文は打ち消されない。

すべてのクリーチャーを破壊する。
「ラヴニカへの回帰」で登場したカード。《審判の日》に青が加わったら打ち消されなくなったという、コントロール使いにとっての夢を実現した一枚。
当然だが弱い理由なんてどこにもない。一見「強くなった分のリスク」のように見える青の追加も弱点とは言い切れず、《意志の力》《否定の力》のコストにできるようになったという利点とみなす者も多い。
《スフィンクスの啓示》ともども当時のスタンダードに非常に大きな影響を与えたカード。青白コントロールをトップメタに君臨させた他、青白の入る中速以下のデッキならどんなデッキにも入るようなポテンシャルの高さを見せつけた。
往時のドロー・ゴーみたく「勝ち筋を相手のライブラリーアウトや時間切れによる勝ち逃げに依存する」というタイプの青白コンまで登場するなど、当時のスタンダード環境の多様性にある意味で華を添えた一枚。
このカードの存在のせいで涙を呑んだカードは非常に多く、特に「ギルド門侵犯」で登場した《正義の勇者ギデオン》や「居住」「大隊」能力はこのカードのせいでまったく活躍できなかったと言ってもまったく過言にならない。
一方で当時のスタンダードにはこのカードで対処しきれないクリーチャーに《ファルケンラスの貴種》《スラーグ牙》《霊異種》といった優良株が多く、そういったクリーチャーをメインに据えたデッキが人気を博する一因ともなった。
「呪禁オーラ」「グルールアグロ」のような速度とパワフルさを兼ね備えて除去を間に合わなくさせるデッキ、「迷路の終わり」「扉コントロール」「青白LO*4」「バベル」などのようにクリーチャーに勝ち筋を依存しないデッキなどが人気になった時期でもあるのだが、その理由はこのカードの与えた圧力が大きかったからというのもある。
さらにローテーションでテーロス・ブロックが登場した後は《海の神、タッサ》などの破壊不能持ちクリーチャーなどにも手を焼かされることになった。

ストーリーでは「ラヴニカの安全装置」のような役割を果たしており、早い話が「10のギルドが仲良くできなかったら押されるリセットボタン」。ジェイスはこの発動を防ぐために八方手を尽くして「生けるギルドパクト」になる。
至高の評決と訳されている「Supreme Verdict」は本来「極刑」と訳される。つまり死刑の婉曲的な表現である。SupremeもVerdictもアメリカの法律用語として普通に使われており、フレーバーに溢れた一枚。
たまにこういう点から「誤訳である」「訳語が気に入らない」という文句が出るが、クリーチャーすべてを破壊する青白のイメージに「死刑」という訳語はさすがに合わないということには留意していただきたい。
実際、後にカード化された《極刑/Capital Punishment》は黒のカードである。

Sphinx's Revelation / スフィンクスの啓示 (X)(白)(青)(青)

インスタント

あなたはX点のライフを得て、カードをX枚引く。
「ラヴニカへの回帰」で登場したカード。《天才のひらめき》の色拘束が強くなったらライフ回復のおまけがついてきた。
ぶっちゃけXを3以上で唱えるだけで大きな有利をもたらすカードであり、さらにこんなものがインスタントかつ当時の青白は《アゾリウスの魔除け》《静寂宣告》《瞬唱の魔道士》などをはじめ良質なインスタントを大量に有していた。
つまり「対戦相手がヤバい動きをしてきたら別のカードを使うが、大した動きをしてこないのならエンドフェイズに啓示を打つ」という隙のない動きができたのである。
《至高の評決》ともども青白コントロールの立ち位置を盤石にしたカードであり、こちらが回復とドローを、向こうは大量破壊によるアドバンテージ獲得を狙うという黄金コンビとしてコントロール愛好家に非常に愛された。おまけのように見えるライフの回復も非常に重要で、このライフ回復のせいで時間を稼がれてしまう。
さらに困ったことに《次元の浄化》をはじめリセットカードが妙に充実していた時代でもあった。そのため当時の青白コントロールは長期戦になりやすく、「このカードを打たれる前にさっさと優位を築いて殺す」「ライフ以外の勝ち筋を狙う」「対処できないフィニッシュ手段を使う」というように環境を変化させていった。
長丁場をもたらす大量ドローはライブラリーアウトが弱点になるが、《不死の霊薬》というカードを使ってライブラリーアウト対策をするという往時のドロー・ゴーじみた動きをするデッキまで成立させるなど、当時のスタンダードプレイヤーには非常に思い出深い1枚である。
そして青白コントロール以外でも、当時存在していた特殊勝利系の5色デッキでは青白にデッキを大きく寄せる根拠になっている。長々と語ってきたが、早い話書いてあることすべてがおかしいのである。
ただしスタンダード以外の環境では重いのでまず使われない。

Azor, the Lawbringer / 法をもたらす者、アゾール (2)(白)(白)(青)(青)

伝説のクリーチャー — スフィンクス(Sphinx)

飛行

法をもたらす者、アゾールが戦場に出たとき、各対戦相手は、次の自分のターンの間、インスタントかソーサリーである呪文を唱えられない。

法をもたらす者、アゾールが攻撃するたび、あなたは(X)(白)(青)(青)を支払ってもよい。そうしたなら、あなたはX点のライフを得て、カードをX枚引く。

6/6
ラヴニカと縁もゆかりもない「イクサランの相克」で登場したスフィンクス。
マナ・コストがラヴニカの指導者サイクルと同じ構造になっており、そもそもアゾリウスという名前自体が彼の名前をもじったものである。
ETBで伝説のカスレア?《スフィンクスの命令》が、攻撃するたびに疑似《スフィンクスの啓示》が誘発。ただしこの時代は他のフィニッシュ手段がいくらでもあったため、まったく活躍しなかった。

どちらかというと「ラヴニカと縁もゆかりもないイクサランに唐突に登場したラヴニカ要素」という点で当時大きな話題を呼んだ1枚。イクサランはカードパワーこそ低かったがストーリーが大好評であり、その好評を補完してくれる存在だった。
ストーリーにおいてはプレインズウォーカーとして様々な次元を渡り、そこで法の守護者を自称して法の知識を授けて秩序をもたらすということを行ってきた。ラヴニカも実はそういう数ある次元のうちのひとつである。
秩序のためなら自分のプレインズウォーカーの灯(≒PWとしての力の源)を投げ出すことも厭わないという滅私的な男であり、ウギンと協力してボーラスを罠にかけてイクサランに閉じ込める策を練っていたこともある……と、ここまでなら割と善玉側。
しかし現地の状況に合わせた法の施行ではなく「ぼくのかんがえたさいきょうの法律」を無理やり押し付けるという方法を取っていたこともあり、法の施行が逆に混乱を起こし、法に虐げられる被害者を出すということにもつながっていく。
その上それを指摘されても「我が機構、我が賜物が腐敗したとしても、それは民の過ちである」と自分の正義をまったく疑わないという結構困った奴。さらに自分の業績を残したがるという悪癖もあったようで、肝心のボーラスが彼らの算段に気づくきっかけを作ってしまうなど詰めが甘いところが見受けられる*5
イクサランにおける各勢力の争乱も、彼が《不滅の太陽》の管理を委託した先の勢力の動向が気に入らないので取り戻すということを繰り返した結果である。そしてヴラスカに対しても非常に差別的な態度が目立ち、あまりのひどい独善っぷりに憤慨したジェイスがギルドパクトとして初めてまともな仕事を行う。
「貴方はラヴニカに留まるべき存在でありながら、私の居住地だけでなく他の無数の次元へと不和をもたらしています」「貴方は、役立たず島*6の主にして管理人となります。今後その島から離れることと、定命の文明へと干渉することを禁じます。ここに不滅の太陽を置いて去るように。ギルドパクトの体現者として、命じます」と、アゾールが信奉する法の力をもって命令した。
以降この元旧世代のプレインズウォーカーは、無人島で寂しい余生を送っているものと思われる。

Guild Summit / ギルド会談 (2)(青)

エンチャント

ギルド会談が戦場に出たとき、あなたはあなたがコントロールしていてアンタップ状態である望む数の門(Gate)をタップしてもよい。これによりタップされた門1つにつき、カードを1枚引く。

門が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、カードを1枚引く。
「ラヴニカのギルド」で登場したカードで、当時の「門コントロール」のキーパーツ。門に関するドロー能力を持ち、息切れを防ぐ。
2枚以上出せると祭が始まる。MTGは土地というマナしか出さないくせにやたら値段が高いカードが参入に対して大きな障壁になるが、このデッキは「コモンの土地だけでも立派に戦えるデッキ」として当時の初心者間で非常に大きな人気を博した。

フレーバー・テキストは「ニヴ=ミゼットに他のギルドみんなで協力しよう」というラルの提案を突っぱねようとした他ギルドに対し、イスペリアが一時的な協力を提案するというシーン。
ラヴニカの空気をうまく示しており、さらに当時更新が途絶えていたメインストーリーへの期待を大きく高めた。その後イスペリアはヴラスカの手によって暗殺されてしまい、協力の提案は一旦立ち消えになってしまう。
疑惑に満ちた状況の中、イスペリアはギルドを集めると過激な提案を行った。協力である。

Dovin, Grand Arbiter / 大判事、ドビン (1)(白)(青)

伝説のプレインズウォーカー — ドビン(Dovin)

[+1]:ターン終了時まで、あなたがコントロールしているクリーチャー1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、大判事、ドビンの上に忠誠(loyalty)カウンターを1個置く。

[-1]:飛行を持つ無色の1/1の飛行機械(Thopter)アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体生成する。あなたは1点のライフを得る。

[-7]:あなたのライブラリーの一番上からカードを10枚見る。そのうち3枚をあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。

3
「ラヴニカへの献身」で登場したプレインズウォーカー。
性能自体は非常に評価が難しく、事前段階では同時期に登場したケイヤとドムリともどもプロの間ですらかなり評価が割れた1枚。
+能力が実質的には何もしていないのと同じなのがかなりキツく、奥義も他のプレインズウォーカーに比べると「質のいい3枚ドロー」に過ぎないのが評価の難しいところだったようである。
実際にはこのカードのポテンシャル自体は決して悪いものではなく、当時存在していた白青アグロ系のデッキに採用されることがあった。
ただしこのカードが活躍していたのと同時期に《ドミナリアの英雄、テフェリー》という同色の圧倒的なプレインズウォーカーが存在していたこともあり、主流になるということはなかった。
そして「灯争大戦」の発売後には《時を解す者、テフェリー》という圧倒的な性能のカードが登場してしまい、このカードの存在は忘れ去られてしまった。ドビンのカードってそんなのばっかだ。

Dovin's Acuity / ドビンの鋭感 (1)(白)(青)

エンチャント

ドビンの鋭感が戦場に出たとき、あなたは2点のライフを得て、カードを1枚引く。

あなたがインスタント呪文をあなたのメイン・フェイズ中に唱えるたび、あなたはドビンの鋭感をオーナーの手札に戻してもよい。
「ラヴニカへの献身」で登場したアンコモンのエンチャント。ライフ2点と1ドロー、かつ上述の「附則」条件を満たすと手札に戻る=再利用ができるというオマケ付き。附則を補佐するために作られたような能力だが、別に附則を持っていないカードでも構わない。
3マナと少々重いものの、デッキを適切に組むと非常にしつこく再利用が可能になる。当時は「再活」のように1枚で複数回唱えられるインスタントや《活力回復》のようにドローを同時に行える延命インスタントが存在していたことから意外と息切れを起こさない。
さらに複数枚展開することもできるため、「2枚展開してからインスタントを唱えて手札に2枚戻す」という動きもできるようになる。
その気になればノンクリーチャーデッキとして組むことも可能であり、往時のドロー・ゴーを思わせるデッキとして大変に嫌われた存在感を示した。
むしろ上述の大判事より、こちらの方が印象深いというプレイヤーも多いだろう。「殺せそうだが殺せない」を延々と繰り返されて優位を築かれるというのはいかにもアゾリウスのフレーバーに合った動きである。

MTGAのBO1において青白コンの一種「鋭感コントロール」のパーツとして猛威を振るったカードであり、これを改良したデッキをBO3に持ち込むプレイヤーもいたようである。
さらに当時は禁止ラッシュが訪れる前であり、MTGAによってMTGに初めて触れたプレイヤーが非常に多かった時期でもある。
そんな中で「徹底的に相手の動きを捌きながら戦うノンクリーチャーデッキ」というものは他のゲームを主軸にプレイしていた層に非常に異様なものに映ったようで*7
このカードをはじめキーパーツがアンコモンということもあって組みやすく、試しに組んでみるというプレイヤーは非常に多かった。当時の環境のド派手な多様性を語る際にたびたび言及される1枚。

Lavinia, Azorius Renegade / アゾリウスの造反者、ラヴィニア (白)(青)

伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)

各対戦相手はそれぞれ、マナ総量が自分がコントロールしている土地の総数より大きくクリーチャーでない呪文を唱えられない。

対戦相手が呪文を唱えるたび、それを唱えるためにマナが支払われていない場合、その呪文を打ち消す。

2/2
「ラヴニカへの献身」で登場したクリーチャー。アゾリウスでジェイスの秘書を務めていた女性。
「土地の枚数よりコストが重いカードは唱えちゃダメ(クリーチャーは除く)」「マナを支払わないで唱えたカードは却下」というルールを課すカード。ズルしないできちんと決まりは守ろうね、という形でアゾリウスらしさを表現している。
スタンダードではまったく活躍がないまま去っていったが、なんとヴィンテージではヘイトベアー*8デッキの定番枠として収まっている。2つ目の能力がMoxなどの0マナのマナ・アーティファクトや《意志の力》のようなピッチスペルにぶっ刺さる上、自身も《意志の力》のコストにできる。
さらにマナ基盤をMoxなどに大きく依存している関係上、「重いカードを《Black Lotus》や《太陽の指輪》によって踏み倒す」というような動きが難しくなる。しかも影響するのが対戦相手のみなのでこちらはMox使い放題。ずるくね?
一方で「クリーチャーには影響しない」「唱えていないカードには影響しない」という性質から《夢の巣のルールス》や《ドルイドの誓い》といった定番カードには弱い他、最近増えてきたヘイトベアー系のデッキには用を成さないことも多い。
現役のヴィンテージプレイヤーの間では「とっくに流行は終わっている」「一時期の流行にとどまった」と評価されるなど、なかなか評価の難しい1枚。

Unbreakable Formation / 不敗の陣形 (2)(白)

インスタント

ターン終了時まで、あなたがコントロールしているクリーチャーは破壊不能を得る。

附則 ― あなたがこの呪文をあなたのメイン・フェイズ中に唱えていたなら、それらのクリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置く。ターン終了時まで、それらは警戒を得る。
「ラヴニカへの献身」で登場したインスタント。評価のあまり芳しくなかった附則呪文では数少ない、実戦で多用されたカード。
インスタントタイミングで使えば全体除去からもすべてのクリーチャーを守れる防御として、附則で使えば全体強化の攻撃として使える攻防一体の汎用性が評価され、
多数のクリーチャーを並べるウィニーが主な戦術だったアゾリウス以外の白系ギルド*9のデッキにおいて活躍した。

Fblthp, the Lost / 迷い子、フブルスプ (1)(青)

伝説のクリーチャー — ホムンクルス(Homunculus)

迷い子、フブルスプが戦場に出たとき、カードを1枚引く。これがあなたのライブラリーから戦場に出たか、あなたのライブラリーから唱えられていたなら、代わりにカードを2枚引く。

迷い子、フブルスプが呪文の対象になったとき、迷い子、フブルスプをオーナーのライブラリーに加えて切り直す。

1/1
灯争大戦で登場したカード。アゾリウスに所属して毎回ひどい目に遭うホムンクルス。
ETBでカードを1枚引くが、ライブラリーから出した時は2枚になる。さらに呪文の対象になるとライブラリーに逃げてしまうという能力も持つ。
悪用してくれと書いてあるようなテキストは当時様々なプレイヤーによってギミックが試されたが、スタンダードでは同時期に登場した《時を解す者、テフェリー》《夢を引き裂く者、アショク》をはじめとした環境への圧力が一気に強まったこともありさほどの結果は残せなかった。
一方下環境ではかなりのやり手のようであり、特にレガシーではエスパージャンクというデッキでの採用が散見される。《魂寄せ》というカードでETB能力を再利用するギミックが仕込まれており、これとの相性を見込んだもののようである。
ライブラリーに絡んだ能力は、下記の《道迷い》のネタを拾ったものである。

このカードはどちらかというと、その異色の経歴が話題になりやすい1枚。
元々はクリーチャー1体をライブラリートップにバウンスする《道迷い》というカードに描かれた、単眼で小柄なホムンクルスのイラストとフレーバー・テキストでのみ登場したキャラクターだった。つまり局所的に人気な「謎の男コーデル*10」のような存在だったのである。
一応ストーリーもあったが、ラヴニカへの回帰ブロックは「特定のカードにちなんだストーリー」があまり書かれなかったこともあってほとんど空気のような存在だった。
しかしかわいらしいイラストととストーリーでの不憫な扱いのせいか、なんとアメリカで大受けしてしまったという異色の経歴の持ち主。開発側も「このカードの人気が予想外だった」と言うほどで、派生カードはもちろんぬいぐるみなどのグッズにもなっているほど。一時期は公式サイトの404エラー表示にも使われていた。
《囚われの聴衆》でラクドスのショーを無理やり見せつけられたり、バッタモンのようなイラストのカードが数枚出ているなど様々なイラストで顔を出している他、MTGにおけるホムンクルスの「子音のみを並べる」という命名規則にも一役買っている。
ちなみに花粉症。

まるで追記・修正のあるべき姿だ ――― 情報が豊富で、笑いを止められぬ。
――― アニヲスティン四世.



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*1 そもそもMTGのストーリーに絶対善なんて存在しないわけだが、説明重視ということでお許しいただきたい。
*2 次元から他の次元へ行く(次元を渡る)際に必要なもの。それ自体が魔力の塊であり、命を捨てる覚悟さえすれば様々な用途に用いることができる。
*3 神河物語ブロック。「けちコントロール」「ハウリング・オウル」「不朽の理想」といったコントロールデッキが流行していた。
*4 コントロールデッキの勝ち筋をスネ夫ジェイスや《狂乱病の砂》にしたもの。
*5 自身のカードイラストで座っている大仰な玉座も自作品なので、割と見栄っ張りな性格のようだ
*6 ジェイスがイクサランに渡った時に最初に流れ着いた無人島。次元も渡れず記憶も失い、あまりにやることがなさすぎて体を鍛えたり体育座りで絶望したりとジェイスのネタキャラ化に拍車をかけた。ここでやることがない(=役立たず)時期にヴラスカと再会したことから物語が始まっていくという、読者にとってはイクサランのスタート地点に該当する島である。
*7 MTGでも最近はあまり成立しなくなってきたが、ほかのゲームではそもそも「ノンクリーチャー」に該当するデッキ自体が組めない、組めたとしてもMTG以上に珍しいということが多い。
*8 Hate Bear。相手の行動を徹底的に妨害するクリーチャーを並べてテンポを大きくそいでいく白系のコントロールの総称。Bearというのは「もともとのレシピでは2マナ2/2(MTGではこのサイズのカードに熊という俗称がある)のカードが多かったから」というもの。
*9 いずれも小型のトークンを並べる呪文を複数擁していた
*10 初代イニストラードブロックの「アヴァシンの帰還」のフレーバー・テキストで登場した意味深な男。「イニストラード:真夜中の狩り」では彼の再登場を望む声があったものの、その後の再登場は一切なかった。