コラテラル・ダメージ(映画)

Last-modified: 2024-03-16 (土) 13:40:31

登録日:2022/02/19 Sat 07:57:56
更新日:2024-03-16 (土) 13:40:31
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Tag: 映画 アクション映画 アーノルド・シュワルツェネッガー コラテラル・ダメージ テロ テロリズム ラテン農民のラップ 玄田哲章 コラテラル おお、コラテラルコラテラル はいはいコラテラルコラテラル



それはいわゆる、コラテラル・ダメージに過ぎない。軍事目的のための、致し方ない犠牲だ。


目的のための仕方の無い犠牲!?


じゃあこれもぉ!


目的のための犠牲だ!これもそうだ!


これもぉ!目的のための犠牲だ!


これもそうだ!


目的のための犠牲だ、モクテキノタメノギセイダ…


おい、そうだろ!ウルフはどこにいる!?

『コラテラル・ダメージ(原:Collateral Damage)』は、2002年2月4日(日本では02年4月20日)に公開された米国のアクション、スリラー映画。
タイトルの“コラテラル・ダメージ(副次的な被害)”とは軍事用語に於ける本来は意図していない(かった)対象への被害を指す。
上記の“副次的な被害”には、いわゆる“友軍狙撃(Friendly fire)”等も含まれるのだが、特に“コラテラル・ダメージ”と言う場合は多くは政治的にやむを得ない犠牲(民間人への被害)を指し、しかも、コラテラル・ダメージとはその事実の印象を緩和する為(誤魔化す)に用いられるダブルスピーク*1のことであるという。これを踏まえて本編を見ると……。


【概要】

80~90年代のハリウッドを代表するオーストリア産の筋肉俳優アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション映画。

ただし、02年公開と後でまた映画業界に復帰してくれたがシュワちゃんのキャリアでも後期(そして人気が下火になっていた時期)の作品であることからも想像がつくように、全盛期のような単純明快な勧善懲悪物の筋肉映画ではなく、アクション映画ではあるが複雑な構成の脚本に基づく寂寥感すら漂うドラマ性を持った作品となっている。特に、今作のラストは歴代のシュワ映画の中でもトップクラスに後味の悪いものになっている。

今回、シュワちゃんの演じる主人公も警官や軍人や殺人アンドロイドではなく、これといった特殊能力も無いごく普通の消防士と、その筋肉故にやっぱり普通とは言えない要素も多々あるものの歴代シュワちゃんの中では普通の人間に近いリアリティーのあるキャラクター造型である。

なので、予告編で遊び過ぎていることで有名な某局のTVロードショーでは同列でネタにされているが過去のシュワ作品のように気軽に見られるような娯楽作品では無いし、
折角の9.11直後の“テロリズム”を扱った作品という観点から見ても“凡庸なアクション、スリラー映画の範疇に収まってしまっている”として高い評価はされておらず興行的にも成功したとは言い難い。実際の所は9.11が起こったことで公開を延期したり内容に大幅なカットがされるといった処置が施されてから公開されており、その上でこんな評価までされたのでは関係者としても不本意なことだろう。

……が、シュワちゃん映画を見飽きる位に見てきた日本の筋肉映画愛好家(組合員)からはシュワちゃんの新しい側面を見られる作品として評価する声もあり、また冷静になって見てみると過去の筋肉映画とは違ってアメリカを完全な正義として描いていないといった点等に改めて着目する声もある。

……尚、上述までの説明の通り本作は試聴しても気軽に楽しめるような内容ではないし、シュワちゃんが無双することもない(寧ろそんなのを期待すると肩透かしを食らった末に下手に内容にハマると暗い気持ちになるかもというレベルの)作品なのだが、映画自体の暗さに反して何故だか語録として使い勝手のいい名言の宝庫となっており、
組合員謹製によるMAD作品では本作から抜き出した音声が高確率で使われたりしている。
特にラテン農民のラップ?”なんかが有名なのだが、ネタ台詞から入ると試聴した時に本編の暗さに驚かされることになるかもしれない。


【物語】

コロンビア総領事館を狙った爆破テロにより、目の前で愛する妻と子を失ったロサンゼルスの消防士ゴーディー・ブルーアー。

テロの犯人は、クラウディオこと“ウルフ”という男。コロンビア政府や国務省、CIAと敵対する武装ゲリラ“コロンビア解放軍”リーダーである。事件直前に白バイ警官に扮したクラウディオと邂逅していたブルーアーは強い因縁を感じるが、彼の願いも空しく、国内でテロが起きてしまったことで一転してコロンビア問題への介入から手を引く方向に時節が変わり、捜査当局も満足に動かないという流れに。
そんな中、TVで見たゲリラに同情的な専門家が自分の家族の死を“コラテラル・ダメージ(仕方のない犠牲)”と発言したことに怒り心頭となったブルーアーは専門家の務めるオフィスに乱入し大暴れして捕らえられる。
発言が発言だったことと世論が同情的であったこともあってか告訴はされなかったブルーアーだったが、全く動いてくれない国に見切りを付けて自らの手による復讐を決意。
自分で集めた情報と、部下の友人であるという元コロンビア軍顧問の知識も借りて、正規の方法を通さず隣国パナマから徒歩で国境を越えるルートからコロンビア国内への侵入を果たす。

検問でのいざこざからCIAどころかCIA自体から情報提供(●●●●●●●●)を受けた地元警察とゲリラにも身バレしたブルーアーは、それぞれの理由で身柄を狙われ実際に勾留までされてしまうが、運も味方した末に目的だった通行証も手に入れて武装ゲリラの下請けのコカイン製造工場へ潜入。
更に、そこから自らが起こした騒ぎに乗じて本当に武装ゲリラの本拠地にまで到達するのだった。

……いよいよ手榴弾と可燃性ガスを利用した簡易的な時限爆弾を仕掛けてクラウディオの暗殺を実行しようとしたブルーアーだったが、そこに祭りにて出会って強い印象を残していた母子が居るのを見て自分の家族の姿がフラッシュバック。
そして、自分達を止めようと必死で走ってくる慌てたブルーアーの様子から危険を悟った母親の叫びでクラウディオは危機を脱し、遂にブルーアーも捕らえられてしまうことに。

実は、ブルーアーの出会った母子=セリーナとマウロはこれも運命の悪戯かクラウディオの妻と子であったのだ。
介抱を受ける中でクラウディオがゲリラのリーダーとなった経緯を聞かされたブルーアーは、セリーナから自分がクラウディオと同じであると言われ否定するが、セリーナは今はまだ違うだけだと言う。

そんな中、ブルーアーの起こした爆破騒ぎを衛星写真でキャッチしたブラント率いるCIAは、遂にコロンビア解放軍の本拠地を確認すると、捕らえられているであろうブルーアーの救出を名目に武装ヘリによる皆殺しを決断する。
それと時を同じくして、クラウディオが今度はワシントンD.C.での爆破テロに向かった隙に、セリーナはブルーアーを解放し自分とマウロを連れて逃げるように頼み、ブルーアーもそれを受け入れる。
果たして、逃げ出した三人の目前で攻撃を受けたコロンビア解放軍の本拠地は壊滅。
勝利したと思い込み、ブルーアーが無事に生き残っていたことを呑気に称える様子すら見せていたブラントだったが、クラウディオが次なる爆破テロを起こそうとしているという情報を知ると、ブルーアーとセリーナを連れてワシントンD.C.へ。

コロンビア解放軍の本拠地が壊滅したことを受けて、遂にFBIの指揮の下でCIAや国務省も協力しての捜査体制が敷かれることとなる。
捜査当局はセリーナの協力を得てクラウディオがターゲットにしようとしているビルの特定と、爆破テロ前の身柄の確保を目指すのだが……。


【登場人物】

  • ゴーディー・ブルーアー
    アーノルド・シュワルツェネッガー
    主人公でロサンゼルスの消防士(隊長)。
    ドイツ系移民なのかコロンビアではドイツ人を自称していた。(久々に『コマンドー』のようにオーストリア出身であることを活かしたのだろうか。)
    テロのターゲットとなった領事館の入ったビルのオープンカフェに息子を迎えに行く約束をしていたが、遅れて到着したことで奇しくも災渦から逃れることになる。しかし目の前で妻と子が死ぬ瞬間を目撃してしまった。
    思わず助けに駆け出そうとして道路に飛び出したことでタクシーを轢いてに轢かれしまうが、右足に大怪我こそ負ったものの意識はハッキリしており、TVの報道にて自分がカフェに到着した直後に話しかけた白バイ警官こそが犯人であることに気付き、その男クラウディオを命を賭けて追うことになる。
    消防士である為か非常に頑健な肉体を誇るのは普段のシュワ映画と同じで、本職の兵隊すら焦らせる程に腕っ節も強いものの、本作では戦闘のプロではないからか大立ち回りはしても止めを刺し切れずに苦労したり、逆にやられてしまったりという場面が多い。そうした演出の方向性は理解出来るのだが、どう考えても相手を倒せていそうな状況でも倒せていないという場面も。
    一方消防士としてのキャリアから火に関することはもちろん、爆発物関係に関わった経験もあるのか、それらの高い知識があるようで、それが活かされている場面も見られる。
    また、非戦闘職という設定もあってかブルーアーは本編で一度たりとも銃を使わないシュワちゃんである。
    吹替はソフト版とフジテレビ版があるがブルーアーはどちらのバージョンでもお馴染み玄田哲章が演じている。
  • ピーター・ブラント
    (イライアス・コティーズ)
    CIAエージェントの強面で超タカ派のハゲ。
    コロンビアの国内問題担当なのだが、コロンビア政府とのみ関係の強化(傀儡化)を図り武装ゲリラについては闘争や蜂起の理由を考えようともせずにただ犯罪者だと断じており、それ故にクラウディオ達にとって憎んでも憎み足りない相手となっている。
    ロス爆破事件についても原因はブラントがコロンビアでやり過ぎたことだと槍玉に挙げられており、米国国内でテロが起きてしまったことで時節が変わりリベラル派の上院議員達の意見が大きくなった末に、政府が方針転換しコロンビアからの撤退を命じられた時には激怒していた。
    米国内にも入ってくる麻薬を撲滅出来るのなら武装ゲリラの完全壊滅(非戦闘員含む)も辞さないという過激な思想の持ち主。コロンビア国内にブルーアーが現れたという情報を得た時も、責任を追及され国外退去が命じられて憤懣のやる方なき状態だったということを差し引いても、身柄の保護を考える所か反対にゲリラに情報を流して捕らえさせ、それを利用してゲリラへの攻撃の理由にしようとしていた程。
    実際、ブルーアーが予想外にも本当にクラウディオの下まで辿り着いていたことを知ると、救出を名目にコラテラルするために武装ヘリ二機で急襲し、空からの一方的な攻撃で本拠地を破壊し尽くした
    ……一応ストーリー上は味方側ではあるのだが、以上のように倫理面では全く正義側とは呼べない立ち位置のキャラクターであり、メタ的にブルーアーにも“悪役”呼ばわりされる場面がある。
  • セリーナ・ペッリーニ
    (フランチェスカ・ネロ)
    クラウディオの妻。
    コロンビア国内に入り込んだ直後にブルーアーが出会い、互いに素性が解らない頃から強い印象を残し合うことになる。
    息子として失語症の少年マウロを連れているが、実はマウロは本当の子供ではなく両親が犠牲となったので養子にしただけで、本当の娘であるソフィアはCIAの協力を得てゲリラを掃討しようとした軍の攻撃の巻き添えで死んでおり、それがクラウディオがゲリラになった理由だと捕らえられたブルーアーに明かす。
    武装ゲリラのリーダーとなってしまった夫の現状に内心では疲れきってしまっているようで、ブルーアーが殺されないように働きかけていた上に、クラウディオが新たな爆破テロへと出掛けた隙にブルーアーを解放して自分とマウロの保護を頼んでくる。
    終盤、マウロがブルーアーに懐きすぎていたことで仕方なく連れ出すのを諦める場面があるが……。
  • クラウディオ・ペッリーニ(ウルフ)
    (クリフ・カーティス)
    政府やCIAと対立を深める武装ゲリラ“コロンビア解放軍”のリーダー。通称は“ウルフ”。
    ロス爆破事件の実行犯でありブルーアーの家族の仇。
    高いカリスマ性と決断力を持ち、配下の僅かなミスや政府に協力した疑いのある集落にも苛烈な報復を加える冷酷さで仲間からも恐れられる。
    妻であるセリーナ曰く元教師とのことで、残酷ではあるが確かに理知的な面が見られ、米国国内での活動時には完璧に白バイ警官の役を演じ*2、高級スーツも着こなして全く周囲に疑わせない程に溶け込むことも可能。
    自らを追ってきたブルーアーを当初は“ただの消防士”と侮り、捕らえて身代金でも取ってやると言っていた位だったが、本当に自分の目前にまで現れたことで後には明確に“敵”と呼ぶ。しかしその一方で何故だか不自然にも生かし続ける。
    終盤、次なる爆破テロをワシントンD.C.で起こす為に再び米国へ。妻のセリーナが捜査当局に協力しているとも知らずに遂に尻尾を掴まれたと思われていたのだが……。
  • フェリックス・ラミレス?
    (ジョン・レグイザモ)
    詳細は何故かある個別項目へ。
    暗く重くなりがちな本作の数少ない笑える清涼剤でラテン農民のラップとオーイエイエイエの人。しかし、彼が事切れる間際のブルーアーとの目線のやり取りと表情は、流石は名バイプレーヤーのレグイザモと言える切なさで決して笑えるものではない。
    ちなみに、どちらも原語のニュアンスを忠実に再現しようとした結果の翻訳である。
    そして、ネタにされがちなラテン農民のラップだが、原語だと冒頭のリズム部分がボイパ風だったりとまだまともに聞ける
  • ショーン・アームストロング
    (ジョン・タトゥーロ)
    コロンビア国内で上手く立ち回って暮らしているイタリア系カナダ人。(此方も演じるシモンズ捜査官タトゥーロの出身を活かした設定だろう。)
    フェリックスの所に機械工として出入りしてゲリラとも多少の付き合いがあり、先に勾留されていたブルーアーに信用して通行証を買える相手として筋肉的直感で目を付けられ、仲間の奪還を目論むクラウディオによる攻撃で警察署が炎上した際に、ブルーアーに助けてもらうことを条件に通行証を渡すように迫られた。
    当初は自分の生命線として頑なに断っていたものの、いざ通行証を渡す気になった後は潮時が来たと悟ったのかコロンビアへの未練も無くしたようで、情報をくれるようにと追加で金を払ってきたブルーアーに明らかに報酬以上の情報を流して送り出した。
    イタリア系のためにそこそこにモテるのかトラブルの大半は女絡みらしく、劇中での勾留も公然猥褻が原因。(フジ版吹替では“何もしてないのに女がしゃ◯ってきた”)
    ブルーアーにもフェリックスに会えたら「自分が女絡みのトラブルで捕まって代わりに来たと言え」とアドバイスしており、完全に持ちネタとなっている模様。
以下ネタバレ

実は、武装ゲリラの最終的な意思決定権(少なくともクラウディオが闘争を続ける理由)を持つのはクラウディオではなくセリーナ
真の目的はロス爆破事件の時と同じくコロンビア政府と協力する国務省高官とCIAに対するテロであり、ブルーアーに身柄の保護を求めたのも、ダレス国務省ビルにマウロの玩具に仕込んだ爆弾を持ち込むのが目的であった。
マウロとセリーナの不自然なやり取りから、ブルーアーのみがその事実に気付くことに。








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*1 “二重表現”と訳される修辞技法。元ネタはディストピア小説『1984?』から。専ら大規模解雇を事業縮小と言い換えたり、ダウンサイジング・リストラと伝えて言葉の意味をよくよく考えないと伝わらないようにしたりする湾曲的な表現方法のこと。そして、コラテラル・ダメージの場合は自分達の過ちを耳慣れない言葉にして曖昧にして伝えるという用法に入る。…ウソツキミィ!
*2 この時居合わせたブルーワーと会話した際も全く怪しまれることもなかった