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「………ここは………」
キラ・ヤマトが目を覚ましたのは、ストライクのコクピットの中だった。
奇跡的に外傷は擦り傷、切り傷のみで、大した傷はなかった。
「うん、と………」
キラはぼんやりする頭で考えた。
自分の乗るストライクは、後ろからアスラン・ザラの乗るイージスの特攻・自爆を受けた。
すでに機体のバッテリーはなく、むき出しだったコクピットもセーフティーシャッターに覆われている。
「おい、無事か!…えているか!」
外からの叩く音が聞こえる。と同時に
「おい、キラ!キラ・…と!」
「カガリ………?」
ここでキラは気付く。自分の脇腹に刺さる破片とそこから流れ出るおびただしい量の血を………。
「おい!聞こえ………へん………お………」
カガリの声が遠のいていく。
「…………あれ…?」
そしてキラは意識を手放した。
教会
「おやおやおや…。」
マルキオ導師は残念そうな声を出した。
「申し訳ありません、マルキオ導師。確保には失敗しました。」
「いいのですよ、ロウ・ギュールさん。あなたには十分役目を果たしてくれました。あとは我々に任せて…。」
「は……。」
マルキオ導師は電話を置いた。
「あら?だめでしたの?マルキオ導師?」
マルキオの背後から甘い声が聞こえる。
「は、はい!申し訳ありません!つ、次こそは………」
「そう言っていつも失敗しますわね…悪い子にはお仕置きを………」
「ひぃぃ!ラクス様!おやめくださいぃぃぃ!」
後ろのピンク色の髪の後ろから屈強な男が2人現れ、マルキオ導師を引きずって行った。
「ふふ♪そう、キラは私の物なのです。逃がしませんわよ。キラ……」
恐ろしいほどの狂気は…プラントのアイドル、ラクス・クラインから発せられていた。
「オーブから、キラ・ヤマト少尉を回収したとの情報が入りました!」
アークエンジェル・ブリッジ。そこで、通信を受けたアークエンジェル副長、ナタル・バジルールが報告した。
「本当!?バジルール中尉!?」
そう聞くのは艦長のマリュー・ラミアス。
「はい。ただ、腹部裂傷、出血多量で現在、意識を失っている模様です。」
そう報告するバジルール副長の目から、大量の涙があふれていた。
彼女だけではない。ブリッジにいる誰もが喜び、安堵していた。
いつもは感情をあまり表に出さない操舵手、アーノルド・ノイマンも上を向き、鼻をすすっていた。
「オーブは少尉を治療後、回復の後、アラスカへ移送するとのことです。」
「そう……」
アークエンジェルの艦橋は柔らかな雰囲気に包まれた。
その裏に恐ろしい陰謀が隠れていることと、迫る危機に気付かずに………