2
「う………。」
ザフト軍のエースパイロットの証である赤服を着る、
現プラント評議会議長・パトリック・ザラの息子、
アスラン・ザラが目を覚ましたのは、オーブの輸送機の中だった。
「気が付いたか。」
「………?」
そう声をかけるのはオーブの姫、カガリ・ユラ・アスハ。
「………ここは?」
「オーブの輸送機の中だ。安心しろ。すぐにザフトのカーペンタリア基地から迎えがくる。」
「………」
そう聞いた後、アスランは遠い空を眺め、一言も声を発しない。
それはまるで、死んでしまった人がその向こうにいる様な………
その人に意識下で話しかけているような目だった。
「………ふぅ。」
それを見かねたカガリが声をかける。
「キラなら無事だぞ。ブリッツのパイロットも回収した。」
「…!ニコルが!?」
「ああ。ただ………」
そこでカガリは目を伏せる。
「両足を切断した。」
その宣告にアスランは目を見開く。
「本当………なのか?」
「………ああ。」
無機質な機械音。周期的な呼吸。一息ごとに人口呼吸器のマスクが白く濁る。
アスランと同じ隊に所属していたザフト赤服のニコル・アマルフィ―。
今は機械につながれ、眠っている。
「…………………」
その傍らにベッドで天井を見上げるキラ。
「……………………トール………」
以前、ストライクが大破した戦いで、スカイグラスパーに登場していたトール・ケーニヒは戦死した。
親友・アスランの乗るイージスに撃墜されて。
「僕は………どうしてこんなことをしてしまったんだろう。」
自分が敵の機体を撃破しているときは、必死なこともあり、何も感じなかった。
自分の友達が殺されることで、こんなに喪失感があるなんて………。
アスランがあんなに激昂したのも、今ではわかる。
「……………………どうしたんですか?」
突然隣から声をかけられ、キラは思わず身構える。
「大丈夫ですよ。動けませんから。」
「あなたは………」
「ブリッツのパイロット…ニコル・アマルフィ―です。」
「………ストライクのパイロット、キラ・ヤマト少尉です。」
お互い敬礼をしあい、ぎこちなく笑った。