Ace-Seed_∞_第05話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 02:15:17

注釈:8スレ目、883氏が書いたSSである。


ん、座りたまえ。今コーヒーを出そう。それにしても
こんな片田舎までよくきたね。ご苦労なことだ。
で、何を聞きたいんだっけ?あぁ、「リボン付」の事か。懐かしい話だな。
当時僕は「砂漠の虎」なんてシャレた異名をもらっていてね。
実際アフリカで随分活躍したモノさ。あの時は相手がかのエリート軍団の
クルーゼ隊が討ち漏らした新造艦、おまけにとんでもない腕前のMS付きって聞いてね。
久々に手応えがありそうだって喜んだものさ。ま、実際はありすぎたんだが。

《こ、こんなことが…》
《隊長!指示を!早く!》

最初はお手並み拝見と威力偵察をかけたんだが、
全部返り討ちにされてしまった。それも艦の上からの射撃で、だ。
高機動機の代名詞のバクゥをだよ?
さも翻弄されてるかの様に弾をバラまいて実は進路を限定させていて
ビーム砲で撃ち抜く…。ザフトのトップガンにだってそうそうできることじゃない。まるで機械だ。
初戦とその後の二回戦は大敗北、僕も危うくやられる所だった。

絶対に油断して勝てる相手じゃない。それだけが収穫だった。
その後宇宙からクルーゼ隊の残りが足付きを追って降りて来てね、
彼らの話からでもあのパイロットが尋常じゃないことが分かる…。
震えたね。武者震いだ。怖くなかったかって?
そりゃ確かに怖かったさ。でもそれ以前に強い相手と闘うのは
戦士冥利に尽きるってものだからね、慎重に作戦を立てて決戦に臨んだ。
まず戦艦の主砲で不意打ち。で、MSの射程外から
撃ちまくって彼を引きずり出し、バクゥと僕で包囲する。残りが足付きを沈める。
そういう作戦だった。でもそんな策でさえ意味を成さなかった。

《くそっ、足をやられた!》
《く、来るな!来るなァ!!》
《嘘だろ!?ナチュラルにあんな機動出来んのか!?》

その時彼のMSは翼をつけた格好で空中を跳ねる様に戦ってた。
一気に間合いを詰めて斬りつけると同時に蹴りを入れて
反動でまた飛んで斬っての繰り返しだ…。無茶苦茶だよ。
どんだけのGがかかるか想像もできない。
更にとんでもないことに彼は母艦を撃とうとしてる機を優先で叩いてるんだ。

十字砲火どころか米字砲火に晒されてもスルスルと避けてく。
あの機体は幻かと思ったくらいだ。壊滅にそう時間はかからなかったな。
いつの間にか味方は2、3機、しかも全員ボロボロでね。部下に撤退を命じた。
でもこのままじゃ「砂漠の虎」の名折れ、彼に一騎討ちを挑んだんだ。

《この勝負…君の勝ちだ!》
《………》

馬鹿なことをしたものだ。おかげで大切な人を失った。だが憎しみは無い。
それは向こうとて同じだろう。今はこの生活に満足している。
妙なもんだね。
ザフトの元エースが喫茶店経営なんてさ。
もういくのか?彼に会ったら伝えてくれ。一度来てくれ。特製のブレンドを用意してるからってね。

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