Ace-Seed_∞_第06話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 02:20:15

アイツか? あぁ、そこらへんのヤツよりは知ってるよ。
一応、アイツの僚機として先の大戦で飛び続けたしな。
まぁ、地上じゃよくわからないヤツだった。
どうにもぼんやりとしててさ、見てるこっちが不安になるんだ。
だが一度空に上がれば違う。              ウォーバード
腕前、判断力ついでに度胸と運、どれも一級品の凄まじい戦闘機乗りだ。
それはMSに乗ってからも変わらなかったよ。
型破りの、“青いリボンの死神”。
ただ余りにも型破りなせいで指揮とか編隊飛行は苦手だったみたいでな。
結局、アイツの僚機として終戦まで行動したのは俺だけだった。
俺自身、振り落とされまいと必死で付いていったんだが。

アイツと初めて出会ったのはあのクソったれのグリマルディさ。
仲間をあの仮面野郎のせいで失った俺は、偶々ユーラシア所属でここに来ていたアイツと出会ったんだ。
最初に見た時は本当に人間かと思ったよ。
アイツのメビウス・ゼロはガンバレルを攻撃用端末として使わずに、バーニアとして使ってたんだ。
それを駆使した9Gギリギリのとんでもない機動。
……正直、あそこまで機体と肉体の限界を見ようとするヤツってのを、俺はアイツ以外見た事がない。
しかもそれを楽しんでるんだ。有り得ないよなぁ。

けど、それもサイクロプスが起動するって聞くまで。
その知らせを聞いた瞬間、俺とアイツはバーニアを全開にして逃げ出したよ。
身も蓋もないが、死にたくはなかったからな。
ようやく効果範囲外に逃れて一息ついて、そして二人で大笑い。
そこでようやく、相手が人間だって信じる事が出来た。

次に出会ったのは中立国だったオーブのコロニー“ヘリオポリス”。
大西洋連邦の新型MS“G”の護衛としてやって来たら、何故かアイツが居た。
その腕を理由に、ユーラシア連邦から派遣された“G”のテストパイロットとしてな。
で、あの襲撃事件があって、俺やアイツ、そして“大天使”は慌てて“ヘリオポリス”から出る羽目になった。
ここからはアンタらが知っての通りさ。
クルーゼ隊の追撃を振り切り、月面でのザフトの大攻勢をしのぎ、その後は馬車馬のように各地を転戦して、
そしてあの敵も味方も狂ってたヤキン・ドゥーエ。
そこに至るまで、俺はアイツを眺めて来たが……まぁ、大体はさっき言ってた通りさ。
付け加えるなら、瞬時に戦況を見極めて、そして迫る敵を全て薙ぎ倒す戦いの申し子。
あちらさんに“死神”って呼ばれていたっていうのも納得だ。
追い掛けて飛ぶこっちは苦労しっぱなしだったんだがね。
ついでに整備班だったおやじさんやうちの嫁さんもだったんだろうけど。

……だがまぁ、地上じゃあそんなの信じられないぐらいぼんやりしてて、情けないというか。
何もない所で転んだりは普通しないよなぁ。
アレを見ても、“リボンの死神”だって信じられるヤツがどれだけ居るのやら。
よく言ってたよ。『敵を倒すとか、生き残るとかより、ただ空を飛んでいる方が楽しい』
そんなヤツだからこそ、空を制したのかもな。

さて、俺から言えるのはこんなもんだ。ヤキンの後のアイツの行方は知らないぞ。
俺は今は左遷されてこんな所で教官やってる身だからね。
それは多分“大天使”に乗っていた連中の殆どが同じような状態だろうさ。
……知ってそうなのは、今も“大天使”の艦長をしている彼女ぐらいかな。
んじゃ、俺はこのへんで失礼するよ。とっとと仕事を終わらせて帰らないと、うちの嫁さんがすねるからな。

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