code geass-seed_05話

Last-modified: 2022-04-26 (火) 12:42:39

第5話 夢と現実

 

「ようこそ。歌姫の騎士団へ」

 

 平和…戦争の無い世界を目指し、決めた名前…。
 小惑星資源発掘基地を改造した、その場所に招き入れるラクス。
 激戦を繰り広げ、ここまで辿り着いたアークエンジェルのクルーはようやく落ち着いたといった形で、降りてく

る。
 アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスとオーブ首長国連邦カガリ・ユラ・アスハ、キラ・ヤマト、アスラン・

ザラを出迎えるラクスとスザク。

 

「こうして再び会うことになるとは思いませんでした」
「それは私も同じことですわ。キラもアスランも…剣を交えることなくこうして一緒に姿を見せてくれたことを…

…大変嬉しく思います」

 

 ラクスはキラとアスランが、自分の願った通りに復讐の連鎖を止めてくれたことに、自分が1つの成果を導き

出せたと感じていた。
 そう、復讐の連鎖、暴力の応酬は止めることができる。
 それは、1人1人の努力によるものだ。

 

「…初めまして、枢木スザクといいます」

 

 スザクは、キラとアスランの前に姿を現し、
 ラクスが進めた、ブリタニア軍にいたときの、騎士爵を任命させられたときの派手な白い正装で挨拶をする

 

「君が…」

 

 噂でしか聞いたことがなかった…ラクスの護衛を担当する騎士。
 そのMSの操縦技術と、系統不明な、MSはザフトのありとあらゆるMSが歯が立たないという。

 

「よろしくね、スザク君」

 

 キラとスザクは笑顔で握手する。
 どちらも、あんまり人に対して敵意を向ける人間ではないのだろうか、アスランは、この2人なら仲良くなれそ

うだなと感じた。

 

「こちらこそ、今までラクスを守ってくれてありがとう。その類稀な戦闘技術…俺にも今度是非見せて欲しい」
「そんな…僕は、まだまだ宇宙戦闘においては素人で、それに機体におけるバックアップもかなりあるから…

…」

 

 謙遜するスザクの背中から顔を出すロイドと申し訳なさそうに頭を下げるセシル。

 

「はぁ~~い!その機体を設計しましたロイド・アスプルンドだよぉ~~!」
「せ、セシル・グルーミーです。どうぞよろしくお願いします」

 

 キラはそんな2人に対しても笑顔で挨拶を交わすが、アスランは逆にますます怪しく感じてくる。
 1人の女性はまともだが、まず機体が系統不明のオリジナル機体、そして彼らがコーディネイターなのかど

うか不明であること…。
 なによりも、この博士は普通ではないことは明らかだ。

 

「なーにー、ジロジロ見ちゃってぇ~僕に気があるのかなぁ?」

 

 突然顔を近づけてくるロイド。

 

「バっ!な、なにをいっているんですか!?あなたは?」
「アハハ、冗談だよ冗談、よろしくねぇ~~」

 

 アスランは本当にこんな人たちと一緒にやっていけるのか、凄く不安になりだしていた。

 

▲▽▲

 

 エターナルにて、今後の方針決めていく話合いが始まる。
 ラクスとカガリ、マリューの代表者によって始められる。みんなの意見も問いたいところだが、
 そんなことをすれば、人数が多くて混乱するだけだ。
 別室にて、その会議のことはカメラで中継するということとなった。
 怯えるアスランを笑うキラとスザクがいる中…3人が席につく。

 

「私達の、想いはひとつだと思ってここにいると、私は考えています。
 この無益な争いを終わらせるため、苦しむ人々を救うためだと……」
「…それに関しては同意します、ラクスさん。ですが…」
「あぁ、平和を私達が願ったところでそれを快く思わない人間もいる」

 

 マリューとカガリは実際にそれをイヤというほど経験をしてきた。
 勝利のために、簡単に人の命を切り捨てることができるものたちのことを。

 

「彼らが存在する限り、戦争はなくならない!連合…いや、大西洋連邦は止めなくては、そのために…私の父

は!」

 

 ラクスは、うつむく。
 復讐の連鎖は、ここにも生まれている。いや、どこにかしこにも存在している。
 だけど、それが戦いを生み、戦いにと私達を走らせる。

 

「私は、戦闘を望みません」

 

 ラクスの言葉にマリューとカガリはラクスを見る。その言葉に驚いたのは別室で話を聞いていたアスラン。
 キラとスザクは黙ってラクスの言葉を聞く。
 ラクスは強い気持ちでカガリとマリューの2人を見る。

 

「私は、そういった戦いの無い国をつくろうと考えています。そして大々的に宣伝します。
 そこではコーディネイターやナチュラルも差別無く過ごすことができる場所。
 戦争に疲れた人たちは誰であれ招き入れます。私達が今必要なのは希望だと思います。
 私達は対立する二つの種族は憎しみ合うことなく、仲良くなれるということを見せ付けるべきだと思うんです

 

 その、あまりにも突拍子の無い言葉の連続に、なんといっていいかわからないマリュー。
 カガリは机に手をおき

 

「そんな生易しい夢のような話ができると思っているのか!?オーブがそうだった、
 コーディネイターとナチュラル、その垣根を越えた優しい国だった。
 それを奴らは、奴らは破壊したんだ!」

 

 カガリの大きな声をたいしてもラクスは、譲らない。

 

「……だからといって、その復讐のために連合を討つというのでは彼らと同じです。
 それに、今の戦力と、さらなるMSの量産を行い、国を防衛する部隊を作ります。
 あくまで、それは防衛部隊ですから、攻めることはしません。
 私達が、国の1つに纏まった国の目標を示せば、二つの国も世論がかわって……
 きっと私達に賛同してくださいますわ」

 

 カガリはそのラクスの言葉を聞き、話にならないといった感じで席について腕を組む。
 ラクスにとって、それは大真面目な考えであった。
 戦争だけが解決手段ではない。そんなことをすれば、結局は連合軍やザフトと同じになってしまう。
 それではいけないのだ。
 復讐の連鎖、暴力の応酬を止めるには、それ以外の方法を求めなくてはいけない。

 

▲▽▲

 

「……スザク君、彼女の考えって」

 

 セシルは、スザクの背中を見ながら、問いかける。
 ロイドもセシルも、そしてスザクもなんとなくわかっていた。
 ラクスはかつてスザクを認めたブリタニア皇女であるユーフェミアに似ている。
 この考えも、特区日本と考え方が似ている。

 

「……ユフィも、きっと同じことを言うでしょうね……」
「だからかい?彼女を守りたかったのは?」

 

 ロイドはスザクを見つめながら聞く。そんなロイドに対してスザクは首を横に振り

 

「いいえ。僕は…ラクス・クラインとして彼女を見ています」
「……だったら、いいんだけどね。変に彼女の面影を見るとかえって辛くなるからさぁ~」

 

 ロイドはそういって再びテレビ画面を見る。
 ユフィ……。
 自分の世界では、彼女はもういない。
 ゼロ=ルルーシュのギアスにより、彼女は錯乱し、そして殺された。
 彼女は平和を求めた。自分はなにも出来ないかもしれないと思いながらも、それでも必死になって……。

 ラクス、君も…彼女と同じく、平和のための険しい道を歩もうというのかい?

 

「…ラクスさん、あなたのおっしゃりたいことはわかります。
 戦いをしながら、平和を訴えてしまうことは矛盾でしょう。
 ですが、今の現状を考えてみてください。私達には満足な装備も補給も出来ない。
 さらには、連合は私達を…ザフトは貴方方をこのまま見逃すはずは無いでしょう。
 きっと追撃してきます。そのときに、彼らは私達が国を作り、そして平和を訴えたところで、
 おそらく、なんの迷いもなく武器を撃って来るでしょう。
 私やカガリさんは、たくさんの人員の命を預かっている身です。
 撃たれたら撃てといわざるを得ない」

 

 マリューは、ラクスに対して落ち着いた言葉で言う。
 ラクスはマリューの言葉に言い返そうとした。だが、マリューは言葉を続ける。

 

「……ラクスさん、私達は追撃者を排除し、戦闘の火種となるものと戦います。
 誤解なさらないでください。私達もあなたと同じ…、戦争をなくしたい。
 ただ、そのためには…戦うことも必要なんです」
「……」
「少し、休憩にしよう。お互い考えを纏めるためにも」

 

 カガリがラクスの沈んだ顔を見て提案する。ラクスは、席をたち部屋を出ていく。
 スザクは彼女の元にいこうとしたが、キラが止める。

 

「……きっと、ラクスもわかっているはずだから。それに、1人で考える時間もあるし」
「…はい」

 

 キラに言われて、スザクは頷き席に着く。

 ……。

 ラクスの言葉は『理想』なんだ。
 それは悪いことではない、素晴らしい目的であり、いつかは叶えなくてはいけない事。
 だが、それをするには、今という世界はあまりにも狭く息苦しい。ラクスも、今それを痛感していることだろう

 

▲▽▲

 

 窓から宇宙を眺める……。
 ラクスは、壁にもたれかかりながら、自分の考えと周りの考えのギャップに戸惑っていた。
 戦いでは何も見出せない。
 復讐と暴力だけが永遠と続いていく。なんでそれがわからないだろうか。
 だけど……マリューさんの言うこともわかる。
 でも、それは防衛という手段を持ってどうにかすれば……。
 そんなに人間が信用できないの?
 頭の中に様々な考えが浮かんでは消えていく。

 

「…私は、戦いたくない。戦い、相手を傷つければそれは……
 その方の大切な人を怒らせ、憎しみが生まれていく……それではいけないのです」

 

『……文句を言うものがみんな、いなくなればいいのに』

 

 ラクスはその突然聞こえた声に驚いて後ろを振り返る。
 だが、そこには誰もいない。気配さえ感じなかった。
 今のは一体……幻聴?疲れているのかしら。
 額を抑えるラクス…そんな中、突如として艦内に警告音が鳴り響く。
 ラクスは立ち上がりエターナルの艦橋にと移動する。
 エターナルの艦橋には既にバルドフェルドやスザクが待機している。

 

「アークエンジェル、クサナギも出港準備完了です」
「どこの軍がここの場所を?」

 

 ラクスは、前面の画面に敵の姿を映し出す。
 そこに映し出されたものを見てロイドとスザク、セシルは目を見開く。
 それはアヴァロンⅡ……ロイドたちが乗ってきた新造戦艦であり絶対守護領域を装備した強力な戦艦であ

る。

 

「ぼ、僕の艦なのにぃ!!」

 

 ロイドは画面を指差して大声を上げる。そんなロイドを抑えるセシル。

 

「スザクたちの?」

 

 ラクスはスザクやロイドたちを見る。
 すぐに、他の艦であるアークエンジェルとクサナギから通信が入る。

 

『あれはザフトの艦で間違いないんですか?』
『敵であるというなら、私達も迎撃に』

 

 ラクスは戸惑う。平和を訴えるためには、自らが手を出すわけには行かない。
 だからといって、このままでは敵に…。
 強烈な震動が、艦内に響く。

 

「撃ってきた!?」

 

 バルドフェルドは、こちらに接近するその艦を見据える。
 ラクスはどうしていいのかわからない。
 このまま戦いを続けることは、理想を裏切ることになる。そんなことは…
 自分は、戦いたくない…戦えばみんなが憎まれる。そんなことは出来ない。

 

『だったら、それを知っている人間をみんなあなたの言うことを聞かしてしまえば?』

 

 まただ。
 さっきから声が聞こえる。
 ラクスが辺りを見回したところで誰もいない。
 さらには、自分以外どうやら誰も聞こえていないようだ。
 なぜ、こんなときに…ラクスは人にわからないように、頭を抑えながら…冷静に考える。
 ここで動揺すればスザクやロイド、セシルに迷惑がかかる。自分はクイーンなのだ。
 人を先導するものだ。
そんな困惑するラクスを見てスザクは、前に出る。

 

「各艦を出撃させてください。以後は迎撃体勢に……」
「スザク!?何を勝手に…」

 

 ラクスはスザクの言葉に思わず声をあげる。
 だがスザクは動揺せずラクスを見る。

 

「後で処罰等は甘んじて受けます。……これは僕の独断です。
 ラクスの命令ではないことを承知ください」
「……スザク」

 

 それは、スザクの心遣い…。
 理想を掲げるものからの口からは決して戦うことをむける言葉を出してはいけない。
 ラクスの気持ちを察したスザクの思いやりである。
 ラクスは自分の情けなさとスザクの優しさに、何も言えなくなってしまう。

 

「ロイドさん、セシルさん…以後の僕のオペレーターをお願いします」
「…わかったよ。くれぐれも気をつけるんだ、あのアヴァロンには……」
「はい!」

 

 スザクがブリッジを出て行こうとする直前、ラクスは何かを告げなくてはいけないと、
 スザクのほうをむき、声をあげる。

 

「スザク!……頑張って」
「…イエス・ユア・マジェスティ…」

 

 スザクはラクスの方をむくことなく、それだけ告げてブリッジを出て行く。
 ロイドとセシルは、画面に映るアヴァロンを見ながら、
 たった一隻でここまで追撃をかけるものたちが果たして誰なのかを考えていた。

 アヴァロンⅡでは、小惑星地帯から姿を現す戦艦たちを確認していた。
 ブリッジではミサイル攻撃の指示が出されており、さらに小惑星地帯に目掛けミサイルを撃ち続けている。
 戦闘ブリッジに立つ男は、小惑星地帯から現れる戦艦を見て口元を歪ませる。
 再び、このような戦場に赴けるとは思えなかったのだ…当然といえば当然だろう。

 

「反逆者、枢木スザク…ここで引導を渡してくれる」

 

 それこそは、かつてシャルル・ジ・ブリタニアのナイトオブワンであった男、ビスマルク・ヴァルトシュタイン。
 その片目を赤く輝かせ、戦闘ブリッジに立つ。
 アヴァロンⅡからは、複数のMSが出撃を始めていた。

 
 

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