地籍調査とは
土地分類調査、水調査と並び、国土調査法に基づく「国土調査」の一つであり、主に市町村が主体となって、一筆(土地の所有権等の公示のために人為的に分けた区画のこと)ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量するものです。
「地籍」とは「土地に関する戸籍」のことをさす。
我が国において、土地に関する記録として広く利用されている登記所に備え付けられている地図は、その半分ほどが、いまだに明治時代の地租改正時に作られた地図(公図)などをもとにしたもので、公図は、境界、形状などが現実とは違う場合があり、また、登記簿に記載された土地の面積も、正確ではない場合もあるのが実態だ。
地籍調査が行われると、その成果は登記所に送られ、登記所において、これまでの登記簿、地図が更新される。更新された登記簿、地図は、その後の土地取引の円滑化や行政の効率化に役立つことが期待されている。
地籍調査の実施主体は市町村などの地方公共団体や土地改良区などの団体であり、土地の所有者は境界確認の立会いと調査成果の確認を行うのみである。土地の所有者が現地立会いに協力せず、境界を確認できなかった場合には、筆界未定として処理され、後に境界を確認する必要が生じたとしても、所有者の費用負担で調査を行わなければならなくなる。
地籍調査の現状
2006年現在、調査対象面積の半分も完了しておらず、特に都市部(人口集中地区)については2割程度しか実施されていない。
東北、九州地方などでは進捗率が高いのに対して、土地利用が複雑な三大都市圏周辺部では調査がほとんど進んでいない状況にある。
調査開始から55年間で進捗率が47%という現状からすると、現在のペースのままでは、完了までに60年以上を要することになる。調査完了までの間、調査を実施していない地域については、土地の位置や面積が正確でない図面が使われることになる。
調査が進まない原因
★人員不足
行政需要が多様化する中、地籍調査の実施主体である市町村などの地方公共団体において、調査の実施に必要な職員を確保することが困難になっている。
★財政問題
地籍調査に要する経費のうち50%は国が負担し、残りを都道府県と市町村で25%ずつ負担する。都道府県と市町村の負担分の8割については特別交付税が交付されるので、実質負担は5%であるが、厳しい地方の財政状況の中、予算を確保することが困難になっている。
また、市町村が調査の実施を要望していても、都道府県の予算不足が制約となり、市町村の要望が認められないこともある。
★市町村の意識
地籍調査は自治事務であるため、市町村が自らの判断により実施するか否かを決定することになる。しかし、2006年現在で340を超える市町村が調査に着手しておらず、調査の効用を十分に理解していない市町村がいまだに存在している。住民の協力 [編集]
地籍調査の実施には土地の所有者の協力が不可欠であるが、境界問題について「寝た子を起こす」ことになりかねないとして、調査への協力に消極的な場合がある。
地籍調査の法的効力
地籍調査は、地租改正の際に作成された公図上の筆界を現地に復元し、これを確認するものであり、現在の所有権の範囲に基づいて新たな筆界を創設するものではない。したがって、調査前に土地の売買や交換が行われていたとしても、それに基づいて境界線が形成されることはなく、元々存在した筆界の位置を確認するだけである。しかし、中には、土地の売買等に伴う税金(登録免許税など)の支払いを免れるため、調査担当者を騙そうとする悪質な土地の所有者も存在するということである。
地籍調査の進め方
①住民への説明会・・・・・・・・調査に先立って、住民への説明会を実施
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②公共用地との境界確認・・・道路・水路などの公共用地に、資料を参考にして仮杭を打ち、
後日、隣 接の土地所有者に確認
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③一筆地調査・・・・・・・・・・・一筆ごとの土地について、土地所有者等の立会などにより、
所有者、地番、境界等の確認
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④地積測量・・・・・・・・・・・・地球上の座標値と結びつけた、一筆ごとの正確な測量を行う
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⑤成果の閲覧・確認・・・・・・・地籍簿と地籍図の案を閲覧にかけ、誤り等を訂正する機会を設ける
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⑥法務局への送付・・・・・・・法務局では、土地登記簿が書き改められ、地籍図が備え付けられる
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⑦事前に境界を確認
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⑧利害関係者の立会
地籍調査のメリット
- 土地トラブルの未然防止・・・土地の境界が不明確であると、住民間や官民間において境界問題等
さまざまなトラブルが発生しがちなので、土地取引の円滑化につながる。 - 土地取引の円滑化・・・・・・法務局の地図と土地の現状が一致し、土地の売買や、分合筆などの
円滑化や経費の縮減に役立つ。 - 災害復旧の迅速化に・・・・・境界の杭の位置は、地球上の座標値と結びつけられているため、
万一の(地震、火山噴火、土砂崩れ、水害などの)災害の後でも、
迅速な復旧に役立つ。 - 公共事業の円滑化に・・・・・土地の環境確認作業が簡単にできるため、道路、下水道などの整備や
駅前再開発を実施する場合の円滑化に役立ちます。 - まちづくりに・・・・・・・・地籍調査の成果を基礎データとして利用することで、きめ細やかな
街づくり計画の立案に役立つ。
地籍調査ではできないこと
合筆
隣接する土地(数筆でも)で、字・現況地目・所有者(名義・住所)が同一である場合は、一筆にまとめることができる。ただし、所有権以外の権利(抵当権等)が設定されている場合はできないこともある。
地目変更
登記簿の地目と現況地目が異なっている場合には、現況の地目に変更できる。ただし、農地法などの他の法律に抵触する場合はできない。
登記名義人の変更…
名義人の方が既に亡くなられている場合、相続人等へ名義を変えることはできない。
所有権
所有権の移転(相続登記等)に関することはできない。
道路・水路
公図にある里道(赤線)・水路(青線)は、例え現況が残っていなくても用途廃止をしない限り、これを無くすことはできない。現況が残っていない場合は、資料や近隣の状態を確認し幅員を決定する。