1-394

Last-modified: 2007-06-14 (木) 22:29:38

1-392への便乗?

ゼルギウス 「……と、勇んで引越しを敢行したはいいものの、道に迷ってしまったな。
        誰かに道を……おお、あんなところに占い師が。失礼」
ミカヤ    「はい?」
ゼルギウス 「申し訳ないが、少々道を教えていただけぬだろうか。この辺りの地理に不案内なもので、道に迷ってしまってな」
ミカヤ    「分かりました。それで、どちらまで?」
ゼルギウス 「うむ……炎区紋章町の……」
ミカヤ    「あら、そこは……ふふ、そうですか。どのようなご用件ですか?」
ゼルギウス 「ああ、知人の勧めで越してきてな……」
ミカヤ    「そうなんですか」
ゼルギウス 「……(札を見ながら)『銀の髪の乙女』殿?」
ミカヤ    「はい?」
ゼルギウス 「何故、そのように嬉しそうな顔を?」
ミカヤ    「ふふ……そうですね、あなたがいい人みたいだから、ですね」
ゼルギウス 「……よく分からないのだが」
ミカヤ    「今に分かりますよ……あ、そうだ。占いはいかがですか?」
ゼルギウス 「占い? 悪いが、わたしはそういったものは」
ミカヤ    「お代は結構ですから。お近づきの印に」
ゼルギウス 「……では、頼もうか」
ミカヤ    「はい。では……キエェェェェェェェ!」
ゼルギウス 「うっ!?(何という気迫……! 今の様子を見ただけで分かった、この方は間違いなく名占い師!)」
ミカヤ    「……」
ゼルギウス (普段は占いなど信じもしない私だが、今はこの方の占いの結果が気になる……!
         私の今後の運命は一体!?)
ミカヤ?   「(ぱっと顔を上げながら)わぁ、かっこいいお兄さん!」
ゼルギウス 「!? (な、急に雰囲気が……)」
ミカヤ?   「わたしユンヌ、混沌の女神なの。よろしくね、お兄さん」
ゼルギウス 「は、はぁ……?」
ミカヤ?   「でも残念ねお兄さん、そんな風に迷ってばかりじゃ、折角の美形さんが台無しよ」
ゼルギウス 「! 迷い……」
ミカヤ?   「そう。迷い……それに、寂しさ。きっと、大切な人を失ったのね。
         あなたの孤独な魂が、寂しい寂しいって泣いているのが、分かるの」
ゼルギウス 「……」
ミカヤ?   「でも大丈夫。すぐに、幸福な出会いが訪れるわ。あなたももう、寂しい思いをしなくても済むようになる」
ゼルギウス 「……そうだろうか」
ミカヤ?   「ええ、本当よ」
ゼルギウス 「正直に言うと、私は少し怖いのだ。詳しくは話せないが、あまり長いところには留まれない身の上でな……」
ミカヤ?   「臆病なのね」
ゼルギウス 「……容易く人を信じるには、少々傷つきすぎたのかもしれん。
         そんな私にも、ようやく目標とする人ができた。その人の大きな背中を追っている間は、
         孤独を感じることもなく安らいでいられる……そう思っていたのだが、な」
ミカヤ?   「……それも悪くはない。が、それだけではいかんな」
ゼルギウス (また雰囲気が変わった、か?)
ミカヤ?   「未だ自信は持てぬかもしれんが、汝はもう十分に強い。誰かの背など追わずとも、一人で歩いていけるほどにな」
ゼルギウス 「……そうでしょうか」
ミカヤ?   「そうとも。その男の下で鍛えられたのは、汝の体だけではない。心もまた、研ぎ澄まされてきたのだ。
         後は汝が自分を信じるだけだ。そうすれば、その男のように誰かを支えてやることもできるであろう」
ゼルギウス 「私のような脆弱な魂の持ち主に、そのようなことが可能なのでしょうか」
ミカヤ?   「人を信じるのだ。共に戦い、共に生きる。誰かに支えてもらうだけでなく、誰かを支えるだけでもなく。
         互いに手を取り合うことだ。その覚悟が定まれば、魂は自ずと孤独を振り払うであろう」
ゼルギウス 「共に戦い、共に生きる……」
ミカヤ?   「そうだ。その言葉を、忘れずにな」
ゼルギウス 「……」
ミカヤ    「……いかがでしたか」
ゼルギウス 「……乙女殿」
ミカヤ    「はい」
ゼルギウス 「ありがとう。私は生涯、この恩を忘れない」
ミカヤ    「いえ、わたしは何も……ただ、神の言葉を伝えただけです。
         あなたの行く末に、幸福と安らぎが満ちていますように」