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Last-modified: 2007-06-14 (木) 22:34:28

シグルド  「おはよう皆。ああ、今日もいい天気だね」
リーフ   「おはようシグルド兄さん。今日は仕事ないんだね」
シグルド  「ああ。久しぶりにゆっくり家で過ごす予定だよ」
リン    「いつも忙しいもんねシグルド兄さんは。今日はゆっくり休んでね」
シグルド  「もちろんさ。ははは、今日は何があっても家を動かないぞ!」
マルス   「ところでシグルド兄さん、アルムとセリカが一緒にピクニックに出かけたみたいなんだけど」
シグルド  「ちょっと出かけてくる」
リン    「即効で前言撤回!? ま、待って、シグルド兄さん!」
シグルド  「離せ! マルス、二人はどこに行ったんだ!?」
マルス   「マケドニアの高山だってさ」
シグルド  「山! おのれ、開放的な空気に任せて行くところまで行ってしまおうという魂胆か! なんて破
       廉恥な」
リン    「落ち着いてってば! どっちかと言うと今の兄さんが一番破廉恥よ!?」
シグルド  「いーや、そんなことはない。わたしはちょっと弟と妹に情操教育を施そうとしているだけだ」
リン    「じゃあ何でティルフィングなんて持ち出すのよ」
シグルド  「リン、教育には体罰という概念があってだね」
リン    「そういうのはマルスだけにしてちょうだいよ」
マルス   「僕ならいいって言うんですかリン姉さん!」
シグルド  「ええい、とにかくわたしは行くのだ。止めてくれるな妹よ」
リン    「ああ、行っちゃった……しかも馬で」
ロイ    「ど、どうしよう……セリカ姉さんもアルム兄さんも、今日のこと楽しみにしてたのに」
リン    「当然、追いかけるのよ! さ、出番よリーフ」
リーフ   「僕に死ねっていうんですか!? 戦闘だったら他に適任がいるじゃないですかヘクトル兄さんとか」
ヘクトル  「俺の鈍足じゃ馬には追いつけねえよ」
リーフ   「じゃ、じゃあエフラム兄さんとか」
マルス   「竜王さん家の子供達を引率して映画を見に行ってるよ。魔法少女物だって。エフラム兄さんがそ
       んなの見てたら通報物だよね」
リーフ   「あのロリコンめ! そうだ、アイク兄さんに頼んで」
マルス   「砂漠でバーサーカーの群をちぎっては投げしているところだよ」
リーフ   「これだから戦闘狂は! じゃ、じゃあマルス兄さんだ。僕よりは頼りになるでしょう!?」
マルス   「(爽やかな笑顔で)やだよ面倒くさい」
リーフ   「……じゃあ仕方ないな」
ロイ    「うわぁ、相変わらずマルス兄さんの爽やかオーラは凄いなあ」
リン    「見事に誤魔化されてるわねリーフ……」
リーフ   「クソッ、仕方がない、僕が行くよ。ついてきてくれロイ!」
ロイ    「加勢すればいいの?」
リーフ   「いや、せめて僕の死に様を見届けてくれ……」
ロイ    「ネガティヴすぎるよ!」

セリカ   「ああ、空気が綺麗ねアルム」
アルム   「本当だねセリカ。都会の喧騒を遠く離れて……こういうのもたまには悪くないや」
セリカ   「そうね……それに、二人きりだし」
アルム   「セリカ……」
セリカ   「アルム……」

 ズバシュッ! ウワァー!

アルム   「……?」
セリカ   「何かしら?」
リーフ   「うぎゃあああああぁぁぁぁぁ~~~!」
ロイ    「うわぁ、リーフ兄さんが斬られちゃった!」
リーフ   「この人でなしーっ!」
アルム   「あ、あそこでボロ雑巾みたいになってるのは……」
セリカ   「リーフ!? どうしてこんなところに……」
リーフ   「に、逃げて二人とも……☆100神器を持った悪魔が……」
ロイ    「と、とにかく今は一旦場所を移して……」
シグルド  「見ぃつぅけぇたぁぞぉ~~!」
アルム   「シグルド兄さん!?」
シグルド  「悪い子はいねがぁ! 兄妹同士で必要以上にイチャイチャしてる子はいねがぁ!」
ロイ    「お、落ち着いてよ兄さん! 二人とも兄妹にしてはちょっと仲がよすぎるだけじゃないか!」
シグルド  「いいや、駄目だ! 犯罪の源は今すぐここで断ち切っておかなければならん!」
リーフ   「そんな大袈裟な」
シグルド  「お前達は甘いんだ。大体な、本来支援効果なんてものは、恋人同士が隣接したときですら、少々
       戦闘が有利になるという程度のはずなんだ。リーフなんて見ろ、好きな子からですらせいぜい10%
       じゃないか! なんて慎み深い」
リーフ   「……僕ってその辺りでもしょぼいんだよね……」
ロイ    「ちょ、こんなところで落ち込まないでよリーフ兄さん!」
シグルド  「そこのところへ行くとお前達はどうだ、アルム、セリカ。兄妹同士だというのにバシバシ必殺を
       連発して。恥ずかしいとは思わないのか!」
ロイ    (いや、そもそも別に恥ずかしいことじゃないと思うんだけど)
アルム   「シグルド兄さん落ち着いてよ。僕とセリカは別に」
シグルド  「聞く耳持ちません! いいか、兄さんは兄妹同士なんて絶対に許さないからな! 異常なんです
       異常。たとえ記憶喪失だとかなんとかそういう事情があったにしても、父親が違おうが同じだろ
       うが、兄妹同士だなんてのは」
ロイ    「兄さん兄さん、話がずれてきてるよ」
シグルド  「む。そうだな。いいか、とにかく兄妹たるもの貞節というのを少しは考えてだね」
セリカ   「いい加減にしてッ!!」
シグルド  「……!」
リーフ   (セリカ姉さん、凄い気迫だ……!)
ロイ    (日頃統一性のない一家を貫禄でまとめ上げているシグルド兄さんが、完全に気圧されている……ッ!
       これが噂のハイパー支援効果か!)
セリカ   「いつもいつもシグルド兄さんはそうやって! ええそうよ、わたしはアルムが好きです、愛して
       いるわ! でもおかしいことじゃないでしょう、兄妹同士なんだから」
シグルド  「し、しかし」
セリカ   「大体、軽くキスしたり抱きしめあったりなんて、そんなにおかしいことじゃないでしょう? そ
       れとも普段平等がどうとか世界平和がどうとか仰ってるシグルド兄さんが、諸外国の習慣を否定
       なさるんですか?」
シグルド  「むぐっ……そ、それは……」
セリカ   「シグルド兄さんはヨコシマなのよ! いやらしい心を持っているから、そんな風に汚らわしい目
       でしかわたしたちのことを見てくれないんだわ。わたしはただ、大好きなアルム兄さんとずっと
       一緒にいたいだけなのに」
アルム   「セリカ……」
シグルド  「だ、だがセリカ、お前達は兄妹で」
セリカ   「だから、どうしてすぐそういう方向に結びつけるんですか! もういいわ、シグルド兄さんなんて大嫌い!」
シグルド  「ま、待て、セリカ!」
セリカ   「ついてこないでよ、このオヤジ!」
シグルド  「!!」

 オヤジ、オヤジ、オヤジ、オヤジ、オヤジ……(エコー)

シグルド  (ガクッ)
ロイ    「ああ、シグルド兄さんが膝を突いた!」
リーフ   「『愛する家族を守るため、私は何者にも膝を屈しはしない!』と常日頃から宣言しているあのシ
       グルド兄さんが!」
セリカ   「行きましょ、アルム」
アルム   「せ、セリカ、今のはいくらなんでも」
セリカ   「放っておけばいいのよシグルド兄さんなんて。ごめんねリーフ、ロイ。こんな下らない用事で、
       わざわざこんなところまで遠出させちゃって。埋め合わせは必ずするから」
ロイ    「ああいやいや、お気になさらず」
リーフ   「思う存分二人きりでピクニックを満喫してください、はい」
セリカ   「ありがとう。さ、アルム」
アルム   「あ、ああ、うん……」
ロイ    「……行っちゃったね」
リーフ   「……このストーン喰らったみたいに固まっちゃってるシグルド兄さん、どうしようか?」
ロイ    「……とりあえずリーフ兄さんの馬の背に乗せて帰ろうよ」
リーフ   「……そうだね。ごめんね、重いだろうけど頑張ってねフィン二号(馬の名前)」
ロイ    「ああ、でも驚いたなあ。セリカ姉さんって普段は大人しくて目立たないのに、怒るとあんなに怖
       いんだね」
リーフ   「……あのさロイ」
ロイ    「なに?」
リーフ   「僕らが来た意味、あったのかな」
ロイ    「……ない、かもしれない」
リーフ   「……今回の僕って、単なる斬られ損なんじゃないのかな……」
ロイ    「(ポン、と肩に手を置きつつ)その内きっと、いいことあるよ」
リーフ   「……せめてちょっとでもいいから否定してほしかったな兄さんは……」

シグルド  「うっ、うっ、うううう……」
ミカヤ   「ただいまー……わぁ、どうしたのシグルドったら」
ロイ    「ああ、ミカヤ姉さん。実はかくかくしかじか」
ミカヤ   「ふんふん、今日もリーフが貧乏くじ押し付けられて、なるほど、リーフがいつものように斬られ
       て、ああ、リーフがいつものようにくたびれ損だった訳ね」
リーフ   「どうして僕の話だけ強調するんだよミカヤ姉さん!」
ミカヤ   「冗談よ冗談。セリカに『このオヤジ!』なんてねえ。それで珍しく飲んだくれてるのねシグル
       ドったら」
シグルド  「うっ、うっ……兄さんは偉いんだぞぉ、家族のために頑張って働いてるんだぞぉ。そのせいで老
       けて見えるだけで、決してオヤジじゃないんだぞぉ」
マルス   「そもそもそういう愚痴っぽいところがオヤジなんだけどね」
シグルド  「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
リン    「マールースー!」
マルス   「うわっ、ちょ、リン姉さん、頭ぐりぐりするのは勘弁……いぎゃあああっ! 脳がはちきれそう
       だぜぇっ!」
エリンシア 「お兄様、そんなにお酒を飲まれてはお体に毒ですわ」
シグルド  「うるさーいっ! へんっ、どうせわたしはオヤジだもんね。いいさ、休日は股引に腹巻で過ごして
       タバコぷかぷか吸いながら居間で寝っ転がってぼりぼり尻を掻いてやるもんね。いい歳こいて若
       者ぶって、『チョイ悪オヤジ』とかって威張ってやるもんね」
ロイ    「どういうグレ方ですかそれは」
エリウッド 「落ち着いてよシグルド兄さん……ああ、胃が痛い……」
エイリーク 「ただ今帰りました」
エフラム  「同じく。ほら、二人とも入れ」
アルム   「……」
セリカ   「……」
シグルド  「アルム、セリカ……」
アルム   「ほら、セリカ」
セリカ   「う、うん……あの、今日はごめんなさいシグルド兄さん。ついカッとなっちゃって」
シグルド  「に、兄さんを許してくれるのか……」
セリカ   「許すだなんて。わたしだって悪かったのよ。いつもわたしたちのために働いていてくれる兄さん
       に『オヤジ』なんて。本当にごめんなさい」
シグルド  「うぅぅぅ……わたしはいい兄弟を持って幸せ者だなあ……」
エリウッド 「やれやれ、ようやく一件落着か」
ロイ    「無事に終わって一安心だね」
リン    「当然でしょ、わたしたち家族なんだから」
リーフ   「よかったよかった、僕も斬られた甲斐があるってもんだよ」
エイリーク 「ところで兄上、映画の方はいかがでしたか」
エフラム  「ああ、ミルラは大人しく見てくれていたんだが、チキやファが興奮して大変だった。子供のお守
       りも楽じゃないな」
ロイ    「お疲れ様。セリカ姉さんとアルム兄さんも、あれから先は楽しめたの?」
セリカ   「もちろん。山頂からの景色がとても綺麗だったわ」
アルム   「写真もたくさん撮ってきたんだよ」
シグルド  「どれどれ、ちょっと見せてくれ」

 で、映っているのは「一つのコップに二つのストローを差してジュースを飲むアルムとセリカ」とか、「セリ
カを膝に乗せてボートを漕ぐアルム」やら、「眠るアルムに膝枕してあげているセリカ」やら……

シグルド  「……ウガァァァァァァァァッ!」
リーフ   「ギャアアアアァァァァッ!」
ロイ    「うわぁ、リーフ兄さんが斬られちゃった!」
リーフ   「この人でなしーっ!」
リン    「ちょ、兄さん落ち着いて、落ち着いてってば!」
エフラム  「落ち着け兄さん! エイリーク、ヘクトルとアイク兄さんを呼んでくるんだ」
エイリーク 「わ、分かりました」
セリカ   「もう、全然分かってくれてないじゃないシグルド兄さんったら」
アルム   「でも楽しかったねセリカ。また一緒に行こうね」
セリカ   「うん」
シグルド  「兄さんは許さないぞおおぉぉぉぉぉっ!」

エリンシア 「……というか、この写真、どなたが撮影なさったんでしょう……」
ミカヤ   「あれ、そういえば……ボートのなんて、明らかに空からのアングルのような……」

ユンヌ   (ふふっ、恋する二人を応援するわたし。なんていい子なのかしら!)
アスタルテ (兄弟同士……うむ、成功すればベオクとラグズ以上の新たな可能性が……)