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Last-modified: 2008-07-05 (土) 12:02:44

670 名前: 竜二人 [sage] 投稿日: 2008/05/12(月) 03:00:15 ID:dpWAcKh1
ヤアン  「どうした兄者?そんな所で惚けて」
ムルヴァ 「ヤアンか。いや、どうも私は忘れられやすい様なのでな。その理由を考えていた」
ヤアン  「たしかに、使用人(十二魔将)らの中には兄者のことを忘れている者たちもいるようだが、
      その理由は簡単だろう」
ムルヴァ 「何だ?」
ヤアン  「兄者は樹海に篭り過ぎなのだ。我が家は人が多い上に毎日、何かしらの問題が起こる。
      一月も顔を会わせなければ、忘れられても文句は言えん」
ムルヴァ 「ふむ」
ヤアン  「以前、爺様の前で兄者の話をした時など、爺様は兄者の事を死んだ自分の兄だと思っていたぞ」
ムルヴァ 「…それは流石に勘弁願いたいな……」
ヤアン  「それと、偶にはちび達と遊んでやったらどうだ?
      最近ではイドゥンが遊んでやっているようだが、子供と遊んでやるのも親の務めではないのか?」
ムルヴァ 「ほう、あのイドゥンが?」
ヤアン  「うむ。さらには、あのエフラムとかいう小僧に恋心を抱いているなどという話も聞いた」
ムルヴァ 「む?エフラムといえば、たしかミルラの…」
ヤアン  「想い人だな。つまりは、その三人は俗に言う三角関係ということだろう。クククッ…」
ムルヴァ 「あのイドゥンがその様な……」
ヤアン  「まぁ、所詮は噂だ。本気にされても困る。
      とはいえ、そのエフラムとかいう小僧、中々の快男子らしいぞ。
      最近、イドゥンもよく会いに行っているという事だからな。実際、その様な関係かも知れぬな。クククッ…」
ムルヴァ 「お前はエフラム君に会ったことがあるのか?」
ヤアン  「いや。デギン殿がよくあの家にその小僧の為人を見るために出向いている様なのでな。
      そのおかげで、少なくとも兄者よりは知っているというだけの話だ」
ムルヴァ 「……その様なことをしているのか?デギン殿は」
ヤアン  「クククッ…。どうやら、アムリタの時のことがトラウマになっているらしい。
      あれで中々繊細だからな、デギン殿は。クククッ…」
ムルヴァ 「ふふふ…、そうだな」
ヤアン  「にしても、やはりあの家とは不思議な縁があるようだな」
ムルヴァ 「たしかあそこには、ニニアンとユリアの想い人もいるのだったか?」
ヤアン  「うむ。ニニアンとユリアの話には妄想が多分に含まれているようだが、二人とも誠実な好青年のようだ」
ムルヴァ 「そうか。いずれは、この家から何人があの家に嫁いでいくのだろうな?」
ヤアン  「おそらく、ミルラは嫁ぐ事になるだろうな。クククッ…」
ムルヴァ 「そうだな…」
ヤアン  「なんだ、張り合いがない。兄者の大事な娘が人のものになるであろうと言っているのだぞ?
      もう少し、何かしらの反応が欲しかったが」
ムルヴァ 「たしかにミルラは大切な娘だ。だが、大切だからこそ本当に好きな男のもと遣りたいと思う…」
ヤアン  「それが、親心というやつか?」
ムルヴァ 「おそらくな…」
ヤアン  「なるほど…」
ムルヴァ 「それはそうと、お前ももういい年だ。いい加減、身を固めたらどうだ?
      自分の家族を持つというのも、いいものだぞ。それとも、結婚をしない理由でもあるのか?」
ヤアン  「理由、理由か…。
      兄者は、わたしが先程言った親の務めというのを覚えているか?」
ムルヴァ 「子と遊ぶ事だったか?」
ヤアン  「まぁ、アレから時間も経っていないのだし当然か」
ムルヴァ 「それで、それが何か関係あるのか?」
ヤアン  「わたしが結婚しない理由は、要はその親の務めというやつが面倒なのだよ。クククッ…」

                                              完