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Last-modified: 2008-07-05 (土) 12:19:30

60 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2008/05/24(土) 02:10:18 ID:cwOCqvb4
セーラ  「はーい皆さんこんにちは、とうとうやってこの日がまいりました! 
      『紋章町サバイバルコンテスト』を開催いたしまーす!」
ドロシー 「それでは、大会本部長の獣王カイネギスさんよりご挨拶をいただきたいと思います」
カイネギス「うむ。まずは毎年恒例のこのコンテストを、今年も無事開催できたことを心から嬉しく思う。
       大会のルールは至ってシンプルだ。競技会場となるこのガリアの山の中に身一つで入り、
       出来る限り長期間生き抜いた者が勝利者となる。
       優勝賞金は例年通り10000Gだ。諸君らの奮闘と野生力に期待するものである」
ドロシー 「はい、ありがとうございました」
セーラ  「えー、ちなみに、大会本部にはバルキリーの杖のエキスパートであるクロード神父様と、
      オームの杖8段のエリス先生、それとバレンシア復活の泉直結のワープシスター部隊が待機しておりますので、
      皆さん遠慮せずにガンガンのたれ死んじゃってくださいね☆」
ドロシー (こういうのって普通、本当に死にそうになったら助けに入るものだと思うんだけどなあ……)
セーラ  「ちなみにこの山、ガリアの山々の中でも特に危険な猛獣が存在するようなところなので、
      怖気づいた人は今からでも参加辞退した方が身のためよ!」
ドロシー 「大抵は最後まで粘った人が猛獣に食い殺されて終わり、というパターンが多いんですが。
      ……まあ、今回に限っては」

アイク  「さて……いよいよか。腕が鳴るな」
リーフ  「フフ……生存するだけなら僕が一番に決まってるさ!」

ドロシー 「……あの人たちがいるんで、結構長引きそうな予感がしますね」
セーラ  「ま、盛り上がるなら言うことなしよ! さーて、参加者の皆さん、準備はいいかしら?」
アルム  「あのー、すいません、質問があるんですけど」
セーラ  「はいはい、なにかしら兄弟さん家でも一番影の薄いアルム君?」
アルム  「……まあいいや。ええと、この大会、結構長期間になると思うんですけど」
セーラ  「うんうん」
アルム  「その間、学校とか仕事とかってどうなってるんですか?」
セーラ  「……あんたさ、そういうのって番組的に白けるからやめてほしいんだけど」
アルム  「え?」
セーラ  「だから11スレ目になってもロクな個性がつかねーっつーのよ、あんたは……」
アルム  「……」
ドロシー 「え、ええと、それでは皆様、準備はよろしいでしょうか!?」
セーラ  「それでは、『紋章町サバイバルコンテスト』スタートゥ!」

 ~三ヵ月後~

セーラ  「……ええと、この大会、まだ続いてたんだ?」
ドロシー 「れ、例年ですと10日ぐらいで終了になるはずなんですが……」
セーラ  「残ってるのは……二人?」
ドロシー 「一人は予想通りアイクさんです」
セーラ  「でしょうね。もう一人は……え、アルム!? リーフじゃないの?」
ドロシー 「リーフ君も優勝候補の一人ではあったんでしょうけど、
      始まって数日ぐらいの時点で、他の参加者と仲良くなっちゃって。
      で、その人が美人のお姉さんだったらワープでの奇襲を受けてあえなくリタイアに……」
セーラ  「自然相手のサバイバルはともかく、人間相手のサバイバルのレベルは低かったってわけか……
      でも、アイクさんはともかくアルムって……単にのたれ死んでるけど誰も死体を発見できないってだけなんじゃないの?」
ドロシー 「いや、さすがにそれは……」
カイネギス「むう……なんにせよ、さすがにそろそろ止めさせなければ、彼らが本当に山の住民になってしまいそうだ」
ライ   「捜索隊を出しましょうか」

 ~山中~

ライ   「……で、早速アイクを発見したわけだが……」
アイク  「なんだライ、お前も食うか?」
ライ   「……くつろいでんな、お前は」
アイク  「猛獣、と言っても竜よりは弱い。そういったわけで食料は豊富にあるし、川も流れているからさほど不衛生じゃない。
      これならフレイムバレルにこもって火竜狩りをしていたときの方がよほど辛かったぞ」
ライ   「来年から出場禁止な、お前」
61 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2008/05/24(土) 02:10:40 ID:cwOCqvb4
ライ   「……だいぶ奥まで来ましたね」
カイネギス「うむ。アルム少年が見つからないのだから、仕方があるまい」
セーラ  「まーったく、面倒かけさせるわよねえ」
ドロシー 「カイネギスさんのおかげで動物は大人しいですから、そんなに苦労もしてないですけどね。
      でも、実際どこに行っちゃったんでしょうね、アルム君」
カイネギス「うむ……む?」
ドロシー 「? どうかしました?」
ライ   「この臭い……間違いない、アルムだ!」
ドロシー 「え、本当ですか?」
ライ   「ああ。なんか妙に嫌な臭いも混じってるが、あの茂みを抜けた先に……!」

 がさがさがさ、と一行が深い茂みをかき分けて進んだ、その先には。

カイネギス「……」
ライ   「……」
ドロシー 「……」
セーラ  「……なにこれ」

 何故か円形に切り開かれた広場の真ん中に、小さな小屋が立っていた。
 こじんまりとしていながらもなかなか洒落ている小屋で、ポーチの上には揺り椅子が置いてあったりする。

ドロシー 「……あのー、ここ、どなたか住んでいらっしゃるんですか?」
カイネギス「いや……この山は無人だったはずだが」
セーラ  「なんかよく分かんないけど、ともかく人がいたのならアルムのことも聞けるかもね。すいませーん! 誰か」
???  「危ない!」

 と、聞き覚えのある声がした瞬間、何かが物凄い速さでセーラの鼻先を掠めていった。

セーラ  「……へ?」
ドロシー 「だ、大丈夫ですかセーラさん!?」
ライ   「矢だったぞ、今の……! どこから飛んできたんだ!?」
カイネギス「罠、というわけか」
アルム  「いやー、危ないところだった」
セーラ  「って、アルム!? あんたこんなところでなにやってんの!?」
アルム  「なにって、サバイバルですけど?」
ドロシー 「さ、サバイバルって……」
ライ   「ひょっとして、この小屋建てたのお前か?」
アルム  「ええそうですよ。この辺切り開いたときの木材使って」
カイネギス「なんと……猛獣はどうしたのだ?」
アルム  「ああ、その辺に生えてる野草を何種類かすりつぶして、煮詰めて……」
ドロシー 「け、獣避けの薬を作ったんですか? 即席で?」
アルム  「そう。おかげでのんびり暮らせましたよ。あ、小屋の裏には畑もあるんですよ。
      いやー、野生のオリウイ草を品種改良しようと思って育ててるんですけどね、これがなかなか楽しい仕事で、
      ついつい競技のこと忘れそうになっちゃってましたよ。
      そうだ、折角だから皆さん我が家に上がっていってくださいよ。
      野生のハーブで作ったハーブティ、結構自信があるんですよ。
      他にも野草を編んで作った服とか、いろいろ……」
セーラ  「なんでそんないろいろ知ってんの、あんた?」
アルム  「バレンシアのマイセンじいちゃんに、大地と共に生きる術をいろいろ教わったもので」
カイネギス「……」
ライ   「……やっぱなんかおかしいな、この兄弟は……」
ドロシー 「アイクさんとは違った意味で予想を上回る人ですね……」

 当然ながらアルムも来年からは出場禁止となりました。