13-289

Last-modified: 2008-10-19 (日) 13:39:54

289 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:30:08 ID:R+omqFw6
兄弟家の人々は、オルグも連れて全員でとある山へとキャンプに来ていた。
今日は敬老の日であり、また今月はラグズ交流月間(動物愛護月間のようなもの)ということで、兄弟家最年長のミカヤとペットのオルグを楽しませるために計画していたものだった。

ヘクトル「そろそろ昼メシを作らねーか?腹へって死にそうだぜ。」
リン「何言ってるの。まだテントも張ってないでしょ。」
ヘクトル「いいじゃねーか後でも。
ここに来るまでに色んなもの持たされてヘトヘトなんだよ。」
リン「ごめんなさいね。あんたの体型を忘れていたわ。その体じゃ疲れるはずよね~。」
ヘクトル「なんだと!?こんなもん持たされちゃ、誰だって疲れるだろ!」
リン「……あっち見て。」
ヘクトル「ああ!?」

リンが指差したのは、キャンプ道具のほとんどを持たされたアイクが、
とても楽しそうにラグネルの素振りをしている姿だった。

ヘクトル「…普段から人の次元を超越してる兄貴と比べられてもな…。」
リン「あーら。エフラムだってあなたと同じくらいの荷物を持ったのに、
早速レギンレイヴで魚取りをしてるわよ?」
ヘクトル「あーわかったよ!テント張ればいいんだろ!シグルド兄貴!手伝ってくれ!」
シグルド「なっ…なんで私なんだ!?それこそアイクやエフラムに頼めばいいだろう!?」
ヘクトル「あいつらの手なんか借りてられっか!そっち持ってくれ!」
シグルド「はぁ…。なんで男の中で最年長の私が…。うう、腰が痛い…。」
エリウッド「ははは…。
テントを張ったらすぐに昼食を食べられるように、僕が薪を取ってくるよ。」
アルム「兄さん、薪取りに行くの?僕も行っていいかな?」
エリウッド「ん?セリカはいいのかい?」
アルム「僕の持ってきた野菜をきざんでくれてるんだ。
何かセリカのために出来ることはないかって聞いたら、薪取りに行って欲しいって言われて。」
エリウッド「じゃあ、一緒に行こうか。」

それからエリウッドとアルムは、キャンプ地点から少し離れた場所で薪を集め始めた。

アルム「う~ん、あんまり落ちてないなあ。」
エリウッド「そうだなあ。アルム、二手に分かれようか。
僕はもうちょっと奥に行ってみるから、アルムはそっちの道を。」
アルム「わかった。じゃ、キャンプ場で合流しよう。」

アルムと分かれたあと、エリウッドは森の奥へと歩いていった。
森の中は空気がとても澄んでいて、病弱な彼には最高の環境だ。
体力のない彼が、わざわざキャンプ場から離れた森の奥へ続く道を選んだのもこのためだった。

エリウッド(ああ、とても気持ちいい…。
溜まったストレスが解かされて分解していくようだ…。)

エリウッドは森の中に少し開けたところを見つけ、腰を下ろした。
薪を拾わなければ、と思いつつ、森の空気がだんだん心地よくなってきた彼は、そのまま眠ってしまった。

290 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:32:11 ID:R+omqFw6
それから30分ほど経ち、エリウッドはようやく目を覚ました。

エリウッド(いけない…。つい眠り込んでしまった。
早く薪を集めてみんなのところに戻らないと…。)

エリウッドは手近な薪を拾い集め、来た道を戻り始めた。
彼の頭上には、先ほどまでとは全く違う灰色の雲に覆われた真っ黒な空が広がっていた。

アルム「兄さん遅いなあ…。」
ミカヤ「まあ、エリウッドはまだ戻ってこないの?」
アルム「うん。途中で二手に分かれたんだ。兄さんは森の奥に行くって…。」
リン「大丈夫でしょ。ちょっと薪を拾いに行っただけだし。」
アルム「…でも、空が…。」
リン「空?」
マルス「向こうから黒い雲が来るね。こりゃ降るよ。」
リン「えーっ!なんで!?今日の天気予報では晴れって言ってたのに!」
マルス「山の天気は変わりやすいんですよ、姉さん。
普段はかなり野生的なのに、そんなことも知らないなんて…。」
リン「マールースー?」
マルス「ゲッ…。」
リン「私はね…山の民じゃなくて草原の民なのよ!」
マルス「イタタタタ!頼むからこんなところでまで関節技はやめてー!」
エリンシア「それは困ったわね。念のためテントの位置を移動させましょうか。」
ヘクトル「なっ…!?せっかく俺とシグルド兄貴が張ったのに、なんでそんなことするんだよ!?」
エリンシア「雨が降って、川が増水したら危ないでしょう?
だからもう少し高台に移動させるのよ。」
ヘクトル「で、でも…。」
アイク「そうだな。こんなところにいては危ない。」
エフラム「移動するか。あ、ヘクトル、お前は手伝わなくていいぞ。
増水で流されてもその体型なら浮くだろ。」
ヘクトル「てめぇ…!わかったよ!移動させりゃいいんだろ!」
オルグ「………。(ヘクトル、タンジュン)」
ミカヤ「はぁ…。…エリウッド、早く戻ってきて。なんだか嫌な予感がするの…。」

エリウッドが目覚めてから5分後、
キャンプ場でテントをちょうど移動し終えた直後に激しい雨が降り始めた。
雨足は衰えることがなく、どんどん強くなっていく。

エリウッド「まいったな…。早くテントへ…。」

そのとき、突然エリウッドの視界が右へ大きく揺らいだ。
彼が歩いていた足場が崩れたのだ。

エリウッド「う、うわああああぁぁぁ!」

彼は持っていた薪をばら撒きながら、土砂とともに谷へ落下していった。

291 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:34:18 ID:R+omqFw6
ロイ「まさか、こんなに降るなんて…。」
ミカヤ「エリウッド!エリウッド!どこにいるの!?」
リーフ「姉さん落ち着いて!」
ミカヤ「だめ…。胸騒ぎがするの…。早く、あの子のところへ!」
シグルド「無茶だ!この大雨で川もかなり増水してるし、森の中は足場が悪くなっている。外に出るのは危険すぎる!」
ミカヤ「でもっ…!まだエリウッドが戻ってないのに!」
オルグ「………。わんっ!」
エイリーク「あっ!?オルグ、いけません!」

 ミカヤの叫びに刺激されたかのように、オルグは化身したままテントを飛び出した。
 そしてそのまま森の向こうへ消えてしまった。

セリス「姉さん、オルグが飛び出していっちゃった!」
ミカヤ「オルグが…!?どうして…。」
アイク「心配するな。きっとエリウッドを探しにいったんだ。
ラグズのあいつなら、この雨でもなんとかなるかもしれない…。」
ミカヤ「…オルグ、ありがとう。エリウッドを頼むわよ…。
二人とも、どうか無事でいて…。」

 
エリウッドが目を覚ますと、真っ黒な空が広がっていた。
 雨は先ほどよりは弱まっていたが、それでもまだ降り続けている。

エリウッド(う…ここは…?そうか、僕はあのとき、崖から落ちて…。
      いけない。とにかく、早くここから離れないと…。
      またいつ大雨が降り出してもおかしくない…。)

 そう思ったエリウッドは立ち上がろうとしたが、

エリウッド(…!?足が…!)

 彼の足は上から落ちてきた土砂に埋もれていて、動かすことが出来なくなっていた。

エリウッド(ぐぅっ…。ダメだ…全然動かない…。)

 再びエリウッドの意識が霞み始めた。
それでもなんとか脱出を試みる彼の目に、大きな獣の影が飛び込んできた。

エリウッド(魔物か…。僕は、もう…。すまない、みんな…。)

 そう思った後、エリウッドの意識は再び途切れた。

292 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:37:23 ID:R+omqFw6
オルグ(エリウッド、ミツケタ。)

雨の中、エリウッドを見下ろす黒い獣。それはオルグだった。
彼はエリウッドが動けないのを見ると、土砂を掘って穴を開けた。
そして、そこからエリウッドを引っ張り出した。

オルグ「わぉん!わぉん!(エリウッド、ダイジョウブカ?)」
エリウッド「………。」
オルグ(イキテル。ダケド、キヲウシナッテイル…。)

オルグはしばらく考えた。
このままエリウッドを置いて、みんなのところへこの場所を知らせに行くのは危険だ。
かと言って、動けない彼を担いだまま斜面を登るのも無理がある。
遠吠えで場所を知らせようかとも思ったが、魔物が仲間の声と勘違いして集まってくるかもしれない。

オルグ(ドコカ、アンゼンナトコロニツレテイク。)

そう決めた彼は簡単な応急処置をして、一度化身を解いてからエリウッドを担ぎ、
そのまま再び化身してエリウッドを背中に乗せ、走り始めた。

エリウッド(はっ…。僕は…生きてる…?)

エリウッドが再び目を覚ました場所は、暗い洞窟の中だった。
ひんやりとした空気が漂っていたが、雨が直接当たらないのでむしろ外よりも暖かく感じられた。

エリウッド(どうしてこんなところに…?一体だれが…。)
オルグ「…エリウッド、メザメタカ。」
エリウッド「オ、オルグ!?君が、僕をここへ…?」
オルグ「…ジットシテロ。オマエ、ウゴケナイ。アシガオレテル。」

見ると、右足に包帯が巻かれ、添え木がされていた。薬草のにおいもする。

エリウッド「そうか。僕をあの土砂から出してくれたのか…。ありがとう、オルグ。」
オルグ「レイナド、イイ。ミカヤガオマエノコトヲ、シンパイシテイタ。」
エリウッド「姉さんが…。」
オルグ「オオアメガフッテキタ。ナノニ、オマエカエラナイ。
    ミカヤハ、ナイテタ。ダカラ、オレガサガシニイッタ。」
エリウッド「そうか…。…情けないね。みんなに迷惑を掛けて…。」
オルグ「?」
エリウッド「今日はオルグとミカヤ姉さんの為の休日だったのに…。
      僕が全部台無しにしてしまった。」
オルグ「………。」
エリウッド「僕は、いつも思ってたんだ。体は丈夫じゃないし、すぐに胃痛も起こす。
胃薬代で家計を圧迫して、みんなにも心配されて…。
戦いでも、デュランダルを上手く扱えない。
結局、僕は大切な人たちを全く守れていない。迷惑を掛けてるだけなんじゃないかって。」
オルグ「………。」
エリウッド「オルグのたくましさが、僕はうらやましいよ。
      僕がもっとしっかりしていれば、みんなを…。」
オルグ「…モウスグ、ヒガクレル。ココデアサヲマツゾ。」
エリウッド「…ああ、わかったよ。」

293 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:39:46 ID:R+omqFw6
次の日の朝、雨はすっかり止んでいた。
空は昨日の朝と同じように澄み切っていて、地面がぬかるんでいなければ昨日大雨が降ったことなど全く想像できないほどだった。
オルグは昨日と同じようにエリウッドを乗せて、洞窟を後にした。

エリウッド「オルグ、大丈夫かい?僕を乗せて歩くのはきついだろう。」
オルグ「………。」
エリウッド「少し休憩しようか。」
オルグ「…くぅん。」

結構な距離を歩き、さすがにオルグも疲れていたのか、
エリウッドの言葉を聞き入れたオルグは、エリウッドを木陰に降ろして化身を解いた。

オルグ「…アトハ、コノシャメンヲ、ノボルダケダ。」
エリウッド「そうか。…僕はこんなに高いところから落ちたのか。
      よく命が助かったな…。」
オルグ「ウンガヨカッタンダ。
アノアタリハ、キガオオイ。オオアメデ、ジメンモヤワラカカッタ。」
エリウッド「そうだね。…全く、ついているんだかいないんだか。
      僕は運がいいことだけがとりえだと思っていたけど…。」
オルグ「………。」
エリウッド「さあ、そろそろ上に…。」

そのとき、エリウッドとオルグを冷たい風が包んだ。
それは草陰からこちらを見つめる、血のように赤い瞳が発する殺気だった。
瞳の主はどんどん増えていき、やがて草むらから姿を現した。
それは狼に良く似た、しかしそれとは比べ物にならないほど残忍な姿をした魔物だった。

エリウッド「なっ…モーサドゥーグ!?しまった!囲まれたか…!」
オルグ「イケナイ!エリウッド、カクレテロ!」

そう言ってすぐさま化身したオルグはモーサドゥーグの群れに襲い掛かった。
魔物たちも一斉にオルグに襲い掛かる。
化身したオルグはさすがに強く、風のように魔物の群れの間を駆け抜け、
次々に魔物たちを倒していく。しかし、魔物は次々に増えていく。
倒しても倒しても減らない魔物たちに、さすがのオルグも次第に数で押されていく。

294 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:41:12 ID:R+omqFw6
エリウッド(だめだ…。このままじゃ、やられる!
      僕はオルグに助けてもらった。それなのに…!
      僕は…僕は、こんなに身近な人一人すら守れないのか…!)

と、エリウッドの目に、何かキラリと光るものが飛び込んできた。
それは刀身が緑色に光っている剣だった。

エリウッド(あれは…魔法剣!?魔物が持っていたものか…。あの剣を使えば…!)

だがその剣は、オルグが戦っている場所のすぐ近くに落ちていた。
とても手を伸ばして取れるような距離ではない。

エリウッド(遠すぎて届かない…。あんなところじゃ…。)
 
エリウッドは一瞬その剣を諦めようとした。
だが、魔物から攻撃を受けたオルグの悲鳴が聞こえ、彼は決意を固めた。

エリウッド(僕だって…大切な人を、守るんだ!守らなければいけないんだ!)

その瞬間、エリウッドは右足を引きずりながら剣めがけて突進していった。
走るたびに右足に激痛が走ったが、歯を食いしばって耐えた。

オルグ(!?エリウッド、アブナイ!)

走るエリウッドにモーサドゥーグが襲い掛かる。
彼は間一髪で剣までたどり着き、身を伏せてこれを回避した。
しかし、またすぐにもう一匹が彼に襲い掛かる。

エリウッド「来るなっ!」
 
エリウッドは魔物に向けて剣を振ったその瞬間、緑色の風の刃が出現し、
魔物を吹っ飛ばした。彼が拾った剣は、風の剣だったのだ。

オルグ「………!(エリウッド、ムチャナコトヲ…。)」
エリウッド「さあ、一緒に戦おうオルグ!
僕は動けないから、君は僕の後ろを守って欲しい。
前から来る魔物は僕にまかせるんだ!」
オルグ「わおーん!(ワカッタ。イクゾ!エリウッド!)」

295 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:43:03 ID:R+omqFw6
全てが片付いた頃には、日はすっかり高くなっていた。
緊張の糸が切れた二人は座り込み、とうとう大の字になって寝始めた。

オルグ「…オワッタ。」
エリウッド「なんとかね…。一時はどうなるかと思ったけど…。」
オルグ「…エリウッド。」
エリウッド「…なんだい?」
オルグ「オマエハ、オレヲウラヤマシガル、ヒツヨウハナイ。」
エリウッド「え?」
オルグ「アンナコト、フツウハデキナイ。
ブキモモタズニ、マモノノムレニ、ツッコムナンテ。」
エリウッド「…今思えばかなり無謀だったよ。
でも、ああしないと君がやられてしまうと思ったから…。」
オルグ「ソノユウキトヤサシサ、オマエガホコルベキモノ。
    オレニハナイモノ。モット、ジシンヲモテ。
    オマエニハ、チャントタイセツナモノヲ、マモルチカラガアル。」
エリウッド「オルグ…ありがとう。
なんかそんな風に言われると、とても恥ずかしいけど…。」
オルグ「ケド?」
エリウッド「結構、元気出たかな。」
オルグ「…ソウカ。デハ、イクカ。」
エリウッド「…そうだね。みんな待ってる。あと少しだ。頑張ろう!」

ユンヌ「う~ん。こっちから二人の気を感じるんだけど…。」
アルム「本当!?」
シグルド「よし、この辺りを重点的に探すぞ!」
マルス「こういうときは便利だよね。負の女神様のお力は。」
ユンヌ「ふっふ~ん。すっごいでしょ!?これを機にもっともっと私を敬いなさ~い!」
マルス「はいはい、また押入れに入れられたいんですか?」
ユンヌ「わ…わかったわよ。ちゃんと探しますー。」
エリンシア「あっ…!あれは!」

エリンシアの視線の先には、赤毛の少年を背負った黒い狼がいた。
二人ともボロボロになっていたが、笑顔でこちらに向かって手を振ってきた。

マルス「あっ、あの二人は…!ほら変態女神メダリオンに帰れ!」
ユンヌ「ちょ…今回は何もしてなアーッ!」
リン「マルス、たまにはあんたも気が利くじゃない。」
マルス「まあね。いつものことですよ。
    …ミカヤ姉さん?二人が…。」
ミカヤ「エリウッド!オルグ!」
マルス「わお。すっ飛んで行っちゃった。」
リン「そりゃそうよ。一番心配していたのはミカヤ姉さんよ?」
マルス「そうだね。…みんなを呼んでこようか。」

296 名前: 狼と王子様 [sage] 投稿日: 2008/09/17(水) 17:45:05 ID:R+omqFw6
ミカヤ「エリウッド!オルグ!良かった…良かった無事で…。」

ミカヤはボロボロ涙を落としながらエリウッドの手を握った。
流れる涙はオルグの頭に落ち、彼は目を細めた。

エリウッド「姉さん、心配を掛けてすまなかった…。」
ミカヤ「本当に…。あっエリウッド…足が折れてる…!?
オルグもボロボロ…。レスト!リカバー!」

ミカヤは杖を取り出しエリウッドとオルグにかざした。
それは、わんぱく盛りの兄弟たちのために持ってきていたものだった。
杖をかざされた二人の傷がたちまち治っていく。
エリウッドは骨折が治ったのでオルグから降り、ミカヤの前に立った。

エリウッド「ありがとう。姉さん。」
ミカヤ「いいのよ。このために持ってきたものだから。」
オルグ「う、わん!(エリウッド、ツレテキタ!)」
ミカヤ「オルグ、本当にありがとう。
    ごめんなさい。本当は私が、あなたを守るべきだったのに…。」
エリウッド「え?」
ミカヤ「私、このことをなんとなく予知していたの。
    それなのに何もできなかった…。私が…。」
エリウッド「姉さん、自分を責めないで。」
ミカヤ「でも…。」
エリウッド「姉さんには、僕らにはない不思議な力がある。
      それだけで十分だよ。みんなの助けになっている。
      今度からは、姉さんが出来ないことは遠慮なく言ってくれればいいんだ。
      それを代わりにやってあげるくらいの力はあるよ。」
ミカヤ「エリウッド…ありがとう。ちょっといなかった間に成長したのね。
なんでも抱え込むタイプのあなたにそう言われるなんて、ちょっとびっくりしちゃった。」
エリウッド「ふふふ…。オルグにいろいろ助けてもらったからね。」
ミカヤ「あら、そうなのオルグ?」
オルグ「わん!(ソウダ!)」
マルス「兄さん!オルグ!」
一同「おーい!」
ミカヤ「あら…みんな戻って来たみたいね。」
エリウッド「うん…。そうみたいだ。
      じゃ、みんなのところに行こうか。オルグ、姉さん。」
ミカヤ「ええ。」
エリウッド「あ、オルグ。」
オルグ「わん?(ナンダ?)」
エリウッド「いや…やっぱり僕は、運だけは良かっただろう?」
オルグ「う、わん!(タシカニナ!)」

病弱な王子様と、無口な狼。
持ってるものは違うけど、彼らは結構、いいコンビになったとか。