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Last-modified: 2008-10-19 (日) 14:01:36

95 名前: ルネス女学院の文化祭 [sage] 投稿日: 2008/10/10(金) 18:04:44 ID:tOsrxL9G
ルネス女学院。
貴族や大企業の娘たちが通うことで有名な、マギ・ヴァル区における最大のお嬢様学校のことである。
当然、そんな学校をテロ集団ベルクローゼンやらゲブやら魔王(笑)やへザーなどの悪党どもが狙わないわけがない。
しかし、ルネス女学院はいつだって平穏そのもので、基本的には平和だ。
それには理由がある。
教職員が強いわけではない。大賢者の呼び声高いサレフは、学究肌故体力がないため実践では役立たず。
真銀の騎士の呼び声高いゼトは、戦場を見渡し機を読む事に長けるものの、本人の実力が伴わない。
ならば、ルネス女学院の平和を守るのは誰か?
仮面の騎士、と呼ばれる存在だ。
ロプトの剣なんて飾りです! 漆黒の悪夢? 不眠症の俺には利かんのだよ! とばかりに戦場を駆け回る、某漆黒の騎士に勝るとも及ばぬ強者である。
仮面の騎士がいる限り、永遠にルネス女学院の平和は保たれる。
頑張れ騎士様! 負けるな騎士様!

「……で、これは一体何なのです?」
透き通った水色の長髪を持つ少女エイリークが、青の長髪に凄まじくメリハリの利いた悩殺ボディを持つ少女ターナに問う。
「文化祭の出し物。このプロモーション画像を流すそうよ?」
「気付かれたらどうするのですか? 私が『彼』であると」
そう言って、その場面を想像してぶるりと震える少女の肩に、雪のような純白の手が載せられる。
「ありえませんわね。エイリークは普段馬に乗って闘っていますし、歩兵戦術で戦っている仮面の騎士と同一だと気付く者などいるわけがありませんわ」
エイリークが驚いて振り向くと、そこには級友のラーチェルがいた。
ラーチェルは某剣魔風にいえば『同じ宿命を持つ者』ゆえ、いつも仲がいい。
『同じ宿命』の部分を詳しく言えば、胸のサイズについての悩み……要するに貧乳の悩みを共有する存在ということだ。
「それならばよいのですが……。そういえば、文化祭の警備については? 私も、文化祭のときくらいは普通に『エイリーク』でいたいのですが」
「それについてはご心配なく。貴女の兄上が警備に当たってくださると電話を受けました」
「シグルド兄上ですか?」
「紋章町の中で最大級の危険人物、最近人間台風にCCした人外、とでも言えばいい?」
ターナの言葉を聞き、エイリークは得心したように柏手を打つ。
「アイク兄上ですか。ならば安全面についての問題はありませんわね」
96 名前: ルネス女学院の文化祭 [sage] 投稿日: 2008/10/10(金) 18:37:31 ID:tOsrxL9G
文化祭当日。
普通の高校の文化祭のように、さまざまな露店が目白押しになっている。
お好み焼きや蛸焼きは当然、変わり種として『がいこつのにく屋』や『よくわかる倒置法講座』などもある。
そんな山ほどある屋台の間を抜けていくと、ルネス女学院の優美という言葉の意味を凝縮したような校舎が見えてくる。
そして、校舎の前に、テロ集団ベルクローゼンやら変態ゲブやら魔王(笑)やらへザーやらが集結していた。
明らかに周囲から浮いている……というか、最早変質者にしか見えない彼らを見て、周囲には野次馬が出来上がっている。
「うふふ、かあいい女の子たちが一杯いるわね。さて、何人お持ち帰りしようかな?」
「今日こそ! 更衣室に隠しカメラを仕掛けるぞ野郎ども!」
「ぐふふぅ……さて、何人<ダキュンダキュン>してやろうかぁ……」
「魔王(笑)って言うな! 一応、一般人程度なら簡単に消し飛ばせるんだぞ!」
そんな、欲望の声や怨嗟の絶叫が広場に響き、周囲の野次馬はざわめく。
それを五月蠅そうに見る魔王フォデスは、周囲に額を向け、そこに力を溜めていく。
不浄の魔光。巫女の放つレクスオーラと対極をなす、清浄ではなく汚濁をもたらす邪の光である。
しかし、放たれたフォデスの光は決して群衆には届かない。
何故ならば、黄金の輝きをもつ神剣から放たれた閃光とぶつかって相殺されたからだ。
「な……」
驚きを隠せぬ魔王。
その長大なるリーチに踏み込み、片手で握る両手剣に力を込めている、蒼髪の男がいた。
グレイル工務店店長、アイク。回転署長、突貫竜騎士、ユングヴィ神拳と並ぶ、紋章町最大級の危険人物である。
そうぜん、そんな怪物に魔王(笑)が及ぶはずもない。
「大!」
と、力を込めたかち上げの斬撃で、魔王(笑)の体は天に飛び上がった。
そして、始まるのは、奥義・流星にも勝る程の連続攻撃の嵐。
「天!」
魔王(笑)を細切れにしていく、神剣ラグネルの連続攻撃。
そして、かろうじて原形をとどめていた魔王(笑)の頭に、封印の剣もかくやという炎が宿る。
「空!」
地獄の炎を纏った神剣は魔王(笑)の額に振り落とされ、魔王(笑)の頭は爆弾と同等のエネルギーを溜めこむ。
そして、地面に叩きつけられた頭は、割れて中身を飛び散らすと共に、凄まじい爆発を引き起こした。
それは、野次馬に届くことはなく、少なくともテロリストたち全てを根こそぎ消し飛ばせるだけのちょうどいい爆発だった。

162 名前: ルネス女学院の文化祭 [sage] 投稿日: 2008/10/15(水) 12:51:19 ID:6dd4vT3W
「ブゴッ!」「あぎゃっ!」
ヘザー以外のテロリスト達が、そんなジョジョの奇妙な呻き声をあげて死んでいく。
一人だけ、体力や防御力や防御床の関係で生き残っていたヘザーは、ペシュカドを構えてアイクに相対する。
対するアイクは、ラグネルを地面に突き刺して腕を組む。真紅のマントが風を孕んでたなびく。
「一体、何のつもり? 私と戦うのに武器を持たないっていうのは?」
「野良犬相手に表道具は用いん。……来るがいい」
そう言って、密偵の戦闘モーションを取る。左腕を前に、右腕を防御に回す構えだ。
前に構えた右腕で、挑発するように指をくいくいと動かす。
「じゃあ、これでも喰らって死になさい! 奥義瞬殺!」
その掛け声とともに、ヘザーが紫のオーラを纏う。
ヘザーは、ペシュカドに纏わせたオーラををアイクの胸に叩きつける。
目に見えて減っていく、アイクの体力。
あくまで、瞬殺は瞬殺。一撃で倒すことはできない。少なくとも、追撃を入れなければ倒すことはできないのだ。
だが、その弱みを補って余りある、ヘザーの速さ。相手の反撃が来る前に追撃を入れることは十分に可能だ。
「遅い。その程度では俺を殺すことはできん」
ヘザーは、異常を察知するべきだった。
アイクのスキルには、見切りというものがある。相手の戦闘スキル全てを無効化するという、なんともチートなスキルである。
当然、瞬殺も戦闘スキルの一種。だが、瞬殺は発動した。
つまり、それは見切りの代わりのスキルを取得しているということ。
ならば、そのスキルは? いま、HPが極限に減った状態で発動しようとしているスキルの正体は?
「怒りと勇将。当然、ナドゥスで漆黒の騎士と対した時の特別仕様だがな」
アイクが、赤と青の気を纏う。
「怒り、勇将共に発動。必殺率50%増量」
ヘザーは、訪れるであろう衝撃に備え、両腕を十字に構える。
「乱数判定……必殺、発動」
そして、アイクの剛腕は、ヘザーのクロスアームブロックを強引に打ち壊した。
べきべき、という音がした。骨の砕ける音だ。
しかし、アイクの攻撃はその程度では終わらない。
一度拳を引き、もう一度ヘザーの砕けた腕を殴る。今度は、腕が千切れて白い骨が露出した。エルフェンリート。
もう一度拳を引き、力をため、無防備になったヘザーの顔面を殴り飛ばした。
「ヤッダーバァ―――ッ!」
幸いにもヘザーの首が飛ぶという惨事は起こらず、ヘザーの体そのものが空の彼方に飛んで星になった。