16-192

Last-modified: 2011-06-07 (火) 23:19:34

192 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:37:38 ID:NYNKeQsT
夜の暗闇に深々と降り注ぐ白い雪。
町を彩る美しい明りの下、子どもたちは笑い、恋人たちは寄り添いあう…。そう。今日こそクリスマス・イヴ。
この日のために準備をしてきた男が今、立ち上がる!

ヘクトル「おいビラク!これは何のつもりだ!?」
ビラク「何を言っているソウルブラザーヘクトル。今日は聖夜。聖夜といえばウホッじゃないか。」
ヘクトル「どうしてそっちに行くんだよ!?いいから縄をほどけ!」
ビラク「俺はこの日のためにお前の目を目覚めさせる準備をしてきた。
    安心してくれ。明日には女なんてガーゴイルにしか見えなくなっているさ。」
ヘクトル「ちょ……やめろーーー!」

                             完

漆黒の騎士「おい、勝手に終わらせるな!身の程をわきまえよ!」
ルベール「どうされたんですか将軍?急に怒り出して……。」
漆黒の騎士「い、いやなんでもない。それよりどうだ、天馬のコンディションは。」
ルベール「最高ですよ。あいつらったら、すっかり私になついちゃって。……あの、クリスマスが終わったら本当に山に返しちゃうんですか?」
漆黒の騎士「当然だ。それとも、お前が飼うか?」
ルベール「う……本当はそうしたいんですけど、私の家、マンションなんですよね…。」
セフェラン「二人とも!プレゼント積もうーー!」
ルベール「はい!セフェラン様!」
漆黒の騎士「全く………まだ七時だぞ。配るには早…。」
セフェラン「わ!これ、超品薄の“ラルゴっち”じゃない!こっちは限定カラーのニンテントDS!」
漆黒の騎士「こ、こら!中身を見るな!」
セフェラン「えへへ。ごめんなさぁ~い。」
漆黒の騎士(やはり、一緒にプレゼントを配るなんて許可するべきではなかったな……。)
ルベール「将軍、そろそろ……。」
漆黒の騎士「む…そうだな。よし、ルベール。」
ルベール「はい。」
しっこくとルベールは、手を合わせて静かに目を閉じた。
漆黒の騎士「…アスタルテ様。どうか今年のサンタ巡業も成功を収められるよう、神のご加護をお与え下さい。」
ルベール「お与え下さい。」
セフェラン「あら?それまさか、毎年やってたの?」
ルベール「はい、この祈りのおかげか、毎年将軍は何事もなくサンタとしての役目を終えられています。」
セフェラン「なんだ。私に頼めば直接アスタルテ様にお願いに行ってあげたのにぃ~。」
ルベール「女神のご加護がついたソリですか!それもいいですね!」
漆黒の騎士「馬鹿者。こんなことのために女神の御手を煩わせるわけにはいかん。」
ルベール「将軍、そんなこと言って、実はちょっと乗ってみたいんじゃないですか?」
漆黒の騎士「そ、そんな気持ちは微塵も無い!」
セフェラン「やーだ、やっぱりぜーたんもそう思ってたぁ?
      じゃ、今からアスタルテ様のところに行って、ソリをスペシャル女神様バージョンにしてもらうよう頼んでくるわね!」
そう言うと、セフェランは一瞬のうちにリワープしてしまった。
漆黒の騎士「ああ……。全く、勝手なことを……!」
ルベール「わあ、よかったですね将軍!ああ、スペシャル女神様バージョンってどんなソリでしょうね?
     時速1000km突破できたり、水中も進めたりしたらすごいですなあ。」
漆黒の騎士「………私は期待などしていないからな。」
と、言いつつ、内心ちょっとだけわくわくしている自分に嫌気が差したシッコクロースだった。

193 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:39:17 ID:NYNKeQsT
漆黒の騎士「…遅い!義父上は何をしているのだ!
      もう行かねばならない時間だと言うのに!」
ルベール「そうですね……。」
漆黒の騎士「……仕方がない。義父上は置いていく。」
ルベール「ええっ!?いいんですか!?」
漆黒の騎士「いい。」
ルベール「そんな……。」
漆黒の騎士「さあ、サンタ服に着替えるぞ。」
しっこくとルベールはサンタ服を着込みソリのところへ行ったが、ソリはいまだにバージョンアップしていなかった。
漆黒の騎士「全く…やる気があるのか義父上は……。」
ルベール「ゼルギウス将軍!プレゼント、積み終わりました!」
漆黒の騎士「うむ。さあ、早くソリに乗るのだ。」
ルベール「はいっ!」
漆黒の騎士「よしっ…飛ぶのだ天馬!」
ペガサス「ヒヒーーーン!」
サンタ二人とたくさんのプレゼントを乗せたソリが、ペガサスたちに引かれ、走り出した。
そしてペガサスたちが空へとはばたくと、ソリもまたふわりとクリスマスの夜空へと飛び立った。
ルベール「うわーーーっ!すごいです!すごいですよ将軍!」
漆黒の騎士「そうか。お前が同乗するのは初めてだったな。美しい眺めだろう。」
ルベール「はいっ!とっても!」
漆黒の騎士「しかし、我々の任務は子どもたちにプレゼントを届けることだ。それを忘れてはならない。」
ルベール「あ……申し訳ありませんでした!私、ついつい大はしゃぎしてしまって…!」
漆黒の騎士「(まあ、気持ちはわからんでもないがな。)…そろそろ最初の家に着くぞ。」

ルベール「ここは、あの青年の家ですね。」
漆黒の騎士「そうだ。よし、どうやら子どもたちは全員眠っているらしい。」
ルベール「では、早速中へ入って……。」
漆黒の騎士「!ルベール、静かに!」
ルベール「え?な、なんですか?」

ゲラルド「なんですかい、この家?ボロ屋じゃないですか。本当にこんなところに盗みに入るんですかいアニキ?」
ガンドルフ「ああ。この家はボロで金はないが……小せえガキがうじゃうじゃいるんだ。」
ゲラルド「なるほど。そいつらをさらって売っぱらうってことですね。さすがアニキだ!」
ガンドルフ「そういうこった。さ、とっとと終わらせるぞ。」
ゲラルド「へい。」

ルベール「あいつら……まさか人さらいですか!?クリスマスだってのに、ロクでもないことを……!」
漆黒の騎士「…ルベール、このサンタ服を持っていてくれ。」
ルベール「行かれるんですね、将軍。……お気をつけて。」
漆黒の騎士「無論だ。」

194 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:40:54 ID:NYNKeQsT
「すーすー。」
「すやすや。」
ゲラルド「おおう!こりゃあ相当多いですね。」
ガンドルフ「さあ、悪く思うなよ……。」
ガターーーン!
ガンドルフ「なっ…なんだあ!?」
漆黒の騎士「……その子どもたちに手を出すことは、この私が許さん。」
ガンドルフ「なんだあ、てめえは!?」
ゲラルド「げっ……あいつはまさか…!?」
漆黒の騎士「貴殿がただの汚い山賊ならば、そこを退くがいい。時間の無駄だ。」
ガンドルフ「んだとゴルアアア!」
ゲラルド「アニキ!あいつはえらく強いって有名な漆黒の騎士ですよ!」
ガンドルフ「なんだと?」
ゲラルド「俺たち、とんでもねえところに来ちまった…。ここはしっこくハウスだったんですよ!
     アニキ、悪いことは言いませんから、とっととズラかったほうが……。」
ガンドルフ「うるせえ!漆黒の菓子だかなんだか知らねえが、俺の邪魔をするやつは……ドタマカチ割る!」
ガンドルフが斧に手をかけた瞬間、
漆黒の騎士「甘い!」
スキル発動【月光】【怒り】【連続】【勇将】【恐怖】【武器破壊】
ガンドルフ「な………!?うぎゃああああ……!」
ゲラルド「ぎゃああ!だから言ったのにぃぃ……!」
二人はもうすでに星になっていた。
漆黒の騎士「口ほどにも無い。」
ルベール「やりましたね、将軍!」
漆黒の騎士「うむ。しかし…それにしても……。」
「ぐーぐー。」
「むにゃむにゃ…。」
漆黒の騎士「あれほど騒いだというのに、誰一人起きなかった。子どもはよく眠るというが……。」
ルベール「いやぁ、たくましいですよね。子どもって。」
漆黒の騎士「全くだな。…よし、眠っている間にプレゼントを配るぞ。」
ルベール「はいっ!」

195 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:42:57 ID:NYNKeQsT
オージェの家の子どもたちにプレゼントを配った二人は、再びソリに乗って次の家へと急いだ。
漆黒の騎士「しかし、一軒目からあんなことが起きるとはな。」
ルベール「でも、子どもたちを守れてよかったですよ。」
漆黒の騎士「お前は子どもが好きか?」
ルベール「はいっ!私、なぜか子どもによくなつかれるんです。一時期は、保父さんになろうと思ったこともあります。」
漆黒の騎士「そうか。
     (ルベールが保父に……。ちょっと抜けてるせいで、子どもたちに馬鹿にされている姿が想像できてしまう……。)」
ガゴゴゴゴ…
ルベール「あれ?将軍、なにかおかしな音がします。」
漆黒の騎士「む……?」
奇妙な音が聞こえてすぐに、ソリが大きく揺れ始めた。
ルベール「う、うわ!?ソ、ソリがゆれてて…ててっ!舌かんだ!」
漆黒の騎士「これはまずい……。早く、どこかに着地を…。」
ルベール「あーーっ!将軍!ソリの底に穴が開いています!」
漆黒の騎士「何だと!?まさか、さっき山賊を退治したときにエタルドの衝撃波が当たったのか……!?」
ルベール「そんな…将軍、ちゃんと狙いつけてくださいよーー!」
漆黒の騎士「そ、そう言われても仕方が無いだろう。巻き込まれたほうが悪いのだ。」
ルベール「ペガサスにギリギリで衝撃波を当てるなんてこともできるのに…。
     あの時かっこっよく山賊退治をした自分に酔って気が緩んでいたんじゃないですかー!?」
漆黒の騎士「な…!そ、そんなことは……!」
ゴスッ
ルベール「え?」
漆黒の騎士「…嫌な予感がする。」
鈍い音が聞こえた直後、ソリが落下を始めた。
ルベール「うわあああ!落下してますよ将軍!」
漆黒の騎士「落ち着けルベール!私の上によじ登るな!」
ルベール「しょ、しょ、将軍!転移の粉で脱出しましょうよ!」
漆黒の騎士「無茶を言うな!空中で使用すれば粉が拡散してしまう!」
ルベール「そ、そんなあ!じゃ、じゃあポチ、タマ、ミー、コロ!(←ペガサスの名前)私たちを乗せてくれ!」
ポチ「プイッ(やだね。)」
タマ「ブルル(オレら、ピッチピチの女の子しか乗せないもんねー。)」
ミー「ヒヒヒン(そんなむさい鎧男、乗せてられっか!)」
コロ「ヒン(オレらは勝手に脱出させてもらうからな。じゃ!)」
ペガサスたちは無情に飛び去っていく……。
ルベール「ああっ!この白状者!あとで馬刺しにしてやる!」

196 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:44:47 ID:NYNKeQsT
二人が問答している間にも、地面がどんどん近づいてくる―――――
ルベール「ああ…わたしのじんせいは ここでおわってしまった\(^o^)/」
漆黒の騎士「くっ……すまんルベール、義父上、そして………。」
―雪降る夜空を駆け、夢を贈る者たちよ……。
漆黒の騎士「!?この声は……!」
ルベール「うわああ!あの世からのお迎えだ!天使が舞い降りて、フラ○ダースの犬よろしく、僕らをソリごと天へ持って行っちゃうんですよーー!」
漆黒の騎士「いや、違う!これは……!」
―正しき道を歩むそなたらに、正の女神の祝福を授けん!
その不思議な声と同時に、落下していたソリが淡い光に包まれ、空中でピタリと動きを止めた。
ルベール「え……!?ソリが…止まりました!」
漆黒の騎士「………女神の加護!」
動きを止めたソリはそのままゆっくりと下降し、森の空地へと静かに着地した。
ルベール「あ……助かったんですね!私たち!」
漆黒の騎士「そのようだ……。」
「もー、ほんとによかったぁ!二人とも無事で!」
ルベール「え?」
セフェラン「もうちょっと遅かったら危なかったわよ!全く…無茶するんだからぁ!」
ルベール「セフェラン様!?いつの間にソリに乗ってらしたのですか!?」
セフェラン「ついさっきよ。
      いやぁ~、800年ぶりくらいにアスタルテ様と直接お会いしたもんだから、ついつい積もりに積もった話をしちゃって遅くなっちゃったの!
      ごめんなさぁ~い!」
漆黒の騎士「…つまり、くだらん世間話が原因で約束をすっぽかしたということだな?」
セフェラン「やだぜーたん、そんなに怖い顔しないで!
      ほら、アスタルテ様もあなたたち二人のサンタ巡業を感心なさって、とびきりスペシャルなご加護を与えてくださったのよぉ!みてみて!」

197 :メリー・シッコクロース 贈り物編:2008/12/24(水) 16:46:22 ID:NYNKeQsT
二人はソリを見たが、一見すると何の変化もないように見えた。…エタルドで開けた穴はいつの間にか塞がっていたが。
セフェラン「これこそ、名づけて
      “ハイパーゴールドラグジュアリーフルオートオートマチック真ファイナルヴァーチャルエムブレムときめきドラゴンソリ”よ!」
漆黒の騎士「長いわ!しかも、結局何にも変わっていないではないか!」
セフェラン「そんなに焦らない!ほら、こっち来て。ここに新しいボタンがついたの!この一番左のボタンを押してみてぇ?」
漆黒の騎士「またボタンか……。今度は何だ…。」
ポチッ
ソリナビ<起動中……。ヨウコソソリナビヘ、データヲロードシマス。
ルベール「わっ!ハイテクなモニターが出てきました!」
セフェラン「これは紋章町の地図を正確に記録したソリナビ!これでプレゼントを届けるために一番いいルートがわかるわよぉ!」
ルベール「じゃあ、このボタンはなんですか?」
ポチッ ウィィィィーーン
ルベール「わぁぁ!かっこいい翼とエンジンが出てきました!」
セフェラン「ルベールちゃんリクエスト・最高時速1000kmで飛べるソリよ!
      翼で飛んでも自動でトナカイのシルエットを出してくれるから、雰囲気もバッチリ!」
ルベール「すごいです!ああっ、正の女神様!私などのお願いを聞いてくださってありがとうございます!」
セフェラン「どうどう?ぜーたん?」
漆黒の騎士「………。」
ルベール「あ、あれ?将軍?」
セフェラン「……気に入らなかった?」
漆黒の騎士「………………………………………かなり、やる。」
セフェラン「!!!」
ルベール「やっぱりそう思いますよね、将軍!」
漆黒の騎士「アスタルテ神からの贈り物……ありがたく使わせていただこう。」
セフェラン「そうこなくっちゃ!じゃ、早速配達再開ね!」
ルベール「やった!早く飛びましょう!」
漆黒の騎士「うむ。では、行くぞ。飛べ!」
セフェラン「ぜーたん、そんなんじゃダメダメ。ちゃんと“ハイパーゴールド(略)ドラゴンソリ、発進!”って言わないと。」
漆黒の騎士「す、少しほめたぐらいで調子に乗るな!身―――――」
サンタ服<身の程をわきまえよ。
漆黒の騎士「ルベール!その機能は使うなと言っただろう!それと私のセリフを取るな!」
ルベール「いやー、やっぱりこの機能を封印するのはもったいないですよ。簡単に将軍になりきれて楽しいです!」
漆黒の騎士「なりきらんでいいわ!」
セフェラン「ほらほらぜーたん、早くしないと朝になっちゃうわよぉ~?
      ちゃんと“ハイパーゴールド(略)ドラゴンソリ、発進!”って言わないと、このソリは動かない仕組みなのよぉ。(ウソ)」
漆黒の騎士「くっ…仕方がない。では…ハイパーゴールド(略)ドラゴンソリ……発・進!」
セフェラン(ふふ…まだまだね、ぜーたん^^)

女神アスタルテの加護を受けたソリを手に入れたシッコクロースたち。
このまま無事にプレゼントを配ることができるのか?
流星編に続く。

※贈り物編で完結予定でしたが、長くなった為分割。
クリスマスものということでなるべく明日には続きをうpしたいですが、まだ完成していないので無理かもしれません…。