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Last-modified: 2011-06-07 (火) 23:26:13

258 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 04:52:14 ID:PggZw2i7
第3話 シレジア滅亡の危機(前編)

シルヴィア「セティ、レヴィン知らない?」

―仕事中の私の部屋に、1人の女性がいきなり入ってきた。
彼女はシルヴィア、ユグドラルの踊り子で、兄上の恋人の「1人」だ。

セティ  「い、いえ、今日は朝から出かけたようですが・・・」
シルヴィア「本当でしょうね?隠すとためにならないわよ」
セティ  「は、はい、本当です」
シルヴィア「レヴィンの奴・・・どこいったのよ・・・」
セティ  「あ、あの、つかぬことを聞きますが、兄上と何が・・・?」
シルヴィア「レヴィンの奴、クリスマスはあたしと2人っきりだって言ったのに、
       他に何人もの女とも約束してたのよ!!」
セティ  「あの放蕩兄貴め・・・」

―私は頭を抱えた。
放蕩三昧、遊び好きの兄上ゆえ、女癖も相当悪い。
あちこちで女性を口説いては、こうしてトラブルの種を蒔いている。
そして、大概、後始末は私が行うのだ。
私自身は独り身なのに、なんたる不公平、なんたる不条理、いますぐにでも泣いてしまいたい。

シルヴィア「今日という今日は許さないわ。
       セティ、レヴィンを見つけたらすぐにあたしに知らせなさい。
       さもないと、あんたもこの剣のサビにしてやるから」

―そう言って、シルヴィアさんは一振りの剣を私に見せた。
オープニングで見せた壊れた剣ではない、一見普通の剣だが、妙な寒気を覚えるのはなぜだ?

セティ  「あ、あの、その剣は一体・・・?」
シルヴィア「これ?ふふん、この間アカネイアに仕事に行ったときに手に入れたの。
       もとはただの細身の剣だけど、通常の限界を越えて錬成した特注品よ。
       威力は50、命中は200を超えているわ」
セティ  「ちょ・・・神器以上!!」
シルヴィア「さらに特別に風の魔法使いに対する特攻も付与、
      あんた達にいくらフォルセティの補正があっても一撃よ」
セティ  「な、なんですか、その、シレジアを目の敵にしたような仕様は?」
シルヴィア「あいつを見つけたら思いっきり叩き込んでやるんだから。
       だからすぐにあたしに知らせるのよ、わかった!?」
セティ  「は、はいいいいいい!!」

―あんな剣をちらつかされたら、従うほかはない。

シルヴィア「あのばか・・・あたしだけだって言ったのに・・・」

―そう言って、シルヴィアさんは部屋を出て行った。
数分経ち、彼女が屋敷から出たのを窓から確認すると、ため息を一度ついてから、
私以外誰もいないはずの部屋で、私は口を開いた。

セティ  「シルヴィアさんはお帰りになりました、
      もう大丈夫ですよ、兄上。」
レヴィン 「ぷはぁ~~~~~、あ~狭かった」

―私の足元の床の一部が開き、そこから兄上が出てきた。
この間改築するさい、兄上が業者に勝手に頼んで作らせたらしい。
それ以来、私以外の人間から隠れる時に使用している。

259 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 04:53:26 ID:PggZw2i7
レヴィン 「まったく、あいつにも困ったもんだ。
      俺のためだけにあんな剣まで作りやがって・・・」
セティ  「自業自得です。
      あんな綺麗な恋人がいるのに、他の女性に手を出しまくれば、
      こうなるのは必然でしょう」
レヴィン 「恋人~?シルヴィアが~?
      でも、あいつとしたことっていったら、
      何回か『可愛い』って言って、メシ食って・・・」
セティ  「それで充分ですよ」

―悔しいが、兄上は相当の美形だ。
ユグドラル一ともいわれる甘いマスクに、軽妙さと品性を兼ね備えた振る舞い、
さらには口八丁、手八丁、となれば惹かれる女性も多い。
そんな兄上に面と向かって「可愛い」と言われ、一緒に食事をする、
女性が本気になるには充分だろう。
ちなみに私はティニーに「君は私の宝物だ」と言ったことがあるが、綺麗さっぱり流された(涙)。

セティ  「兄上がそんなことをすれば、シルヴィアさんは本気に・・・」
レヴィン 「あと映画行って、遊園地行って、夜景見て、
      抱きしめて、キスして、ホテルに行って・・・」
セティ  「そんなことしてたんかい!!」
レヴィン 「これくらいで本気になるか、普通?」
セティ  「なるに決まってるだろうが!!!
      むしろそれだけのことして恋人だと思わないアンタがおかしい!!」
レヴィン 「そういうもんなの?」
セティ  「こ、この男は・・・」

―どうやら泣かせているのは弟だけではないようだ・・・。

セティ  「いいですか、兄上。
      あなたはシレジア家の当主であり、社長なんです。
      あなたの行動は、即シレジアの評価や信用に繋がってしまいます。
      ですから、女性と遊ぶなとは言いませんが、
      もう少し節度のある行動をなさって下さい」
レヴィン 「はいはい」
セティ  「まったく、妊娠した女性が『認知して』とか押しかけたら、
      どうするつもりですか?」
レヴィン 「・・・・・・なあ」
セティ  「な、なんです?急に真剣な顔をして・・・」
レヴィン 「フォルセティの血ってさ・・・妙に傍系が多いんだよな・・・」
セティ  「ど、どうしたんですか、いきなり?」
レヴィン 「9章のムーサーとか、終章の三姉妹とか、なぜか傍系持ってるんだよ」
セティ  「そ、そういえば・・・」
レヴィン 「逆に親世代のダッカーとかは持っていないんだよな・・・
      つまりだ、親世代の時点においては、
      フォルセティの血を持っていた奴はそんなにいないんだよ」
セティ  「な、何を仰りたいのですか・・・?」
レヴィン 「俺はシグルドに会う2年前から各地を遊び歩いていた。
      俺は女好き、子世代は親世代から大体20年後、
      そんな子世代にセティ傍系の血をもった奴らが現れた・・・」
セティ  「あ、兄上・・・」
レヴィン 「つまり、ムーサーや三姉妹は俺の・・・」
セティ  「だあああああああ!!それ以上言ってはいけません!!」

―い、いくら憶測とはいえ、怖くなった。
ムーサーや三姉妹といえば子世代屈指の強敵、
そんな連中が「認知してくれ」と押しかけてきたら・・・。
こ、これ以上は考えないようにしよう・・・あくまでネタだ、ネタであってくれ!!

260 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 04:54:49 ID:PggZw2i7
セティ  「そそそそそ、そんなことより・・・
      い、今外に出たらシルヴィアさんに見つかるでしょう?
      どうせ外に出られないのだから、たっぷり仕事をなさって下さい」
レヴィン 「え~~~~~?」
セティ  「あなたは当主なんです、社長なんです、仕事をするのは当然です」
レヴィン 「し~ご~と~き~ら~い~」
セティ  「ええっと、シルヴィアさんの番号は・・・」
レヴィン 「ああっと、やります、仕事します!!」
セティ  「よろしい」

―どうやら兄上も、シルヴィアさん(というよりあの剣)は怖いようだ。

セティ  「とりあえず、こちらの書類を処理してください」

―兄上の部屋に大量の書類を運び、それを机の上に置いた。

レヴィン 「うわあ・・・吐き気がする」
セティ  「私はいつもその5倍の量をこなしているのですが・・・」
レヴィン 「もうさあ、お前が会社継げって」
セティ  「そうもいきません、親戚達に余計な口実を与えるだけです」
レヴィン 「ううう・・・」
セティ  「言っておきますが、逃げようとしても無駄ですよ。
      ドアには特注の魔法錠を施してありますので、
      私の許可なく開けることは絶対にできません。
      窓も開きませんし、ガラスも耐魔法強化ガラスです。
      神器クラスでないと破壊は不可能、エルウィンドじゃ絶対無理ですよ」

―第1話で倒壊した家を直す時に、兄上の部屋にだけ施しておいた。
クレインに頼み、彼の父パントの師、大賢者アトスに作製してもらったものなので、
絶対に安心だ。
フォルセティは私が所持しているし、流石の兄上もここから逃げることは不可能だろう。

レヴィン 「よくもまあ、こんなことを・・・」
セティ  「兄上が逃げるからです。
      とりあえず、3時間後に休憩を取りますから、
      それまでは集中して仕事に取り掛かってください」
レヴィン 「セティの鬼、悪魔」
セティ  「なんとでも言ってください」
レヴィン 「暗黒神、ロプトウス」
セティ  「仕事をしてくれるのでしたら、何を言われても気にしません」
レヴィン 「独り身、チェリー」
セティ  「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

―私の心に、兄上の言葉が必殺で突き刺さった。

レヴィン 「あれ、いや、冗談で言ったんだけど、え、図星?
      待てよ、お前、ティニーとまだだったの!?」
セティ  「い い か ら 黙 っ て 仕 事 し ろ !!」

―兄上を一発蹴飛ばした後、部屋を出て、魔法錠を施す。
馬鹿野郎、私はまだティニーの手すら握ったことないんだ、なんか文句あるか?
グス・・・(涙)
涙ぐみながら部屋の扉を後にし、階段を降る。
玄関には母上がいた、丁度外出から帰ったところらしい。

セティ  「母上、お帰りなさいませ。外は寒かっ」
ラーナ  「セティ~~~~~~!!」

―私の姿を確認するやいなや、母上は私にすがりついてきた。
そして、大声で泣きだした。

261 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 04:55:48 ID:PggZw2i7
セティ  「は、母上・・・いかがなされましたか?」
ラーナ  「ま、また、またやってしまったのですぅぅぅ・・・よよよ・・・・・・」
セティ  「ということは・・・はぁぁぁぁぁ」

―思わず深いため息をつく、また「あれ」が出たようだ・・・。
我が母ラーナ、優しく慈悲溢れたすばらしい女性だが、1つだけ、致命的な欠点がある。
実は母は失言がものすごく多いのだ。
普段、何気ない会話の中でも、うっかりと一言多く言葉を発してしまい、
それが相手の神経を逆なですることがよくある。
おそらく読者の方々も、以下の会話は耳にしたことがあるのではないか。

(聖戦の系譜 第4章冒頭会話より)
ラーナ  「それにね、その姫様はアルヴィス卿と恋仲だそうよ
      国王も認められて近々盛大な挙式をなされるとか」
シグルド 「アルヴィス卿と?」
ラーナ  「見てきた者の話ではとても美しい姫様のようでアルヴィス卿とはとてもおにあいとか、
      お二人とも幸せそうだったと申しておりました。
      ふふっ、若い人達はいいですね。シグルド様も・・・あっ・・・ごめんなさい
      ・・・・・あなたのおくさまは・・・」
シグルド 「(グサッ)妻は・・・ディアドラは消えたままです・・・
      あれからもう一年あまり(グス・・・)、
      セリスもすっかり大きくなったというのに
      まだ見つけることができません(シクシク・・・)」

―このように相手を傷つけ、トラブルに発展する。本人には全く悪気がないのがかえって性質が悪い。

セティ  「母上、まずは落ち着いてください。
      玄関では話しにくいですから、場所を移しましょう。
      誰か、温かいお茶を用意してくれ」

―私と母上は、食堂の方へ場所を移した。
しばらくして、お茶が運ばれてきた頃、ようやく母上は泣きやみ、落ち着きを取り戻した。

セティ  「落ち着かれましたか?では、母上、一体何があったかお話ください」
ラーナ  「実は、竜王家にお茶会のお誘いがあったのですが・・・」
セティ  「りゅ、竜王家!?」

―よりにもよって、あのラスボス大ボス勢ぞろいの一家に失言・・・どうやら面倒なことになりそうだ。

ラーナ  「そこで、このような話になりまして・・・」

~竜王家サロン~
ニニアン 「お茶をどうぞ」
ラーナ  「わざわざありがとう、こちらのお嬢さんですか?」
デギンハンザー「うちの三女、ニニアンです。
          ニニアン、シレジア家のラーナ殿だ。ご挨拶なさい」
ニニアン 「ニニアンと申します。ラーナ様にお会いできて光栄ですわ」
ラーナ  「まあ、ご丁寧に。とても素敵なお嬢さんですね」
デギン  「ははは、よろしければ、セティ殿の婿にいかがですかな?」
ニニアン 「え、そ、それは・・・」
ニルス  「お爺様、ダメだって。ニニアンはもう好きな人がいるんだから
      あ、僕の名前はニルス。ラーナ様、よろしく」
ニニアン 「二、ニルス!!」
ラーナ  「ふふふふ・・・そういうことでしたら、お断りしないといけませんわね
       それに、ニニアンさんはうちのセティには勿体無いですわ」
デギン  「そんなことはありません、セティ殿は素晴らしい。
      あの年齢で経営の手腕を発揮し、さらに魔道の研究もしている。
      実に立派なものですぞ」
ラーナ  「お褒め頂いて光栄ですわ」

262 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 04:57:58 ID:PggZw2i7
アル   「アルだ、よろしくな」
ユリウス 「ユリウスだ」
デギン  「お前達は・・・申し訳ありませんな、ラーナ殿」
ラーナ  「ふふふふふ・・・
      男の子はこれくらいの方が元気があってよろしいですわよ」
デギン  「まったく、少しはセティ殿を見習ってほしいですな。
      うちの者に限らず、最近の若者は礼儀も根性も足りませんからな」
ラーナ  「あら、でもデギンハンザー様に足りないのは、
      根性でも礼儀でもなく、『 髪 の 毛 』ではありませんこと?」
ニニアン ( ゚Д゚)
ニルス  ( ゚Д゚)
ユリウス ( ゚Д゚)
アル   ( ゚Д゚)
デギン  「(ピキピキ)は、は、ははははは・・・
      ラーナ殿はなかなかご冗談がお上手だ・・・
      あは、あははははは、はは・・・」
ラーナ  「おほほほほほほほ・・・」
デギン  「そ、それにしても、今後とも我々とシレジアは
      良好な関係を持っていきたいものですな。
      そうすれば、両家の明るい未来に繋がるでしょう」
ラーナ  「デギンハンザー様の頭はすでに充分明るいと思いますが」
ニニアン ( ゚Д゚)
ニルス  ( ゚Д゚)
ユリウス ( ゚Д゚)
アル   ( ゚Д゚)
デギン  「は、はは、ははははははははは・・・
      わかりました、それがシレジアの姿勢なのですな」

セティ  「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ラーナ  「先方はそうとう怒っていました・・・ああ・・・」
セティ  「当たり前です!!!
      は、母上、あ、あなたはなんということを・・・」

―よ、よりにもよって、竜王家三巨頭の1人に向かって、
髪が足りないだの、頭が明るいだのと・・・。
竜王家三巨頭とは、竜王家の頂点に立つ3人の長老で、ガトー、メディウス、デギンハンザーを指す。
大ボス揃いの竜王家の中でも屈指の力をもち、
さらにその中でもデギンハンザーは最強の戦闘力をもつと、もっぱらの噂だ。
そ、そんな人を怒らせたら・・・。

セティ  「そそそそそそそ、それで、むむむむ、向こうは、
      ぐぐぐ、具体的にどうすると・・・?」
ラーナ  「シクシク・・・あ、明日の朝、竜王家が、シレジアに対して、
      宣戦布告をするようです・・・よよよ・・・」
セティ  「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
      せせせせせせせせ、宣戦布告ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!????」
ラーナ  「全面戦争ですって、あああああああ」

―全面戦争・・・
あの、ラスボス、大ボス、チートユニット勢ぞろい、
さらに常時戦闘竜を1000人以上かかえる竜王家と、全面戦争!!?
無理無理無理、絶対無理、1週間たたずに跡形もなく消し飛ぶわ!!
シレジアが・・・シレジアが・・・滅亡!!

セティ  「そ、そんな・・・」
ラーナ  「あああああ・・・」

―私は途方にくれた・・・一体どうすればいい・・・?
第4話(後半)につづく

263 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 05:00:54 ID:PggZw2i7
※すみません、レス数的にもう少し余裕があるので、追加します。

―途方にくれる私たちに、秘書のホークが受話器を持って声をかけた。

ホーク  「セティ様、竜王家の方よりお電話が」
セティ  「何!!すぐに代われ」

―奪うようにホークの手から受話器をとった。

セティ  「・・・はい、代わりました、セティです」
ユリウス 「おい、この年の瀬になんて面倒なことを起こしてくれたんだ!!」
セティ  「その声・・・ユリウスか?」

―同級生のユリウスだ。
あまり話したことはないが、流石に声を聞けばわかる。

ユリウス 「ああ、そうだ、ったく、家中は大騒ぎだぞ」
セティ  「こ、今回のことは本当にすまない、私の母も悪気はないんだ。
      それで・・・やはり、戦争なのか?」
ユリウス 「ああ、もう戦闘竜が1500人は集まっているな」
セティ  「そ、そんな・・・
      確かに非はこちらにあるが、それだけで戦争というのはあまりに酷ではないか?」
ユリウス 「いつもならそうだが、あまりにタイミングが悪かった」
セティ  「どういうことだ?」
ユリウス 「2年位前か、家の財産の10パーセント以上を費やして
      紋章町中の大学に究極の毛生え薬の開発を依頼してな。
      それが先週やっと完成したんだ」
セティ  「・・・」
ユリウス 「デギンハンザーはそりゃ大喜びさ。
      家族集めて、『これでわしもフサフサじゃ』とか言って、
      僕達の目の前で頭皮ににたっぷりと薬を塗った」
セティ  「・・・」
ユリウス 「ところが、薬は結局効果がなかったんだ。
      大学に問い合わせたら、
      『この薬でだめな以上、現代の医学では解決できません』だと。
      つまり、じじいは名実共に、完全なハゲの烙印を押されたんだ」
セティ  「うわあ・・・」
ユリウス 「それからというものじじいは塞ぎこんでな・・・
      巨額の金を費やしたことで、他のじじいにはなじられるし、
      ファには『おじいちゃま、いつになったらフサフサになるの?』
      なんて聞かれるし。
      そしてとどめに、お前の母親のあの発言ときた。
      そりゃあ、怒り狂いもするわ」
セティ  「うう・・・頼む、そこをなんとか・・・
      お前達とまともに戦ったら、確実にシレジアは滅亡する」
ユリウス 「幸い他の2人のじじい、メディウスとガトーが反対している。
      いくらなんでも戦争はやりすぎだとな。
      姉さんや妹達、僕も同意見だ」
セティ  「本当か!?」
ユリウス 「今から一席設けるから、そこで謝罪してくれ。
      そうすれば、じじいも怒りを納めるだろう」
セティ  「それは助かる!!で、どこに行けばいい?」
ユリウス 「今から1時間後に、責任者を連れてうちにこい。
      急だが、非はそっちにある、戦争が嫌なら全てに優先させろ」
セティ  「もちろんだ、すまない、恩に着る」
ユリウス 「ふん・・・じゃあ、1時間後にな」
セティ  「ああ(受話器を置く)」

264 :シレジアの風が涙に沁みる:2008/12/30(火) 05:02:52 ID:PggZw2i7
ラーナ  「ど、どうだったの?」
セティ  「なんとかなりそうです。
      竜王家で一席設けてくれるそうなので、
      そこで我々が謝罪をすれば、今回は許してもらえる、と」
ラーナ  「ああ、よかった」
セティ  「1時間後に責任者を連れて竜王家に来い、とのことです。
      私、母上、兄上の3人でいいでしょう。
      母上、早速ですが支度をなさって下さい、30分後には出発します」
ラーナ  「ええ、わかったわ」

―私はホッと一息ついた。
とりあえず、最悪の事態は回避できそうだ。
それに、兄上がこの場にいたのも幸いだ・・・これで遊びに出かけられたら一苦労だからな。
私は兄上の部屋に向かい、扉をノックした。

セティ  「兄上、よろしいですか?兄上・・・・」

―何度ノックをしても、返事がない・・・まさか・・・。

セティ  「兄上、入りますよ」

―そう言って私は魔法鍵を解き、ドアを開けた。・・・部屋はもぬけの殻だった。
窓ガラスは割られ、窓辺にロープが垂らされていた。

セティ  「逃げられた!!?」

―馬鹿な、窓は特注の耐魔法強化ガラスだ。エルウィンド程度では絶対に割れない。
フォルセティは私の手元にあるのに・・・何故だ?
ふと、机を見ると一枚の紙がピンで留められてあった。
魔道書の1ページだ・・・この文章には見覚えがある。

セティ  「レクスカリバーか!!」

―レクスカリバーとは、テリウス区における最強の風魔法、
以前セールスに来たララベルという行商から買ったものだ。
しかも、これは以前私が威力を増大させた改良版だ、
これならこの強化ガラスも打ち破ることは可能だろう。
どうやら兄上はこれを私の研究室から持ち出し、魔法を発動させて逃げたようだ。
紙の裏には、兄上の字でこう書いてあった。

『私は今も昔も、間抜けな吟遊詩人、まちがっても私を社長などと呼ぶな。
ゆえに私は仕事をしない、よって遊びに行く。
なんて完璧な論理展開、ということであとはよろしく。
れびんお兄ちゃんより (はあと)』

セティ  「なにが完璧な論理展開だ、遊びたいだけだろうがぁぁぁぁ!!」

―おもわず絶叫してしまった。
これのどこが完璧な論理展開なのだ?
はっきり言って意味不明、っていうか・・・ああもう、どこからツッコめばいい!!?
頭を抱えたくなったが、そんなことをしている時間すらない。
約束の時間までに竜王家にたどり着かない限り、我々は滅亡するのだ。
く・・・一体どうすれば・・・?

今度こそ、第4話(後編)へ続く