16-63

Last-modified: 2009-05-16 (土) 15:51:13

63 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:23:49 ID:w07uI8FL
「ねーねー、ことしのクリスマス、サンタさんになにおねがいする?」
「おれは、仮面ライダークーガーのへんしんベルトかな!」
「そうなんだ。あたしはね、アンパントマンのノーズにんぎょうたのむの!」
「えー、あんなのほしいのかよ?」
「だってかわいいんだもん。ノーズにんぎょう!」
「まあいいや。はやくきてほしいよな、サンタさん!」
「うん!」

漆黒の騎士「クリスマス……もうそんな季節か。そろそろ準備を始めねば。」
そう。この町のサンタクロースの正体こそ、彼、漆黒の騎士なのだ!(通称・シッコクロース)
彼は今年も子どもたちに笑顔を届けるため、いそいそと準備を始めたのだった。

~準備その1 プレゼント調査~

漆黒の騎士「まずは、今年子どもたちが欲しがっているものを調査せねば。
      よし…ルベール、いるか?」
シュタッ
ルベール「はいっ!ゼルギウス将軍!」
漆黒の騎士「ば、馬鹿者!その名で呼ぶな!」
ルベール「はっ!も、申し訳ありません!」
漆黒の騎士「まあいい。さあ、今年もいつものように調査を始めるぞ。」
ルベール「わかりました!ゼルギウス将軍!」
漆黒の騎士「……お前、ひょっとして天然か?」
ルベール「いえ…私にはもったいなきお言葉!」
漆黒の騎士(………どうやら真性らしいな。)
ルベール「では将軍!早速行きましょう!」
漆黒の騎士「うむ。まずは貧しい家庭から調査をするぞ。」
ルベール「はいっ!」

「おにいちゃん、ことしはサンタさんきてくれるかな?」
「ぼく、いっぱいごはんをたべたいな!」
オージェ「そうだね。おれがちゃんとお願いしておいてあげるよ。」
「ほんと!?」
「やったー!」
「じゃあ、あたしはあたらしいおくつがほしい!」
「ぼくは、あたらしいズボン!」
「みんなずるい!わたしにもいわせて!」
オージェ「ははは。大丈夫。順番に行ってごらん。」
「ぼく……なにもいらない。」
オージェ「え?」
「だって、うちびんぼうだし……。」
「なんでうちがびんぼうなのとサンタさんのプレゼントがかんけいあるのよー。」
「………。」
オージェ「…大丈夫だよ。兄ちゃん、割のいい仕事見つけたんだ。お金のことなら心配いらないから、な?」
「……ほんと?」
オージェ「ああ。ほんとうさ。」
「じゃあ、ぼくは……できれば、あたらしいふでばこがほしいな。」
オージェ「わかったよ。おれが、サンタさんに伝えておいてあげる。」
「……うん。」

64 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:25:06 ID:w07uI8FL
漆黒の騎士「な………なんと清らかな青年よ!」
ルベール「弟たちのためにクリスマスも働くなんて、今どきの若者も捨てたものではありませんね。」
漆黒の騎士「全くだ。よし、ルベール。子どもたちも欲しいものをメモしたな?」
ルベール「はい、バッチリです!…ところで将軍。」
漆黒の騎士「ん?」
ルベール「私たち……何で屋根裏で聞き耳を立ててるんですかね?」
漆黒の騎士「ルベール、だからお前は未熟者なのだ。聞き耳を立てる場所といったら屋根裏。これはアスタルテ神にも由来する神の摂理なのだ。」
ルベール「はあ…そんなものですか。」
漆黒の騎士「よし、とりあえずこの家は最優先配達リストに入れておく。さあ、次へ行くぞ。」

ファ「おねえちゃん、おねえちゃん!」
ユリア「なぁに、ファ?」
ファ「ファがサンタさんにおねがいするもの、しりたい?」
ユリア「ええ。とっても知りたいわ。」
ファ「あのね…ファね、サンタさんにおうちたのむの!」
ユリア「まぁ…すごいわね。」
チキ「おねえちゃん!チキはね、おふねをもらうの!」
ミルラ「わたしは…おやまがほしいです……。」
ユリア「あらあら、三人とも、すごいもの頼むのね。はやくサンタさん、来るといいわね。」
三人「うん!」

ルベール「おうち!?おふね!?トドメにおやまーーー!?」
漆黒の騎士「しーーーっ!大声を出してはばれてしまうではないか!」
ルベール「あ、も、申し訳ありません……。」
漆黒の騎士「落ち着いて考えるのだ。
      あの三人が言っていた“おうち”、“おふね”、“おやま”とは、おそらくままごとかなにかで使う類のものだろう。」
ルベール「そ、そうですよね…。
     いくらこの家が相当な名家だからといって、クリスマスにホイホイ家や山をプレゼントするわけがないですよね。」
漆黒の騎士「そういうことだ。さあ、次の家へ……。」
ルベール「そういえば、将軍。」
漆黒の騎士「今度は何だ。」
ルベール「私たち、転移の粉を使って調査をしていますけど、当日もこの方法でプレゼントを配るんですか?」
漆黒の騎士「ルベール、毎年言っているだろう。サンタの乗り物といえばトナカイ。それ以外の方法をとることは神の摂理に反するのだ。」
ルベール「はぁ…そうでしたっけ。」
漆黒の騎士「さあ、まだまだたくさんの家を廻らねば。急ぐぞ。」
こうして漆黒の騎士とルベールは、何日もかけて紋章町中の子どもたちの欲しいものを調査し終えたのだった。

65 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:26:36 ID:w07uI8FL
~準備その2 プレゼント用意~

漆黒の騎士「これからおもちゃを仕入れに行く。」
ルベール「しかし将軍。私は毎年思っていたのですが、将軍が大量におもちゃを購入して、よくサンタだってバレませんね?
     あからさまにおかしいじゃないですか。」
漆黒の騎士「……そうか。お前は仕入れについてきたことは無かったな。今年は私と共に来てみるといい。理由がわかるはずだ。」
ルベール「は、はい。」

漆黒の騎士「ここが、私が毎年仕入れをしている店だ。」
ルベール「こ、これが……ですか?」
そこはとても小さいカンバンが出ているだけの、どう見てもおもちゃ屋には見えないボロボロの店だった。
ルベール「ん?なにかカンバンに書いてありますね。トム……ざ…らス。トムざらス?」
漆黒の騎士「そういえば、ここはそんな名前の店だったな。さあ、入るぞ。」

漆黒の騎士「御主人、いるか?」
トムス「………。」
ルベール「うわっ!出た!妖怪そうりょリフ!」
トムス「………いらっしゃい。」
漆黒の騎士「彼がこの店の主人、トムス殿だ。」
ルベール「あ、どうも……。(そうりょリフじゃなかった……。)」
トムス「………。」
漆黒の騎士「トムス殿。早速だが、この紙に書いた分のおもちゃを至急いただきたいのだが。」
ルベール「え!?こんな数の商品、置いてあるわけが……。」
トムス「………あるよ。ちょっと待ってて。」
ルベール「え!?マジですか!?」
漆黒の騎士「ありがたい。どうやら今年も用意していただけたようだ。」
ルベール「用意、ですか?」
漆黒の騎士「トムス殿は毎年この店にプレゼントを買いに来る私のために、その年の人気商品にあらかじめ目星をつけて、用意をしているらしいのだ。」
ルベール「すごいですね将軍。常連さんだったんですか。」
漆黒の騎士「…まあ正直な話、この店には私以外の客は来ないようだからな。店主は無口だし、客は他にいないから毎年バレずに済んでいる。」
ルベール「あ、なるほど……。」

66 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:27:43 ID:w07uI8FL
トムス「………騎士さん。用意、できたよ。」
漆黒の騎士「かたじけない。これが代金だ。」
トムス「………まいど。」
ルベール「うわ、すごい量ですね。」
漆黒の騎士「毎年、転移の粉を使って持って帰る。
      これなら帰り道でバレる心配もないし、楽に持って帰ることができるだろう?」
ルベール「いやー、将軍の転移の粉って便利ですねー!ディアドラえもんもびっくりですよ!」
漆黒の騎士「何を言う。これはどこでもドアを参考にして作られたものだぞ。」
ルベール「えっ!?そうだったんですか!」
漆黒の騎士「う、うむ。(なんだ…この、いまさら冗談だとは言えないルベールの純粋なまなざしは………。)」
ルベール「じゃあ、ワープの杖もおんなじ原理なんですかね?うわー!すごいですね!」
漆黒の騎士「……ルベール、そろそろ帰るぞ。」
ルベール「はい。トムスさん、ありがとうございました!」
トムス「………天然。」
ルベール「え?何か言いました?」
トムス「………何も。」

~準備その3 サンタ服用意~

二人は大量のプレゼントと共にしっこくの部屋へと直接転移して帰ってきた。
「ぎゃーーっ!」
ルベール「あれ?なんか変な声が……?」
「ぷはっ!」
漆黒の騎士「この声は…まさか!?」
セフェラン「ちょっとぉ!いきなりなんなのこれぇ!」
ルベール「セフェラン様!?」
セフェラン「あら?ルベールちゃんじゃない!ひさしぶりねぇ~。」
漆黒の騎士「ど、どうして私の部屋に勝手に入っているのだ!?身の程をわきまえよ!」
セフェラン「何言ってるのよ。あんたが自分の部屋を全然掃除しないから、私がやってあげてただけなのにぃ~。」
ルベール「将軍、その年で親に部屋の掃除をまかせるのはどうかと思いますよ。」
漆黒の騎士「よ、余計な世話だ!」
セフェラン「ところで、この山のようなおもちゃはなんなのぉ?まーた散らかっちゃったじゃなぁい。」
ルベール「これはあれですよ、ほら、ゼルギウス将軍がサンタになるための―――――」
漆黒の騎士「ルベール!それ以上は―――――」
セフェラン「サンタ?」
漆黒の騎士「い、いやこれは……。」
ルベール「あれ?セフェラン様、ご存知なかったのですか?将軍が、毎年子どもたちのために配っているんですよ。」
漆黒の騎士「ルベール……この…バカ弟子がぁぁぁぁ!」
ルベール「え?」

67 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:29:17 ID:w07uI8FL
セフェラン「……なにそれ、超おもしろそうじゃない!私もやりたーい!」
漆黒の騎士「ああ……やっぱり…こうなるから話したくなかったのだ……。」
セフェラン「ねえねえ、やっぱりぜーたん、サンタのかっことかしちゃうの?」
ルベール「ええ、もちろんですとも!毎年、鎧の上からサンタ服を着てますよ。」
漆黒の騎士「それ以上余計なことを言うな、ルベール!」
セフェラン「あら、ダメよ。せっかくのサンタさんが黒い鎧なんて着ていったら、子どもたちが怖がっちゃうじゃない。」
漆黒の騎士「何を言う。子どもたちに見つからないようにプレゼントを置いていくのがサンタであって……。」
セフェラン「そうよぜーたん!鎧なんか脱いじゃって、素顔で配ればいいのよ!」
漆黒の騎士「な…な……なな、何を言っている!?」
セフェラン「ぜーたん、イケメンなんだから、その顔でサンタやっちゃえば子どもたちも喜ぶって!」
ルベール「それもそうですよ将軍!そのほうが好感度も上がりますし!」
漆黒の騎士「誰に対しての好感度だ!」
セフェラン「あら、それは当然ミ―――――」
漆黒の騎士「だぁぁぁ!それ以上言うな!…とにかく、私は鎧を脱ぐつもりは毛頭ない!これ以上馬鹿なことを言うな!」
セフェラン「ちぇー。」
ルベール「惜しかったですね。将軍の対人恐怖症を治す絶好のチャンスだと思ったんですけどねえ……。」
漆黒の騎士「…とにかく、私は当日着る服とトナカイの手配をしてくる。二人ともここに―――――」
セフェラン「そうだ!ぜーたん、今年のサンタ服は私が作ってあげる!」
漆黒の騎士「は?」
セフェラン「毎年おんなじ服じゃつまんないでしょぉ?今年は、私が丹精こめて縫ってあげるから!」
漆黒の騎士「いや、別に同じ服でも………。」
セフェラン「そんなこと言わない!おしゃれは服からって言うでしょ?」
漆黒の騎士「そんな言葉聞いたことはない。第一、サンタ服はおしゃれではない。」
セフェラン「よし決まり!ふふ……すっごいの作っちゃうから待っててよ~。」
漆黒の騎士「だから、なんでそうなるのだ!」
ルベール「良かったじゃないですか将軍!お義父上に手編みの服を作ってもらえるなんて、うらやましいです!」
漆黒の騎士「……もういい。突っ込むのにも疲れた。勝手にするがいい。」
セフェラン「やったぁ!」
漆黒の騎士(くっ…なぜ、こんなことに……。)
結局しっこくはこの一件で疲れ果てて、翌日トナカイの手配に行くことになった。

68 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:30:53 ID:w07uI8FL
~準備その4 トナカイの手配~

ルベール「将軍、トナカイはどこで借りてくるんですか?」
漆黒の騎士「借りるのではない。捕らえるのだ。」
ルベール「えっ?でも、野生のトナカイなんて、この町に生息していましたっけ?」
漆黒の騎士「雪山だ。雪のあるところになら、いる。」
ルベール「雪山って……登山するんですか!?」
漆黒の騎士「そうだ。行くぞ。」
ルベール「はーい…。」

ルベール「将軍…もうだいぶ登りましたよ…。本当にこんなところにトナカイが……?」
漆黒の騎士「ルベール、静かに!」
ルベール「?」
しっこくが覗く先にいたのは―――――
ペガサス「ブルルル……。」
ルベール「ええ!?あれ、天馬じゃないですか!」
漆黒の騎士「仕方がない。トナカイが飛べるわけがないだろう、常識的に考えて。
      あれを捕まえて角をつければ、シルエットくらいはトナカイに見える。」
ルベール「そんな…将軍、サンタの魔法とか使えないんですか?トナカイに魔法をかけて飛べるようにするとか……。」
漆黒の騎士「そんなことができたなら、どれだけ楽だったろうな。」
ルベール「ですが、そんなの……神の摂理に反します!将軍、ご自分でおっしゃってたじゃないですか!」
漆黒の騎士「う…仕方がないだろう。だからと言って本当にトナカイに乗って陸を移動していては、バレバレだ。」
ルベール「あーあ…私、結構期待していたんですけどねえ……。現実なんて、こんなもんですか……。」
漆黒の騎士(…なぜ私は勝手に期待されて、勝手に失望されているのだろう。)
ペガサス「ヒヒーン!」
漆黒の騎士「む、いかん!天馬が逃げてしまう!」
ルベール「ああ、もう間に合いませんよ!」
漆黒の騎士「いや………ふっ!」
しっこくはペガサスすれすれに衝撃波を飛ばす。
ペガサス「ヒッ……。」
バタリ
ルベール「ああーーー!?天馬が死んじゃいましたよーー!?」
漆黒の騎士「案ずるな。気絶しているだけだ。」
ルベール「あ…本当ですね。」
漆黒の騎士「まずは、一匹……。」
ルベール「…将軍。まさか、全部あの方法で捕まえるんですか?」
漆黒の騎士「当たり前だ。素早く移動する天馬を捕らえるには、これが一番―――――」
「こらーー!そこの二人!」
ルベール「ん?」
ティト「ペガサスを抱えて何をやっているの!」
フィオーラ「ここはペガサス保護区域ですよ!」
漆黒の騎士「ま、まずい!いったん逃げるぞ!」
ルベール「ええ!?待ってくださいよ!」
ティト・フィオーラ「待ちなさーーい!」

69 名前:メリー・シッコクロース 調査編:2008/12/16(火) 16:32:11 ID:w07uI8FL
~準備完了~

3日後
ルベール「どうも、ペガサス保護区域に入ったのは私と将軍だとはばれなかったみたいですね……。
     あれから3日たっても誰も来ませんし。」
漆黒の騎士「ああ……あの後予定通りペガサスも確保できたし、これで全ての準備が完了したな。」
セフェラン「あ、二人とも!サンタ服できたわよぉ~!」
ルベール「えっ!?本当ですか!?」
漆黒の騎士「…そうか。いや、何だ、その…この間は怒鳴ったりして悪かっ………。」
セフェラン「はい。ルベールちゃんの分も。」
ルベール「わあ…私のまで……!身に余る光栄です!」
セフェラン「ねえねえルベールちゃん!この服の上から二番目のボタンを押してみて?」
ルベール「え?ボタンですか?」
ポチッ
サンタ服<このプレゼントをもらわれよ
ルベール「うわあ、すごいです!将軍の生ボイスが入ってるんですね!」
漆黒の騎士「な、なんだこの機能は!余計なものをつけるな!」
セフェラン「えー、いいじゃない。かっこいいし~。
      ちなみに一番上を押すとおなじみ“身の程をわきまえよ”。配達中、空が渋滞しているときに使えば効果テキメンよ!」
漆黒の騎士「あほか!これでは鎧を着ていてもすぐに正体がばれてしまうではないか!
      いいか、ルベール。この機能は一切使うな!」
ルベール「えー、結構いい機能だと思ったんですけどね……。」
セフェラン「あ、ちなみにこれは私の~。」
漆黒の騎士「な……どうして義父上の分まであるのだ!?」
セフェラン「あら、私も一緒にプレゼントを配るからに決まってるでしょぉ?」
漆黒の騎士「だ、だれがそんなことを許可した!」
セフェラン「だってぜーたん言ったじゃなぁい。“勝手にしろ”って。だから、私も勝手についていくことに決めたのよ。」
漆黒の騎士「あれは……!」
ルベール「まあまあ、いいじゃないですか将軍。セフェラン様もいらしたほうが楽しいと思いますよ。」
セフェラン「そうそう!いいこと言うのねルベールちゃん!」
漆黒の騎士「…あー、もうわかった!ただし、当日騒いだりしたら、ソリから突き落とすからな!」
セフェラン「何言ってんのよ。私がいつでもどこでもリワープできるの知ってるくせにぃ~。」
漆黒の騎士「う、うるさい!」
ルベール「あ、お義父上がついてくるの、本当はうれしいんですね、将軍!」
漆黒の騎士「うれしいわけあるかーーーー!」

果たして、シッコクロースは無事に子どもたちにプレゼントを配ることができるのか?
贈り物編に続く。