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Last-modified: 2011-05-30 (月) 23:30:26

アルム「へ…? マルス兄さん達の悲鳴!?」
普通なら悲鳴を上げさせる側の三人衆の悲鳴はもちろん4番手達にも届いていた
壁を反響しながら聞こえたので正確な位置がわからないため、4番手達は辺りを見渡す
エイリーク「何かあったんでしょうか!?」
リン「少なくともただ事ではなさそうね…」
エイリークが心配の色を露にして辺りを見渡し、音源がどこからなのか探すが見当もつかない
アルムも同様だったが、結果はエイリークに同じである、が
リン「こっち、かしら」
野生の勘…もとい、察知能力に優れたリンはおおよその位置は掴めたようだ、
その方向に向かって二人を余所に走り出す
アルム「あ、置いてかないで…!」
エイリーク「どこかわかったんですか?」
二人も慌てて後を追う、廊下に三人分の靴音を響かせながら、
リンを先頭に後二人はリンの勘を信じて追従する
リン「この辺りだと思うんだけど…」
リンが立ち止まり、五感を研ぎ澄ましながらあちこちの部屋を見て回る
後から少し遅れる形でついてきた二人も立ち止まり、
辺りを見渡しながらリンとは少し離れた場所を捜す

――なんで離しちゃうの!
――だめじゃないか…ちゃんと掴んでなきゃ
――だってしょうがないじゃん!! 普通離すでしょ、あんなの!

そんなとき、リンの耳にふいに声が聞こえた、
紛れもなくあの仕掛け人達の話し声だ、リンは迷いなく声がした部屋へのドアノブに手をかけ
リン「大丈夫!?」
バァンッ!! と上品さの欠片もない開け方をし、部屋の中に飛び込んだ、突然の来訪者に驚く三人
ロイ「わぁ!? リ、リン姉さんどうして」
リン「悲鳴が聞こえたからよ! 何かあったの!?」
リーフ「ああ、それが…」
アルム「何かあった!?」
エイリーク「無事ですか!?」
リーフが説明しようとした矢先、
アルム、エイリークが部屋へ飛び込んできた事で思わずリーフは一旦口を閉ざした

そんな中マルスはたかが自分たちが悲鳴を上げただけでわざわざ来たのか…と思うと
なんだか滑稽に思えて小馬鹿にしたような笑みを浮かべて4番手達を見やる
マルス「おーおー…全員して血相変えちゃって、大袈s、ブッ!」
嫌味を含んだ声で4番手達を茶化そうとした言葉は
言い終わらないうちにマルスの頭頂部を襲ったリンの拳骨で遮られた
マルス「痛ぅー…いきなり何すんのさ…」
殴られた頭を押さえつつ、恨みがましくリンの方を見やると、
リンは握り拳を作ったまま怒りを露にしてた、拳からは煙が上がっている
リン「心配してもらってその態度はないでしょ! 何かあったかと思ったわ…」
怒声を浴びせるが、徐々に声が落ち着いた声色になっていき、安堵の表情を浮かべるリン
マルス「…ゴメン」
珍しく素直に謝罪を述べたマルスにリンは少し驚かされたが
悪いことではないので、そのままマルスから視線を外す、マルスはというと
殴られた痛みに顔を顰めつつ、殴られた箇所に手を当てる…殴られた箇所が熱を持っていたが
その熱に何か思うところがあったのかさすったりはしなかった
とりあえず収まったかな、と判断しアルムが口を開いた
アルム「で、何があったのさ? 見たところ何もなかったみたいだけど」
リーフ「じゃあ改めて説明するよ…――」

リーフ「―――…というわけさ」
ロイ「長い空白って便利だよね」
マルス「ロイ自重、まあ、そんなわけさ」
リーフ「掴んでた時の感触が忘れらんないよ…」
マルス「そんなにいい感触だったのか」
リーフ「んなわけないでしょ! ていうか僕が思わずぶん投げたのを見てたよね!?
    何をどうしたらそうなるの!」
マルス「まあ、要するに見事に逃がしちゃったってわけさ」
説明が終わると同時に、肩の力を抜き、溜息を一つ吐くマルス
さらっと流されたことで不満の色を表すリーフは無視を決め込んだようだ
…空白って便利ですよn(ry
リーフの説明により事情を把握した4番手達も
あのおぞましいオブジェの処理について思案し始めた
アルム「アレはルーテさんが作ったんだ…なんてことを」
エイリーク「とりあえず…処理しないといけませんよね?」
リン「でも私たち丸腰よ? 捕獲もできないんじゃ…」
マルス「いや、手がない事もないんだけど…うーん…」
リン「…まさかとは思うけど、考えてる事同じ?」
マルス「…どんな考え?」
リン「ちょっと、いやかなり強引だけど」
フーッと息を吐き、全員を見渡し…それから口を開いた

リン「素手で叩き壊す」
―――空気が、死んだ

アルム「えーーーーーーー!!?」
沈黙を破ったのはアルムの絶叫、無理もない
エイリーク「い、いくらなんでも…仮にも…」
偽物とはいえ相手は長兄の顔をしているのだ、
それを殴ったりするのは精神面でよろしくない
ロイ「マ、マルス兄さん、さすがにリン姉さんと同じな訳は…」
ロイは違う意見を求める、彼自身もあんまりだと思ったからだ、しかしマルスを見て言葉を失う
マルスはバツが悪そうに頭をかきながらため息をついていた
その様子が語っている、他に手はないのだと
リーフ「嘘ぉ…マジで?」
ロイ「で、でも外に言ってアイク兄さんに『強い奴がいる』とでも言えばラグネルひっさげて…」
マルス「そんなことしようものなら、アイク兄さんがまた大暴れしてビルが真面目に危ない、
    ただでさえもうボロボロなのに、火に油どころか油にボルガノンだよ」
ロイ「じゃあ衝撃波とかはなしって言えば」
マルス「獲物を前にしたアイク兄さんがそんな忠告聞くわけないよ」
アルム「ん? ちょっと待って『また』って何?」
マルス「ああ、聞いてないのか…3Fの惨状を見たでしょ、あれアイク兄さんがやったのさ」
エイリーク(な、何があったんですか)
先ほどの悲惨な惨状を目の当たりにしてるため、エイリークは何があったのか真剣に気になった
リン「シグルド兄さんに任せるのは論外だし、それしかないわよね…」
2番手達帰還時にシグルドがティルフィングを何故か持っていたのは確認したが、
自分の顔を殴れとは流石に言えるはずもない、となれば
必然的にここに集まった面子でどうにかするしかない
心をきめ、腹をくくり、全員で虹シグルド捜索兼破壊に乗り出した…

マルス「さっきの今だ、そう遠くに行ってないはずだし、まだ廃ビル内にいる可能性は高い、
    各自手分けして捜索、見つけ次第、渾身の一撃を叩きこむ、
    もし可能なら付近の人を呼び、一気にたたみかける、以上」
手筈としてはこのような物である、そして二人一組のペアを作る、つまり三組いるわけだ
理由は相手が壁すり抜けのスキルがあるゆえ、一人では見失いやすいため
ペア組み合わせは以下の通りである
 リン&エイリーク
 ロイ&アルム
マルス&リーフ
マルス「リン姉さん達は1F、ロイ達は2F、僕達は3F、4Fを回る、では、散!」
合図の元、各々の割り当てられた階層へ散りはじめた――

マルス「僕らはもう担当の階層にいるわけで」
リーフ「捜索開始だね」
3F,4F捜索組みは部屋を後にした
マルス「さてと、どこにいったか皆目見当もつかない、とにかく見回るよ」
リーフ「イエッサー」
その後数分間捜索をするが影も形もない、相手は一切痕跡を残さない
リーフ「あー…これは骨が折れそうだ」
マルス「入り組んでるからねぇー…3Fにいるとしたらなかなかキツイな…」
相手はあちこちを徘徊している、さっき見回ったところにいる可能性も出てくるのだ

一方他階層組み
リン「へぇ、こんなところに階段あったのね」
隠し階段を使い、割り当てられた階層へ移動し始めていた
アルム「なるほど、これを使って先回りしてたのか」
ロイ「そうそう、1Fから4Fまで直通で便利だから場所忘れないようにしてね」
足下に気をつけながら一段ずつ踏みしめながら降りる、階段を降りる中
空虚な空間に四人分の靴音の響きが止むことはなかった
エイリーク「了解です、あ…2Fですね」
ロイ「じゃあ僕らはここで」
アルム「気をつけてね、じゃ!」
2Fへ続くドアを開け、二人の姿が2Fへ消えるのを見送り、1F組は再び階段を下り始める
エイリーク「リン…」
リン「何?」
今度は二人分の靴音で音の数は少なくなったはずだが反響し、
先ほどとあまり変わらないような感覚を覚えつつ、靴音を響かせながらエイリークが言葉を発した、
視線は階段へ向けたままリンが応対する
エイリーク「もはや肝試しではないですよね…」
リン「今更よ…」
二人して苦笑いをしながらも階段が終わるが、1Fへのドアまでは数歩分の道がある
床を歩いても先ほどと同じくらいの音が響く
1Fへのドアの目の前に立ち、ノブを回し、捻る、古めかしい音を立てて開く、身を滑り込ませる
1Fへ到達、捜索開始だ

-3F-
リーフ「どこにいるのさ…もう」
マルス「あー…なんかイライラしてきた…ん?」
マルスが突如廊下を走りだす
リーフ「見つけたの?」
マルス「なんか光が見えたんだ、多分…!」
廊下の交差点に差し掛かり、光が消えた先を見るとそこには虹シグルドが
マルス「居た!」
リーフ「よし、今度は怯まないぞ! あ…」
二人から逃げようとしたのかは定かではないが、虹シグルドは天井をすり抜けて4Fへいってしまった
マルス「目の前に階段があるのが幸いか…追うよ!」
リーフ「了解!」
わき目も振らず一気に階段を駆け上がる二人

-4F-
マルス「こっちか!」
頭の中の地図と照らし合わせ、虹シグルド消失地点の真上へ急ぐと
先ほど虹シグルドが消えた地点の丁度上に位置する場所でフヨフヨと浮かんでいた
マルス「居た」
リーフ「よし! 日ごろの恨み、今こそはらさん!」
マルス「は?」
突如妙な宣言をかまされ、マルスは目を丸くし、
拳を作りながら疾走するリーフをその場から動かず目だけで追う
リーフが虹シグルドに向かって拳を作りながら一直線に迫る、そして
リーフ「アルムとセリカのKINSHIN騒ぎでいつも僕をティルフィングで巻きこむなぁーー!!」
叫びながら力いっぱい殴った、遠慮など一切なしの私怨のこもった一撃だ、
虹シグルド本人には何の事やらさっぱりだろう…本人じゃないのだから
とにもかくにも手ごたえがあったのか虹シグルドがよろける
リーフの宣言に合点がいき、マルスは不敵な笑みを浮かべ
マルス「欝憤晴らしか…いいね、なら僕も便乗!」
今度はマルスが拳を作り虹シグルドに迫り
マルス「いい加減職場で出世しろおぉーーーー!!」
本人も今猛烈に悩んでいるであろう事を叫びながら強烈な打撃を与えた
二回も強烈な攻撃を受け、身の危険(?)を感じたか、今度は床をすり抜ける虹シグルド
リーフ「あ、また逃げた!」
マルス「逃がすかぁ!」
すぐさまさっき上った階段を下り、3Fへ行くがその姿はどこにもなかった…
リーフ「更に床をすりぬけた? それとも壁をすりぬけて3Fにいる?」
マルス「前者の可能性は他の組に任せよう、後者の可能性を考えて捜索するよ」
リーフ「そうだね…下の階は他の人がなんとかしてくれるよね」
…さっき虹シグルドを殴ってから二人ともややスッキリした顔をしてるのは気のせいだろうか?

-2F-
アルム「はー…またアレに会わないといけないのか…でも今度はあまり動じないぞ、うん」
ロイ「あまり視界に入れたくないけど、見つけないと壊せないからね」
アルムが次に会った時の心構えをしつつロイと会話する
会話をしつつロイが部屋へのドアを開け、中を確認すると、いないかと呟き他の所を探す
アルム「唐突だけど、なんでシグルド兄さんなんだろ」
ロイ「そもそもシグルド兄さんに似せて作ったのルーテさんなら凄い器用だよね」
アルム「器用ってレベルじゃない気がする」
ロイ「じゃあ芸術?」
アルム「芸術は時に人に感動与えたりする非常に有意義なものだよ、
    僕の芸術野菜達と同列にしないでほしいな」
ロイ「あはは…」
どうやらアルムにとってはおぞましい以外の何物でもないらしい
苦笑しながらロイが何の気なしに天を仰いだ時だった
ロイ「…」
天井から虹シグルドが顔上半分だけ出して覗き込んでいた
ロイ(ぎゃーーーーー!!)
もはや声にすらならないらしい、悲鳴を上げる体勢のまま硬直してしまったロイを不思議に思い
アルムが目線を追うと、畏怖の対象の上半分が視界に飛び込んできた
――硬直

-3F-
リーフ「あ、居た…って、何アレ…」
マルス「逆さになって床にめり込んでるね」
虹シグルドが床から顎と鼻先、真一文字に結んだ口だけ出し、固まっている
すりぬけに失敗し挟まったのか、あるいは単にそこで何の気なしに留まってるのか
いずれにしても真実は本人のみぞ知る
もっとも本人に聞くことはできないので知る手段は皆無だが
リーフ「よっし、踵落としを華麗に決めてやる!」
勢いよくジャンプし長兄の顎に向かってリーフは自らの右足の踵を振り下ろす
リーフ「でやあぁ!」
ガインッ! という音を出し、虹シグルドは床の中に消失した…技を決め、華麗に着地する
リーフ「決まった…」
的確な自分の体術に惚れぼれし、リーフはフッ…と顎に手を当て口端に笑みを浮かべる
マルス「容赦ないねぇ」
そういったマルスの顔がなんだか楽しそうに見えるのは気のせいではない

同時刻――

-2F-
アルム「で、で…」
リーフが踵落としを決める寸刻ほど前、ものすごく気味の悪い形で出現した事で
アルムはさっきの心構えがどこかへ吹っ飛んでしまったようだ
アルム「出t」
ついに悲鳴を上げようとした瞬間
虹シグルド「モルスァ」
訳のわからん言葉を発し、凄いスピードで天井から床下まで長兄の顔が突き抜けて行った
リーフの強烈な一撃が決まったためである
アルム「…」
突如視界から消えてしまったことで悲鳴を上げようとした口を開いたまま、しばし呆然とする
我に返り、硬直してしまっているロイの意識を呼び戻そうとしたのがその出来事の数秒後だった…