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Last-modified: 2011-06-04 (土) 12:01:32

※※グランベル商社大会議室※※

クルト  「他に今年度の目標が決まった部署はあるかい?」
シグルド 「こちらからは今年の重要施策として『過労防止』を掲げたいと思います。
      昨年レプトール専務が過酷なメティオ避け業務にお倒れになったのも記憶に新しいかと存じますが――」
レプトール「勝手に殺すでないわ! 今はこの通りピンピンしておる!」
シグルド 「はっ、全くそういうつもりで発言した訳ではないのですが、失礼いたしました。
      とにかく、残業等時間外を適切かどうか見直し、過労やストレスにつながらないような職務の整理や、無駄の削除を心掛けます」
クルト  「君の言う通りだシグルド係長。レプトール専務、貴方を気遣っての目標でもあるのだからそう悪く取る物ではないよ」
レプトール「フ、フン、若造が……」(鼻をすする)
クルト  「他は――ないかな? ならアルヴィス課長」
アルヴィス「はっ。では最後に私から、諸君に伝えたいことが二点ある。
      まず一点、異動の時期というのは、慣れない作業に当然ミスを起こし易い時期でもある。
      くれぐれもつまらんミスでわが社に損害を出す事の無いよう、留意するように。
      万が一の時には速やかな対応を心掛けろ」
(社員一同頷く)
アルヴィス「そしてもう一点なんだが……ディアドラ、こちらへ」
ディアドラ「はい」
シグルド 「……え?」
アルヴィス「(隣に立つディアドラの肩を抱いて)私とディアドラは、昨日をもって入籍を果たした。
      だからといって特に我々の業務の変更はないのでそこは安心して欲しい、以上だ」
シグルド 「…………」

バターン

ノイッシュ「ああ! シグルド様が棒の様に硬直したかと思うと、そのまま真後ろに倒れて気絶してしまったー!」
アレク  「あーあ、泡ふいてら。まぁ無理もないか。来いアーダン、俺たちで医務室に運ぶぞ」
アーダン 「何てこった。シグルド様、新年度早々お気の毒になぁ……」

※※その日の夕方、兄弟家※※

アレク  「って事で、朝礼の時点でこんな事に」
シグルド 「あばばばばばb」
ミカヤ  「そう……。でも何かの間違いじゃないの?
      さすがにディアドラさんがこの子に一言もなくアルヴィスさんと結婚しちゃうなんておかしいわよ」
アレク  「俺たちも勿論疑いましたよ。でも係長が倒れた後、クルト社長がお祝いの金一封とか渡してて……」
ノイッシュ「しかも私達が普段付けているネームプレートがあるのですが
      彼女の物がしっかり課長性と同じに新しく作り変えられていたんです」
ミカヤ  「えぇー……」
アーダン 「まさか本人達に冗談ですよね、とは聞けなくて。悶々としたまま帰って来ましたとも」
ミカヤ  「それはそうよね……。でも……」
アレク  「ま、今の係長には心の休息が必要みたいですから。ゆっくり休ませて差し上げて下さい」
ミカヤ  「分かったわ。わざわざシグルドを連れて来て来てくれてありがとう、皆」

※※翌日、兄弟家※※

セリス  「うっ、うっ、シグルドにいさ~ん……起きてよう~……」
ヘクトル 「気をしっかり持て、兄貴!」
エリンシア「起きて下さいまし、シグルドお兄様。お粥が覚めてしまいますわ……」
アルム  「ほーら兄さん、セリカとチューしちゃうよー?」
セリカ  「早く起きないとホ、ホントにしちゃうんだからっ! しちゃうんだからねっ!……うぅ、シグルド兄さん」
リーフ  「そうだよ、KINSHIN許せないんでしょ? さっさとこの二人にティルフィング投げて、僕をアッー! このヒトデナシーな目に遭わせてよ……」
ロイ   「そこはもうデフォである自覚あるんだね、リーフ兄さん」

ディアドラ「すみません……シグルド様の目が覚めないと聞いて」
リン   「あっ! ディ、ディアドラさん!」
エリウッド「にっ、兄さん、ディアドラさんが来てくれたよ!」
マルス  「待って、今の兄さんにディアドラさんを会わせるのは逆効果じゃない?」
エフラム 「それも一理あるな。シグルド兄上をより深い絶望に陥れられるだけかもしれん」
エイリーク「兄上酷いです、そのような言い方――」

アレク  「やばい、まるで通夜だぞ」
アーダン 「うへぇ、言い難いな」
エリンシア「あ、あら皆さんまで。お兄様を心配していらして下さったんですね……」
アーダン 「心配の意味がちょっと違うんです。えーっと、その……」
ノイッシュ「お伝えするのが遅かったようで大変申し訳ありませんでした。我々も踊らされていた側でして、事態を把握するのに時間が掛かってしまったのです」
ヘクトル 「把握……って、どういう事だ?」

ディアドラ「昨日の私とアルヴィス様が結婚した、という発表は嘘です」
エリンシア「まぁ、そうでしたの――ってええ! う、嘘!?」
この場にいる兄弟一同(シグルド以外)『な、なんだってーーー!?』
アレク  「4月1日といえば?」
セリス  「え、ま、まさか」
エリウッド「エイプリルフール!?」
ディアドラ「はい。アルヴィス様がおっしゃるには、ここ最近不景気続きで楽しい話題もなかった、との事で。三月中から打ち合わせを」
アーダン 「ったく、俺達もしてやられたぜ、全く」
ノイッシュ「私など、思ってもいない祝いの言葉を述べさせられたぞ」
ミカヤ  「そんな! だって名札までわざわざ変える!?」
ディアドラ「総務課のレックス君に、このためだけに本格的に作って頂きました。こういう企画は嫌いじゃないと」
セリカ  「な、何よ、グランベル商社ってそんなノリが許されるの!?」
リーフ  「何かお堅いイメージだったけど」
ディアドラ「そこです。まさか我が社がエイプリルフールのような行事に関わろうなどと
      社員の誰一人思い付かなかったために上手に騙す事が出来ました」
マルス  「ディアドラさん、そんな嬉しそうに言わないで下さい。
      こっちは大黒柱が倒れて、一体これからどうなる事かと思っていた所なんですよ」
ディアドラ「あ、も、申し訳ありません。そうでした、私はシグルド様に謝りに来たのでした。
      でも私とアルヴィス様が結婚、と聞いてお倒れになるなんてやっぱり嬉しくて。ああ、シグルド様…」
マルス  (うーん……一応兄さんは彼女に好かれているのだろうか?)

アイク  「一件落着したみたいだな。という事で飯はまだか」
ロイ   「さっき食べたでしょ」

シグルド 「うーん、うーん、ディアドラー……私を捨てないでくれー……」

後日談

シグルド 「アルヴィーーース!」
アルヴィス「シグルド、会社で何を騒いでいる。しかも上司に向かって呼び捨てとは何事だ」
シグルド 「人を騙す悪党を敬える訳がないだろう! そこに直れ、その首叩っ切ってくれる!」
ノイッシュ「殺人はいけませんシグルド様! ティルフィングをお収め下さい!」
シグルド 「邪魔だ、離せノイッシュ!」
アルヴィス「フン、見苦しい。エイプリルフールを知らんのか貴様は? ならば教えてやる。あの日はな、罪のない嘘をついて人をかつぐという、古くからのしきたりなのだよ」
アレク  (別にしきたりってほどじゃないでしょうに)

シグルド 「罪ありまくりだ! 私はあまりのショックで死に掛けたんだぞ!」
アルヴィス「他の社員からは久々の楽しい話題をありがとうございます、と感謝されたがな」
シグルド 「UGAAAAAAAAAA!」
ノイッシュ「うわっ!」

(ノイッシュ吹っ飛ばされる)

アーダン 「あー、シグルド様が壊れた……」

アルヴィス「面白い、ファラフレイムで炭、いや、塵にしてやろう!」
ノイッシュ「お二人とも、会社の中で暴れるのはおやめ下さーーい!」

アレク  「あーあ、資料めちゃめちゃだよ……ってか、最初からこうなる事解ってただろうな、アルヴィス課長。明らかにシグルド様狙いの嘘だったし」
レックス 「……最近シグルドも忙しかったみたいだからな。案外ただ構って欲しかったのかもしれないぜ、アルヴィス課長」
アーダン 「あんたが言うと洒落にならんから止めて下さいよ」
レックス 「洒落にならんってのはどういう意味だ」