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Last-modified: 2011-06-04 (土) 12:32:07

それは、ある日の昼下がりのことです。
リーフ 「ねえねえ、こんなチラシが入ってたんだけど、どう?」
セリス 「ん?えーと、なになに?紋章町商店街の一斉セール?」
リーフ 「そうでなくて、その下。」
マルス 「フリーマーケット出店募集?」
リーフ 「そうそう、商店街に大きな公園があるでしょ?」
ロイ  「ああ、あの桜の季節に乱闘が起こる公園?」
リーフ 「そう、あそこで次の土曜にフリマを開くらしいんだけど、参加費無料だし、僕達も出店してみない?」
セリス 「いいね!楽しそう。」
ロイ  「へー、フリーマーケットかー。」
マルス 「んー。まあ、次の土曜日は空いてるけど。」
ロイ  「エリウッド兄さんも喜びそうだし、僕は賛成かな。」

(かしゃん。)
ドアの開く音に4人が振り向くと、ちょうどエフラムとエイリークが空になったティーカップをお盆に載せて入ってくるところでした。
エイリーク「まだまだ、チェスは教わることがありますね。やはり、兄上にはかないません。」
エフラム「いや、お前も始めたころより随分と上手くなっている。流石は俺の妹だ。」
エイリーク「そんな…嬉しいです、兄上。」

ロイ  「(シグルド兄さんが反応しそうな風景だなぁ。)」
セリス 「あ、エフラム兄さんにエイリーク姉さん。これこれ。」
エイリーク「どうしたのですか?えっと、ふりーまーけっと?」
エフラム「何か買いに行くのか?」
セリス 「ううん、出店してみようかなって皆で話してたんだ。兄さん達も来てくれたら嬉しいなと思って。」
エフラム「俺は別に構わないが。」
エイリーク「次の土曜日…ですね。私も大丈夫ですよ、セリス。」
セリス 「ありがとう!週末が楽しみになるなぁ。」

そこへ、仕事を終えてミカヤが帰ってきます。どうやら今日は、蒼に揺らめくユンヌも一緒のようです。
ミカヤ 「ただいまー。やっぱり家はホッとするね。」
ユンヌ 「今日はちゃんとお手伝いしたけど、本当に私も一緒にご飯食べてもいいの?」
ミカヤ 「当たり前じゃない。」

エイリーク「あ、姉上にユンヌ。おかえりなさい。」
リーフ 「おかえり、ねえミカヤ姉さん。次の土曜って空いてる?」
ミカヤ 「土曜日?まあ不定期の仕事だから、空いていると言えば空いているけど、どうして?」
リーフ 「皆でフリマに出店しようと思ってるんだけど、ミカヤ姉さんもどうかな?」
ミカヤ 「うん、楽しそうね。商品は占いでもいいの?」
ユンヌ 「ねえ、ふりまって何?」
ミカヤ 「えっと、公園とか広場に皆が集まって、要らない物とかを売るの。」
ユンヌ 「ふーん、私も行っていい?」
ミカヤ 「もちろんよ。いいでしょう?リーフ。」
リーフ 「まあ、ミカヤ姉さんがそういうのなら。」
ユンヌ 「やったあ!楽しみー。」
セリス 「うん、一緒に楽しもうね!」
マルス 「(今日はメダリオンを使わなくてもよさそうだな。)」

そこへ、買出しへ行っていたエリンシアとセリカ、アルムが帰ってきます。
エリンシア「ただいま帰りました。」
セリカ 「ただいまー、ふう、一息つけたわ。」
エリンシア「重い荷物をご苦労様。今日は安売りに加えて、アルムちゃんの野菜もあるから、良いメニューになりますよ。」
アルム 「ただいま。今日獲れたのを洗っとくね、エリンシア姉さん。」
エリンシア「いつも、おいしい野菜をありがとう。」

剣戟や槍、斧、魔法による破損で何度も建て替えられ、今はカウンターキッチンになっている台所に三人が入ってきました。
3人を手伝うために台所へ入るエイリークやミカヤ、セリスに続き、おかえりを言いながら、ロイがカウンター越しに話しかけます。
ロイ  「今、皆でフリーマーケットに出店する話をしていたんだけど、エリンシア姉さん達も来れないかな?次の土曜なんだけど。」
エリンシア「フリーマーケットですか?ええ、次の土曜日ならいいですよ。」
アルム 「フリーマーケットかあ。ちょうどいい位になった野菜もたくさんあるし、おもしろいかもね。」
セリカ 「アルムがそう言うのなら、私もいいわ。写経した経典もちょうど溜まってきてたし、いい機会ね。」
エリンシア「楽しそうで、いいですね。」
ロイ  「姉さん、兄さん、ありがとう。(…写経?)」

そんな話をしている中、居間の窓から見える庭から金属のかち合う音が聞こえてきました。
どうやら、帰ってきたエリウッド、ヘクトル、リンにアイクが混じり、稽古をしているようです。
マルス 「見に行くかい?」
リーフ 「いいね。」
エフラム「俺も、見稽古をするか。」

稽古用に刃を潰した武器を持つエリウッドとヘクトルを、ラグネルを磨くアイクと、縁側に腰掛けるリンが眺めています。
リーフ 「おかえり、兄さん達。」
アイク 「ああ。」
リン  「ただいま、リーフ。今日はどっちが勝つと思う?」

ヘクトルの重い一撃を回避したエリウッドの鋭い突きが、ヘクトルの右肩に当たり、勝負が終わったのか、両者共に武器を下ろしました。
エリウッド「これで今年、僕は127勝126敗というわけだ。」
ヘクトル「お前、そんな数よく覚えていられるな。」
エリウッド「それはもう、どちらかが負けるたびに次で挽回するのだから、覚えやすいさ。」
ヘクトル「ま、それもそうかもな。」

エフラム「見事な回避だったな。」
アイク 「ああ、ヘクトルの癖をよく見切っている。」
リン  「ヘクトルの斧を振りかぶる動作が、いつもより少し遅かったのもあるわね。」
マルス 「そうだね。ところで、リン姉さんにアイク兄さん達、次の土曜日は暇ある?」
リン  「土曜?あるけど。」
マルス 「じゃあ、皆でフリーマーケットを出店するんだけど、一緒に来てくれないかな?」
リン  「ふーん、フリーマーケット。おもしろそうね。」
アイク 「土曜ならいいぞ。でも、何をすればいいんだ?」
マルス 「普通に物を売るだけで大丈夫だよ。」
アイク 「そうか。」

いつのまにやら、空がオレンジ色から群青色に変わっていきます。
家の各所に散らばっていた兄弟家の面々ですが、シグルドの帰宅を出迎えたエリンシアの「そろそろご飯にしますよー。」という掛け声に、一同が食卓に並びました。

一同  「いただきます。」
いつもと変わらぬ号令とともに、家族の揃うひと時が始まります。

ヘクトル「おおっ旨そうな唐揚げだな!」
エリウッド「僕はこっちのバジル和えから…。」
リン  「まずはやっぱり白いご飯ね。」

シグルド「ん?今日の味噌汁はセリスかな?」
セリス 「うん!元気になるよう心を込めてみたよ!」
シグルド「ああ、疲れが取れるような気がするよ。」
セリス 「えへへ。」

リーフ 「ねえ、唐揚げにかけるべきは醤油かな、塩コショウかな?」
マルス 「そんなのどっちでもいいと思うけど。まあ、僕はレモンかな。」

エリンシア「ユンヌちゃんもいっぱい食べてくださいね。」
ユンヌ 「あ…、ありがとう。」
エリンシア「あら?あまりお口に合わないのかしら。」
ミカヤ 「ユンヌ、あまり人からの好意に慣れていないから、照れてるのよ。」
ロイ  「そんなに遠慮しなくてもいいよ。(こんな一面もあるんだ。)」

エイリーク「やはり、アルムの野菜は瑞々しくて、おいしいですね。」
アルム 「ははは、ありがとう。」
エフラム「ああ、本当にそうだな。それに加えてエイリーク、セリカ、お前達の料理の腕も上がったな。」
セリカ 「そんな、でも、アルムの野菜は本当においしいわ!」
エイリーク「兄上、ありがとうございます。」

今夜の兄弟家では、そんな穏やかな時間が流れていきました。

続く。