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Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:32:27

おかいもの?

 

エリンシア 「ああロイちゃん、またお使い頼めるかしら?」
ロイ    「うん、いいよエリンシア姉さん」
エリンシア 「いつもいつも、本当にありがとうね。他の子たちに頼んでもなかなか引き受けてくれなくて」
ロイ    「気にしなくてもいいよ、料理の方は手伝えないし、このぐらいはしなくちゃね」
エリンシア 「ありがとう、ロイちゃん。そうだわ、お釣りが出たらロイちゃんのお小遣いにしていいから」
ロイ    「え、でも、余計な出費は控えないと」
エリンシア 「そんなことは気にしなくてもいいのよ。ロイちゃんにはいつもお使いや洗い物手伝ってもらっているから」
ロイ    「うーん……でも、なんだかお駄賃目当てに手伝ってるみたいで……」
リーフ   「じゃあ代わりに僕が行ってあげるよ!」
ロイ    「リーフ兄さん!?」
エリンシア 「リーフちゃん……どうしたの、急に」
リーフ   「別に、理由なんてないよ。単に気が向いただけ。
       ところで全然関係ない話なんだけど、本当にお釣りはお小遣いにしてもいいんだよね?」
ロイ    「……リーフ兄さん、いろいろとあからさますぎるよ。いつもは『面倒くさい』って言って行かないのに」
リーフ   「やだなあ、何を言うんだいロイ。僕は純粋にエリンシア姉さんの手伝いがしたいと言ってるだけさ!」
エリンシア 「それじゃあ、お駄賃なしでも行ってくれるのね、リーフちゃん?」
リーフ   「あ、僕ちょっと急用思い出しちゃった」
ロイ    「……リーフ兄さん……」
エリンシア 「ふふふ、リーフちゃんったら、いつからこんなにちゃっかりするようになったのかしらね。
       いいわ、それじゃ、二人にお買い物頼みましょう。お釣りは二人で仲良く分けてね」
リーフ   「やった! さあ、そうと決まれば善は急げだ、買い物なんてさっさと済ませようじゃないか、ロイ!」
ロイ    「……はあ。それじゃ、行ってきますエリンシア姉さん」
エリンシア 「行ってらっしゃい。気をつけてね」

リーフ   「ふーん、ふーんふーふーふー♪(FEのテーマ)」
ロイ    「……ねえリーフ兄さん、いくら何でもがめつすぎるんじゃないかな?」
リーフ   「何がだいロイ?」
ロイ    「何がって、決まってるじゃない。あんな風にあからさまにお駄賃目当てで……
       相手がエリンシア姉さんだったからいいものの、リン姉さんとかだったら今頃拳骨の一発は喰らってるよ」
リーフ   「だから相手を見てやってるんじゃないか」
ロイ    「いや、僕が言いたいのはそういうことじゃなくて」
リーフ   「甘いなあロイは。いいかい、僕らの家は貧乏だし、今は不景気な世の中なんだ。
       貯められる内にたくさんお金を貯めておくのは、庶民が身を守るための知恵だよ。
       こういう機会を逃さず、コツコツお金を貯めていかないとね!
       そう、たとえ相手が鉄装備しか持っていなかったとしても奪えるものは奪っておかないと……」
ロイ    「何言ってるの?」
リーフ   「いや、こっちの話。とにかくね、僕はもう貧乏は嫌なんだよ」
ロイ    「……だったらバイトでもしなよ。兄さんの年ならコンビニの店員ぐらいはできるでしょ」
リーフ   「えー、やだよバイトなんて。汗水垂らして働くなんてのは性に合わないんだ」
ロイ    (……兄さんっていつもどことなく卑屈なのに、
       こと労働という分野に関してはとことんお坊ちゃまなんだよな……
       それでいてお駄賃が出ると言われれば真っ先に飛びつくし。一体何なんだろうこの金への執着は)
リーフ   「お……(がちゃがちゃ、がちゃがちゃ)……チッ、収穫なしか」
ロイ    「……」
リーフ   「おっと、ここにも(がちゃがちゃ、がちゃがちゃ)……チッ、シケてやがる」
ロイ    「……あのさ」
リーフ   「あ、また……よし、今度こそ(がちゃがちゃ、がちゃがちゃ)おおロイ、見なよ、50Gゲット!」
ロイ    「……自動販売機があるたびに釣り銭漁るのやめなよ、リーフ兄さん」

 ~スーパー店内にて~

ロイ    「これと、これと……よし、これで全部だな」
リーフ   「……」
ロイ    「……今度はどうしたのリーフ兄さん、やたらと不満気だけど」
リーフ   「どうしたもこうしたも……高すぎるよ何もかもが!」
ロイ    「いや、今日はむしろ安い方なんだけど」
リーフ   「いーや、駄目だ! これじゃせいぜい500Gそこらしかお釣りもらえないじゃないか!」
ロイ    「そりゃそうでしょ、必要な分しかもらってないんだから」
リーフ   「(ぶつぶつ)くそ、こんなんじゃ駄目だ、せめて3000Gぐらいはふんだくらないと……」
ロイ    「……リーフ兄さん?」
リーフ   「移動しようロイ! もっと安いスーパーを探すんだ!」
ロイ    「えー? いいよ別に、遅くなっちゃうし……」
リーフ   「いいから行く!」

 ~で、一時間後~

ロイ    「ねえもうここでいいじゃないリーフ兄さん。きっとエリンシア姉さんが心配してるよ」
リーフ   「駄目だ駄目だ、これじゃせいぜい1500Gじゃないか!」
ロイ    「もはやお金のことしか頭にないね兄さん……」
リーフ   「くそ……どうする、この近辺にはもうスーパーなんて……むっ!? 空を行くあの竜は……」
ラジャイオン(竜)(はぁ、全く、今日も今日とてアシュナードにこき使われ……早く帰ってイナとイチャイチャしたい……)
リーフ   「(キラーン)あれだ!」
ロイ    「何が?」
アイク   「二人とも、こんなところで何やってるんだ」
ロイ    「あ、アイク兄さん。仕事終わったんだ」
アイク   「ああ、これから帰るところで」
リーフ   「いいところに来たねアイク兄さん! 僕をあの竜に向かって投げ飛ばしてよ!」
ロイ    「何言ってんのリーフ兄さん!?」
アイク   「……よく分からんが、別にいいぞ」
リーフ   「ありがとう兄さん!」
アイク   「では」

 ニア そうび

   ラグネル     --
 ニア ブラザーアーチⅢ 50

アイク   「ふんっ!(ブゥン!)」
ロイ    「うわ、綺麗に真っ直ぐな弾道だなあ」
リーフ   「イヤッホォォォォォォウッ! とりゃっ!(スタッ!)」
ロイ    「ああ、リーフ兄さんらしくない華麗な着地……!」
アイク   「……いつの間にか腕を上げたな、あいつ」
ロイ    「……いや、多分そういうんじゃないと思うな、あれは」
ラジャイオン(竜)「な、なんだお前は!? 勝手に人の背に」
リーフ   「うるさいんだよ空飛ぶトカゲの分際で! つべこべ言わずに僕の言うとおりに飛べ!」
ラジャイオン(竜)「な、何を勝手な」
リーフ   「んー? いいのかなー? どこにいるんだか分からない輸送隊から、ドラゴンキラー引き出しちゃうよー?」
ラジャイオン(竜)「な……そんなことをすれば貴様も一緒に落ちるぞ!?」
リーフ   「うるせぇ、こちとら金がかかってんだよ! 死なばもろともって言葉を知らんのかこの腐れトカゲ!」
ラジャイオン(竜)「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ……!」
リーフ   「ははは、そうそう、そうやって大人しく飛べばいいんだ。
       安心しなよ、僕の言うとおりに飛べば葉っぱぐらいは食べさせてあげるさ」
ラジャイオン(竜)「この人でなしーっ!」

ロイ    「……」
アイク   「うむ……つまり武者修行の旅に出かけるということか。男になったな、リーフの奴」
ロイ    「違うって……って言うか、リーフ兄さんお金持たずに行っちゃったんだけど」
アイク   「なんだ、買い物の途中だったのか? よし、俺も付き合おう。荷物は持ってやる」
ロイ    「……そうだね、エリンシア姉さんも心配してるだろうし、早く買い物済ませて帰ろうか……」

 ~一週間後~

リーフ   「ただいまーっ!」
エリンシア 「まあリーフちゃん、今まで一体どこに」
ロイ    「皆心配してたんだよリーフ兄さん」
リーフ   「そんなことより見てよこれ!」
エリンシア 「……これは? どこかで見たことのある草だけど……」
リーフ   「オリウイ草だよオリウイ草! 遠い山奥で群生地見つけたんだ!」
ロイ    「どんな大冒険してきたのリーフ兄さん!? って言うか、もっと安いスーパーを探すに行ったんじゃ」
リーフ   「ん? そうだっけ? まあ細かいことは気にしない」
ロイ    「完全に金だけが目当てになってたんだね……」
エリンシア 「リーフちゃん……いつの間にかたくましくなって。ううっ……」
ロイ    「いや姉さん、ここ感動するところじゃないから」
リーフ   「細かいことは抜きさ。どうだい、凄い量だろう。これをうまく売りさばけば大金持ちになれる!」
ロイ    「うーん……でも、そんな群生地が今まで発見されていなかったって、話が出来すぎなような」
リーフ   「それを言ったら『葉っぱが葉っぱを見つけました』って言うのも出来すぎじゃないかい?
       ハハハ、今日の僕はギャグも冴えてるなあ!」
ロイ    「……何でだろう。『調子に乗るリーフ兄さん』というシチュエーションから
       ハッピーエンドに繋がる絵がどうしても見えない……」
リーフ   「ともかく、これで僕も勝ち組だね! 文句がある奴は言ってみろっていうか」

 ファンファンファンファンファンファン……

ロイ    「あれ、なんかパトカーが家の前に……」
マードック 「(ガチャ)……失礼。警察の者ですが、こちらにリーフという名前の少年は?」
リーフ   「え? リーフは僕ですけど……」
マードック 「そうか……おい、ゲイル」
ゲイル   「はっ。リーフ少年。君を不法侵入と窃盗の罪で補導する。ベルン署まで同行してもらおうか」
リーフ   「えぇ!? な、何がどうなって」
ゲイル   「ガリア農場のオリウイ草畑から、君が大量のオリウイ草を盗み出したのはもう調べがついているんだ」
リーフ   「……はい!? え、だって、あそこは野生の群生地……」
ゲイル   「? 何を言っている? 確かに途方もなく広大ではあるが、あの山は全てガリア農場の敷地だぞ」
リーフ   「そ、そんな!?」
ロイ    (……つまり、飛ぶ竜の背から見下ろしてたもんだから、
       そこが群生地じゃなくて農場だってことに気がつかなかったのか)
マードック 「大人しく来てもらおう。抵抗すれば罪が重くなるぞ」
リーフ   「え、ちょ、な、なんで!? ああ、一攫千金の夢がぁぁぁぁぁぁ……!」

 ファンファンファンファンファンファン……

ロイ    「……」
エリンシア 「……」
ロイ    「……人間、欲をかくとロクなことにならないって本当だね……」

 なお、ユンヌやらマルスやらが裏から手を回したおかげで、リーフに前科がつくことはなかったという。

<おしまい>