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Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:33:17

そんな目で見ないで

 

マルス  「ただいまーっ」
リーフ  「あ、お帰りマルス兄さん。何やってたの?」
マルス  「いやあ、今日も今日とてチキやファたちと一緒に、メディウス爺さんで遊んであげていたのさ」
リーフ  「要するに老人虐待に精を出してた訳ね……」
マルス  「ハハハ、人聞きが悪いよリーフ君。僕は遊んでいただけだよ、遊んでいただけ」
リーフ  「……そんなこと言いつつ、三日前は踊り子と天馬騎士を誘導してフォルセティ使いの人を修羅場に追い込み、
      一昨日は善意の寄付を装って教会の僧侶に傷薬を送りつけて泣かせ、
      昨日はヨハヨハ兄弟を同時にラクチェの前に送り込み……」
マルス  「そう言えばそんな遊びもしたっけ」
リーフ  「よくもまあ、こうもたくさん人の弱味というか弱点を握れるもんだね」
マルス  「ふふふ、人間観察の賜物だよリーフ君。指揮官たるもの、部下の人間関係ぐらいは把握しておかなくてはね」
リーフ  「指揮官って何のことさ?」
マルス  「実は僕クラス委員長をやっててね」
リーフ  「……嫌な話。ってか、クラスメイト部下扱いなんだ……」
マルス  「ま、将来のことを考えてね」
リーフ  「偉くなる気満々だね……まあマルス兄さんならきっとそうなるだろうけど。
      でも、最近ちょっとはしゃぎすぎなんじゃない? またリン姉さんにお仕置きされるよ?」
マルス  「ふふん、姉の拳骨が怖くて悪戯なんかやってられないんだよ、リーフ君」
リーフ  「僕にはよく分からない感覚だよ……でもマルス兄さん」
マルス  「なんだい?」
リーフ  「リン姉さんすら恐れないとすれば、マルス兄さんって向かうところ敵なしって感じだよね?」
マルス  「んー……いや、僕にも苦手とする人種はいるよ」
リーフ  「え、たとえばどんな?」
マルス  「アイク兄さんかな。もちろん腕力で勝てないってのもあるけど、何より浮世離れした感性の持ち主だからね。
      これといった弱味もなく金や名誉にすら興味がない、となると、動かすのは容易じゃない。
      いわゆる『普通の人たち』とは価値観がかなり違うから、行動が読みにくいしね。
      何より、どれだけ小細工弄しても力ずくで粉砕されそうな印象があるし……」
リーフ  「なるほどね」
マルス  「まあ、敵には回したくない人だよ」
リーフ  「でもさ、それ以外には怖いものなんてないんじゃない?」
マルス  「うーん……そうだね、これと言って思いつくものは」
セリス  「ただいまー。あ、マルス兄さん!」
マルス  「ん? なんだいセリス?」
セリス  「ファやチキたちと遊んであげてたんだってね! 今日会ったら、二人とも大喜びしてたよ。
      自分の時間を割いて子供達の相手をしてあげるなんて、マルス兄さんは偉いなあ。僕も見習わなくっちゃ」
リーフ  (うわあ、思いっきりいい方向に解釈してるよ。その裏にある悪意には気付く気配すら……)
マルス  「……!」
リーフ  (……あれ? なんかマルス兄さんの顔色が……)
エイリーク「ただいま帰りました……何かあったのですか? 三人で玄関先に集まって」
セリス  「あ、エイリーク姉さん。マルス兄さん、竜王家の子達と遊んであげてたんだって」
エイリーク「まあ、そうなのですか。優しいですね、マルスは」
セリス  「うん。僕の自慢の兄さんだよ」
エイリーク「そうですね。私にとっても誇れる弟です、マルスは」
セリス  (きらきらきらきら)
エイリーク(きらきらきらきら)
リーフ  (うわぁ……人を疑うことを知らぬかのような純粋な瞳! たまにこの二人が凄く心配に……)
マルス  「う……う……」
リーフ  「……って、さっきからどうしたのマルス兄さん、なんか顔が土気色で全身がガタガタ震えて……」
マルス  「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
リーフ  「って、逃げた!?」
セリス  「急にどうしたのマルス兄さん!?」
エイリーク「マルス、どこか痛いのなら病院に」
マルス  「痛いのは心ですよエイリーク姉さん! うわぁぁぁぁ、やめて、そんな目で見ないでぇぇぇぇぇぇ!」
リーフ  「……何だかんだ言っても根は善人なんだよね、マルス兄さんって……」

<おしまい>