2-213

Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:37:18

視点の問題?

 

エリンシア「あ、リーフちゃん、ちょっとお料理を手伝ってもらえる?」
リーフ  「はーい」

ヘクトル 「お、リーフ、テレビが映んねえんだけどよ」
リーフ  「分かった、ちょっと見てみるよ」

ロイ   「うーん。あ、リーフ兄さん、絵の課題が出てるんだけど、ここの辺どうしたらいいと思う?」
リーフ  「こんな風でいいんじゃないの?」

シグルド 「ああリーフ。すまないが、屋根の修理を手伝ってくれないか」
リーフ  「はいはい」

リン   「リーフ、ちょっと弓が壊れちゃって。見てくれない?」
リーフ  「修理しとくよ」

エイリーク「リーフ。ダンスの練習に付き合っていただけますか?」
リーフ  「うん、いいよ」

ロイ   「うーん」
マルス  「やあ、どうしたんだいロイ」
ロイ   「あ、マルス兄さん。リーフ兄さんってさ、結構何でも器用にこなすよね」
マルス  「そうだねえ。まあ、大抵のことはそこそこ出来るんじゃないかな?」
ロイ   「普段は何故か目立たないけどさ、これって結構凄いことなんじゃ……」
マルス  「そうだねえ」
ロイ   「……」
マルス  「ん、どうしたんだい、そんなに驚いて」
ロイ   「いや。なんか、ずいぶんあっさり認めるなあって。いつもは馬鹿にしてるのに」
マルス  「やれやれ。分かってないねロイ」
ロイ   「え、なにが?」
マルス  「リーフが器用でいろんなことがこなせるのは事実だ。これは確かに凄いことだよ」
ロイ   「そうだね」
マルス  「だけど、彼には何かにおいて突出しているということがないだろう?
      どの分野においても、必ず勝てない相手がいるんだ」
ロイ   「んー……まあ、確かにそう、かな」
マルス  「そうなると、どうしても『器用貧乏』というレッテルを貼られることになる。
      こういう言葉で置き換えると、何となくヘボい印象になるだろう?」
ロイ   「ああそっか。結局は物の見方の問題なんだね」
マルス  「そういうこと。それに、リーフの場合は自分に自信がないから、
      自分が器用だってことを積極的に主張しないだろう。
      だから、なおさらパッとしない印象が際立つことになる訳だよ。
      そういう自信のない人間には、あまり運気も巡ってこないしね」
ロイ   「そういうものかな」
マルス  「そうだよ。結局は視点の問題さ。努力家は凡才と言われがちだし
      倹約家はケチだしお嬢様は世間知らずだ。優しい人間は詰めが甘いし
      マッチョな戦士は脳筋愚鈍、冷静沈着は冷酷非情で、献身的なのは利用されやすいってことになる。
      視点と表現を変えれば、どんなものだって良くも悪くもなるさ」
ロイ   「……なんか、嫌な見方だねそういうのって」
マルス  「そういうものだよ。人間である以上、僕らはどうしてもいずれかの方向に突出してしまうし、
      どんな場所に行ったって同じ扱いを受けるとは限らない。
      リーフにしたって同じことさ。器用貧乏と見るかオールマイティと見るか、
      単に運がない奴と見るか、予期できる不幸も避けられない間抜けな奴と見るか。
      ロイ、君だって普通のいい子と見られるか、それとも面白みのない奴と見られるかでかなり評価は違うはずだよ」
ロイ   「うーん……そう言われると、自分がすごくつまらない人間に思えてくるよ」
マルス  「ははは、まあそんなに深刻に考えることはないよ。
      要するに、『皆いいところも悪いところもあるよ、ただ、状況によっていいところが出やすかったり、
      悪いところが出やすかったりするんだよ』っていう陳腐な訓戒を、面倒くさく言ってみただけなんだから」
ロイ   「そういうこと……でいいのかなあ」
マルス  「いいんだって、それに、見なよあれ」
ロイ   「ん?」

リーフ  「あ、エリンシア姉さん、お駄賃に5Gくれない? ヘクトル兄さん、2G。修理させといてタダってことはないよね?
      小遣いの日は過ぎてるけど、臨時収入って言葉もあるよねシグルド兄さん。10Gでどう?
      リン姉さん、修理代20Gもらえる? 修理屋よりはずっと安いでしょ。いい品だな大事にしろよ。
      エイリーク姉さん、世の中には授業料というものがあってだね。まあ3Gでいいよ」
ヘクトル 「追いはぎかテメエは!」
リーフ  「うん、そうだけど何か?」

ロイ   「……」
マルス  「見なよ、あの老若男女関係ない厳しい取立てぶり! たとえ安い鉄の武器だろうが、逃さず奪うその根性!
      しかも、『ま、このぐらいなら払ってもいいかな』と思わせる絶妙の値段設定ゆえに、
      ちゃっかりしてると思われても、強欲だと思われて嫌がられることは絶対にない!
      だから皆も金せびられるだろうと知りつつ、便利屋なリーフに頼るし、むしろ感謝するぐらいなのさ。
      いやあ追いはぎの鏡だねリーフは。全国の盗賊団や山賊団に経営顧問として派遣したいぐらいだよ」
ロイ   「……」
マルス  「という訳で、器用貧乏で不運なボーヤと思われがちのリーフにも、誰にも負けない才能というのは確かにあるのさ」
リーフ  「あ、ロイ、アドバイス料1Gを……」
ロイ   「(1G渡しつつ)……マルス兄さん、それはいくらなんでも視点が優しすぎると思うな……」

<おしまい>